プロが教えるデスメタルのボーカルミックス術【デスボイス】
- 2024.07.22
- 2024.07.20
- ミキシングのコツ
アメリカのデスコア・デスメタルバンド「Lorna Shore」の楽曲「To The Hellfire」のボーカルミックスを、実際にエンジニアを担当した本人が解説します。
原曲はこちら↓
ここからは解説の該当部分から動画が始まるように設定していますので、ぜひ動画を見ながらお楽しみください。
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はじめに:ミックスするボーカルをチェック
それでははじめに、今回ご紹介するボーカルをソロをお聞きください。
ボーカルトラックの波形を見てみると、とても綺麗にコンプレッションがかかり、クリッピングもされていることがわかります。
Neveを使ってサチュレーションもかけました。
ボーカル全体のエフェクトをOFFにすると、このようになります。
それでは、ボーカルに使ったエフェクトを一つずつ解説していきます。
Pro-MB(高音域用)
ボーカル全体のエフェクトには、まずマルチバンドコンプ(Pro-MB)で高音域を処理しています。
「グァッ」というギュッとした音をしっかり前に出しつつも、キツいSの音を抑えています。
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Pro-MB(中高音域〜低音域用)
次は、うるさくなった帯域を抑えるためのマルチバンドコンプです。
Pro-MBを使うとこのようなサウンドになります。
ReaEQ Part1(全体用)
次はREAPER付属のEQ「ReaEQ」で、不必要な音を削りながら必要な音を形成していきます。
高音域が少し明るくなりました。
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ReaEQ Part2(低域用)
次も同じEQを使いますが、今度はローエンドの処理用として使っています。
Pro-MB(強い低域用)
次もまたマルチバンドコンプですが、これは特にボーカルがレイヤーされた時に必要となるものです。
この楽曲はだいたいボーカル1本ですが、途中で複数重なるところが出てくるので、その時にこのマルチバンドコンプがよくかかるようになります。
特にベースとキックとぶつからないように、このようにして抑えています。
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VOCAL DOUBLER(ダブリング)
次はiZotope社の「VOCAL DOUBLER」で、音を広げています。
※VOCAL DOUBLERは公式サイトから無料でダウンロードできます
ON/OFFで比べるとわかりやすいのですが、これを使うとステレオ感が増します。
ReaComp(コンプレッサー)
次はREAPER付属のコンプで、コンプレッションをかけます。
先ほど少し触れた、途中でボーカルがレイヤーされるときに出過ぎた音を抑えるようにしています。
TrueVerb(リバーブ)
最後はWaves社「TrueVerb」でプレートリバーブをかけ、空間を作ります。
ボーカルのPanを振るタイミングを工夫してステレオ感を出す
メインボーカルはレイヤーしているのですが、はじめはモノラルに聞こえるように重ねているのでおよそ1人で歌っているように聞こえます。
しかしその後のセクションではPanを振って、3人に聞こえるようにしています。
Panを振っている時の方が、よりダイナミックな感じがします。
デスメタルらしい迫力を作るコツ
このようなデスボイスを使ったボーカルは、とても圧倒されますし、これだけでも十分迫力があるように聞こえます。
しかし、より密度の高い力強さや迫力を出すためには、先ほどのようなステレオ感を出す工夫なども必要です。
例えばこの曲ではギターも左右に振ってステレオ感を出していますが、それはボーカルに比べればちょっとしたもので、この特徴的なボーカルがステレオに来たとき(Panを左右に振って人数感が出たとき)こそ迫力が出るようにしています。
サビで迫力を出すためにBメロで行っている3つの工夫
Bメロはサビの前のセクションなので、サビより小さく聞かせるとサビが盛り上がって聞こえるようになります。
しかし、ただ小さいだけではエネルギーも欠けてしまうため、Bメロでは3つの工夫をしています。
工夫1:さりげなくフェードアウト
またこの曲はテンポ変更があるので、ボーカルのレイヤーの音量を先にフェードアウトさせて、その次にテンポ変更があるようにしています。
人間は一度に複数の情報を処理するのが苦手なので、テンポ変更とフェードアウトは同時に行わないようにしています。
工夫2:ディレイを強める
またこのテンポ変更をスムーズにするために、オートメーションでディレイもだんだん強めるようにしています。
ボーカルのレイヤー数を増やすことなく、Bメロのエネルギーを薄めないためにしている工夫でもあります。
工夫3:ボーカルを振り上げる
レイヤーを重ねたり音量を上げること以外でエネルギーがだんだん上がっているように聞かせるために、ボーカルのトーンをだんだん上げるようにしています。
最後にボーカルの音を伸ばしている時、ピッチを下から上に向かってグイーっと上げるようにすると、(ディレイやリバーブも相まって)音程が上がるので音はだんだん薄くなり、サビに入った時のステレオ感がさらに強力に聞こえるようになります。
このような工夫をすると、たった1本のボーカルだけでもテンションやエネルギーは維持したまま、サビのエネルギーがドカンと来るように聞かせることができます。
それではこれを踏まえて、もう一度お聞きください。
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にも「ボーカルMIXテクニック」についての解説記事を掲載していますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください↓
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