今回は、ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。
この記事ではPart4として、ドラムブラシの誕生を振り返ります。
ドラムの歴史解説シリーズ
Part1:ドラムの歴史のはじまり(1865年ごろ)
Part2:ラグタイムの時代
Part3:ドラムペダルの進化
Part4:ドラムブラシの誕生
Part5:ジャズとフィルインのはじまり
Part6:フィルインとシカゴスタイルのドラム
Part7:フォーリーとシアタードラマー
Part8:ビッグバンドの時代
Part9:Gene Krupaと「Sing Sing Sing」
Part10:ビーバップとライドシンバル
Part11:リズム&ブルース・シャッフル・バックビート
Part12:ツーバス・ダブルバスドラムの誕生
Part13:ロカビリーのはじまり
Part14:ロックンロールのはじまり
Part15:ビートルズとマッチドグリップの誕生
ドラムブラシの誕生
ジャズなどによく用いられる「ブラシ」ですが、これには非常におもしろい歴史があります。
画像:動画より
1912年の資料を見ると、ハエたたきの特許が取得されていることがわかります。
実は、これとブラシには深い関係があるのです…
ドラムの音量問題
当時のドラマー達は、常に大きな音で演奏しており、他の楽器の音をかき消してしまうという問題を抱えていました。
20世紀はまだPAシステムがありませんので、アンプもありませんし、マイクもありません。
しかしドラムは現代とほぼ同じ大きさですので(バスドラムは現代より大きいですが)、生楽器の音を簡単にかき消すほどのうるささでした。
そのため「もっと小さい音量で演奏できるものがないか」と、人々は考え始めました。
ハエたたきとドラムブラシ
そこで思いついたのが、「ハエたたき」です。
この頃はまだプラスチックが誕生する前の時代ですので、現代のようにハエたたきはプラスチックではなく、金属毛でした。
伸縮式の製品も開発され、好きな長さに固定することもできました。
こうして、ドラム製品を開発していた企業は、まだあまり注目されていないこの「ハエたたき」をベースに「ドラムブラシ」を生産していこうと決めたのです。
1920年ごろのブラシの使い方
1920年ごろに本格的に使われ始めたブラシですが、実は今とは違った使い方をされていました。
当時のドラマー達は、「スティックの静か版」としてブラシを使用していたのです。
1920年から1930年にかけて、人々は様々なブラシの使い方を発見していきます。
ブラシをスネアドラムにこすりつけて演奏するスタイルも、この頃に生まれました。
そして1930年代になると、人々はただのスティックの代用としてではなく、ブラシのサウンドそのものを求めてブラシを使うようになります。
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