楽器解説

【音楽史】ドラムの歴史 Part8【ビッグバンドの時代】

History of the Drumset - Part 8, 1929 - Classic Big Band Drumming

今回は、ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。

この記事ではPart8として、ビッグバンドの時代を振り返ります。

1929年の世界恐慌で唯一の希望だったジャズ

この年は、ドラムだけでなく世界的にも記憶に残る年となります…

そう、世界恐慌が起こった年です。

多くの人が家や農場、職を失い、本当に悲惨な状況でした。

そんな時、人々を唯一救えたのがジャズだったのです。

以前のパートでもお伝えした通り、ジャズは最初はニューオリンズの小さなグループから始まった音楽です。

そして1920年代に入って、だんだんとビッグな音楽になっていきました。

1930年中期には、アメリカで最もポピュラーな音楽のスタイルとなり、国中を風靡しました。

「ビッグバンド」が人々にジャズを届ける媒体となったのです。

人々を勇気づけたビッグバンド

この頃のジャズはダンスミュージックでもあり、ポップ・ミュージックでもありました。

金曜日になると、人々は街に踊りに出かけていたのです。

そのため、ビッグバンドの17~18人のミュージシャンたちは、人々を楽しませよう、踊らせようと尽力していました。

このビッグバンドがアメリカ中で人気となったのは、ラジオの力がありました。

毎晩、または土曜の夜はラジオがある家や施設に行き、夜9:15~9:30はニューヨークのあるホテルで演奏しているベニーグッドマンのオーケストラの番組を聞く、といったことが行われていました。

このことから、1930年は「ビッグバンドの時代」と言えるでしょう。

ビッグバンド時代にタム・シンバル・ハイハットが使われるようになる

https://www.britannica.com/biography/Gene-Krupa

この時代になると、タムと小さなシンバルがドラムに追加されるようになります。

小さなシンバルを使うのは、大きいシンバルだと他の楽器の音を掻き消してしまうからです。

また、新しくハイハットがドラムセットに加わります。

ハイハットがドラムに加わってから、ハイハットがドラムにおけるタイムキーパーの役割を引き受けるようになります。

ビッグバンド時代のハイハットの役割

その前の時代、ニューオリンズやシカゴスタイルのジャズでは、チョークシンバル(片手でシンバルを叩き、もう片方の手でシンバルをつかんで音が伸びないようにする奏法)が使われていました。

0:52~1:01

How to Play Crash Cymbal Chokes | Drumming

しかしこの方法だとシンバルを叩くだけで両手がふさがってしまうため、スネアなどの他の楽器は叩けず不便です。

そこで考えられたのが、「ハイハットを足で踏む」というアイデアです。

バスドラムに対してリズムを刻むハイハットを足で踏めば、両手が空くので便利だからです。

最初は「スノーシューズシンバル」という形で誕生し、バスドラム1回に対してハイハットを1回鳴らす「ブンチャ・ブンチャ」というスタイルが生まれました。

Hi-Hat Pedal Evolution: Snowshoe VS Low-Boy

途中で「手で持つハイハット」の「ハンドソックシンバル(Hand Sock Cymbals)」という楽器も誕生しましたが、1920年代最後になると「これらを全部一緒にしてしまえないだろうか?」という考えが生まれ、皆さんがご存知の現在のスタイルに落ち着きました。

ハンドソックシンバル(0:30付近からドラマーが演奏します)

Hand Sock Cymbal

これで、足でハイハットを踏んで鳴らすこともでき、スティックで叩くこともできるようになりました。

ハイハットとドラムにとって、とても飛躍的な進化となったのです。

ハイハットの名前の由来

ちなみに「ハイハット」という名前の由来は、初期のハイハットの名前から来ています。

初期のハイハットは「ローボーイ(Low Boy)」と呼ばれており、その後誕生したのが現在のハイハットです。

1:19~1:25

"Back in Time: Lowboy" - Cymbal Series, Part 4

ローボーイは、シンバルの位置がかなり足元に近いところにセットされていました。

その「ローボーイ = Low Boy = 低い位置にある」に対して、「ハイハット = Hi Hat = 高い位置にある帽子」と名付けられました。

ビッグバンド時代におけるもう一つの変化

前回までのシリーズで、ジャズはマーチングの要素がとても強い「ドンチャ・ドンチャ」というフィーリングをもとにしてできたというお話をしました。

いつもキックが1・3小節目に鳴るスタイルです。

しかしこの1930年代になると、毎回表拍に「ドン・ドン・ドン・ドン」と鳴らすスタイルが出てきます。

6:02~6:51

History of the Drumset - Part 8, 1929 - Classic Big Band Drumming

このように、ドラムに使われる楽器だけでなく、ドラムで演奏するスタイルも変化していきました。


つづきのPart9はコチラ


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-楽器解説