楽器解説

【音楽史】ドラムの歴史 Part7【フォリーとシアタードラマー】

ドラムってどんな歴史があるの?
昔のドラムってどんな感じだったんだろう?

このような疑問にお答えする内容です。

ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。

今回はPart7として、フォリーとシアタードラマーが活躍した時代を振り返ります。

1927年のドラム

ドラムが発展してきたおかげで、当時のドラマーたちはいわゆる「フリーランス」のスタイルをとることができました。

ある日はコンサートで演奏、次の日はショーで演奏、次の日はダンサーのために演奏...などです。

今の「フリーランス」と同じような形で、当時のドラマーたちも様々な役割をこなすことができました。

それでは、1920年代のドラマーたちにとって最も重要な「役割」とは一体何だったのでしょうか?

実はこれは、「フォーリーアーティスト」でした。

1920年代にフォーリーとして活躍したドラマーたち

フォーリーとは、効果音(SE)を作る人のことです。

当時はテレビもコンピューターもありませんでしたが、映画はありました。

ただし、音のない「サイレント映画」です。

当時はまだ、映画用のサウンドトラックを作る技術がなかったからです。

映画館に行くとピアニストがいたり、大きな街だとオーケストラが映画館にいることもありました。

そのピアニストやオーケストラが、そこで上映される映画に合わせて演奏していたのです。

ドラマーたちは、そこで楽器を使って効果音を演奏していました。


画像:動画より

銃声、飛行機が飛ぶ音、赤ちゃんの泣き声、牛の鳴き声、鳥の鳴き声、列車が駅に到着する時の音、馬の鳴き声、ズボンが引き裂かれる音など、あらゆる音に対していろいろな楽器が使われていました。

ドラマーは、そのような数多くの音に対応していたのです。

当時の楽譜を見ると楽譜に「キュー」が書いてあり、どのシーンでどの音を出すかが書かれています。


画像:動画より

フォーリーのためにはたくさんの楽器を扱わなければいけなかったので、ドラムセットも次第に大きくなりました。

Ludwigの創始者もシアタードラマーとして活躍

ちなみに、以前のドラムペダルの回でもご紹介したLudwigの創始者William F. Ludwigですが、彼は会社を作っただけではなく、ルーディメンタルドラミングで世界中ツアー回ったり、シカゴにおいて最も重要な「シアタードラマー」としても活躍していました。

彼はドラムショップも経営していましたが、最初はドラムのリペアやチューニングをメインに行なっていたものの、シアタードラマーの活躍が増えてからは、「こういう音が欲しいんだけど」というリクエストももらうようになったといいます。

ちなみにシアタードラマーは数々の劇場を回らなくてはいけないため、楽器は持ち運び可能なサイズで作らなくてはいけませんでした。

シアタードラマーに使われていた実際の楽器

当時映画に使われていた楽器の数々を、William F. Ludwigのお孫さんご本人が解説してくれています。

サウンドは5:18~8:18

History of the Drumset - Part 7, 1927 - Silent Movies and The Trap Drummer

最初のサウンド付き映画は1927年

最初にサウンド付きの映画が上映されたのは、1927年だと言われています。

1930年になるまでには、すべての映画がサウンド付きで上映されるようになります。

そのため、サイレント映画の時代は非常に早く過ぎていきました。

職を失った多くのドラマー

サイレント映画の時代はとても短かったので、特にシアタードラマーとして活躍していた多くのドラマーやフォーリーたちはすぐに職を失ってしまいました。

1980年にドラムマシンが誕生したときのことを考えてみるとわかりやすいでしょう。

当時のドラマーたちは「うわ、ドラマーの時代は終わった…もうドラムマシンに全部持っていかれる…」と思ったことでしょう。

これと同じことが、1927年ごろにも起こっていたのです。

しかし今も多くのドラマーが存在しているように、ドラマーたちはその後もずっと活躍し、技術も進化しつづけています。


つづきのPart8はコチラ


人気記事

1

https://youtu.be/f0FhmTvdYYA?si=voPGFHl2leoVKF1_ 今回は、数々のモニタースピーカーを販売しているAdam Audio社が解説する「自宅スタジオ~3レベル ...

2

https://www.youtube.com/watch?v=A8rvn7o33Lo 今回は、Sage Audioが教える「カリッとしたボーカルにするためのMIXテクニック」をまとめました。 全部で ...

3

音楽におけるアップビート、ダウンビート、オンビート、オフビート、バックビート… 似たような言葉だけど、何が違うの?覚えられない… 今回はこのようなお悩みにお答えする内容です。 「アップビート」「オフビ ...

4

今回は、「Sonarworks SoundID Referenceの使い方」をまとめました。

DTMをするなら絶対に持っておきたいこの製品について、なぜこの製品がおすすめなのか、どの種類を買うべきなのか、具体的な使い方と測定方法をご紹介します。

5

世界的にヒットしている曲の構成ってどうなってるの? 「ヒット曲の公式」みたいなのがあるといいんだけど… 今回はこのような疑問にお答えします。 https://www.youtube.com/watch ...

6

今回は、人気音楽プロデューサーのVirtual Riotが解説する「Serum 2の全新機能の解説」をまとめました。Xfer Records社「Serum2」で新しく追加されたプリセットの制作にも携わったVirtual Riotが、新機能17項目を徹底解説します。

7

この記事では、世界中の作曲家・音楽プロデューサーが使っているおすすめのブラス(金管楽器)音源をご紹介します。同じ楽器でも音源によって音色が少し異なりますので、複数持っていると使い分けることができるほか、レイヤーしたときもリアルさと壮大さを増すことができます。

8

今回はAudio Universityが解説する「Universal Audio社 Apollo Twinのレビュー」をまとめました。他社では2万円程度の製品がある中で、Apollo Twinは約10万~20万円です。この記事では、Apollo Twinは値段相応の価値があるのかについて解説します。

9

今回はAdam Audio社とIn The Mixが解説する「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。 多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置 ...

10

今回はChris Selimが解説する「Pultec EQの使い方」をまとめました。DTMにおいて「有名なEQ」としてよく名前が挙げられるのが「Pultec EQ」です。この記事では、なぜこのEQは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

-楽器解説