【作曲・DTM】インド音楽の特徴と曲の作り方【楽器・奏法・楽曲構成編】

今回はこのような疑問にお答えする内容です。
このシリーズでは、インド音楽を作るために必要な以下の要素についてまとめています。
Part1: インド音楽を特徴付ける6つの要素(言語、歌い方・奏法、楽器編成)、有名なインド音楽・アーティスト
Part2: インド音楽のスケールの基本「ラーガ(Raga)」
Part3: インド音楽のリズムの基本「ターラ(Tala)」
Part4: インド音楽のポリリズムテクニック「ティハイ(Tihai)」
Part5: インド音楽で多用される「装飾音」
Part6: インド音楽で使われる楽器、奏法、楽曲構成、特徴的な奏法「ドローン(Drone)」
今回はインド音楽シリーズ最後として、インド音楽で使われる楽器、演奏方法、特徴的な奏法「ドローン(Drone)」、楽曲構成について解説していきます。
このシリーズを読めば「インドっぽい!」と思わせられる音楽を作る方法が学べますので、ぜひ最後までご覧ください!
※インドは地域によって言葉のスペルが異なることがありますので、そちらを了解の上、お読みください。
(たとえば「ラーガ」は「Raag」「Raga」「Raaga」など、複数の書き方があります)
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インド音楽で特徴的な演奏方法
みなさんが普段耳にする音楽や西洋音楽の特徴は、とても複雑で絶えず変化していくハーモニー。
しかし、インド音楽では別のアプローチの仕方をしています。
インド音楽ではメロディアスなスケールとリズムが重要視され、これは西洋音楽よりも複雑で、たくさんの種類があります。
一方、ハーモニーはとてもシンプルで、完全5度や完全4度の音でドローン(Drone)を鳴らしながら演奏されます。
ドローン(Drone)とは?
ドローンとは、ある音が曲中ずっと(あるいは長時間)音を鳴らしていること、そのような伴奏のことを指します。
確かに、インドの伝統音楽を聞くと、ある音がずっと同じ音を鳴らし続け、その上でメロディーが動いていることが多いですね。
ちなみにインドの楽器では、このドローンを演奏しやすい楽器がたくさんあります。
打楽器:タブラ(Tabla)
一方のタブラを叩くと、共振してもう一方のタブラが鳴る。
2:32~4:42
メロディー・ドローン用:シタール(Sitar)
インド音楽ではおなじみの弦楽器。
メインの弦を弾くことで、そのすぐ下にある「タラブ(Tarab)」という弦が共鳴し、より長い音価の音が出せるようになる。
タラブもチューニングされているので、この弦を弾いてもOK。
ちなみにこの弦を順番通りに弾くと、インド音楽ではおなじみのスケールサウンドが聞ける。
4:42~6:27
メロディー・ドローン用:サランギ(Sarangi)
バイオリンのように、ボーイングで音を鳴らす楽器。
メインの弦を弾くと、別の共鳴する弦も響いて音量が大きくなる。
本体を叩くことで、打楽器的な役割もできる。
6:27~7:15
メロディー・ドローン用:ハーモニウム(Harmonium)
アコーディオンと少し似ている、最大4音までのドローンサウンドを鳴らせる鍵盤楽器。
7:15~8:03
ドローン専用楽器:スルーティ(Shruti)
先ほどのハーモニウムのキーボードがないバージョンのような楽器で、非常にコンパクト。
8:03~8:47
タンプラ(Tanpura)
4弦(5弦のこともある)の弦楽器で、ジリジリとしたサウンドが特徴。
シタールと似ているが、シタールとは違いフレットがない。
ギターでいう「ブリッジ」の部分は、ユニークなサウンドを出すためにわざと弦がガタガタ鳴るように設計されている。
タンボウラ(Tamboura)、タンブラ(Tambura)とも呼ばれる。
8:47~11:12
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インド楽器の特徴
シタールやタンプラなどは、インド音楽においてとても特徴的で、最も有名なサウンドでしょう。
特に上記の2つの楽器は、とてもジリジリ・ギザギザしたようなサウンドが特徴ですが、これは西洋音楽においてはあまり好まれない音色です。
もし西洋音楽でシタールのようなサウンドの楽器を使ったら、「楽器がおかしい、直さなきゃ」「嫌な音だな」と思うでしょう。
しかし逆に、インド音楽において弦楽器がバイオリンなどのようにとてもなめらかなサウンドだったら、それも「楽器がおかしい、直さなきゃ」と思われることでしょう。
とても面白い話ですが、これもインド音楽の特徴といえます。
ドローンで演奏される音とうまくマッチさせるために楽器のチューニングは平均律ではなく、純正律を使っており、完全5度をベースにチューニングします。
(平均律と純正律の違いなどについてはこちらで解説しています)
その他の音のチューニングは、その曲のラーガによって変わってきます。
リズム:ターラ(Tala)
西洋音楽の場合は、よく使う「拍子」というものがある程度決まっており、大体は2拍子、3拍子、4拍子のいずれかで作られます。
一方インド音楽では、そのように短い拍子でフレーズを作っていくのではなく、「ターラ」という長いスパンでフレーズが作られます。
ターラは100種類以上もあり、このリズムのサイクルはとても長く、複雑です。
しかし、曲におけるセクションではターラを用いつつも、自由なリズムで演奏することもよくあります。
(イントロから楽曲の中盤までそのスタイルであることも)
こういった、いわゆる「拍子感」がない自由なリズムのセクションがあるのは、インド音楽の大きな特徴です。
西洋音楽におけるリズムはダンスやマーチから来ていますが、インド音楽のリズムは「その曲から来ているもの」と言えるでしょう。
ターラについては、Part3で詳しく解説しています
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音色の特徴
インド音楽では、1つのメロディーを歌ったボーカルや楽器が、ドローンやリズム楽器などによって支えられています。
前述の通り、こういった傾向は西洋音楽には見られず、また違う印象持たせる要素がいくつかあります。
たとえば、西洋音楽で使われる楽器を使っていない点。
ボーカルの声のトーンも、西洋音楽におけるボーカルとはまた違います。
西洋音楽は通常、よりよい音のクオリティを作るためにビブラートをよく使う傾向があります。
一方インド音楽のボーカルでは、ビブラートなしで音色をコントロールすることが多いです(Part5でもご紹介した通り、装飾音は多用されます)。
インド音楽のリスナーは、ラーガのチューニングの巧みさを隠すサウンドではなく、ラーガにおいて不可欠である複雑な装飾音などを邪魔しないクリーンで透き通ったサウンドが大切だと考えています。
またボーカルだけでなく、楽器も同様です。
インド音楽では楽器の微妙なチューニングや装飾音を重視するので、インドの楽器を演奏する場合は、ビブラートをほぼ使わない・もしくは全く使わないのが一般的です。
ソロの使い方
インド音楽では、ボーカルによるソロ・ソリストの使用はとてもよく使われます。
一方、西洋音楽では楽器によるソロがよく見られます。
インドのメロディー楽器
インド音楽の場合、メロディー楽器の多くは弦楽器で、代表的なのはシタールです。
シタールは、他のラーガにチューニングを変更できるよう、可動のフレットがついています。
その他にも、スルバハール(Surbahar)といういわゆる「ベースシタール」という楽器や、サロード(Sarod)というフレットなしの楽器もあります。
シタールやサロードはリュート系の撥弦楽器です。
ヴィーナ(Vina)はツィター系の楽器で、ひょうたん型の共鳴器がついています。
これらの楽器の多くは、その楽器の一部の弦だけがメロディーを弾き、その他の弦はメロディー以外を弾くために使います。
メロディー用の弦以外では、ドローンやリズムを弾いたり、他の弦が鳴った時に共振させるためにわざと弾かないなどの使い方があります。
こういった楽器の使い方により、インド音楽独自の「ジリジリとした弦楽器の音」が作れるのです。
ソロの弦楽器としてはあまり使われませんが、その他にもバンブーフルート(バンスリやヴェーヌ、Bansuri, Venu)などが使われます。
西洋音楽の楽器では、特にバイオリンがよく使われます。
インドのリズム楽器
リズム伴奏楽器として一般的に使われるのはタブラ(Tabla)です。
小さな2つの太鼓で、手で叩いて演奏します。
タブラは楽器の横にあるくさび(ウェッジ)を叩いて、ラーガに沿ったチューニングを行います。
スティックやビーターなどではなく手で叩いて演奏するため、より感情的に演奏したり、細かいニュアンスを表現したり、複雑な演奏をすることができます。
打楽器ではあるものの、熟練のミュージシャンであれば、リスナーにはまるでボーカルのフレーズを聞いているような感覚にさせることができます。
楽曲構成
インド音楽には様々なスタイルの楽曲のスタイルがありますが、多くに共通しているのは「楽曲に3つのセクションがある」という点です。
いわゆる「イントロ」部分はアーラープ(Alap)。
とても長く、ゆっくりで、自由なリズムで伴奏を行うセクションです。
ここでは、演奏者はラーガをだんだんと聞かせていきます。
西洋のロックやポップスなどのリズムに慣れてしまっているリスナーにとっては非常に理解しにくいところではありますが、インド音楽を理解している人であれば、このセクションはその演奏者のミュージシャンシップが最もはっきりわかるになります。
次は「ガート(Gat)」で、打楽器を使ってターラ(リズムの一定サイクル)を使う部分です。
ここで楽曲のリズムを見せていき、より動的なサウンドになります。
ジョール(Jor)もガートと同じで「イントロ後にリズムがだんだん出てくる部分」ですが、ガートと違ってターラは使わず、低音弦楽器であるチカリ(Chikari)などを使って、より楽曲を動的にしていきます。
最後の「ジャーラ(Jhala)」では打楽器が入り、音楽はより速く、リズム的に複雑になっていき、クライマックスに向けて盛り上がっていきます。
最後は、Part4でも解説した「ティハイ(Tihai)」を使って曲を締めます。
この3つのセクションでは、基本的に即興で演奏されます。
最後のセクションでは、ソリストと打楽器奏者の間で密なコミュニケーション、協力、相互作用を引き起こして演奏します。
以上がインド音楽の解説でした!
特徴やルールがたくさんあるので全てを再現するのは大変かもしれませんが、一つでもご自身の楽曲に取り入れれば「インド音楽っぽさ」が加わるはずですので、ぜひトライしてみてください。
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