
今回は、音楽理論における「スケール」「モード」「キー」の違いをまとめました。
スケール(Scale)には「メジャースケール」「マイナースケール」、モードには「ドリアンモード」「ミクソリディアンモード」などがあり、キーには「Cメジャーキー」「Dマイナーキー」などがあります。
いずれも「いくつかの音の組み合わせ・セット」という点は共通していますが、一体何が違うのかを解説していきます。
※この記事では、モード=教会旋法として解説をします。
音楽理論におけるスケール・モード・キーの違いとは?

音楽理論において、スケール・モード・キーはいずれも「いくつかの音の組み合わせ・セットである」という点が共通しています。
例えばCメジャースケールは「C,D,E,F,G,A,B」の7音で成り立っていますが、CアイオニアンモードやCメジャーキーも同じ7音が使われています。
これらの違いや定義については人それぞれ意見が分かれるため、ネットで調べると混乱することもあります。
そのため、ここでは現在よく見られる定義をご紹介します。
スケール(音階)
音の集合体で、音程を昇順or降順に並べたもの。
「どの音を使うか」を示している。
スケール自体は主に音の並び方や構成を示す概念であり、必ずしも調性的な役割や機能までは含まない。
例:Cメジャースケール、Aマイナースケール、Fドリアンスケール、Gペンタトニックスケール、Eブルーススケール、Fクロマティックスケールなど
モード(旋法)
一定の中心音や音程関係、旋律の性格などによって特徴づけられる音楽上の枠組み。
現代では「特定のスケールと中心音の組み合わせ」のように扱われることも多い。
また、現代のモーダルジャズやモーダルハーモニーでは、モードの上にコード進行を乗せることもある。
例:Cリディアンモード、Dドリアンモード、陰旋法、日本旋法など
キー(調性)
教会旋法から発展し、17〜18世紀頃に長調・短調を中心とした調性システムが発展した音階組織の一種。
モードから発展している。
主音が決まっており、和音を用いるときも主音(トニック)などの役割が与えられている。
主に「長調」と「短調」の2種類がある。
例:Cメジャーキー、Aマイナーキーなど
現代では、人によってスケールとキーを同じ意味として使っていたり、スケールとモードを同じ意味として使っていることもあります。
そのため上記の説明に意義や違和感を覚える人もいるかもしれませんが、おおむねの違いはこのように表すことができます。
スケール・モード・キーの語源は?

スケール(Scale)、モード(Mode)、キー(Key)の語源を考えてみると、それぞれの違いがよりわかりやすくなります。
スケール(Scale)
ラテン語のScala=はしごが由来。
はしごのように音が並んでいる・集まっているという意味がある。
モード(Mode)
ラテン語のModus=仕方、スタイル、方法が由来。
似た言葉にモダン(Modern)があり、「現代風の」という意味があるが、これはラテン語の「modernus(現代の、新しい)」が由来。
キー(Key)
ラテン語のclavis=鍵が由来。
「鍵が錠を開けるのと同じように、鍵=Keyは楽譜を読む人々に楽譜・音楽を開けることを可能にする」「その音楽の仕組みや骨組み、重要なもの」などの意味がある。
たくさんのKeyが並んでいるBoard = Keyboard(鍵盤)。
ちなみにローマ教皇を決める選挙をコンクラーベ(Conclave)と呼びますが、これはcum(〜と共に)+clavis(鍵=鍵のかかった部屋・密室が由来となっています。
実際に、コンクラーベでは選挙の秘密を守り厳格に執り行うため、選挙中は鍵をかけて礼拝堂内部で投票が行われています。
これはメジャーキーorイオニアンモード?

同じ7音「C,D,E,F,G,A,B」で構成されているCメジャーキーとCイオニアンの違いは一体何なのか、疑問に思う方が多いと思います。
現代において、一般的には「トニック」「ドミナント」などの機能和声やコード進行がわかりやすければ「Cメジャーキー」、そうでない場合はCイオニアンと考えることが多いです。
(しかしどちらを使ったかどうか、その真相は作曲者にしかわかりませんし、どちらを使っていても正解・不正解はありません)
例えば、次の演奏を聴いて「Cイオニアン」と「Cメジャーキー」のどちらだと感じるでしょうか?
上記の演奏は、どちらかと言うと「Cイオニアンだ」と感じる人が多いと思います。
一方で、次の演奏は「Cメジャーキーだ」と感じる方が多いでしょう。
次は、同じ「C,D,E♭,F,G,A♭,B♭」を使う「Aマイナーキー」と「Aエオリアン」を比べてみます。
次の演奏を聴いて、どちらだと感じるでしょうか?
おそらく「Aエオリアン」という印象を持った方が多いと思います。
これは、中心となる音「A」を多用していたり、コード進行らしいコード進行を感じにくいためです。
しかし、以下のように演奏すると「Aマイナーキー」と感じる方が多いと思います。
上記の演奏ではVコードを多用したので、マイナースケールの中でも「ハーモニックマイナースケール」を感じやすくなっています。
5thコード(V)を多用すると「トニック(I)に行きたい」という気持ちが強くなるので、モードよりもスケールやキーを感じやすくなります。
調性音楽とモード音楽の違い
現代では「トニックやドミナントなどの機能和声によって中心感が形成される音楽=調性音楽」「モードを使っていると感じる音楽=モード音楽」と捉えられることが多くなっています。
古代ギリシャの時代から存在していた音楽を含め、モードを使った音楽は「モード音楽」と呼ばれます。
(特に、音楽室に飾られている肖像画の作曲家たちが生まれる以前の音楽は「モード音楽」と捉えられます)
調性音楽
スケール上で使われる音やコードに役割(機能和声)があるように感じやすい。
「トニック」「ドミナント」を感じられると「次はトニックに行きたい」「すっきり完結したように感じる」などの印象を持ちやすくなる。
俗に言う「コード進行」がわかりやすい。
モード音楽
中心となる音(フィナリス)はあるが、調性音楽と違ってコード進行と呼ばれるような響きは感じにくい(もしくは使われていない)。
どちらかと言うと「音同士の間隔」で印象が変わりやすい。
例えば「F# →F」と半音移動したときに「明るい」「暗い」と感じることがある。
音と音の間が全音か半音かがそれぞれのモードで異なり、その間隔の開き方がそのモードの特徴になっている。
音の重なりによって「ハーモニー」が感じられることはあるが、「コード進行」と呼べるような、機能和声的な強い進行感を持たないことが多い。

例えばモードにおいて、同じ「C,D,E,F,G,A,B」の7音を使っていたとしても、半音・全音の並び方によってモードとそれぞれの印象が異なります。
モードでは、半音・全音の配置や中心音の違いによって、それぞれ異なる響きや性格が生まれます。
モード音楽はどんな音楽?
例えば古代ギリシャの時代からあるグレゴリオ聖歌は、モード音楽です。
実際に聞いてみると、中心となる音(よく使われる音・着地する音)は感じられますが、コード進行と呼べるようなものは感じられず、どちらかと言うと「歌う」よりは「読み上げる」という感覚が強いでしょう。
実際に聞いてみると、現代で言う「コード進行」と呼ばれるような印象は少なく、どちらかと言うと「歌う」よりも「読む」に近い感じがしたり、音がひたすら並んでいるように感じると思います。
また、現代の音楽に比べると音域もかなり狭いことがわかります。
これは、そもそも聖歌は単旋律のボーカルを前提として作られた音楽であり、老若男女問わず誰でも歌えるようにするには音域が狭い方が効率的だったためと考えられています。
Dドリアンモードは「Dから始まるCメジャースケール」ではない?
例えばDドリアンモードでは「D,E,F,G,A,B,C」の7音が使われますが、だからと言って「Dから始まるCメジャースケール」というわけではありません。
Dドリアンモードは、「C,D,E,F,G,A,B」の7音を使いながらDが中心に聞こえるような旋法です。
1つのキーやモードの中で複数のスケールが使われることがある
例えばマイナーキーの楽曲では、以下3つのスケールが使われることがあります。
- ナチュラルマイナースケール(1,2,♭3,4,5,♭6,♭7)
- ハーモニックマイナースケール(1,2,♭3,4,5,♭6,7)
- メロディックマイナースケール(1,2,♭3,4,5,6,7)
また、例えばリディアンモードで使えるスケールにもさまざまな種類があります。
- リディアンスケール(1,2,3,# 4,5,6,7)
- リディアンペンタトニックスケール(1,2,3,# 4,6)
- リディアンドミナントスケール(1,2,3,♯4,5,6,♭7)
このように、1つのキーやモードの中で複数のスケールが使われることがあります。
(メインで使うスケールを1つ決めていて、曲中で一瞬だけ使うスケールを変更することもあります)
このように考えると、モード=スケールではないことがわかりやすくなります。
モードの「ドリアン」「エオリアン」などの名前の由来は?
モードの名前として使われている「ドリアン」や「エオリアン」などの名前は、古代ギリシャにおける地名が由来とされています。

By Fut.Perf. - Own work by uploader. Data after Woodard (2008), see below. Base map Greece map blank.svg (public domain), Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4732147

上記画像は、紀元前4~5世紀ごろの古代ギリシャにおける地域や海の名前と、それぞれの地域で使われている方言を表している地図です。
「イオニア方言」「ドリア方言」「イオニア海」などがあることがわかります。
実際にGoogle Mapを見ると、ギリシャにはモードの名前に似ている地域や島の名前をたくさん見つけられますので、ぜひチェックしてみてください。
モードは「スタートの位置」と「音の間隔」がポイント
モードでは、「スタートの位置」と「音の間隔」がポイントになります。
ここで、以下8音を使った例を見てみましょう。
C D E F G A B C
この8音を見ると、多くの方が「Cメジャースケールだな」と思うでしょう。
しかしここに出ている8音を使っていても、順番が異なると違うスケール・モードになります。
これは、この8音を2オクターブ分書いてみるとわかりやすいです。
C D E F G A B C D E F G A B C
ここで、同じ音名同士をつないで8音のセットにしてみます。
すると、現代で「モード」と呼ばれているモードが出来上がることがわかります。

CからCまで:C,D,E,F,G,A,B,C
Cメジャースケール、Cイオニアンスケール
DからDまで:D,E,F,G,A,B,C,D
Dドリアンスケール(♭3、♭7)
EからEまで:E,F,G,A,B,C,D,E
Eフリジアンスケール(♭2、♭3、♭6、♭7)
FからFまで:F,G,A,B,C,D,E,F
Fリディアンスケール(# 4)
GからGまで:G,A,B,C,D,E,F,G
Gミクソリディアンスケール(♭7)
AからAまで:A,B,C,D,E,F,G,A
Aマイナースケール、Aエオリアンスケール(♭3、♭6、♭7)
BからBまで:B,C,D,E,F,G,A,
Bロクリアンスケール(♭2、♭3、♭5,♭6、♭7)
どれも「C,D,E,F,G,A,B」の音を使っているのは同じですが、中心となる音や終止感が変わることで、「ドリアンモードっぽいな」「リディアンモードっぽいな」などと感じられます。
また半音・全音の配置も変化するため、「ドリアンらしい響き」「リディアンらしい響き」など、それぞれ異なる印象が生まれます。
「B」の音も、Fリディアンスケールでは特徴音になりますので、Bの音が入っているだけでリディアンモードの印象が強くなります。
モードの間隔を見てみよう
先ほどは「同じ8音を使っていても、スタートの音の順番が異なるだけで違うモードになる」とお伝えしました。
それではここで、モードの音同士の間隔がどうなっているのかを確認してみましょう。
例えばCメジャースケールとDドリアンスケールは同じ「C,D,E,F,G,A,B」の音を使いますが、それぞれの音同士の間隔はどう変わっているでしょうか?
(全音は鍵盤2個分、半音は鍵盤1個分の間隔が開いていることを表します)
Cメジャースケール
C,D,E,F,G,A,B,C
全音→全音→半音→全音→全音→全音→半音
Dドリアンスケール
D,E,F,G,A,B,C,D
全音→半音→全音→全音→全音→半音→全音
音同士の間隔を見てみると、メジャースケールとDドリアンモードで全音と半音の順番もそれぞれ異なることがわかりました。
省略して書くと「全全半全全全半」と「全半全全全半全」の違いになります。
つまり、使っている音は同じでも、音の間隔と順番が異なれば違う印象=違うモードになります。
逆に言えば、同じ音の間隔・順番でスタートの音が異なれば、同じモードになります。
Cドリアンスケール
C,D,E♭,F,G,A,B♭
全半全全全半全
Dドリアンスケール
D,E,F,G,A,B,C,D
全半全全全半全
Eドリアンスケール
E,G♭,G,A,B,D♭,D
全半全全全半全
つまり、「音名+〇モード」と書いてある場合は、以下のように読み解くことができます。
音名:中心の音
〇モード:全音・半音のパターン
例えばドリアンモードを知りたいのであれば、「全半全全全半全」という並びを覚えておけば、あとはスタートの音を決めるだけで「○ドリアンモード」を作ることができます。
もちろん「3rdと7thの音をフラットにする」という覚え方でも構いません。
モードはいつから存在しているのか?

音楽自体はずっと昔から存在しており、使われていたモードの数は膨大でした。
古代ギリシャの時代から、すでにさまざまな旋法的な考え方が存在していました。
そして中世ヨーロッパでは、それらの名称の影響を受けながら「教会旋法(チャーチモード)」が体系化されていきます。
※現在の教会旋法の名称は古代ギリシャ由来とされるが、古代ギリシャの旋法体系と中世教会旋法は必ずしも同一ではない
名前の通り、教会の音楽=聖歌などで使われていた旋法(モード)です。
もともと何千もの数えきれないモードがありましたが、6世紀初期にはすでに定旋律(グレゴリオ聖歌)が存在しており、8世紀から16世紀の間では以下8つの旋法がメインで使われていました。
これが「教会旋法」です。

- ドリアン(ドリア旋法)
- ヒポドリアン(ヒポドリア旋法)
- フリジアン(フリギア旋法)
- ヒポフリジアン(ヒポフリギア旋法)
- リディアン(リディア旋法)
- ヒポリディアン(ヒポリディア旋法)
- ミクソリディアン(ミクソリディア旋法)
- ヒポミクソリディアン(ヒポミクソリディア旋法)
ヒポ(Hypo)はギリシャ語で「下の・下に(Below、Beneath)」という意味があります。
例えばヒポドリアンモードは、Dをフィナリス(中心となる音)にしたままメロディーの範囲だけを変えています。
(ドリアンモードはDから高いDまで、ヒポドリアンモードは低いAからAまで)
非常にたくさんあるモードを専門家が分析したところ、ヒポ(Hypo)のパターンもあることが判明しました。
ヒポがついているモードは「変格旋法(プラガルモード)」、ついていないモードは「正格旋法(オーセンティックモード)」と呼ばれています。
そして16世紀になると、スイスの理論家・ハインリヒ・グラレアヌスによってCやAをフィナリスとする音楽が存在していることがわかり、「CとAにもモードを設けるべきだ」と提唱されます。
これによってイオニアンとエオリアンが加わり、「14旋法制」が提唱されます。
その後、理論の整理や再解釈が進む中で、ロクリアンも現在の7つの教会旋法の一部として扱われるようになりました。
- イオニアンモード(イオニア旋法)
- ヒポイオニアンモード(ヒポイオニア旋法)
- エオリアン(エオリア旋法)
- ヒポエオリアン(ヒポエオリア旋法)
- ロクリアンモード(ロクリア旋法)
- ヒポロクリアンモード(ヒポロクリア旋法)

これらのモードを使ってキリスト教の教えを音楽に乗せることで、老若男女の誰もが覚えられるようにしていました。
またモードは1つ1つ音の印象(カラー)が異なるので、教えの内容や歌詞に合わせてモードが使い分けられています。
上記画像の楽譜には「f」という文字が書いてありますが、これは「final」「finalis」の略で「最後に到達するところ」=現在で言うトニックにあたる音です。
(フィナリスの全音下の音は「Subfinalis(Subfinall)」と呼ばれていました)
この教会旋法として使われていたものが、現在の「キー」と呼ばれるものに発展していきます。
ハッピーバースデーはヒポイオニアンモード?

モードでは、音階を楽譜で表示したときに基本の音(フィナリス、Finalis)が一番最初に表記されるとは限りません。
例えば教会旋法の1つである「ヒポリディアンモード」は「C,D,E,F,G,A,B」の7音が使われますが、主音はCではなくFになっています。
これは「使う音はCから高いCまでの範囲だが、中心音はCではない」というイメージです。
もし「ハッピーバースデー」を教会旋法的に捉えるなら…歌い出しをGから始めると、音域は真ん中のGから高いGまでの1オクターブですが、主音がCなので「ヒポイオニアンモード」と言えます。
グイードの音名とヘクサコード
音楽では「テトラコード」と「ヘクサコード」と呼ばれる概念があります。
ギリシャ語でテトラは「4」、ヘクサは「6」という意味があり、テトラコードは「4音で構成されるまとまり」、ヘクサコードは「6音で構成されるまとまり」を意味しています。
※ヘクサコードは「ヘクサコルド」「ヘキサコード」とも呼ばれます
テトラコードはそれぞれの音の間隔が下から「全音・半音・全音」で、ヘクサコードは「全音・全音・半音・全音・全音」になっています。
(テトラコードは完全4度の範囲の中に4つ音が入っています)
今では1オクターブ=12音を使って調律や作曲がされていますが、古代ギリシャの時代はテトラコードを使うのが一般的でした。
そして「ドレミファ」「ソラシド」のように、4つの音のまとまりを2つ組み合わせることで音階を作っていました。

教会旋法(チャーチモード)は、はじめにドリアン・フリジアン・リディアン・ミクソリディアン・ヒポドリアン・ヒポフリジアン・ヒポリディアン・ヒポミクソリディアンの8種類ありました。
そして、それぞれの主要となる音(フィナリス)は、テトラコードである「レからソ」の間に収まっています。
しかし中世の時代になると、イタリアの音楽教師であるグイード・ダレッツォが「ヘクサコード」を開発します。
6音をひとまとまりとする考え方を発明し、レからソまでにフィナリス(トニック)があったところを、両サイドに1音加えて6音にする考え方を示しました。

https://muzik.name/en/docs/omt/melody-patterns-in-gregorian-chant-and-makam-music/hexachord-and-relative-solmisation/
ヘクサコードのポイントは、バランスがいい点です。
中央に半音(ミとファの間)があり、両サイドは全音の間隔になっています。
メロディーを作ったときも「クエスチョン→アンサー」の形が作りやすいのもポイントです。
また「ミとファの間は必ず半音」とわかっていれば、ドが最低音の曲でもソが最低音の曲でも、音程の間隔が把握しやすくなり、歌いやすくなります。
※20世紀に発展した作曲技法の1つ「十二音技法」では、12音のうち6音をひとまとまりとする「ヘクサコード」の考え方が使われますが、グイードのヘクサコードとは区別して捉えられます
グイードが付けた音名
音楽の教師をしていたグイードは、生徒にわかりやすく音楽を教えるために記譜に関する重要な発明をしていました。
それまでは音楽は口頭で教えられていたのですが、それだけではやはり限界があるため、記譜することでより速く覚えられるようになると考えていました。
そしてグイードは、聖ヨハネの賛歌の各節の最初の音をもとに「音名」を作りました。

しかし、この時点ではウト・レ・ミ・ファ・ソル・ラの6音にのみ名前が付けられており、「シ」にはまだ名前がつけられていませんでした。
なぜシ(B)だけ名前がつけられなかったのか?
他の6音に名前が付けられたのにシ(B)に名前が付けられなかった背景には、当時のヘクサコード体系やトライトーン回避など複数の要因があったと考えられています。
たとえば、シは完全五度上のファ(F)とトライトーン(三全音)になってしまいます。

トライトーンは全音3つ分の音程の関係にある音のことで、例えばファとシは鍵盤6個分=全音3つ分の間隔が開いており、トライトーンとなります。
聖歌は神聖な意味が込められているため、不協和な音はそぐわず「悪魔の音程」と考えられていました。
そのため、16世紀になるまでシには名前が付けられませんでした。
16世紀になると「ドミナントモーション」と呼ばれる「不協和→解決」の流れが一般化し始めます。
ドミナントモーションにおいて、導音となるシの音が重要なのに名前がないと不便になるため、16世紀後半になってようやくシにも名前が付けられました。
はじめにド〜ラに名前が付いてから、約500年も経過しています。
ちなみにシ(Si)という名前をつけたのはアンセルモ・フランダースと言われており、グイードが音名の由来にした楽曲の最後の節「Sancte Johannes(Sancte Ioannes)」から取って名前を付けました。

このようにシが「悪魔の音程」扱いをされていた経緯もあり、ロクリアンモードは他のモードより後になってから、18世紀頃にようやく教会旋法の1つとして捉えられるようになります。
ロクリアンモードと呼ばれるモードや概念自体はすでに古代ギリシャの時代からありましたが、その特徴から音楽的に使われているケースはかなり稀で、使われるようになったのはルネサンス期(14~16世紀)になってからと言われています。
グイードのヘクサコード(6音階)
グイードはヘクサコードを使い、3種類の6音階を示しました。
音名を考えた後は、始まりの音によってヘクサコードに名前を付け、さらに歌いやすくしました。

Gから始まるヘクサーコードはDurum(ドゥルム)、Cから始まるヘクサコードはNaturale(ナチュラル)、Fから始まるヘクサコードはMole(モール)という名前になります。
Durumはドイツ語でHard(硬い)、MoleはSoft(柔らかい)を意味する言葉です。
また、DurumではH=現在のBの音、MoleではB=現在のB♭の音が使われます。
当時はまだ「キー」「長調」「短調」という概念がなかったため、「柔らかい」「硬い」などの表現で音階を表していました。
ファから始まるMoleでは、シとトライトーンになってしまうため、これを避けるためにシをフラットにして歌唱されていました。
そしてここから、どうにかBを使っても不協和にならないようにならない方法はないかと考えた人たちは、「Bと完全五度上にするには、Fを半音上にすればいい=シャープを作ればいい」「Fと不協和にならないようにするためには、Bを半音下にすればいい=フラットを作ればいい」と考え、臨時記号を使った「F# 」と「B♭」の音が誕生します。
そして徐々にフラットやシャープの数が増えていき、最終的には現在の「どの音にもシャープ・フラットの音が存在する」「どの音も、どの音のシャープ・フラットになり得る」という考えに至りました(EはFのフラット、CはBのシャープになるなど)。
シは名前がないだけで実際に使われてはいた
シに名前はついていませんでしたが、実音としてシの音は歌われていたようです。
それでは名前が付くまでの間、どのようにしてシを表記していたのかというと、別の音名に言い換えて対応していました。

上記の楽譜を見ると、シやシ♭はヘクサコードの種類によって呼び方が変えられていることがわかります。
Durumのとき:ミ
Naturaleのとき:レ
Molleのとき:ファ
このように読み替えていたため、シという名前がついていなくても音を理解することができていました。
モードの使い方や使いどころに悩んでいる方におすすめの方法
ここまででモードの解説をしてきましたが、モードの使い方や実践方法で悩んでいる方も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、以下3つの方法です。
- 身近なポップスから学んでみる
- 映像音楽やゲーム音楽を作ってみる
- DTMレッスンでフィードバックをもらう
モードの実践におすすめの方法1:身近なポップスから学んでみる
まずは、親しみやすいポップスやロックのコード進行にモードを取り入れてみるのがおすすめです。
こちらの記事でコード進行にモードを取り入れる方法をまとめていますので、ぜひ参考にしてください🔻
モードの実践におすすめの方法2:映像音楽やゲーム音楽を作ってみる
実は映画音楽やゲーム音楽では、モードがたくさん使われています。
当サイトではモードを使ったゲーム音楽について解説していますので、ゲーム音楽にチャレンジしながら実践してみるのもおすすめです。
より本格的な映像音楽・ゲーム音楽にチャレンジしたい場合は、プロが愛用する高品質の音源をそろえることが非常に重要です。
特にオーケストラ系の楽器や民族楽器は音源のクオリティが非常に重要ですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてみてください🔻
モードの実践におすすめの方法3:DTMレッスンでフィードバックをもらう
理論の教科書を読むのと自分の引き出しとして身につけるのとでは、やはり大きなギャップがあります。
身近にモードを熟知している人はおそらく少ないと思いますので、「ちょっと質問してみたい」「他に方法がないかアイデアが欲しい」という場合に行き詰まってしまうこともあります。
そこでおすすめしたいのが、DTMレッスンでプロからフィードバックをもらう方法です。
DTMレッスンでは定期的にプロからフィードバックをもらえるだけでなく、プロとして実践の場で使われているテクニックまで教えてもらうことができます。
そのため、ネットに載っていない驚きのテクニックも教えてもらうことができます。
下記の記事でおすすめのDTMレッスン・教室をまとめていますので、ぜひチェックしてみてください🔻












