ミキシングのコツ

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法【埋もれない】

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

今回は、Better Mixesが解説する「ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法」をご紹介します。

この方法は、世界的に有名なエンジニアのAndrew Scheps氏が実践している有名なテクニックです。

高価な機材は必要なく、DAW付属のプラグインしか持っていない方でもお試しいただけます!

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くするには、EQとコンプレッサーを2回に分けて使います。

手順

  • 新しくSendトラックを作る(「Bright Vocal」などわかりやすい名前がおすすめ)
  • EQで低〜中音域を減らし、高音域をブースト
  • コンプレッサーを強めにかける(アタック・リリースともに速め)
  • EQで低〜中音域をブーストし、高音域を減らす
  • Sendトラックの音量を調整する

この手順を行うと、全体の印象を崩さないままボーカルを前に出すことができます。

テクニック実践Before/After 0:28~0:37

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

それではここからは、具体的な手順を解説していきます。

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ1

まずはEQで低〜中音域をカットし、高音域をブーストします。

カットするときはシェルビング(Shelf)、ブーストするときは広めのベル(Bell)にするのがおすすめです。
(Scheps氏が愛用しているPultec EQはもともとQ幅が広いため、広めのQ幅にするのがおすすめです)

このまま聞くと音がとても薄く聞こえたり、少し耳が痛いような感じがするかもしれませんが、今はこのままでも大丈夫です。

1:53~2:09

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

強めにコンプレッサーをかけることで、明るく且つ音が目の前に張り付いているような印象になります。

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ2

次はEQの後にコンプレッサーを追加します。

アタック・リリースともに速めで、かなり強めにコンプレッションをするのがおすすめです(ゲインリダクションが多くなるようにする)。

2:38~2:54

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ3

次は、コンプレッサーの後にEQを追加します。

ここでは最初にカットした低~中音域を元に戻し、出過ぎている高音域を減らすように調整します。

3:33~3:47

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

なぜ最初に減らした音域を後でブーストし直すのか?

ここまでの説明を聞いて、「なぜ最初にEQで減らした音域を後でブーストし直すのか?」「なぜ最初にEQで増やした音域を後で減らしてしまうのか?」と疑問に思ったかもしれません。

これは、コンプレッサーに聞かせる音(分析させる音)をコントロールするためです。

コンプレッサーは、鳴っている音を分析して「今は音が大きく出ているから音を抑えよう」「今は音量がそんなに出ていないからコンプレッションをしなくても大丈夫だ」などと判断します。

ハイパスフィルターが付いているコンプレッサーであれば「低音域の音量は考慮せず、中〜高音域の音量だけを聞いてコンプレッションするかどうか決める」という動作をすることもあります。

例えばキック(バスドラム)は低音域がたくさん含まれているので、ハイパスフィルターを使わないとキックが鳴っているときだけコンプレッサーが強くかかってしまうことがあります。

このように特定の音域によってコンプレッサーの動作が大きく左右されないように、ハイパスフィルターが搭載されていることがあります。
(コンプレッサーが検知する音に対してハイパスフィルターがかかっているだけなので、実際に再生される音にハイパスフィルターをかけて音がスカスカに聞こえるわけではありません)

Scheps氏が愛用しているコンプレッサー「LA-2A」には、このハイパスフィルターがありません。

そのため、ハイパスフィルターを使ったときと同じ動きをさせるために、先にEQで低音域を削り高音域をブーストしています。
(低音域をカットするだけでなく高音域をブーストすることで、さらにコンプレッサーがかかりやすくなります)

ボーカルにおいて、声が前にしっかり出ているように聞かせるためには、中高音域以上が常に安定して聞こえることが大切です。

そのため、コンプレッサーで中高音域以上だけを整えた後、ボーカルの根幹(太さや厚み)となる中低音域以下を元に戻すことで、安定したボーカルに聞かせることができるようになります。

この説明を聞いた上でBefore/Afterを聴き比べると、このテクニックを使った後は中高音域以上がとてもはっきり前に出ていて、より音抜けが良くなっていることがお分かりいただけると思います。

6:13~6:23(全体の音量感はそのままで、クリアではっきり聞こえる)

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

耳が痛いときはディエッサーを使うとベター

このテクニックを使うと、音抜けは良くなりますが耳がキンキン痛くなることがあります。

そのときは、2つ目のEQの後にディエッサープラグインなどを追加するのがおすすめです。

ディエッサーを追加した例 7:41~7:48

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ4

最後に、今回のテクニックを使ったSendトラックの音量を調整します。

明るくしっかり前に出ているSendトラックの音と混ぜ合わせることで、より自然に、自分好みのサウンドに仕上げることができます。

8:08~8:30

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

曲全体で聞くと、さらに効果を実感できます。

8:49~9:13

How Andrew Scheps Gets UPFRONT VOCALS - Step By Step

元のボーカルトラックと混ぜることで、程よく音抜けがよくなっていることがわかります。

オートメーションも効果的

このテクニックを使うとボーカルの音抜けがよくなりますが、AメロやBメロなど、静かな場面では音が明るすぎたり、キツすぎると感じるかもしれません。

そのため、この「Bright Vocal」のSendトラックにオートメーションを使い、例えばサビだけBright Vocalの音量を上げるなどすると効果的です。

ボーカル以外にも使えるテクニックです

このテクニックは、ボーカル以外にも使えるテクニックです。

例えばドラムの音抜けが悪いときに使うと、シンバル類やキック・スネアのアタックがはっきり聞こえるようになります。

EQの間に挟むのはコンプレッサーでなくてもOK

このテクニックでは2つのEQの間にコンプレッサーを挟みますが、コンプレッサー以外のプラグインを使っても構いません。

例えばサチュレーションやディストーションプラグインを間に挟んでみてもOKです。

EQにはPultec EQ、コンプレッサーにはLA-2Aがおすすめ

LA2Aコンプレッサー
https://www.soundhouse.co.jp/en/products/detail/item/80686/

この方法を考案したScheps氏は、EQにはPultec EQコンプレッサーにはLA-2Aを使用しています。

これらはいずれも世界中で使用されている有名なEQ・コンプレッサーで、ボーカル以外の楽器にも使える万能な製品です。

とても有名な製品のため、現在ではさまざまなプラグイン版がリリースされています。

ハードウェア(実機)は高価で手が届かないという方でも手軽に使えますので、ぜひチェックしてみてください🔻

プラグイン版のPultec EQを購入する

Pultec EQは非常に有名なため、現在ではさまざまなメーカーからプラグイン版がリリースされています。

その中でも特に人気なのがUniversal Audio社とWaves社のプラグインです。

いずれもプロが利用するクオリティの高い製品ですので、プロのサウンドを手に入れたい方はぜひチェックしてみてください。

Universal Audio社「Pultec Passive EQ Collection」

Pultec Passive EQ Collection Sound Examples | UAD Native & UAD-2

Plutec EQP-1A・HLF-3C・MEQ-5の3製品を精密に再現したプラグインです。

Waves社「PuigTec EQs」

6 Steps to a Punchy Kick Drum

レジェンドプロデューサー&エンジニアのJoseph Puigが所持しているEQP-1AとMEQ-5を再現したプラグインです。

プラグイン版の「LA-2A」を購入する

LA-2Aもさまざまなメーカーでプラグイン版が開発されていますので、ぜひご予算やお好みに応じてチェックしてみてください。

UAD社「Teletronix LA-2A Leveler Collection」

同社LA-2A系コンプレッサープラグインのうち「LA-2」「Gray」「Silver」をエミュレートした製品が同梱されているお得なバンドルです。

Waves社「CLA-2A Compressor / Limiter」

ミキシングエンジニアの巨匠・Chris Lord-Algeが監修したLA-2A系のコンプレッサーです。

LA-2A系以外にも「1176」などの有名なコンプレッサーをエミュレートしたプラグインがたくさん同梱されている「CLA Classic Compressors」が非常にお得でおすすめです。


Pultec EQとLA-2Aの使い方解説はこちら🔻


人気記事

1

今回は、キラキラ系エフェクトプラグイン「Bismuth」の魅力と使い方について解説します。Bismuth(蒼鉛)という名前の通り、金属や宝石を思い起こさせるようなサウンドを作ることができるプラグインです。特にダンスミュージックで使えるサウンドが手軽に使えます!

2

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

3

今回は、ヒップホップ・トラップを作る人におすすめのスピーカーを5つご紹介します。世界で活躍する超人気音楽プロデューサー&ラッパーが実際に使用している機材のみをご紹介していますので、どれを買っても間違いではありません。スピーカー購入を検討している方は、ぜひご予算や設置スペースに合わせてチェックしてみてください。

4

今回は、Waves社のリミッタープラグイン「L4 Ultramaximizer」の新機能と基本的な使い方をまとめました。最新作「L4 Ultramaximizer」は、これまでLシリーズを使ってきた方にもそうでない方にも非常におすすめできるプラグインですので、ぜひチェックしてみてください。

5

今回は、コード進行を学びたいときやバリエーションを増やしたいときに使えるおすすめのコード作成プラグインを3つご紹介します。「いつも同じコード進行ばかり使ってしまい、新しいコードのアイデアが思い浮かばない」という方、必見です!

6

今回は、世界中のプロに愛用されているoeksound社「soothe3」の使い方をまとめました。とても使いやすく、初心者でもプロ並みのミックスができるようになるこのプラグインについて、その魅力や使い方を解説していきます。

7

今回は、音響関連の商品を開発しているGIK Acousticsが解説する「ステレオスピーカーの置き方」をまとめました。特にDTMなどの音楽制作では、正しく音を聞くためにスピーカーの置く位置が非常に重要になります。この記事では、ステレオモニタースピーカーとサブウーファーの正しい置き方を図を用いて解説します。

8

ミキシングをするときは、スピーカーorヘッドホン(イヤホン)、どっちでやればいいの?今回はこの疑問にお答えします!海外プロが教える「DTMでMIXするときはスピーカーとヘッドホン(イヤホン)のどちらを使った方がいいのか?を解説!今回はスピーカーを使うことによるメリットをじっくりご説明します。

9

今回は、IK Multimedia社「ReSing Japanese Pack」の使い方と実際のサウンドをご紹介します。ReSingはAIによって音をさまざまな声や楽器に変換できるツールですが、ついに日本語対応ボイスモデルを収録した「ReSing Japanese Pack」がリリースされました。今回はこちらをレビューしていきます。

10

今回は、Chambersが解説する「音楽プロデューサーは音楽大学に行くべきか?」をまとめました。ChambersはビルボードチャートでNo.1も獲得したプロの音楽プロデューサーですが、音楽大学や専門学校には行っていません。現在はプロとして活躍している彼が作曲家(ボカロP)になるなら音楽学校に行くべきかどうかを解説します。

-ミキシングのコツ