【音楽史】ラグタイムとは?【歴史編】

【音楽史】ラグタイムとは?【歴史編】
ラグタイムって、どんな音楽?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

 

英語版wikipediaの「ラグタイム」をかんたんにまとめてみました。

 
今回はPart3として、ラグタイムの具体的な歴史について解説していきます。
 

Part1:概要編

Part2:音楽的特徴編(構成・コード進行・リズム)

Part3:歴史編
 
 

誰もが一度は聞いたことがあるであろう音楽ですが、その詳細についてはあまり知らない方も多いでしょう。
 
こちらのシリーズを読むと作曲の引き出しが増えますので、ぜひ最後までご覧ください!
 

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ラグタイムの祖先

 
ラグタイムは、19世紀後半のアフリカ系アメリカ音楽を起源としており、アフリカ系アメリカ人バンドによって演奏されていた「ジグピアノ」や「ピアノサンピング」と呼ばれた、ジグ(Jig)やマーチなどを祖先としています。

 
ジグ
 

"The Kesh" Irish Jig for Piano

 

20世紀に入るまでには北アメリカ中で人気になっており、よく聞かれ、ダンスやパフォーマンスにも使われ、多くの異なるサブカルチャーの人たちによって作られるようにもなりました。
 
「アメリカ音楽」として、ラグタイムは「アフリカのシンコペーション」「ヨーロッパのクラシック音楽(特にJohn Pfilip Sousaのマーチ)」を融合させた音楽といえるでしょう。
 
 
ちなみに、ラグタイムの前は「ケークウォーク」という、いわゆる「親戚の音楽ジャンル」がありました。
 

初期のラグタイムは「マーチ」とされていることもあり、1890年代中盤の間は「ジグ」と「ラグ」は同じ意味として使われていました。
 

ラグタイムのヒット作

 
1985年になると、黒人のエンターテイナーErnest Hoganが、2つのラグタイム初期の楽譜を出版します。
 
そのうちの1つは「All Coons Look Alike to Me」で、のちに100万部を売り上げるほどのヒット作でした。
 
もう一つは「La Pas Ma La」で、こちらもヒット作となりました。
 

 

いわゆる「しっかり確立されたラグタイム」が出現したのは1897年と言われており、この年は初期ラグタイムにおいてとても重要な楽曲たちがリリースされた年でした。
 
1989年になると、Scott Joplinが「Maple Leaf Rag」をリリースし、初期のラグタイムよりもより洗練され、ラグタイムの深みを表現した大ヒット作となりました。
 
このころのラグタイムは、初期のジャズに大きな影響を及ぼす音楽ジャンルの一つでした。
 

 

Jelly Roll Mortonとスパニッシュ・ティンジ

 
ラグタイムとジャズが他のジャンルに取って代わられるまでは、Jelly Roll Mortonなど、ラグタイムとジャズをどちらも演奏するアーティストもいました。
 
ちなみに彼は「スパニッシュ・ティンジ(Spanish Tinge、直訳で「スペインの色合い」)」を採用し、楽曲にハバネラやタンゴのリズムを取り入れていました。
 

The Spanish Tinge

 

トレシーロやハバネラについてはこちらの記事で解説しています 

 

1920年代前半になると、ジャズはラグタイムを抜いて人気となっていきます。
 
しかし、ラグタイムは現在も作られ続け、1950年代と1970年にはリバイバル(復活)も遂げています。
 

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録音技術が普及する前に全盛期を迎える

 
ラグタイムの全盛期は、録音技術が普及する前に起こりました。
 
クラシック音楽のように、クラシックラグタイムは「楽譜に書いて伝わる伝統」であったため、レコードなどの録音やライブパフォーマンスを通して普及しているジャンルではありませんでした。
 
ラグタイムはピアノロール(紙に点を打って専用の機械で読み取って音を鳴らす)やプレイヤー・ピアノ(自動演奏するピアノ)によって広まっていたのです。
 


 
画像:ピアノロール(wikipediaより)
 

ノベルティラグ(Novelty Rag)

 
「トラディショナル・ラグ」が人気を失っているとき、ノベルティピアノ(ノベルティラグタイム)と呼ばれる形式が新しく現れました。
 
トラディショナルラグタイムがアマチュアのピアニストや楽譜販売に頼っていた一方、ノベルティラグはピアノロールやレコード盤のテクノロジーを活用し、より華やかで複雑な、パフォーマンスをベースとしたスタイルでした。
 
著名なノベルティラグの作曲家には、1921年に人気となった楽曲「Kitten on the Keys」の作曲者であるZez Confreyが挙げられます。
 

Zez Confrey piano solo: Kitten On The Keys (1921)

 

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ストライドピアノ

 
ラグタイムは、ストライドピアノのルーツも持っています。
 
これは1920年代から1930年代に人気となったスタイルで、より即興的なピアノスタイルが特徴です。
 
 
ストライドピアノ(ストライドは「またぐ」の意)↓
 

Stride Piano Exercises, Jazz Piano Tutorial

 

他のジャンルでもラグタイムの要素が…

 
ラグタイムで使われている要素は、20世紀初期のアメリカのポピュラー音楽に見ることができます。
 
また、のちに現れるピードモントブルースの発展にも大きく貢献し、このジャンルのプレイヤーが弾くギターは「ラグタイムギター」とも呼ばれています。
 
(ピードモントはアメリカの東部から南部にかけて広がる丘陵地域)

 

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アレンジ版

 
ほとんどのラグタイムの曲はピアノ用に作られていますが、他の楽器やアンサンブルにアレンジされることもよくありました。
 
Gunther SchullerによるScott Joplinの楽曲アレンジなどは特に有名です。
 

The Entertainer by Scott Joplin, ed. Gunther Schuller

 

ラグタイムギター

 
前述のラグタイムギターは1930年代まで人気が続き、よりギターの技術が必要とされるような楽曲で使われていました。
 
多くの楽曲が数カ所のレコードから発表され、Blind BlakeやBlind Boy Fuller、Lemon Jefferson、その他のアーティストによって演奏されました。
 

 

Blind Boy Fuller – 16 Country Rags & Folk Blues

 

 

Scott Joplinのオペラ

 
時折ラグタイムは、James Reese EuropeやIrving Berlinによって書かれた楽曲のように、アンサンブル(特にダンスバンドやブラスバンド)向けに作られることがありました。
 
Scott Joplinはラグタイムとオペラの世界を合体させるという長年の野望を持っており、実際に彼はオペラ「Treemonisha」を書いています。
 

Treemonisha: Overture (Scott Joplin)

 

しかし、この初公演でScott Joplinはピアノでうまく伴奏ができず、悲惨なステージになってしまったため、その後の彼の生涯で上演されることはありませんでした。
 
このオペラのスコアは数十年間行方不明になっていましたが、1970年に見つかり、1972年に再アレンジののち上演されました。
 
Scott Joplinの初期のオペラ「A Guest of Honor」のスコアは、未だ見つかっていません。
 


 
以上で「ラグタイム」の解説は終わりです!
 
これまでのシリーズを全部ご覧いただいた方であれば、ラグタイムをより面白く聞くことができ、作曲においても楽曲分析が大きく捗るはずです。
 
 
Amazonにラグタイムの楽譜がありますので、こちらを見ながら実際に弾いてみたり分析すると、ご自身の作曲の引き出しが増えます↓