【音楽史】スピリチュアルって、どんな音楽?【概要編】

【音楽史】スピリチュアルって、どんな音楽?【概要編】
「スピリチュアル」って、どんな音楽?
どんな音楽ジャンルと関係があるの?

 

このような疑問にお答えする内容です。

 

今回は英語版wikipediaの「スピリチュアル」について、かんたんにまとめてみました。

 

今回はPart1として、「スピリチュアルとは何か?」と、スピリチュアルを語る上で欠かせない「Jubilee Singers」についてご紹介します。

 

Part2: スピリチュアルの歴史と奴隷制度との関係

 

おそらくほとんどの人が「スピリチュアル」と聞くと「占い」「タロット」といったイメージを持つと思いますが、実はそれとは関係なく、音楽ジャンルとして「スピリチュアル」というものがあります。

あまり知られていない音楽ですが、アメリカにおける奴隷制度と非常に強く結びつきがあり、のちの音楽の発展に非常に重要な役割を果たした音楽ですので、ぜひこの機会に理解を深めてみてください。

 

スポンサードサーチ

「スピリチュアル」って?

 

音楽における「スピリチュアル」とは、アメリカでアフリカ系アメリカ人によって作られた、ボーカルを主軸とした音楽のことです。

キリスト教の価値観を伝えつつも、アメリカの奴隷制度(黒人がまだ奴隷として扱われていた時代だったので)に関する苦難も交えて歌われており、これは口伝で伝わってきました。

 

ネグロ・スピリチュアル(Negro Spirituals)、スピリチュアルミュージック、アフリカンアメリカンスピリチュアル、サロウ・ソング(Sorrow Songs、Sorrowは悲しみ・悲痛という意味)という名前で呼ばれることもあります。

もともとは伴奏なしのユニゾン(ハーモニーなし)で歌われていましたが、のちにハーモニーを交えたコーラスアレンジに発展していきました。

 

Fisk Jubilee Singers – Steal Away to Jesus

 

なぜ「スピリチュアル」という名前?

 

「スピリチュアル」という言葉は、欽定訳聖書(イングランドの国王キング・ジェームズの命令で1611年に刊行された英訳聖書)に書かれた文章「讃美歌や聖歌、宗教の曲(Spiritual Songs)で自分自身に語りかけ、主に向かって心の中で歌い、メロディーを作る」から来ています。

 

スポンサードサーチ

どんな音楽から影響を受けた?

 

Work Songs(アフリカ系アメリカ人奴隷などが、仕事中・作業中に歌ったもの。仕事の効率化のためや、辛さを紛らわすためなどに歌われた)、Field Holler、アフリカ音楽、イスラム音楽、キリスト教讃美歌などから影響を受けています。

 

どんな音楽に影響を与えた?

 

ブルースやゴスペルに大きく影響を与えています。

 

スポンサードサーチ

フィスク大学の”Jubilee Singers”

 

スピリチュアルを語る上で欠かせないのが「Jubilee Singers」です。

 

1850年代、アメリカのチョクトー(アメリカ南東部)にあるスペンサーアカデミーの部長だったAlexander Reidは、アフリカのチョクトーで奴隷にされていたアフリカ人数人を雇い、彼らを学校で働いてもらうようにしました。

 

Reidは、雇った彼らのうち2人、Wallece WillisとMinerva Willisが、彼らが作曲したとみられる宗教音楽を歌っているところを耳にします。

彼らが歌ったとされるのは、「Swing Low」「Sweet Chariot」「Steal Away to Jesus」「The Angles are Coming」「I’m a Rolling」「Roll, Jordan, Roll」などの楽曲です。

 

のちにReidはナッシュビル(テネシー州)のフィスク大学で、アフリカ系アメリカ人シンガーのグループが行った音楽プログラムに参加します。

彼らは当時のポピュラー音楽を中心に歌っており、Reidがチョクトーにいた時に聞いた曲がぴったりなのではないかと考え始めます。

そしてReidと彼の妻は、Reidが雇った前述の2人、Willisたちの曲を録音し、フィスク大学に送ります。

 

Swing Low Sweet Chariot – Fisk Jubilee Singers (1909)

 

The Jubilee Singersは、1871年の宗教会議で昔の捕虜の歌を歌い、彼らの初舞台を行います。

これらの楽曲は1872年に刊行された「Jubilee Songs as Sung by the Jubilee Singers of Fisk University」という本に掲載されています。

 

Fisk Jubilee Singerは、フィスク大学の資金を集めようとヨーロッパやアメリカなどで数々のコンサートを行い、アフリカンアメリカンスピリチュアルは非常に人気を集めます。

この際、合唱プログラムにいた学生の何人かをコンサートに行かせたといいます。

 

このコンサートは大盛況でスピリチュアルは人気となりましたが、この際に歌われたのは白人系・ヨーロッパのスタイルのスピリチュアルでした。

時を経て、Jubilee Singersは熟練のミュージシャンによって構成され、パフォーマンスするようになります。

「ちゃんとした昔のやり方だ」と評価した人もいた一方、本来のスピリチュアルの要素がないと批判する人もいました。

 

Fisk Jubilee Singers – Wade In the Water

 


【音楽史】スピリチュアルって、どんな音楽?【歴史編】