DTMのコンプレッサー「VCA」「Opto」「FET」「Delta-Mu」の違いは? Part2
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- 2021.10.05
- ミキシング・マスタリング
- ミキシング, マスタリング

今回はこのような疑問にお答えする内容です。
世界的に有名なプラグイン・ソフトウェアを開発しているiZotope社が解説する「アナログコンプレッサーの4つタイプの違い」をまとめてみました。
今回はPart2として、今回は「FET」と「Delta-Mu」の解説、解説者による「まとめ」をまとめています。
元記事は「アナログコンプレッサー4種類についての解説」となっていますが、ソフトウェアでもアナログコンプレッサーをモデルにしたものがありますので、ここをおさえておくとかなり便利です。
以前の別記事でもこれらの内容を解説しましたが、今回はより科学的・工学的なところまで深掘りした内容です。
↓Part1「VCA」「Optcal」の特徴と使いどころ
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FETコンプ
「FET」は「Field Effect Transistor」という意味です。
「Transistor(トランジスタ)」とは、かんたんに言うと、ダイヤル(ツマミ)の設定によって信号を増幅・減衰させることができる半導体のことです。
(「トランジスタ」は「トランスミッター」と「レジスタ」の混成語です)
FETとVCAの違いは?
多くの人が「FETとVCAの違いは何?」と思っていると思います。
実際、それらを区別するのは難しく、FETとVCAはサブセットとして扱うべきだと言う人もいます。
しかし、この2つにはトランジスタに基本的な違いがあります。
VCAコンプでは、トランジスタがICの中に組み込まれており、入力信号の電圧に反応します。
一方FETコンプは、全体として「電界」ではたらきます。
ゲインの変化は、電圧に加えた電荷の結果なのです。
FETとVCAのどちらを使う?
この説明もややこしいと感じるかもしれませんが、FETとVCAのどちらを使うかを選択するのは重要なことです。
FETコンプ(特にUREI 1176)は世界で最も広く使用されているからですね。
1176のようなFETコンプは、非常に速いAttack Timeにすることが可能です。
僕はマスタリングに使うのは避けますが、ドラムやギターに重ねて使うことがあります。
「feed-back」と「feed-forward」って何?
VCAコンプの中には、API 2500やMaster Buss Processor(Rupert Neve Designs社)のように、 feed-backとfeed-forwardを切り替えることができるものがあります。
画像:API 2500(https://www.uaudio.jp/uad-plugins/compressors-limiters/api-2500-bus-compressor.htmlより)
(「TYPE」ボタンで、Newモード=feed-forwardモードとOldモード=feed-backモードに切り替えられます)
画像:Master Buss Processor(https://rupertneve.com/products/master-buss-processorより)
(オレンジのボタンの中に「FF」と「FB」と書いてあるボタンがあります。これが切り替えスイッチです)
しかしこの feed-back・feed-forwardとは、なんでしょうか?
アナログコンプでは、信号は検出器(ディテクター)とオーディオの2つに分けられます。
feed-forwardコンプでは、検出器はエフェクトがかかる信号と同じ信号を受け取ります。
一方feed-backコンプでは、回路はコンプレッサーがすでにかかっている信号を受け取ります。
つまり、エフェクトがかかるときには、すでにコンプレッサーのかかった信号を読み取ることになるのです。
これにより、もちろんコントロールは可能ですが、よりスムーズなコンプレッションが望めます。
Delta-Muコンプ
Monleyが“Vari-Mu”で商標登録し、由緒ある”Fairchild”で見られる「Delta-Mu」コンプは、「チューブ」に依存するタイプのコンプです。
画像:Vari-Mu(https://media.uaudio.comより)
画像:Fairchild(https://media.uaudio.comより)
つまり、再バイアスされたチューブが、「ゲインの減少の量とタイミングを知っているメカニズム」となるのです。
Delta-Muコンプのはたらきかた
では、これはサーキットでどのように動くものなのでしょうか?
このコンプレッサーでは、コンプレッサーに送られる信号の量が増えるほど、実際にチューブのグリッドに送られる量が減り、最終的に全体のレベルが下がるのです。
言い換えると、チューブはゲインリダクションの「メインエンジン」となるのです。
OpticalコンプであるLA-2Aなどでは、チューブはそれ自身の構造に組み込まれていますが、ダイナミクスを抑えるためにチューブに頼るといったことはしないのです。
もちろんこれはかなり簡略化した説明ですので、他にもいろいろなことが内部で起きています。
Delta-Muコンプ 音の特徴
このコンプを使った音を表現する言葉としては、「なめらか」「厚い」「クリーミー」の3つが挙げられます。
これは、チューブ回路の質から来ています。
この「質」には、たとえばチューブの心地よい歪みなどが挙げられます。
このようなコンプレッサーは、不必要な加工音が作られる前に、かなりの量のゲインリダクションの量を操作することができるのです。
また、「グルー(くっつける)」Mix Busに使うのが最適です。
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各コンプの「見た目」の違い
また別の視点から考えると、面白い点が見受けられます。
VCA以外のコンプは、それぞれモデルがあります。
だいたい1~2のツマミ(コントローラ)がありませんが、モデルによってどのコントロールがないのかは異なります。
たとえばLA-2AやLA-3Aなど、多くのOpticalコンプにはAttackのツマミがありません。
1176など、FETコンプにはThresholdのパラメータはありません。
FairchildやVair-Muなど、Delta-MuコンプにはRatioのツマミがありません。
VCAコンプのみ、基本的には全てのコントロール(ツマミ)がそろっています。
もちろん、例外もあります。
たとえばソフト・ハードどちらにおけるオプトコンプでも、Attack/Releaseが調節できるものもあります。
しかしあなたがまだなじみのないDAWに付属しているコンプを見た時、これまでに説明したような特徴が見受けられるはずです。
そのときは、そこにないコントロール(ツマミ)を把握することで、手っ取り早く「これから何をするべきか?」がわかるようになります。
まとめ
ここまでいろいろと解説をしてきましたが、「電光セル(フォトセル)がどのようにはたらくのか?」などは知らなくても大丈夫です。
しかし、この世にあるあらゆるコンプレッサーがこの基本にもとづいているので、コンプレッサーについての基本的なこと知るのは、非常に大切です。
多くのエンジニアが、「ボーカルにはFETやOpticalコンプを使う」と決めていたり、「ドラムのバスにはまとまりをつくったりピシャっと叩いた感を出すためにVCAコンプを積極的に使う」と決めていたりします。
それぞれに特質があり、エンジニアとしてはそれらを理解する必要があります。
その特質や音を理解することは、より早く理想の音にたどり着くための助けとなります。
特に、あまりなじみのない環境でコンプを使うことになったときに役立つでしょう。
↓Part1はコチラ
↓別のエンジニアが解説する、Logic付属コンプの特徴と使い方
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