楽器解説

【音楽史】ドラムの歴史 Part14【ロックンロールのはじまり】

History of the Drumset - Part 14, 1954 - Early Rock'n'Roll

今回は、ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。

この記事ではPart14として、ロックンロールのはじまりを中心に振り返ります。

1954年は「ロックンロール誕生の年」

1954年は、ロックンロールの曲が公式にリリースされた年です。

リリースされたのは、Bill Haley Cometsの「ROCK around the clock」という楽曲です。

Bill Haley & His Comets - Rock Around The Clock (1955) HD

この曲を聴いてみると、なんだかいろいろなものがすべて詰まっているような、おもしろい曲だなと思うでしょう。

前回までにご紹介したリズムアンドブルースから来たテナーサックス、カントリーやロカビリーから来ているスラップベース、カントリーから来ているペダルスティールとアコギ…これらが使われています。

今とは全く違うイメージの「ロックンロール」

Bill Haley Cometsのギタリスト・Francis Eugene Beecherはジャズギタリストで、彼のギターソロにはジャズのスタイルが取り入れられていることがわかります。

Best Solos Riff's Of Franny Beecher

現代の私たちの考える「ロックンロール」とは驚くほど違うものなのです。

ちなみにBilly Gothicというドラマーはあまり知られていませんが、彼はGene Krupaのようなスイングスタイルのドラマーで、Bill Haley Cometsではスイングスタイルのドラミングをしていました。

映画の主題歌にロックンロールが採用される

Bill Haley Cometsが「ROCK around the clock」で成功すると、2年後の1956年、ティーンエイジャーの間で流行った映画「BLACKBOARD JUNGLE」のテーマ曲となります。

Blackboard Jungle - Trailer 2b

少しワルな若者が出てくる映画なのですが、このワルな感じがまたクールで、さらに音楽もクール。

そのため、ティーンエイジャーたちはみんなこの映画を見に映画館に押し寄せたといいます。

ティーンエイジャーにアピールするロックンロール

Bill Haley Cometsと同じ時期に活躍した他のアーティストに、Chuck BerryやBo Diddley、Little Richardなどがいます。

彼らは、ティーンエイジャーたちにアピールするような曲を書いていきました。

CHUCK BERRY : Johnny B. Goode (1958) HD
BO DIDDLEY 1965
Good Golly Miss Molly

「ティーンエイジャーたちにアピールする」というのは、非常に革命的なことでした。

当時の「ティーンエイジャー」は、現代の私たちが考える「ティーンエイジャー」でいられる時間がなかったからです。

当時の子供達は学校から帰ってきたらすぐ仕事に行かなければならず、貧しい移民の子供達の場合はお金を稼ぐことしかできず、買い物に行くような余裕も全くありませんでした。

しかし1950年、第二次世界大戦が終わると、ティーンエイジャーたちはより「ティーンエイジャー」らしくいられるようになりました。

お金の余裕もできはじめ、若者たちもレコードを買うようになったのです。

これが、ロックンロールが若者向けに売り出し始めた理由です。

1950年以降のドラムの変化

次は、ドラム視点での歴史の変化を見ていきましょう。

前回までの解説で、リズムアンドブルースは「シャッフルを用いたドラミングが使われている」とお話しました。

これが1950年になると、リズムアンドブルースは「タッタ・タッタ」という跳ねるようなリズムではなく「タタタタ・タタタタ」のように、跳ねるようにではなく、よりフラットなリズムがベースになっていきます。

Earl Palmerなどのドラマーも、このようなフラットなスタイルのドラミングに移り変わっていきました。

Earl PALMER'S BEAT ④ 1959-1962

こうして、ロックンロールにおけるドラミングはより強く、フィルインもより大きく叩かれるようになります。

ビートはストレートな8ビートで、クラッシュシンバルは次の小節の1拍目に叩かれるようになります。
(この前まではクラッシュシンバルが4拍目に叩かれることが多かったのですが、この理由はPart6で解説しています

こうして、僕らの考えるロックンロールのスタイルは、1950年に出来上がったのです。

ロックンロールのドラミング 5:38~6:37

History of the Drumset - Part 14, 1954 - Early Rock'n'Roll

つづきのPart15(最終回)はコチラ


人気記事

1

この記事では、映画音楽やゲーム音楽で使える打楽器・パーカッション音源をご紹介します。ハリウッド映画トレイラーのような迫力のある打楽器アンサンブルから、繊細なオーケストラパーカッションを作りたいときまで幅広く使えますので、ぜひチェックしてみてください。

2

今回は、DTMにおすすめのストリングス・弦楽器音源をまとめました。ストリングス音源は1つ1つ使える音色やアーティキュレーション、マイキング、操作性が異なります。そのため、できるだけたくさん持っておくと自分の理想のサウンドにしやすく、レイヤーしたときの充実感がUPします!

3

今回は「ShaperBox 3の使い方」をまとめました。Cableguys社のプラグイン「ShaperBox」は、作曲からミックスまで幅広く使える超万能プラグインです。この記事では、ShaperBoxの主な機能5つと、特に魅力的な機能の使い方をご紹介します。

4

今回は「UAD社「Apollo Twin X」は高いけど買うべき10の理由」をまとめました。他社では2万円程度の製品がある中で、Apollo Twinは約10万~20万円です。この記事では、Apollo Twinは値段相応の価値があるのかについて解説します。

5

今回は、DTMでおすすめの和楽器プラグイン・音源をまとめました。それぞれ特有の音色・アーティキュレーション・奏法が使えるため、なるべくたくさん持っておくと目的に合ったサウンドを作りやすくなります。まだお持ちでない方は、ぜひチェックしてみてください。

6

音楽におけるアップビート、ダウンビート、オンビート、オフビート、バックビート… 似たような言葉だけど、何が違うの?覚えられない… 今回はこのようなお悩みにお答えする内容です。 「アップビート」「オフビ ...

7

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

8

今回は、DTMでおすすめのオーケストラ系楽器がすべて使える音源をまとめました。1つ購入するだけで弦楽器・金管楽器・木管楽器・打楽器すべてが揃うだけでなく、世界中のプロが愛用する高品質の製品ばかりですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてみてください。

9

今回は「Serum 2の全新機能の解説」をまとめました。Xfer Records社「Serum2」で新しく追加されたプリセットの制作にも携わったVirtual Riotの解説を参考に、新機能17項目を徹底解説します。

10

ここでは、AmazonのKindle Unlimitedで読めるおすすめのDTM・作曲関連書籍をご紹介します。月額1000円程度で対象本がすべて読み放題になるサービスですが、実はDTMや作曲関連の本・雑誌も対象作品が多数あるため、作曲をしている方にも非常におすすめできます!

-楽器解説