【音楽理論】フリジアンモードを使ったゲーム音楽を解説! 後編【映像音楽】

【音楽理論】フリジアンモードを使ったゲーム音楽を解説! 後編【映像音楽】

今回は、8-bit Music Theoryが解説する「恐怖を与えるフリジアンモード」をまとめてみました。

この記事では後編として、「フリジアンを使ったゲーム音楽」を6曲ご紹介していきます。

「モードを使った作曲にチャレンジしたい!」という方には必見の内容です!

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

「前編」でご紹介する楽曲↓

・「クロノトリガー」より「魔王のテーマ」
・「ファイナルファンタジーVI」より「ガストラ皇帝のテーマ」
・「ファイナルファンタジーVII」より「バトルテーマ」
・「Zoombinis 」より「Zoombiniville」

当記事「後編」でご紹介する楽曲↓

・「METROID」より「ノルフェアのテーマ」
・「二ノ国2」より「別れ」
・「カエルの為に鐘は鳴る」より「エンディングテーマ」
・「ポケットモンスター赤・緑・青」より「トレーナーバトルのテーマ」
・「キングダムハーツ」より「ホロウバスティオンのテーマ」
・「スーパーメトロイド」より「赤土湿地エリア」

前編はこちら↓

【音楽理論】フリジアンモードを使ったゲーム音楽を解説! 前編【映像音楽】

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シンプルなコードにモードの特徴音を足してみよう

メジャーコードでもマイナーコードでも、コードにモードの特徴音を足すと、それだけでモードらしさを出すことができます。

例えばEマイナーコード(E,G,B)の上にF(♭2)の音を足すと、コードネームはEm(♭9)となり、フリジアンらしさが出ます。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

モードの特徴音+susコードにすると更にフリジアンらしく

先ほどの「Zoombini」で使われていたメロディーラインを同時に弾くと「D,♭E,G,A」となり、コードネームはD(sus4♭9)となります。

音程だけ見ると♭9は♭2と同じ音なので、キーに対してIのコード(DフリジアンモードならDマイナーコード)を使っている時に「♭9」がついている=フリジアンの特徴音である♭2を使っているとも言えます。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

このようにモードの特徴音+sus4にすると、単純にトライアドに特徴音を足した時よりも音が強烈になり、さらにフリジアンらしくなります。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

フリジアンを使ったゲーム音楽:METROID「ノルフェアのテーマ」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次はこの「モードの特徴音+susコード」を使った例で、METROIDより「ノルフェアのテーマ」す。

Metroid (NES) Music – Norfair Theme

この曲はsus4と♭2を使ったコードが曲を通して使われており、ルートは狭い範囲(DとC)で移動しています。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

この独特な響きがずっと続くと、聞くに耐えないような不協和なサウンドになります。

しかし、招かれざる敵やエイリアンが出てくるようなゲーム・ステージにはピッタリでしょう。

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フリジアンを使ったゲーム音楽:二ノ国2「別れ」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次は、あの久石譲氏が音楽を担当したゲーム「二ノ国」シリーズの楽曲です。

Leavetaking – Ni No Kuni II Soundtrack

キーはBマイナーですが、BmのVである「F#」にsus4と♭9を加えて「F#(sus4♭9)」にしています。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

アレンジ(楽器)によって、恐怖感よりは「難しい」「大変」のような印象を与えています。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

フリジアンを使ったゲーム音楽:カエルの為に鐘は鳴る「エンディングテーマ」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次はこの「susコード+特徴音」にさらにバリエーションを加えた例で、「カエルの為に鐘は鳴る」より「エンディングテーマ」です。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

Fマイナーコードと同時にベースでGを鳴らし、「G7(sus4♭9)」にしています。

モードらしいサウンドとして使っているわけではありませんが、強烈な不協和のドミナントコードからC/Gコードに解決し、その間で忙しいアルペジオのパターンが演奏されているため、解決したときに大きな安心感が生まれます。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

それでは、これを踏まえて楽譜を見ながら聞いてみましょう。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

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フリジアンを使ったゲーム音楽:ポケットモンスター赤・緑・青「トレーナーバトルのテーマ」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次は「ポケットモンスター赤・緑・青」より「トレーナーバトルのテーマ」です。

Trainer Battle – Pokémon Red/Blue/Yellow Soundtrack

初代ポケモンのバトルテーマでも先ほどと同じようなパターンが使われており、Am(♭9)をリズミカルに演奏しながら、各小節の頭の音をそれぞれ「B♭→A→C→B♭」のように移動させています。

番号で言うと「♭9→1→♭3→♭9」になりますが、♭9は♭2(フリジアンの特徴音)として捉えることもできるため、♭9(♭2)の音があるときは非常に不安感を煽られます。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

特に、ベースがAでコードがB♭のときは半音違いで不協和音になり、さらにコードもB♭とEのトライトーン(増4度)の関係になるため、全体的に非常に強い不協和音になります。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

バトルテーマらしく、緊張感や不安に駆られる様子をコードやフレージングで表現しています。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

フリジアンらしさを出すための3つ目のテクニック

さて、ここまででフリジアンらしさを出すためには「フリジアンモードの特徴音(♭2)を使う」「sus4♭9コードを使う」をご紹介しました。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンらしさを出す要素としてはさらにもう一つあり、それは「特徴音を入れたコードを、トニックコードの前後に使う」です。

実は、これは前述で解説したクロノトリガーの「魔王のテーマ」とファイナルファンタジーVIIの「バトルテーマ」で使われています。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

上の画像のクロノトリガーの「魔王のテーマ」はEフリジアンスケールで、トニックマイナーコードであるEmの後に、♭2(F)が入ったコード「Dm(♭7)/F」を第一転回形にして鳴らしています。

特徴音を入れて転回形にすることで、ベースが「♭2→1」の動きになり、フリジアンらしさが強まります。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

上の画像のファイナルファンタジーVIIの「バトルテーマ」でも同様に、Fフリジアンスケールで、トニックマイナー(Fm)の前に特徴音であるG♭足して転回形にしたコード「E♭m/G♭」を鳴らし、ベースを「♭2→1」の動きにしています。

♭IIコードや♭viiも使える

さらに、トニックマイナーの後に「♭IIコード(メジャー♭2コード)」や、レラティブメジャーコードの「♭vii(マイナー♭7th)」を入れてもよいでしょう。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

特に♭viiコードが第一転回形で鳴ったときは両者は微々たる変化に思われるかもしれませんが、♭IIコードの方がより明るく聞こえるようになります。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンを使ったゲーム音楽:キングダムハーツ「ホロウバスティオンのテーマ」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次は、「キングダムハーツ」より「ホロウバスティオンのテーマ」です。

Kingdom Hearts Music – Hollow Bastion

この曲はBmコードをベースにしながら、BナチュラルマイナースケールやBエオリアンスケールを使っています。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

そして最後には、Bmコードの間に♭IIのコード(Cメジャー)が入っています。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

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フリジアンを使ったゲーム音楽:スーパーメトロイド「赤土湿地エリア」

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

次は、スーパーメトロイドより「赤土湿地エリア」です。

この曲も、トニックコード「E♭(sus4)」の後に、特徴音「E」を含む「F♭maj13(E,Ab,B,Db,Eb)」を鳴らしています。

メロディーはE♭マイナーのサウンドを保つように演奏されています。

※iは小文字表記のためマイナー、IIは大文字表記のためメジャーを表します

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

それでは、楽譜を見ながら聞いてみましょう。

Brinstar – Red Soil Wetland Area – Super Metroid Music Extended

「ポケットモンスター赤・緑・青」の「トレーナーバトルのテーマ」(i→♭IIのパターン)」

先ほどご紹介した「ポケットモンスター赤・緑・青」の「トレーナーバトルのテーマ」にも、この「i→♭II」の動きを使ったセクションがあります。

※iは小文字表記のためマイナー、IIは大文字表記のためメジャーを表します

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

それでは、楽譜を見ながら聞いてみましょう。

The PHRYGIAN Mode Feels THREATENING

「i→♭II」を使うと「希望」が見えるサウンドに

フリジアンモードを使ったゲーム音楽

このように、「i→♭II」のパターンを使うと楽曲に希望が見えるような印象をつけることができます。

ただメジャーコードを多用するのではなく、フリジアン独特の恐怖感があるサウンドと混ぜて使うことで、「永遠には続かない幸せ」のような明るさ・希望を演出できます。

フリジアンモードを使ったゲーム音楽の総まとめ

以上でフリジアンモードの解説は終了です!

とても盛りだくさんの内容でしたが、フリジアンモードを使って楽曲にさまざまなバリエーションが加えられることをご理解いただけたかと思います。

・見知らぬ地を冒険していくときの恐怖感や怪しさ
・強敵に苦しみながらも必死に戦うようなサウンド
・susコード+特徴音
・特徴音を入れたコードを、トニックコードの前後に使う

当サイトでは他にもモードに関する解説をまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください↓