音楽ジャンル解説

【音楽ジャンル】ファンク(Funk)とは?どんな音楽?【リズム・コード編】

今回は英語版wikipediaの「ファンクミュージック」をまとめました。

この記事ではPart2として、ファンクでよく使われるリズム、テンポ、コード、スケールについて解説します。

ファンクは音楽的にも歴史的にもとてもおもしろいため、このシリーズは長編になっていますが、読み進めれば必ずどこかで面白さがわかってきます!

ファンクにおけるリズムとテンポの特徴

ソウルのように、ファンクはダンスミュージックをベースとしています。

そのため、リズム隊は重要な役割を担っています。

ファンクのサウンドは、実際に演奏される音と同じぐらい「音と音の間の空間」を重視している音楽です。

特に、音と音の間にある休符は非常に重要です。

ディスコとファンクは似ている?違いは何?

ファンクとディスコはリズム的に似ているものの、ファンクは「ディスコよりゆっくりと、セクシーに、シンコペーションをより多く用いている」という点が特徴です。

またファンクのリズム隊のプレイヤーは、メインビートに合わせて「複雑さ」「パーソナリティ」「新たな空気感」を加えることが多く、こちらは事前にプログラムされているディスコとは違うポイントになります。

スローなテンポだからできたこと

ファンクが現れる前は、当時は速いテンポでビートをさらに細かく分割できなかったため、ポップ・ミュージックは8分音符をベースに作られていました。

しかしファンクはゆっくりなテンポを用いて発展していったため、「よりリズミカルな音符を取り入れるスペース」があり、4/4拍子でも16分音符を入れる余裕があったのです。

具体的には、ギターやドラムで16分を使うことで動きを加え、これによって他の楽器に「よりシンコーペーションを使った、バラついた演奏」をさせるスキを作っています。

そして実際に、このおかげでより開放感のあるベースラインが演奏されるようになり、こういったリズムの絡み合いが、陶酔感・ダンサブルなサウンドへとつながっています。

ファンクの2小節構成

画像:wikipediaより

ファンクのリズムにおいて重要なのが、2小節でひとまとまりのオンビート・オフビート構成です。

これは、サブサハラアフリカン音楽が起源の構成です。

サブサハラアフリカン音楽の例

Adama et Ardjouman Diabaté, Furu
Adowa Music & Dance - Asante People, Ghana

この「2小節でひとまとまりのオンビート・オフビート構成」は、1940年代後半にニューオリンズでアフロキューバンのマンボとコンガの構成を使い始めたのが始まりです。

ニューオリンズファンクは、James Brownの楽曲におけるリズムセクションが音楽的にとてもよくできていたことから、国際的に高い評価を得ています。

New Orleans Funk 1960/75 - Soul Jazz [Full Album]

ファンクにおけるハーモニー

ファンクでは、より豪華な響きのある、ビバップジャズなどでよく見られるテンションコードがよく使われています。

たとえば、マイナーコードに7thや9thを加えたり、ドミナントセブンスコードに変化を加えた9thを入れたりすることが多いです。

Billie's Bounce Melody (Charlie Parker) - Bebop Jazz Guitar Lesson
Jazz Guitar Chord Progression Exercise

ファンクで使われるコードの例

マイナーイレブンスコード、マイナーコードに11thを加える
例:Fm11

ドミナントセブンスコードに#9thとsus4を加える
例:C7(#9) sus4

ドミナントナインスコード
例:F9

イナーシックスコード
Cm6

メジャーコードに6thと9thを加えた「6/9コード」は、ファンクでよく使われます(例:F6/9)。

またファンクでは、マイナーセブンスコードはマイナートライアドよりもよく使われます。

これは、マイナートライアドは「薄すぎる」サウンドに聞こえるからです。

ファンクで傑出しているアーティストの中には、ジャズのバックグラウンドを持った人もいます。

ちなみに、トロンボーン奏者のFred Wesley、サックス奏者のPee Wee EllisやMaceo Parkerなど、ファンクで有名なアーティストたちはいずれもJames BrownやGeorge Clinton、Princeなどと共演しています。

ファンクにおけるコードチェンジ

矢継ぎ早にコードが変わりもっと複雑であるビバップジャズとは違い、ファンクでは事実上コード進行の変化がありません。

ファンクはある1つのコードを即興的にプレイし、メロド・ハーモニックの動きや複雑さ、リズム感を増強しています。
メロド・ハーモニック:サブサハランアフリカの伝統音楽に使われるハーモニー。
多くはAm→D7など、マイナーセブンスコードとレラティブ・ドミナントセブンスコードを交互に演奏

リズムセクションを装飾する

主に1コードだけで即興し続ける楽曲もありますが、リズムセクションのミュージシャンたちは、半音または全音上下に移動したり、半音階の通過音(パッシングトーン)をつけるなどして「飾り付け」しています。
 
たとえば、Wild Cherryによる「Play that funky music」では、E9コードをメインに扱いながらも、F#9やF9も使っています。
 

Wild Cherry - Play That Funky Music

ファンクでよく使われるモード

ファンクでは、ドリアンモードやミクソリディアンモードがよく使われます。

これらは、よくあるポピュラーミュージックなどによく使われる、メジャーやナチュラルマイナー感のないモードです。

メロディーでは、ブルーススケールにこれらのモードを取り入れる形で使われます。

ブルーススケール
1 b3 4 #4 (or b5) 5 b7 8

ドリアンスケール
1 2 b3 4 5 6 b7 8

ミクソリディアンスケール
1 2 3 4 5 6 b7 8

ミクソ・ドリアン・ブルーススケール
(上記3つのスケールを合体させたスケールで、ジャズの即興でよく使われます)
1 2 b3 3 4 #4/b5 5 6 b7 8

関連記事
関連記事

ファンクでの即興

ここで、少しファンクにおける即興についても解説しておきます。

ファンクはアフリカ系音楽の即興の伝統を引き継いでいるため、「ジャム」や「グルーヴ」を感じさせるような即興をすることが多いです。

これはライブだけでなくスタジオレコーディングでも同じで、大枠だけを決めて、それをベースに即興を進めていきます。

また、ファンクでは「コレクティブ・インプロヴィゼーション(集団的即興)」を使っています。

これはリハーサルでミュージシャンが「音楽的に会話をする」ことによって、本番のパフォーマンスにつなげていくことを指します。


以上で今回の解説は終了です。

↓つづき「ファンクにおけるベースの特徴」


人気記事

1

今回は、The Cosmic Academyが解説する「DTMで音を広げる6つの方法」をまとめました。 真ん中から聞こえる音を左右から聞こえるようにしたい 音を完全に左右に広げたいけど、音が変になる…このようなお悩みを解決できる内容になっていますので、ぜひお試しください。

2

ローファイミュージック(Lo-Fi Music)って何?DTMをやってるんだけど、どうやったら作れる?今回はこのような疑問にお答えする内容です。ローファイミュージックとは何か、どんな歴史があるのか、どんな特徴があるのかを解説していきます。

3

ベース音源「Trilian」ってどうやって使えばいいの?操作方法がいまいちよくわかってない…今回はこのようなお悩みにお答えする内容です!こちらの解説を読めば、「とりあえずプリセットを選んでいるだけ」から「自分好みの音作りができるようになる」までレベルアップできます!

4

今回は、BigZが解説する「世界的ヒット曲のようにボーカルをミックス(MIX)する方法」をまとめました。この解説では、Dua Lipaのヒット曲「Don’t Start Now」を参考に、ボーカルをどのようにすればプロっぽく仕上げることができるのかをじっくり解説していきます。

5

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

6

今回は、vvndertoneが解説する「ドラムミックスでヴィンテージサウンドを作る方法」をまとめました。ローファイ・ヒップホップ(Lofi Hip hop)のように、昔っぽいヴィンテージサウンドを作る方法を8つご紹介します。ヴィンテージ感を出すために使えるプラグインやテクニックを多数ご紹介しますので、ぜひ自分に合った方法やお気に入りのプラグインを見つけてみてください。

7

今回は、音楽で使うスピーカーに付いている「謎の穴」について解説します。いろいろなスピーカーを見てみると、前面下側に細長く穴が空いていたり、側面に丸い穴が空いてあったり、中には背面に穴が空いていることがあります。この謎の穴は、いったいどのような役割があるのでしょうか?

8

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

9

この記事では、世界中の作曲家・音楽プロデューサーが使っているおすすめのブラス(金管楽器)音源をご紹介します。同じ楽器でも音源によって音色が少し異なりますので、複数持っていると使い分けることができるほか、レイヤーしたときもリアルさと壮大さを増すことができます。

10

今回は、Alex Romeが解説する「10個のコードパターンで10種類の違う感情を表現!」をまとめました。 自分の表現したいものを、コード進行でうまく表現できない…そんな方に必見の内容です!

-音楽ジャンル解説
-