【音楽ジャンル】ヒルビリーミュージックとは?歴史も解説

【音楽ジャンル】ヒルビリーミュージックとは?歴史も解説
ヒルビリーミュージックって何?
カントリーミュージックと関係あるみたいだけど、何が違うの?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

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ヒルビリーミュージックとは?

ヒルビリーミュージックとは、20世紀前半からアメリカの田舎(アパラチアン山脈付近)で演奏されていた音楽のことです。

「ヒルビリー」という言葉自体が「田舎者」などの差別的な意味合いで使われることがあったため、ヒルビリーミュージックは次第に「アパラチアンミュージック」「マウンテンミュージック」と呼ばれるようになり、現在では「カントリーミュージック」と呼ばれるようになりました。

Jean Ritchie – Hangman (American folk song)
String Bean – Hillbilly Music Goin' Round (1950s)
Cluck Old Hen (1927) The Hillbillies

ヒルビリーミュージックで使われる楽器

ヒルビリーミュージックは、現在のブルーグラスやカントリーミュージックで使われている楽器と共通しています。

・アコースティックギター

・アコーディオン

・バンジョー

・マンドリン

・ペダルスティールギター(Pedal Steel Guitar)

・ジター(Zither)

・ウォッシュボード(Washboard)

・ドラム

・ドブロ(Dobro)

Fisher's Hornpipe – Dobro – 120 BPM

・ダルシマー

I'll Fly Away, played on mountain dulcimer by David Durrence

ヒルビリーミュージックで使われる楽器参考サイト

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「ヒルビリー」という名前の意味

ヒルビリーとは、「田舎者」「田舎っぺ」など、少し差別的な意味合いがある言葉です。

もともとアメリカの田舎の人たちを中心にやっていた音楽だったので、ヒルビリーミュージックは「田舎者がやってる音楽」という認識でした。

ちなみに地域で言う「ヒルビリー」は、アメリカ南部の田舎、アパラチア山脈やオザーク高原付近を指します。

「ヒルビリーミュージック」という言葉の誕生

ヒルビリーミュージックは、かつてはカントリーミュージックとしてよく知られていた”ラベル(言葉)”です。

1925年にピアノストのAl Hopkinsによってこの言葉が作られ、1950年まで続いていました。

「ヒルビリーミュージック」のカテゴライズは、ブルーグラス、カントリー、ウエスタン、ゴスペルなど、多岐に渡ります。

アパラチアンフォークソングは、「ヒルビリー」というラベルより前にすでに存在していました。

のちに市場が「伝統的なアパラチアンフォークソング」を取り扱い始め、手を組みはじめたところで「ヒルビリーミュージック」が誕生します。

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20世紀初期:「ヒルビリー」が広まり始める

20世紀初期、アーティストたちは”ヒルビリー”というラベルを利用しはじめます。

OKeh RecordsのレコーディングディレクターRalph Peerは、バージニア(アメリカ南東部)に行ってこの音楽をレコーディングしたとき、この言葉が南部の人々すべてに使われていると知ると、それ以降この言葉はどんどん広まっていきました。

The York Brothersは楽曲の一つに「Hillbilly Rose」という名前をつけ、the Delmore Brothersは「ヒルビリーブギ」を推し始めました。

LES YORK (from The York Brothers) You Get Mad (1956)
Hillbilly Rose
Delmore Brothers – Hillbilly Boogie

1927年ごろ:白人リスナーにも広まり始める

1927年になると、インディアナ州リッチモンド(アメリカ中西部)にあるGennett Studiosが、黒人フィドル奏者Jim Bookerのレコーディングを行います。

そしてその時の曲には”Made For Hillbilly”というラベルを使い、白人のリスナーにも売り出し始めました。

Taylor's Kentucky Boys – Grey Eagle

また、Columbia RecordsはAl HopkinsやFiddlin’ Charlie Bowmanなどの「ヒルビリーズ」とともに大きな成功を遂げていきました。

Ride That Mule (1927) Charlie Bowman & the Hillbillies

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1940年代後半:ラジオ局もヒルビリーミュージックを使い始める

1940年代後半になると、ラジオ局も”ヒルビリーミュージック”のラベルを使い始めます。

もともと「ヒルビリー」はフィドル奏者やストリングスバンドに対して使われていた言葉でしたが、今では伝統的なアパラチアンミュージックを指す言葉として使われています。

アパラチアンの人たちは、自分たちの曲に対してこの言葉を使うことはありませんでした。

また、ヒルビリーとアフリカ系アメリカ人の音楽両方の特徴を備えたポピュラーソングは、「ヒルビリーブギ」「ロカビリーブギ」と呼ばれていました。
ロカビリー:ロックンロール+ヒルビリー

ヒルビリーブギ

Hillbilly Boogie

ロカビリーブギ

ROCKABILLY BOOGIE – ROBERT GORDON

エルヴィス・プレスリーはロカビリーのプレイヤーとして有名で、最初の頃は「ヒルビリーキャット」として知られていました。

Elvis Presley – Jailhouse Rock (Music Video)

1958年にカントリーミュージック協会が設立されると、「ヒルビリーミュージック」は徐々に使われなくなっていきます。

音楽業界がヒルビリーミュージック、ウエスタンスイング、カウボーイミュージックをまとめて「C&W(カントリーアンドウエスタン)」という名前にまとめるようになったのです。

Hank Williamsなど、一部のアーティストとそのファンたちは「ヒルビリーミュージック」という言葉が使われることを嫌っていました。

最近では頻繁に使われることはなくなりましたが、オールドタイムミュージックやブルーグラスなどのジャンルにおいては、この言葉が使われることもあります。

たとえば、「WHRBブロードキャスト」では、「Hillbilly at Harvard」というタイトルの人気番組があります。

この番組はオールドタイムミュージックやブルーグラス、伝統的なカントリー&ウエスタンの楽曲をミックスして放送しています。

Hillbilly At Harvard 7 11 15

以上でヒルビリーミュージックの解説は終了です。

ちなみに今回の話にも出てきた「アパラチアンミュージック」「カントリー&ウェスタンミュージック」「ブルーグラス」「ヒルビリーブギ」については、こちらでまとめています↓

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