音楽ジャンル解説

【音楽ジャンル】ブルースとは?【いろいろなスタイルのブルース編】

今回は英語版wikipediaが解説する「ブルース」をまとめました。

この記事ではPart5として、戦前ごろに生まれたいろいろなスタイルのブルース(カントリーブルース・デルタブルース・アーバンブルース・シティブルース・ビッグバンドブルース・ジャンプブルース)について解説します。

カントリーブルース

カントリーブルースは、ブルースにおける最も古いスタイルの1つで、1900年代初期に誕生しました。

主に即興で演奏され、ソロボーカル+伴奏なしか、ソロボーカル+バンジョー・ギター(指弾き)などの伴奏だけで演奏されることが多いのが特徴。

こちらはアメリカ南部の農村で、1900年代初期に誕生しました。

Bo Carter、Jimmie Rodgers、Blind Lemon Jefferson、Lonnie Johnson、Tampa Red、Blind Blakeなどが有名です。

1534 Jimmie Rodgers and Carter Family - In The Jailhouse Now and Wildwood Flower
Booster Blues
Lonnie Johnson - Another Night to Cry
It Hurts Me Too
New Louise Louise Blues
Blind Blake - Police Dog Blues
Blind Willie McTell - Country Blues, Ragtime & Piedmont Blues

デルタブルース

デルタブルース(ミシシッピ)は、前述のスライドギター奏法を使ったギターの伴奏と、情熱的なボーカルが特徴的なブルースです。

楽器編成においては、ギターとハーモニカを使っていることが多いのが特徴です。

Robert Johnson、Charley Patton、Son Houseなどが有名です。

Robert Johnson- Crossroad
Charley Patton - Spoonful Blues (Delta Blues 1929)
Son House "Death Letter Blues"

また、アメリカのブルースギタリスト・シンガーであるRobert Johnsonがアーバンブルースとルーラルブルース(都会のブルースと田舎のブルース)を合体させたスタイルを生み出しました。

彼は、デルタブルースにおいて非常に有名なギタリストの一人です。

The Man Who Sold His Soul to The Devil (Robert Johnson)

メンフィスブルース

メンフィスブルースは、1920~1930年代にテネシー州メンフィスで発展したブルースです。

Menphis Jug BandやGus Cannon’s Jug Stompersなどのジャグバンドに影響を受けています。
(ジャグバンド:ジャグ=お酒の瓶を楽器として使ったバンド)

MEMPHIS JUG BAND FULL VINYL (1927- 1934)
Cannon's Jug Stompers - Viola Lee Blues- 1928

Frank StokesやSleepy John Estes、Robert Wilkins、Joe McCoy、Casey Bill WeldonやMenphis Minnieなどは、ウォッシュボード(洗濯板)やフィドル、カズーやマンドリンなど、普段はあまり使われない楽器を使って演奏していました。

Frank Stokes - Downtown Blues
Drop Down Mama - "Sleepy" John Estes.
Rev Robert Wilkins - Prodigal Son
Kansas Joe McCoy and Memphis Minnie When the Levee Breaks - Famous 1927 Mississippi River Flood
Casey Bill Weldon - Blues Everywere I Go (1937)
Memphis Minnie - Hoodoo Lady Blues

アーバンブルース(シティブルース)

ブルースの人気が高まっていくと、ブルースのアーティストたちは徐々に地元のコミュニティを外れ、より多くの人に受け入れられるよう、多様性のある音楽を求められるようになりました。

これによって「アーバンブルース」が出来上がっていきます。

古典的なアーバンブルースやボードビル(寄席演芸)ブルースの女性シンガーは、Gertrude “Ma” Rainey、Bessie Smith、Lucille Boganの「ビッグ3」を中心に、1920年代に人気を集めていきます。

Gertrude 'Ma' Rainey - Ma Rainey's Black Bottom
Bessie Smith - Nobody Knows You When You're Down and Out (Official Audio)
Till the Cows Come Home

「アフリカ系アメリカ人女性初」「ブルースの母」

Mamie Smithはボードビル寄りのアーティストで、1920年に、アフリカ系アメリカ人として初めてブルースのレコードを発表しました。

彼女の2つ目のレコード「Crazy Blues」は、1ヶ月で75,000枚も売れました。

Mamie Smith - Crazy Blues (1920)

Ma Raineyは「ブルースの母」と呼ばれています。

「ブルースの父」については、こちらのPart4で紹介しています

「レース・レコード」であっても白人に人気だったシンガーたち

1920年になると、ボードビルシンガーのLucille Hegaminは、黒人女性として2番目にブルースのレコード「The Jazz Me Blues」を発表します。

born Nov.29, 1894 Lucille Hegamin "Jazz Me Blues"

また「Queen Victoria」や「Za Zu Girl」と呼ばれたVictoria Spiveyは、1926年にシンガーとしてのキャリアをスタートし、その後40年に渡り活躍します。

これらのレコードは、白人向けに売り出すレコードと区別するために「レース・レコード(Race Records、raceは「人種」という意味)」というラベルがつけられていました。

しかし、彼女たちのレコードは白人のリスナーにも買われていました。

彼女たちの音楽には、即興的なメロディーライン、普通は用いられない歌詞のインパクトや語勢に変化を加えるフレージング、ボーカルのドラマティックなシャウト・うめき声・悲しげなうなり声・嘆き悲しむような声が使われていました。

こういった音楽のおかげもあり、彼女たちはその後のジャズ、ブロードウェイミュージカル、1930年代~1940年代のトーチソング(失恋や片思いなどの感傷的なラブソング)、ゴスペル、ミスタップ、そしてロックンロールに影響を与えていきます。

アーバンブルースの男性アーティスト

一方、男性アーティストとしては、Tampa Red、Big Bill BroonzyやLeroy Carrなどが人気でした。

Tempaは「ギターの天才」と呼ばれていました。

Tampa Red - It Hurts Me Too
Big Bill Broonzy 1957: 3 Songs
LEROY CARR - HOW LONG BLUES

ブギウギとアーバンブルース

ブギウギは、1930年代〜1940年代前半のアーバンブルースから誕生した、重要な音楽スタイルの一つです。

アーバンブルースはソロピアノを用いることが多かった一方、ブギウギはシンガー(ソロパート)と小編成のコンボやバンドを使っていました。

Meade Lux Lewis - Low Down Dog
Louis Jordan - Caldonia - 1946
Louis Jordan Reet, Petite, And Gone
Jerry Lee Lewis - Boogie Woogie Country Man

ブギウギは、ベースにおいてオスティナート(あるパターンを長い間繰り返し続ける)やリフを使ったり、左手で調性を変えたり、コードを作り込んだり、右手で装飾音やトリルなどを演奏するなどの手法が見られます。

シカゴを拠点としたブギウギのパフォーマーClarence “Pine Top” SmithやEarl Hinesは、ラグタイムにおけるピアノの左手の動きと、ルイ・アームストロングのトランペットに見られるようなメロディーの動きを右手で演奏する」といった手法を使っていました。

1929 HITS ARCHIVE: Pine Top’s Boogie Woogie - Pine Top Smith
Memories of you - Earl Hines.1965

ラグタイム

The Entertainer by Scott Joplin | Cory Hall, pianist-composer
Maple Leaf Rag by Scott Joplin | Cory Hall, pianist-composer (older version)

ビッグバンドブルース

ブルースにおける大きな発展の一つに、「ビッグバンドブルース」の誕生があります。

Bennie Moten OrchestraやJay McShann、Count Basie Orchestraなどが活躍しました。

Count Basie Orchestraによる12小節構成のブルース「One O’Clock Jump」や「Jumpin’ at the Woodside」、Jimmy Rushingによる「ブルース・シャウティング」が使われた「Going to Chicago」や「Sent for You Yesterday」などが有名です。

One O'Clock Jump - Count Basie
Show of the Week - Count Basie and his Orchestra (1965)
Going To Chicago Jimmy Rushing
Sent For You Yesterday

中でもビッグバンドブルースの楽曲で非常に有名なのは、Glenn Millerの「In the Mood」でしょう。

Glenn Miller - In The Mood [HQ]

ジャンプブルース

1940年代になると、「ジャンプブルース」が発展します。

これはブギウギや、ビッグバンドミュージックから影響を受けた音楽です。

サックスやその他ブラス(金管楽器)、ジャジーな感じを出すためのリズム楽器として使うギター、そして朗読風のボーカルを、アップテンポなビートに乗せたスタイルです。

ジャンプブルースではLouis JordanやBig Joe Turnerが有名で、これらのアーティストの楽曲はのちのロックンロールやリズムアンドブルースに影響を与えました。

Louis Jordan & His Tympany Five - Caldonia (Live)
Shake, Rattle and Roll

次回Part6はこちら↓


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