ブルースにはどんな歴史があるの?
このような疑問にお答えする内容です。
今回はPart5として、戦前ごろに生まれたいろいろなスタイルのブルース(カントリーブルース・デルタブルース・アーバンブルース・シティブルース・ビッグバンドブルース・ジャンプブルース)について解説します。
Part1:名前の語源・ルーツの音楽編
Part2:ブルースの音楽的な特徴編
Part3:始まりから1930年頃編
Part4:戦前のブルース編
Part5:いろいろなスタイルのブルース編
Part6:1950年代のブルース編
Part7:1960~1970年代のブルース編
Part8:1980年代から現在編
Part9:他ジャンルとの関係性編
カントリーブルース
カントリーブルースは、ブルースにおける最も古いスタイルの1つで、1900年代初期に誕生しました。
主に即興で演奏され、ソロボーカル+伴奏なしか、ソロボーカル+バンジョー・ギター(指弾き)などの伴奏だけで演奏されることが多いのが特徴。
こちらはアメリカ南部の農村で、1900年代初期に誕生しました。
Bo Carter、Jimmie Rodgers、Blind Lemon Jefferson、Lonnie Johnson、Tampa Red、Blind Blakeなどが有名です。
デルタブルース
デルタブルース(ミシシッピ)は、前述のスライドギター奏法を使ったギターの伴奏と、情熱的なボーカルが特徴的なブルースです。
楽器編成においては、ギターとハーモニカを使っていることが多いのが特徴です。
Robert Johnson、Charley Patton、Son Houseなどが有名です。
また、アメリカのブルースギタリスト・シンガーであるRobert Johnsonがアーバンブルースとルーラルブルース(都会のブルースと田舎のブルース)を合体させたスタイルを生み出しました。
彼は、デルタブルースにおいて非常に有名なギタリストの一人です。
メンフィスブルース
メンフィスブルースは、1920~1930年代にテネシー州メンフィスで発展したブルースです。
Menphis Jug BandやGus Cannon’s Jug Stompersなどのジャグバンドに影響を受けています。
(ジャグバンド:ジャグ=お酒の瓶を楽器として使ったバンド)
Frank StokesやSleepy John Estes、Robert Wilkins、Joe McCoy、Casey Bill WeldonやMenphis Minnieなどは、ウォッシュボード(洗濯板)やフィドル、カズーやマンドリンなど、普段はあまり使われない楽器を使って演奏していました。
アーバンブルース(シティブルース)
ブルースの人気が高まっていくと、ブルースのアーティストたちは徐々に地元のコミュニティを外れ、より多くの人に受け入れられるよう、多様性のある音楽を求められるようになりました。
これによって「アーバンブルース」が出来上がっていきます。
古典的なアーバンブルースやボードビル(寄席演芸)ブルースの女性シンガーは、Gertrude “Ma” Rainey、Bessie Smith、Lucille Boganの「ビッグ3」を中心に、1920年代に人気を集めていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=gkPCmIxv-3k
「アフリカ系アメリカ人女性初」「ブルースの母」
Mamie Smithはボードビル寄りのアーティストで、1920年に、アフリカ系アメリカ人として初めてブルースのレコードを発表しました。
彼女の2つ目のレコード「Crazy Blues」は、1ヶ月で75,000枚も売れました。
Ma Raineyは「ブルースの母」と呼ばれています。
(「ブルースの父」については、こちらのPart4で紹介しています)
「レース・レコード」であっても白人に人気だったシンガーたち
1920年になると、ボードビルシンガーのLucille Hegaminは、黒人女性として2番目にブルースのレコード「The Jazz Me Blues」を発表します。
また「Queen Victoria」や「Za Zu Girl」と呼ばれたVictoria Spiveyは、1926年にシンガーとしてのキャリアをスタートし、その後40年に渡り活躍します。
これらのレコードは、白人向けに売り出すレコードと区別するために「レース・レコード(Race Records、raceは「人種」という意味)」というラベルがつけられていました。
しかし、彼女たちのレコードは白人のリスナーにも買われていました。
彼女たちの音楽には、即興的なメロディーライン、普通は用いられない歌詞のインパクトや語勢に変化を加えるフレージング、ボーカルのドラマティックなシャウト・うめき声・悲しげなうなり声・嘆き悲しむような声が使われていました。
こういった音楽のおかげもあり、彼女たちはその後のジャズ、ブロードウェイミュージカル、1930年代~1940年代のトーチソング(失恋や片思いなどの感傷的なラブソング)、ゴスペル、ミスタップ、そしてロックンロールに影響を与えていきます。
アーバンブルースの男性アーティスト
一方、男性アーティストとしては、Tampa Red、Big Bill BroonzyやLeroy Carrなどが人気でした。
Tempaは「ギターの天才」と呼ばれていました。
ブギウギとアーバンブルース
ブギウギは、1930年代〜1940年代前半のアーバンブルースから誕生した、重要な音楽スタイルの一つです。
アーバンブルースはソロピアノを用いることが多かった一方、ブギウギはシンガー(ソロパート)と小編成のコンボやバンドを使っていました。
ブギウギは、ベースにおいてオスティナート(あるパターンを長い間繰り返し続ける)やリフを使ったり、左手で調性を変えたり、コードを作り込んだり、右手で装飾音やトリルなどを演奏するなどの手法が見られます。
シカゴを拠点としたブギウギのパフォーマーClarence “Pine Top” SmithやEarl Hinesは、ラグタイムにおけるピアノの左手の動きと、ルイ・アームストロングのトランペットに見られるようなメロディーの動きを右手で演奏する」といった手法を使っていました。
ラグタイム↓
ビッグバンドブルース
ブルースにおける大きな発展の一つに、「ビッグバンドブルース」の誕生があります。
Bennie Moten OrchestraやJay McShann、Count Basie Orchestraなどが活躍しました。
Count Basie Orchestraによる12小節構成のブルース「One O’Clock Jump」や「Jumpin’ at the Woodside」、Jimmy Rushingによる「ブルース・シャウティング」が使われた「Going to Chicago」や「Sent for You Yesterday」などが有名です。
中でもビッグバンドブルースの楽曲で非常に有名なのは、Glenn Millerの「In the Mood」でしょう。
ジャンプブルース
1940年代になると、「ジャンプブルース」が発展します。
これはブギウギや、ビッグバンドミュージックから影響を受けた音楽です。
サックスやその他ブラス(金管楽器)、ジャジーな感じを出すためのリズム楽器として使うギター、そして朗読風のボーカルを、アップテンポなビートに乗せたスタイルです。
ジャンプブルースではLouis JordanやBig Joe Turnerが有名で、これらのアーティストの楽曲はのちのロックンロールやリズムアンドブルースに影響を与えました。
次回Part6はこちら↓
Part1:名前の語源・ルーツの音楽編
Part2:ブルースの音楽的な特徴編
Part3:始まりから1930年頃編
Part4:戦前のブルース編
Part5:いろいろなスタイルのブルース編
Part6:1950年代のブルース編
Part7:1960~1970年代のブルース編
Part8:1980年代から現在編
Part9:他ジャンルとの関係性編