音楽ジャンル解説

【音楽ジャンル】ビッグバンドとは?【概要編】

ビッグバンドって、どんな音楽?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

今回はPart1として、ビッグバンドの概要と、音楽的な特徴(編成やアレンジの仕方)について解説していきます。

誰もが一度は聞いたことがあるであろう音楽ですが、その詳細についてはあまり知らない方も多いでしょう。

こちらのシリーズを読むと作曲の引き出しが増えますので、ぜひ最後までご覧ください!

ビッグバンドとは?

ビッグバンド(Big Band)は、ジャズにおけるアンサンブルの型の一種で、ジャンルの名前にもなっています。

ビッグバンドと言えば、Benny Goodmanの「Sing, Sing, Sing」やGlen Millerの「In The Mood」が有名です。

"SING, SING, SING" BY BENNY GOODMAN
Glenn Miller - In The Mood [HQ]

ビッグバンドは1910年代最初にできたスタイルですが、スイング(Swing)が最も人気であった1940年代のジャズ業界を斡旋しました。

もともとはダンスの伴奏として始まりましたが、典型的なジャズに見られる「即興」を強調するスタイルとは裏腹に、ビッグバンドでは作曲・編曲された楽曲を演奏するのが特徴です。

これにより、ソリストよりも「バンドリーダー」「アレンジャー」「楽器のセクション」といった役割を担う人々がより「いいポジション」とされています。

50 Big Bands. Swing Dance (Full Album/Álbum Completo) Vol. 1

ビッグバンドの楽器編成


画像:wikipediaより

主に10人かそれ以上のプレイヤーで構成され、「サックスセクション」「トランペットセクション」「トロンボーンセクション」「リズムセクション」の4つのセクションで成り立っています。

リズムセクションには、ピアノ、ギター、ダブルベース(コントラバス)、ドラムが含まれます。

時代によって違うビッグバンドの編成

初期のビッグバンドにおいては、このような編成が一般的でした。

トランペット:2~3本
トロンボーン:1~2本
サックス:3本
リズムセクション

1930年になると、このような編成が一般的になります。

トランペット:3本
トロンボーン:3本
サックス:3本
リズムセクション:楽器4つ

また、ギターはバンジョーに、ダブルベースはチューバに置き換えられるようになります。

1940年になると、Stan KentonのバンドやWoody Hermanのバンドが、以下のような構成を採用し始めます。

トランペット:5本
トロンボーン:4本(テナー3本、バス1本)
サックス:5本(アルト2本、テナー2本、バリトン1本)
リズムセクション

ただし例外として、Duke Ellingtonのバンドではトランペットを6本使っていることがあります。

他の楽器が使われることもある

ほとんどのビッグバンドでは、それまでの一般的なジャズで使われていたクラリネットを編成から外していました。

しかし、Artie ShawやBenny Goodmanのバンドではクラリネットをメインとした楽曲もあり、多くのDuke Ellingtonの楽曲では、クラリネットが使われています。

Duke Ellingtonのクラリネットがいる編成↓

The Mooche - Duke Ellington and his Orchestra

Duke Ellingtonは、テナーサックスをクラリネットに置き換えるか、両方使うという編成でした。

回数は少ないですが、Duke Ellingtonはバリトンサックスをバスクラリネットで代用することもありました(「Ase’s Death」などの楽曲で見られます)。

Duke Ellington - Ase's Death

またBoyd Raeburnは、フルートやフレンチホルン、バイオリンやティンパニといった交響楽団で使われる楽器を入れることもありました。

ビッグバンドの楽曲構成の特徴

ビッグバンドの楽曲のアレンジの特徴として、「有節歌曲形式(ゆうせつかきょくけいしき、Strophic form)」が挙げられます。

これは、同じフレーズを何度も用いつつ、同じコード進行を何回も続けるという楽曲構成を指します。

これにはいろいろな呼び名があり、「コーラス(サビ)形式」「バース(Aメロ)-リピート形式」「AAA楽曲形式」「1パート楽曲形式」などがあります。

繰り返し1回を「節」と呼びますが、最近では「1番・2番・3番」という言い方が定着しています。

ジャズの場合、最初の1コーラスはメロディーを伴い、次は1番をどんどん発展させていくスタイルが一般的です。

有名な楽曲には、シューベルトの「野ばら」や滝廉太郎の「荒城の月」などがあります。

Franz Schubert - Heidenröslein (Sheet music and lyrics)
荒城の月/見やすい歌詞字幕付き フルver(1番~4番) 作曲:瀧 廉太郎 編曲:山田 耕筰 作詞:土井 晩翠

これに加え、ジャズの場合はソロパートを入れたり、ソロで即興をしたり、「シャウトコーラス」するなどがあります。

シャウトコーラス(アウトコーラス)とは?

ジャズにおいて、最後のサビをよりエネルギッシュに、元気に、エキサイティングにするアレンジの仕方のことを「シャウトコーラス(アウトコーラス)と言います。

「クライマックスが来た」という印象を持たせるのが特徴で、ダイナミクスを激しくしたり、トゥッティを使ってドラマチックな演出をします。

時には、対位法を使ったメロディーラインを用いたり、ブラスセクションとサックス(もしくはアンサンブルとドラマー)でコールアンドレスポンスをしたりすることもあります。

シャウトコーラスのとき、ブラスセクションのプレイヤーはフォールやドゥイット、ターン、シェイクなどの奏法を使うことが多いです。

シャウトコーラスの例1(6:03~)

Backrow Politics - Gordon Goodwin's Big Phat Band

シャウトコーラスの例2(1:53~)

I Don't Wanna Be Kissed (By Anyone But You)

シャウトコーラスの例3(2:28~)

The Duke

ターン

Let's Talk Trumpet: Three Quick Tips for 'Turns' in Jazz!

フォール(1:10~)

Trumpet Sound Effects (4): The Fall

シェイク(1:02~)

How To Shake/Lip Trill On The Trumpet | Lead Trumpet Exercises

ドゥイット(1:16~)

Trumpet Sound Effects (5): The Doit

ビッグバンドにおける前奏と間奏の特徴

1番が始まる前に前奏がある場合もありますが、数小節程度しかないなど、通常のポップスに比べると少ないことがあります。

多くの楽曲では間奏がありますが、これはイントロと似ていたり、1番と2番の間、もしくは全コーラスの間に入っていることもあります。

ビッグバンドのにおけるアレンジ+即興の特徴

King Oliverのバンドのような大編成の場合は、半分は既にアレンジ済みにしておき、半分は即興にしてあることもあります。

この場合、アレンジされた部分はリハーサルの時にバンドメンバーによって作られています。

そのため、リハーサルの時に試行錯誤しつつその場でフレーズを記憶し、楽譜に書き留めておくことなくステージ上で披露できるレベルにしているのです。


以上で「概要編」の解説は終了です。

続き「ビッグバンドの歴史」はこちら↓


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