【音楽理論】「フーガ」「対位法」とは?【クラシック音楽の聞き方】

【音楽理論】「フーガ」「対位法」とは?【クラシック音楽の聞き方】
クラシック音楽を、理論的に解読して楽しみたい!

フーガとか対位法って言葉はよく聞くけど、これって何?

 
今回はこのような疑問にお答えする内容です。
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

クラシック音楽・映画音楽を中心に解説動画をアップしているInside the Scoreによる「クラシック音楽の聞き方・フーガ」をかんたんにまとめてみました。

 
「対位法」や、対位法を使った楽曲形式「フーガ」はクラシック音楽においてよく聞く言葉ですよね。
 
しかし、具体的にどういうものなのか、何が面白いのかを知っている方は、意外にも少ないかも知れません。
 
そこで今回は、クラシック音楽を理論的に楽しむ方法、フーガ・対位法とは何かについて徹底解説していきます!
 

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「フーガ」とは?

 
フーガは、対位法を使ったテクニックのことです。
 
(対位法のざっくりとした説明はこちら)
 
 
そこまで厳密なものではなく、作曲における一つの「プロセス」「手段」として考えられます。
 
「ソナタ」などは厳密に形式が決まっていますが、フーガはそうではありません。
 
ちなみに、楽曲がすべて「フーガ」で作られているものを「フーガ」と呼びます。
 

ヘンデルの「メサイア」や、ベートーベンの交響曲第9番、ベンジャミン・ブリテンの「少年のための管弦楽入門 No.25」、レオナルド・バーンスタインの「Cool(映画・West Side Story)」など、数世紀に渡って幅広く使われている手法です。
 

THEMEとIMITATION

 
フーガは、決まった声部(第1声・第2声など)の数を使い、フレーズを「模倣」しながら作られます。
 
たとえばこちら↓
 

 
画像:動画より
 
「THEME」がメインのフレーズで、「IMITATION」は、THEMEを模倣したフレーズです。
 
確かに、IMITATIONと書かれた部分はTHEMEと形が似ていますね。
 
 
実際に演奏してみると…(2:04~2:14)
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

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「4声」の意味

 

 
画像:動画より
 
例えば「4声(4 Voices)」の楽曲の場合は「4つの独立したパートがある」ということになります。
 
それぞれ違ったフレーズを演奏しますが、同時に聞くとキレイなハーモニーになります。
 

対位法とは?

 

 
画像:動画より
 
上の画像のように、横軸で見ると全く別のパートを演奏しているように見えますが…
 

 
画像:動画より
 
このように、縦軸で見るとそれぞれがキレイなハーモニー(コード)になるように作られていることがわかります。
 
これが、「対位法」です。
 

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対位法を使う意味とは?

 
対位法を用いて作曲をするのは、最初は少し大変です。
 
しかし、ある程度のルールや縛りを理解し、それを使うことで、とても芸術的な楽曲を作ることができます。
 
また、作曲中に出てきた問題も、対位法によって解決できることがあります。
 

フガート(Fugato)

 
フーガと似ている言葉の一つに「フガート」があります。
 
これは、楽曲内で部分的にフーガが使われているセクションのことを表します。
 
 
たとえばベートーベンの交響曲第3番↓
 

 
画像:動画より
 
楽曲内で、部分的にフーガが使われています。
 
ちなみにおさらいになりますが、「フーガ」は「全部フーガでできた楽曲」を指します。
 

フーガの例と使われる要素

 
では、実際のフーガの例を見ていきましょう。
 
 
まずご紹介するのは、バッハの「The Well-Tempered Clavier(後述)」に収録されている、Cマイナーキー&4声の例です。
 
これにあたって、フーガで使われる「要素」がいくつかありますので、そちらを解説していきます。
 

サブジェクト(Subject)

 

 
画像:動画より
 

まずはメロディーのアイデアとなる「サブジェクト」です。
 
フーガでは、まず第1声によるサブジェクトから楽曲がスタートします。
 
また、第3声もこのサブジェクトを担当します。
 

アンサー(Answer)

 

 
画像:動画より
 
次に出てくるのは「アンサー」です。
 
これは第2・4声が担当し、サブジェクトを作り変えつつ、キーはドミナント(5th)にしています。
 
また、アンサーの中にもいくつか種類があります。
 

 
画像:動画より
 

リアルアンサー(Real Answer):サブジェクトを単純にドミナントに移調(トランスポーズ)したもの
トーナルアンサー(Tonal Answer):ハーモニーの関係で、少し変更を加えて移調したもの

 

ちなみに、アンサーにおいてはどちらを使ってもOKです。
 

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ルールはあるの?

 
フーガにおいてはこの「サブジェクト」と「アンサー」があるだけで、その他に厳密なルールはありません。
 
そのため、音がキレイに聞こえるのであれば、構成はどんな形でもOKです。
 

カウンターサブジェクト(Counter Subject、対主題)

 
ちなみに、フーガにはもう一種類要素があります。
 
「カウンターサブジェクト」です。
 
ちなみに「フーガでは絶対に使わなくてはいけない!」ということではありません。
 

 
画像:動画より
 
カウンターサブジェクトは、サブジェクトの次にアンサーが入った時、アンサーと同時に鳴らされるフレーズです。
 

5:27~5:33
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

他にも、このようなカウンターサブジェクトがあります↓
 


 
画像:動画より
 

カウンターサブジェクト = 第2のサブジェクト

 
カウンターサブジェクトは、「第2のサブジェクト」とも言えます。
 

 
画像:動画より
 
サブジェクトと対比させつつ、最後に同時に鳴らすと、美しく響くこともあります。
 

エピソード(Episode)

 
フーガにはさらに「エピソード」という要素があります。
 
これは、サブジェクトを伴わないフーガの部分のことです。
 

カノン(Canon)

 
さて、別のテクニックも見てみましょう。
 
カノンは、それぞれ別の声部が、楽曲内で同じフレーズを違うタイミングで演奏されることを指します。
 
言い換えると、サブジェクトが常に聞こえる状態になります。
 

 
画像:動画より
 

いろいろなカノン

 
カノンでは、異なるインターバルで演奏されることもあります。
 

 
画像:動画より
 

・ユニゾンのカノン(全部同じ音程)

・9thのカノン(長2度で重ねるカノン)

・7thのカノン

 
6:53~7:12
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

オーギュメンテーション(Augumentation)

 


 
画像:動画より
 
サブジェクトの表現方法として、「オーギュメンテーション」というテクニックもあります。
 
こちらは常にゆっくりと進行させていく方法で、上の画像でいうと黄色いマーカーが引かれているラインです。
 
他の部分が8分音符や16分音符で細かく動いているのに対し、オーギュメンテーションの部分では4分音符でゆったりとメロディーが動いています。
 

ディミニューション(Diminution)

 
ディミニューションは、先ほどのオーギュメンテーションと逆のテクニック。
 
細かい・短い音で構成されるサブジェクトのことを指します。
 

インヴァージョン(Inversion)

 

 
画像:動画より
 

インヴァージョンは縦軸で影響し合うようにする方法で、サブジェクトの音の動きを真逆にします。
 
ハーモニーの関係でぴったり正反対ということは少ないですが、ほぼ正反対の動きをします。
 

7:46~7:51
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

ストレット(Stretto)

 

 
画像:動画より
 
ストレットは、サブジェクトに対し1個以上のアンサーを重ねるテクニックです。
 
ストレットを使うと、サブジェクトを崩す・聞きづらくする効果があるのが特徴です。
 
 
「エピソード」と「ストレット」の違いはこちら↓
 
上の譜面がエピソードの例、下の譜面がストレットの例です。
 

 
画像:動画より
 

8:05~
 

How to Listen to Classical Music: Fugues

 

ダブル・フーガ

 
フーガは、さらに複雑にすることができます。
 
たとえば「ダブル・フーガ」では、2つのサブジェクトが同時に演奏されます。
 

 
画像:動画より
 

ちなみにバッハは、トリプル・フーガの楽曲も書いています。
 

バッハとフーガ

 
今回ご紹介した「フーガ」は、あの有名な作曲家・バッハを抜きに語ることはできません。
 
 
彼は数学的にも美しくフーガを取り入れることに長けており、フーガに関しては「The Well-Tempered Clavier(2冊)」を出版しています。
 
2冊それぞれ、24のプレリュードとフーガがそれぞれのキー(メジャーとマイナー)で書かれています。
 
これらをマスターすれば、フーガの可能性を惜しみなく発見できるでしょう。
 

The Art of Fugue

 
また、未完成ではありますが、バッハは「The Art of Fugue」という本も書いています。
 
こちらもまた、とてもシンプルなアイデアの中にフーガのポテンシャルを感じさせる一冊となっています。
 


 
 
以上が「フーガ」「対位法」の解説でした!
 
繰り返しになりますが、フーガはロジカルに音楽を作ることができる、とても面白いテクニックです。
 
作曲している方にとって勉強する価値は十分にありますので、ぜひ一度トライしてみてください!
 
 
ちなみに対位法をもう少しじっくり勉強してみたいという方には、こちらがおすすめです↓