ディズニーアニメのミキシングを手がけるSatoshi Suzukiさんが、ミキシングテクニックを教えてくれました

ディズニーアニメのミキシングを手がけるSatoshi Suzukiさんが、ミキシングテクニックを教えてくれました

 

もはや知らない人はいないディズニーアニメシリーズ

今回は、アニメ「ミッキーマウス」のミキシング・レコーディングを手がけたSatoshi Suzukiさんインタビューをまとめました。

 

「ただサウンドを美しくするだけでなく、どのようにしてそのアニメに合ったサウンドを作るか?」

 

この大切さとテクニックを教えてくれました。

 

いつもミキシングがうまくいかず悩んでいる…
どうしたらミキシングに適した環境を整えられるんだろう?

 

こういったお悩みや疑問を解決してくれる内容です。

今回はこちらのエピソードのサウンドについての解説をかんたんにまとめました。
視聴しながらインタビュー内容を照らし合わせると、より理解が深められます。

 

 

はじめに

 

今回ご紹介するのは、ディズニーアニメ「ミッキーマウス」で扱っている音楽です。

このアニメは4~5分ほどの短いアニメなのですが、エピソードごとに、大きく音楽性を変えるようにしています。

例えば、あるエピソードでは大きなオーケストラ、別のエピソードでは1920年代のジャズ、別のエピソードではメタルにしたり…といった感じですね。

 

トラックを受け取ったら、まず最初に何をする?

 

まず「何が録音されているか」をチェックします。

 

タイミングの問題をここで把握しておきますね。

アニメの動きと合わせるので、タイミングの問題は非常に重要なんです。

ブラスセクションをハリウッドのヴィンテージスタジオで録り、更にミュージシャンたちが家でオーバーダビング(多重録音)することもあります。

それをまとめて、あたかも同じ空間で演奏されているように僕がまとめていくわけですね。

 

また、このアニメは映画館ではなく、テレビで放送されます。

なので、映画に比べてダイナミクスレンジは小さくなります。

小さい音でモニタリングすることも大切になってきますね。

 

ダイナミクスレンジの大きい、より繊細に聞こえるモニターだけでなく、ダイナミクスレンジの小さいモニター、つまりTVに近いモニターでミキシングチェックする必要が出てきます。

ミキシングにおいて、ターゲット(視聴者)の音量レベルとこちら(エンジニア)の音量レベルは揃えることが大切です。

 

オーケストラサウンドを用いた音楽について

 

トランペット2本、トロンボーン3本(うち1本はベーストロンボーン)、フレンチホルン2本はスタジオで録音しました。

 

最後にはもっとフレンチホルンが欲しいねという話になったので、フレンチホルンのサンプルを使いました。あとチューバがなかったので、チューバのサンプルも使いましたね。

これら2つのサンプルを入れたことで、録音したもの単体で聞いたときよりも充実感のあるサウンドになりました。

 

また、もう少し内声が欲しかったので、木管楽器のサンプルも入れました。

レコーディング前に確認しておくようなデモの場合は、サンプルだけ鳴らしておく形でも大丈夫です。どんな形なのか、アイデアが明確にわかるものであればOKです。

 

とても大きな部屋で鳴らしているように聞かせたいところには、リバーブのオートメーションも加えました。

アルゴリズミックなリバーブと、畳み掛けるようなリバーブを加えています。80~90年代のジョン・ウィリアムズの曲のような雰囲気が出せるんです。

 

ステレオとモノの切り替えについて

 

次のセクションは、1920年代の怪獣映画のような感じです。

ミッキーたちが1920年代で駆け抜けるシーンがあるので、音楽はステレオではなくモノにしています。1920年代のハリウッドに、ステレオは存在していませんからね。

使ったのはPannerとProToolsです。

 

現代→昔→現代…とミッキーたちが様々な時代を往復するので、それに合わせて音楽もステレオ→モノ→ステレオ…と、オートメーションで切り替えています。

 

– Q. もともとステレオで録音したものをモノにしたら、音がぐしゃっとしますよね?
ステレオをモノにすると、特定の周波数が削られたり…

A. そうですね。ドラムや低域のストリングス、低域のブラスによく出る現象です。

モノにするときは、Phase Flipボタン(位相反転ボタン)を使うと、ローエンドなサウンドに仕上げることができます。

 

ステレオで聞いた時にすごくカッコ良く聞こえても、モノにしたらそのかっこよさが全部なくなっていたり…なんてこともありますよね。

なので、ステムなどはモノにしてミキシングしましょう。モノでレコーディングされてあるかチェックしておくことが大切です。

 

クラシカルな部分は…

 

ここはより音楽的なセクションです。クラシカルなイメージに合うような、プレートリバーブを使っています。

 

60年代のチャリオットレースをイメージしたサウンド

 

※別のセクションについて

ここは60年代のチャリオットレース(戦車競走)をイメージしています。

ほんの4~6小節ぐらいですが、豪華で盛り上がりのあるパートです。

 

また、より大きなセクションに聞かせるため、フレンチホルンのサンプルを足しています。

ティンパニには、一時的にパンチを加えています(Transient Punch)。

 

– Q. EQはどのように行いましたか?

A. もともとの音が大きく録れていたので、これはこれでエキサイティングな感じで良いのですが、サンプルと合わせるとちょっとエッジが効きすぎている感じでした。

今回使ったハリウッドの古いスタジオでは、ブラスがかなり大きく録れて、ルームマイクは明るい印象のサウンドになりました。

ただこの明るさが、サンプルとのブレンド感を壊してしまっていたんですね。

なので、今回はルームマイクに対して結構極端にEQしました。狭いQ幅(ピーク)で、その明るすぎる部分を削り、耳に優しいサウンドにしています。

 

スピーカーレベルの重要さ

– Q. ミキシングするときは、小さい音で確認するのが先ですか?

A. 逆ですね。大きい音で先に確認します。

どのパートに問題があるのかをチェックしたいのが理由です。

あとベースを聞くためでもありますね。

 

違う音量レベルでチェックしていく方法についていうと…

「フレッチャーマンソン曲線」というのがありますよね。

同じラウドネスでも、違う周波数だと聞こえ方が異なる、というものです。

 

このような現象が発生するので、ちゃんと周波数・帯域ごとに音をチェックしていきたいんです。

でもずっと大きいレベルで音をチェックするわけではありません。

こまめに小さい音量レベルに切り替えるようにして、見落としがないかをチェックします。

あと、耳が疲労しないようにするというのも理由の一つですね。

 

小さい音で聞くことによって、「あぁ、ここは少しカットしすぎたかな」と気づけるのは大きな利点です。

大きい音で聞いた時にやりすぎてしまっても、小さい音で聞いた時にそのミスに気づける、ということですね。

小さいスピーカーは、iPhoneやTVで聞いた時と似たように聞こえるような、AURATONEのシングルドライバーのスピーカーを使っています。

 

Suzukiさん使用のオーラトーンのスピーカーはコチラ