今回は、Sage Audioが解説する「ボーカルミックスの最終ステージ」をまとめました。
ボーカルミックスでよくあるのが、ボーカルがインストに埋もれてしまって聞こえづらいという問題です。
ボーカルが聞こえづらいからと言ってボーカルの音量を上げてしまうと、バランスが悪くインストが小さく聞こえてしまう。
かと言ってボーカルの音量を下げると、インストに埋もれて聞こえづらくなる…
このようなジレンマを抱えている方のために、埋もれない・抜けがいいボーカルミックスのコツを3つ解説します!
埋もれない・抜けがいいボーカルミックスのやり方 コツ1つ目
コツ1つ目は、ボーカル全体とインスト全体のラウドネスを同程度にする方法です。
こちらの論文「Intelligent Audio Production Strategies Informed by Best Practices」では、プロによってミックスされた928曲を分析した結果、次のような結論が出ています。
「平均して、ボーカル全体の音量はインスト全体のラウドネスと同等である」
例えばインストだけで聞いたときのラウドネスが-19 LUFSだった場合は、ボーカルだけで聞いたときのラウドネスも-19 LUFSにすると、よりプロのミックスに近づけるということになります。

ボーカルとアコギの2本だけで作った曲であれば、ボーカルとアコギのラウドネスが等しくなるのが理想です。
バンド編成の楽曲であれば、ボーカルをその他の楽器すべて(ギター・ベース・ドラム等)のラウドネスと等しくなるようにします。

ボーカルとインストのラウドネスのチェックの仕方
ボーカルとインストのラウドネスをチェックするには、それぞれ専用のBusトラックを作成するのがおすすめです。

各ボーカルトラック:出力をBusトラック「Vocal Bus」に設定する
各インストトラック:出力をBusトラック「Inst Bus」に設定する
(Vocal BusとInst Busのそれぞれの出力はStereo Outなど、1つにまとめる)
そして、Vocal BusとInst Busにそれぞれラウドネスメーターを追加し、各Busのラウドネスがそれぞれ同じ数値になるように調整します。
もちろんジャンルによってボーカルが大きめor小さめの方がいいなどの傾向はありますが、基本的にはこのセオリーに沿うとバランスのいいミックスにすることができます。
埋もれない・抜けがいいボーカルミックスのやり方 コツ2つ目
コツ2つ目は、3rdフォルマントに対してサイドチェインをかけて増幅させる方法です。
この方法を使うと、以下のような効果を出すことができます。
例えば「Aメロではボーカルが埋もれていないのにサビになると埋もれてしまう」というときがあります。
これは、Aメロではまだ楽器や音の数が少なる、ボーカルがはっきり聞き取りやすくなる3rdフォルマント(2k~5kHz)に被っている音が少ない(あるいはない)ためです。

上記画像のうち、緑の部分が3rdフォルマントにあたる部分です。
サビになるといろいろな楽器が一斉に演奏するため、他の楽器がボーカルの3rdフォルマントをかき消してしまうことがあります。
逆に言えば、サビになったとき、インスト(他の楽器)の2~5kHzの音が一定の音量を超えたら、ボーカルの2~5kHzの音を増幅させるという処理をすればこの問題を解決できます。
例えばEQプラグインを使うときは、ボーカルトラックに対して次の処理を行うとよいでしょう。
手順
- ボーカルトラックにEQプラグインを追加する
- External Side Chain機能をONにする
- Side Chain先をインストトラックに設定する
- サイドチェインのトリガーは、3rdフォルマント(2~5kHz)よりも少し低い周波数帯域に設定する
- 増幅させる周波数帯域は、3rdフォルマント(2~5kHz)に設定する

上記画像は「Kirchhoff EQ」を使った例です。
インストのピンクの横のバーの範囲の音が大きくなったら、ボーカルの黄色い線の周波数が増える設定になっています。
もしMS処理が可能であれば、Mid(中央)の音をトリガーにするように設定するのがおすすめです。
ボーカルは基本的にMidから鳴っており、インストのSide(左右)から聞こえる音がマスキングに関与することは少ないからです。
なぜ3rdフォルマントよりも少し低い音域をトリガーにするのか?

ボーカルの3rdフォルマントをはっきり聞かせたいなら、インストの同じ音域の音が増えたときにサイドチェインがかかるようにすればいいのではないか?
このように思った方もいらっしゃると思います。
なぜ3rdフォルマントよりも少し低い周波数帯域をトリガーにするかと言うと、人間の耳の性質上、この中音域が増えることでボーカルの高音域が聞こえにくくなるためです。
実は、低い音域がそれより少し高い音域の音をマスキングしてしまうことあります。
(低音のエネルギーが強いと、相対的に高音が知覚されにくくなる)
そのため、ボーカルの3rdフォルマントをよりはっきり聞かせたいときは、「インストの3rdフォルマントよりも少し低い音域が大きくなったとき、ボーカルの3rdフォルマントを増やす」という手段が有効です。
埋もれない・抜けがいいボーカルミックスのやり方 コツ3つ目
コツ3つ目はクリティカルバンド(Critical Band)を意識してミックスをすることです。
クリティカルバンドとは、人間の耳で聞き分けができる周波数帯域のことです。
人間が聞き取れる音域をいくつかの帯域に分割すると、おおよそ24のクリティカルバンドに分けられると言われています。

Q幅が広いと関係のない他の周りの周波数帯域にも影響してしまうため、Q幅の設定はテクニックを要します。
しかしクリティカルバンドを意識すれば、必要な帯域だけをピンポイントで調整することができます(1/3 octぐらいの狭いQ幅)。
NEWFANGLED AUDIO社の「EQuivocate」はこのクリティカルバンドに合わせて周波数帯域を調整できるようになっているのでおすすめです。
この画像を見て、手動でクリティカルバンドを調整してもよいでしょう。
ボーカルの場合は、250Hz付近や3rdフォルマント(2~5kHz)付近を調整するのがおすすめです。
それでは最後に、これまでのテクニックを使ったミックスのBefore/Afterを聴いてみましょう。
ボーカルミックスにおすすめのプラグインまとめ
最後に、ボーカルミックスにおすすめのEQプラグインをご紹介します。
いずれも世界中のプロが使用する便利で高品質なプラグインですので、ぜひチェックしてみてください。
Fabfilter社「Pro-Q4」
DTMerで持っていない人はいないと言えるほどの超定番EQプラグインです。
今回ご紹介したサイドチェインも使用できます。
使い方の解説記事はこちら🔻
Fabfilter社「Pro-L2」
超定番のリミッタープラグインです。
ラウドネスの調整・計測がとても簡単で画面も見やすく、初心者の方にもおすすめです。
使い方の解説はこちら🔻
5秒でミックスが終わるプラグイン
その他、5秒でミックスが終わるほど便利なプラグインはこちらの記事でまとめています🔻


