楽器解説

【音楽史】ドラムの歴史 Part10【ビーバップとライドシンバル】

ドラムってどんな歴史があるの?
昔のドラムってどんな感じだったんだろう?

このような疑問にお答えする内容です。

ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。

今回はPart10として、ビーバップとライドシンバルの歴史を中心に振り返ります。

1941年ごろのドラマーは「さらなる高み」を目指していた

これまでは、ジャズはダンスミュージックの1つとして考えられていました。

しかし、この頃から少しずつ新しい考え方が生まれてきます。

多くのジャズミュージシャン(特にアフリカ系アメリカ人)たちは、ただ踊る人たちのために演奏することよりも、もっと大事なことがあるのではないかと考えるようになりました。

これは、必ずしもミュージシャンたちが満足できるものではなかったからです。

彼らは、もっと演奏して、もっと経験を積んで、もっとジャズを推し出したい、そう思っていました。

「ビーバップ」の誕生

そこに現れたのが、ビーバップです。

1940年初期、「ビーバップ」とよばれる、即興をベースにしたスタイルが生まれました。

ミュージシャンたちは昔のスタンダードであったスタイルを利用し、メロディーをリライトするなどして、音楽をより複雑にし始めたのです。

Giant Steps
Art Blakey & the Jazz Messengers - Moanin'
Herbie Hancock - Cantaloupe Island
Yardbird Suite

初期ビーバップにおいては、Mad RoachやKenny Clarkなどのドラマーが有名です。

彼らは両方ともスイングドラマーでしたが、その時はまだマーチングドラムのように大きなバスドラムが使われており、低音が非常に大きくブーンと鳴ることにうんざりしていました。

Max Roach: DRUM SOLO - 1990 #maxroach #drummerworld
Kenny Clarke Bebop

ライドシンバルを使い始める

大きなバスドラムと「ブーン」と大きく鳴る低音にうんざりしていたドラマーたちが考えたのが、「より小さなバスドラムを使う+さらに小さなシンバルを使う+逆により大きなシンバルを使う」という考え方です。

「小さなシンバル」というのは、現代のスプラッシュシンバルのようなシンバルです。

「より大きなシンバル」は、今で言う「ライドシンバル」と呼ばれるものにあたります。

これらのシンバルをタムやバスドラム、ハイハットなどの上に置くようになりました。

このように新たな楽器を付け加えることで、よりメロディックなドラムになると考えたのです。

Kenny Clarke Bebop
Buddy Rich | Caravan

このスタイルは、やがて「ビーバップ」というスタイルそのものを確立するものになりました。

ドラマーたちは、ただ「人々を踊らせるためのドラム・音楽」ではなく、「芸術」としてドラムを叩くようになったのです。

ビーバップスタイルのドラミング↓(3:12~)

History of the Drumset - Part 10, 1941 - Bebop

ビーバップドラミングの特徴

前述の通り、ビーバップ時代のドラマーたちは、以前のドラムスタイルをベースとし、ただリズムを刻むだけではなく、よりメロディックに、複雑に演奏したいと考えていました。

では、以前と比べてドラミングはどのように変わっているでしょうか?

実際に演奏して聴き比べてみましょう。

まず、スイング時代のドラミングはこちら。

バスドラムは四つ打ちで、メロディーは「まぁまぁ掴める」という感じです。

4:40~5:00

History of the Drumset - Part 10, 1941 - Bebop

これに対し、ビーバップスタイルのドラミングを見てみましょう。

バスドラムはより小さいものになり、シンバルはライドシンバルを含む大きなものから小さなものまであります。

スネアはヘッドをキツめに締めてあります。

5:40~5:57

History of the Drumset - Part 10, 1941 - Bebop

このように、ビーバップではドラムによりたくさんの種類の楽器を使うことで、ドラマーがメロディーラインを奏でることができたのです。


つづきのPart11はコチラ


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