【音楽史】ドラムの歴史 Part15(最終回)【ビートルズとマッチドグリップ】
- 2020.03.17
- 用語解説・音楽史

昔のドラムってどんな感じだったんだろう?
このような疑問にお答えする内容です。
今回はPart15、最終回として、ビートルズとマッチドグリップの歴史を振り返ります。
楽器の歴史を知ると、時代背景に沿った楽曲を作れるようになり、作曲の引き出しが増えますので、ぜひ最後までご覧ください!
(当時の再現演奏もあります!)
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1964年
1964年というと、ロックンロールが誕生してから10年経っていることになります。
ドラムセットも、今のようにバスドラム・スネア・ハイハット・タム・クラッシュシンバル・ライドシンバルで構成され、叩き方も今とほとんど同じになってきました。
この頃、1964年になると、イギリスの「進出」が始まります。
The Beatles、The Rolling Stones、The Yardbirds、The WHO、QUEEN、Deep Purpleなど、多くの人気バンドが1960年代に誕生します。
アメリカのロックンロールやブルース、ロカビリー、ソウルアーティストたちの後ろにいた彼らですが、彼ら自身の新しいロックンロールのスタイルを築き、アメリカに進出したのです。
The Beatlesの活躍
この時代に起こった大きな出来事といえば、The BeatlesがThe Ed Sullivan Showに出たことでしょう。
このテレビ番組は、あらゆる「才能」を発掘するショーケースで有名でした。
(この頃には家庭にTVがありました)
歌だけでなく、ジャグリングや動物とのショーなども繰り広げられました。
第二次世界大戦後に生まれた「ベビーブーム世代」と呼ばれる多くのティーンエイジャーたちがこの番組を見ており、The Beatlesは一躍人気になりました。
「ビートルマニア」と呼ばれる社会現象も起きたほどです。
当時はまだチャンネル数が少なかったので、そのおかげもあり、このショーを多くの人が見ていました。
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マッチドグリップ
この時、多くの人がThe Beatlesのドラマーであるリンゴ・スターのドラミングを目にします。
ここで衝撃的だったのは、彼は「マッチドグリップ」でドラムを叩いていたことです。
マッチドグリップは、今では多くの人がドラムレッスンで最初に習うスティックの持ち方です。
しかし1960年代より前は、トラディショナルグリップで叩いていました。
この持ち方はもともとマーチングで使われていた持ち方で、少しかたむいたスネアドラムに適した持ち方でした。
そのためドラムセットにおいても、マーチングと同じようにスネアドラムを前に傾けてセッティングしていることがほとんどでした。
画像:トラディショナルグリップ。手の甲を楽器側に向けて叩く奏法。
The Beatlesは、世界で初めてスタジアムで演奏したバンドです。
初めてのコンサートは、1965年のShea Stadium、55,000人の前での演奏でした。
当時はこれだけ多くのスタジアムで演奏するなんてことは考えられず、加えて今のようにPAシステムもまだ進化していませんでした。
楽器も小さく、リンゴ・スターも20インチのバスドラムを使っていました。
55,000人もの観客がいて、女の子たちの黄色い歓声を浴びると、楽器の音がかき消されてしまうことは想像できるでしょう。
画像:マッチドグリップ。手の甲を上に向けてスティックを持つ叩き方。
そこでリンゴ・スターが考えたのが、マッチドグリップを使うということです。
トラディショナルグリップよりもよりハードに叩くことができ、見た目もよかったので、ベビーブーム世代のドラマーたちは「彼みたいになりたい!」と憧れるようになりました。
また彼はLudwigのドラムを使っていたので、Ludwingはまたしても最も有名なドラムメーカーに名乗り上げました。
(ちなみにLudwigのドラムペダルについてはPart3で詳しく解説しています)
そしてここから、マッチドグリップがドラマーにとっての「デフォルト」となっていったのです。
さて、長かったドラムの歴史シリーズも今回で最後です。
全15回に渡ってご覧いただきました。
全部覚えておく必要はありませんが、頭の片隅に入れておくと、「何年代っぽい曲」「ビーバップスタイルの曲」のように、より細かい部分を考えながら作曲できるようになります。
みなさんの音楽制作やドラムの演奏に役立てていただけたら幸いです。
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