今回は、The Cosmic Academyが解説する「ジャンル別キックドラムの解説」をまとめました。
キック(バスドラム)は、特にダンスミュージックにおいて非常に重要な楽器の1つです。
そのため、周波数帯域や音の長さにも気をつけながら制作することで、さらにそのジャンルに適したサウンドに仕上げやすくなります。
ここからは、テックハウス・メロディックテクノ&ハウス・ドラムンベース・アフロハウス・テクノ・ダブステップ・トランス・ハードコアの、それぞれのキックの作り方のコツをご紹介します。
はじめに:スペクトラムとヒートマップの見方
はじめに、今回の解説で使うスペクトラムとヒートマップの見方について解説します。


上記の画像は、スペクトラムです。
今回の解説では色を2色に分けて解説をします。
色付きの部分:キックのスペクトラム
グレー:キックを除いたその他すべての音のスペクトラム
基本的に、グレーのスペクトラムの低音域はベースが多くを占めています。

上記の画像は、ヒートマップです。
上が高音、下が低音を表しており、色が赤くなるほど音量が大きく出ており、青くなるほど音量が小さいことを示しています。
上記画像は下側=低音(40~100Hz)が赤くなっているため、低音がとても大きく出ているということになります。
テックハウスのキックの作り方とコツ
まずは、Beatportでリリースされているこちらのテックハウスの楽曲3つのキックを分析してみます。

スペクトラムで見てみると、2番目(中央)のキックは、低音(左側)において特定の周波数帯域だけがグンと伸びています。
一方で、1番目と3番目のキックの低音は全体的に平らになっています。
これは、楽曲全体で聴いたときのバランスを考えるとその理由がわかります。
テックハウス:1曲目のキックを分析

1つ目の楽曲をスペクトラムで見てみると、上記画像のようになります。
下側=低音(40~100Hz)が赤くなっているため、低音がとても大きく出ているということになります。

そのため、ベースはキックよりも少し高い音域にピークを持ってきていることがわかります。
キックとベースがぶつからないように、上手に周波数帯域を住み分けています。
テックハウス:2曲目のキックを分析

2曲目のキックを見てみると、1曲目のキックよりもピークが大きく跳ね上がっていることがわかります。
キックが大きい代わりにベースが控えめになっているため、キックの根幹となる周波数帯域だけが大きくなっているように見えます。
テックハウス:3曲目のキックを分析

3曲目のキックを見てみると、これまでの楽曲よりも低音域の音量がかなり控えめになっていることがわかります。
先ほどの2曲目はキックが大きくベースが控えめでしたが、この3曲目はその逆で、ベースはかなり音量が出ています。
テックハウスのキックの分析まとめ
以上3つのキックをまとめると、それぞれこのような特徴があります。
1・3曲目:キックとベースの根幹となる音域を棲み分けて両方同じぐらいの音量
2曲目:キック大きめ、ベース小さめ
テクノのキックの作り方とコツ

次は、テクノのキックを分析します。
こちらの3曲のスペクトラムを見てみると、いずれも50Hz~200Hzまでキックが出ていることがわかります。
これは、テクノでは「ダカダカ」「ゴロゴロ」という激しい音が含まれることが多いためです。
それでは、1つ1つ分析していきます。
テクノ:1曲目のキックを分析

1つ目の楽曲のキックを見てみると、まず40~200Hz付近に大きなエネルギーがあることわかります。

そして、キックの間にも赤く染まった部分があります。
これは、テクノでよく見られる「ダカダカ」「ゴロゴロ」という音の成分です。
おおよそ100Hz付近に大きなエネルギーを持っていることがわかります。
テクノ:2曲目のキックを分析

2曲目も同様で、キックは30~100Hzの間が大きく出ていて、キックの合間に「ダカダカ」「ゴロゴロ」の音が挟まれています。
テクノ:3曲目のキックを分析

3曲目のキックは、60Hz付近にピークが来ており、100~200Hz付近の音量は控えめになっています。
60Hz付近を大きくする代わりに、100~200Hz付近の音量を減らして調整しています。
メロディックテクノ・ハウスのキックの作り方とコツ

次は、メロディックテクノとハウスのキックを分析します。
メロディックテクノ・ハウス:1曲目のキックを分析

1つ目の楽曲のキックは、ベースよりも大きめに出ています。
ベースは比較的広い範囲の周波数で鳴っていますが、音量はキックほど出ていません。
メロディックテクノ・ハウス:2曲目のキックを分析

2曲目の楽曲も、ベースは大きく出ていないことがわかります。
メロディックテクノ・ハウス:3曲目のキックを分析

3つ目の楽曲は、キックもベースも両方大きめに出ています。
ダブステップのキックの作り方とコツ

次は、ダブステップのキックを分析します。
ダブステップでは、ベースを目立たせるためにキックが場所を空けておくスタイルが多い傾向にあります。
ダブステップ:1曲目のキックを分析

1つ目の楽曲のキックは控えめで、ベースがかなり大きく出ていることがわかります。
ダブステップ:2曲目のキックを分析

2つ目の楽曲も、キックよりベースが大きく出ています。
特にベースのサブベース(超低音域)が非常に大きく出ていることがわかります。
キックでは、ここまでのサブベースをコンスタントに鳴らすことはないでしょう。
ダブステップ:3曲目のキックを分析

3曲目はキックが4つ打ちのため、低音域は音量が出過ぎないようになっています。
先ほどの1・2曲目と比べると、あまり音量が出てません。
ドラムンベースのキックの作り方とコツ

次は、ドラムンベースのキックを分析します。
ドラムンベースは全体的にキックの音量があまり出ていないため、相対的にベースが大きく聞こえるようになっています。
ドラムンベース:1曲目のキックを分析

1曲目のキックは、ベースよりも高い音域(60Hz付近以上)をピークにしており、音量もベースほど出ていません。
ドラムンベース:2曲目のキックを分析

2曲目のキックは先ほどよりもさらに高い音域で、70Hz付近をピークにしています。
また、ベースは2箇所(40Hzと80Hzの1オクターブ違い)にピークを置いています。
ドラムンベース:3曲目のキックを分析

3曲目もまた、キックよりもベースの方が音域が低く、音量も出ていることがわかります。
トランスのキックの作り方とコツ

次は、トランスのキックを分析します。
トランスはオフビートに来るベースにスペースを空けるため、キックの長さは短めになる傾向にあります。
また、ドラムンベースのキックは-30dB程度の音量であることが多いですが、トランスは-27dB程度になります。
トランス:1曲目のキックを分析

1曲目のキックは、ベースとキックがほぼ同程度の音量が出ています。
トランス:2曲目のキックを分析

2曲目のキックも、ベースとキックがほぼ同程度の音量が出ています。
オフビートに来るベースにスペースを空けるために、キックは短めで、キックとキックの間にベースが上手く入り込んでいます。
トランス:3曲目のキックを分析

3曲目も同様のパターンで、キックとベースの音量がほぼ同じ+短めのキック+キックの間にベースが入り込む形になっています。
アフロハウスのキックの作り方とコツ

次は、アフロハウスのキックを分析します。
このジャンルは基本的に24~27dB程度の音量で、先ほどのトランスよりもキックが少し大きめになる傾向にあります。
アフロハウス:1曲目のキックを分析

1曲目のスペクトラムを見てみると、このジャンルならではの特徴が見受けられます。
紫色のスペクトラムは基本的にはキックを表していますが、この曲ではタムも含まれています。
そしてこの曲では、キックよりもタムの方が低い音域が含まれているのが大きな特徴です。
アフロハウス:2曲目のキックを分析

2曲目は、ベースの音が長め+大きめで、キックが短めになっています。
アフロハウス:3曲目のキックを分析

3曲目のキックは40Hz付近をピークにしており、ベースは100Hzをピークにしています。
キックとベースで1オクターブ以上の間隔が開いています。
ハードコアのキックの作り方とコツ

次は、ハードコアのキックを分析します。
ハードコアのキックはこれまでご紹介したジャンルとは大きく異なり、低音域だけでなく、中〜高音域にディストーションがかかっているのが大きな特徴です。
ハードコア:1曲目のキックを分析

1曲目のキックは、低音域も「ブォーン ブォーン」としっかり出ていながらも、中~高音域もはっきり聞こえます。
ハードコア:2曲目のキックを分析

2曲目も同様で、キックは低音域を担当しながらも、中~高音域でリズム楽器としての役割も果たしています。
ハードコア:3曲目のキックを分析

3曲目の楽器は先ほどの2曲とは異なり、キックとベースが一体となって聞こえるパターンです。
キック(バスドラム)のサウンドデザインにおすすめのプラグイン
最後に、キック(バスドラム)のサウンドデザインにおすすめのプラグインを3つご紹介します。
いずれも全ジャンルのキックに対応しており、今回ご紹介したキック特有の細かい調整ができる万能プラグインですので、ぜひチェックしてみてください!
The Him DSP社「Kick Ninja」
世界的な人気DJのHardwellやNicky Romero、Sam Feldtなども絶賛したプラグインで、好きなサンプルや内蔵のオシレーターを使って、ピッチや音量(長さ)を自由に調整できるプラグインです。
キックが波形とグラフで表示されるため、視覚的にサウンドデザインをすることができ、初心者の方でも使いやすくなっています。
ディストーションやコンプレッサーなどのエフェクトが使えるのも嬉しいポイントです。
Plugin Boutique社「BigKick」
好きなサンプルを組み合わせて、自分だけのオリジナルキックを作ることができるプラグインです。
各サンプルに対してEQを使えるだけでなく、Attack・Hold・Decayなど音の長さを調整したり、ピッチを修正することもできます。
プリセットも豊富ですので、キックのサンプルをあまり持っていない方でもプロクオリティのキックを作成することができます。
Tracktion社「Dawesome Chop Suey」
キックを「Transient」「Body」「Tail」の3フェーズに分けてサウンドデザインができるプラグインです。
キックのサウンドデザインに精通しているドイツの開発者Peter V(Dawesome)とテクノアーティストBjörnがコラボして開発しているため、まさに「この機能が欲しかった」がたくさん詰まっています。
非常に見やすいデザインで小難しいパラメーターはなく、プリセットも非常に豊富ですので、初心者の方にもおすすめです。
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にもキックやベースのサウンドデザインやミックスのコツをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください🔻


