【DTM】808系のベースとキックを上手にミックスする4つの方法
- 2024.06.22
- 2024.11.24
- ミキシングのコツ
今回は、Busy Works Beatsが解説する「キックと808系ベースのミックスの仕方」をまとめました。
808系のサウンドは、ヒップホップやトラップなどでよく使われる「重低音がズシンと来る音」です。
そこでこの記事では、キックとベースの重低音をどちらもはっきり聞かせるためのミックスのコツを4つご紹介していきます。
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まずは808系ベースとキックの音を聞いてみよう
「そもそも808系のベースってどんな音がするの?」という方のために、実際の音をお聞かせします。
「ブーン」とずっしり重みのあるサウンドであることがお分かりいただけると思います。
0:29~0:35
そして、ヒップホップやトラップでよく使われるパンチのあるキックもDAWに取り込んでみます。
0:40~0:50
理想は「パンチのあるキックと、ブーンと重厚感のあるベースの音を上手にミックスすること」です。
しかし、このままでは両者の音域が近く、「パンチ」と「重厚感」を共存させるのが難しい状態です。
こんなときは、一体どうしたらいいのでしょうか?
ミックスのコツ1:「パンチ」と「ボディ」を分けて考える
808系ベースとキックをミックスするときに重要なのは「パンチ」の部分と「ボディ」の部分を分けて考えることです。
「パンチ」はいわゆる「バンッ」「ダンッ」というアタックの部分で、「ボディ」は「ブーン」という重みのある部分です。
ちなみに808系のベースは、音の一番はじめの部分で高速でピッチを下げることにより「ボンッ」というパンチを出しています。
パンチのあるアタック音がするので「キックのサンプルを混ぜているのではないか」と思う方もいるようですが、実はそうではありません。
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ミックスのコツ2:基音を確認して調整する
808系ベースとキックをミックスするときに重要なこと2つ目は「基音を確認すること」です。
基音:ファンダメンタルフリークエンシー
例えば、808系ベースの音をEQで見てみましょう。
1:38~1:47
EQのスペクトラムを見てみると、43Hz付近が最も音量が出ている部分だということがわかります。
つまり、この43Hzが「基音」であり、この音のアイデンティティとなる部分…最も重要な周波数です。
それでは、同様にキックの基音も確認してみましょう。
2:12~2:17
スペクトラムを確認すると、65Hzが最も音量が出ている部分でした。
つまり、キックにおいてはこの65Hzが「基音」であることわかります。
基音が近いとマスキングが起こりやすい
このベース(43Hz)とキック(65Hz)のように、基音の周波数が近いとマスキングが起こりやすくなります。
マスキングが起こってしまうと、例えば2つ同時に音を鳴らしていても片方の音が消えてしまったり、両方とも音が聞こえにくくなってしまいます。
例えばこのように129Hzの音と140Hzの音を同時に鳴らすと、140Hzの音が聞こえにくくなってしまいます↓
マスキングの例(2:52~4:16)
マスキングを解消するには「住み分け」が重要
このようなマスキング問題を解消するには「住み分け」が重要です。
基音の周波数が近い音を同時に鳴らさないようにすると、片方の音(もしくは両方の音)が打ち消されず、両方の音がしっかり聞こえるようになります。
言い換えると「どの楽器にどの周波数を担当させるかを決める」ということになります。
サブベースを住み分けする例
それではここからは、キックとベースをEQで住み分けする例をご紹介します。
今回使っている808系ベースとキックの基音はそれぞれ「43Hz」と「65Hz」で、両方ともサブベース(超低音域)に該当します。
両方の楽器に同じ周波数の音が入っているとマスキングが起こりやすいので、どちらか一方だけにサブベースを含ませたいところです。
今回は808系ベースがボディ担当(重厚感)、キックがパンチ担当(アタック感)にしたいため、キックの方のサブベースを少し削ります。
このように両方の楽器に同じ周波数帯域の音が含まれている場合、EQのシェイプを「カット」にしてガッツリ削らず、「シェルフ」や「ベル」で少し削るだけでもOKです。
※「カット」ではなく「シェルフ」でキックのサブベース部分を削っている例
大切なのは、必要な音を必要なだけ含ませておく・残しておくということです。
被っている周波数帯域を見つけたら、「MAXでどれぐらい削っても大丈夫か」「どれぐらい減らすと両者の存在感を維持できるか」を考えながら調整してみましょう。
キックとベースをEQで住み分けする例(4:53~5:30)
ミックスのコツ3:クリッパーで厚み・重みのあるサウンドに調整
EQで周波数帯域の住み分けを行った後は、トランジェント(アタック部分)をクリッパー(Clipper)で調節してもよいでしょう。
例えばIK Multimedia社「T-RackS」のクリッパーを使って、トランジェント部分を少しカットし、キックとベースの波形全体が少し四角い形になるように調整します。
6:08~6:18
個別で聞くと物足りないが、同時に聞くとパーフェクト
それでは、ここまで調整したサウンドを個別で確認してみましょう。
6:23~6:28
キックの方が軽く「ポンッ」という感じに、ベースの方が「ボーン」とやわらかく重みのあるサウンドになりました。
ベースはボディ担当なので、重厚感はありますがアタック感がありません。
個別で見ると物足りなく感じてしまいますが、それぞれの役割をしっかり住み分けさせているため、両方同時に聞くとパンチとボディが完璧に揃っているサウンドになります。
さらにクリッパーをON/OFFさせると、クリッパーがいい仕事をしてくれていることもわかります。
両方同時に聞くと…(6:38~6:57)
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ミックスのコツ4:波形を拡大して位相の打ち消し問題をチェック
ここで、現状のキックとベースを同時に鳴らしたときの波形を確認してみましょう。
波形を拡大してよく見てみると、トランジェントの部分(音のはじまりの部分)に一瞬だけ波形が小さくなっている部分があります。
これはマスキングが起こってしまい、音がキャンセルしあっている=音量が小さくなっているためです。
EQではしっかりとマスキングに対処しているので、ここでは位相の打ち消しが発生していると思われます。
片方の波形がプラス(ポジティブ・上方向)、もう片方の波形がマイナス(ネガティブ、下方向)に向いている場合は、その波形の形やタイミングがぴったり揃ってしまうと、波形がキャンセル=音量がゼロになってしまうことがあります。
位相の打ち消し問題を解消する方法
位相の打ち消し問題を解消するには、シンプルにどちらか一方の音のスタート位置をズラしましょう。
ほんの数ミリ動かすだけでも大きな違いが出ることがあります。
「どちらか一方のスタート位置をズラす→聞いてみる」を繰り返し、どの位置だと最も音がはっきりと聞こえるか(音量が大きく聞こえるか)を確認しましょう。
位相の打ち消し問題を解消する例(7:49~8:51)
それでは、サンプルのスタート位置をズラす前と後の波形を比較して確認してみましょう。
調整前の波形はトランジェント部分の途中に音が小さくなっているところがありましたが、調整後にはありません。
トランジェントが崩れずに、パンチを保ったままボディがしっかり鳴っているサウンドにすることができました。
クリッパーで最終調整
位相の打ち消し問題も解消したら、最後にクリッパーで最終調整をします。
些細な違いではありますが、クリッパーを使った時の方が少し波形が丸くなりました。
※上がクリッパーなし、下がクリッパーあり
それでは、最後に完成した音を聞いてみましょう(11:49)
パンチとボディを両方兼ね備えたサウンドになりました!
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DTMで808系のベースとキックを上手にミックスする方法まとめ
以上が「808系のベースとキックを上手にミックスする方法」でした。
・EQで周波数帯域の住み分けをする
・クリッパーで音の形を整える
当サイトでは他にもミックスに関するコツをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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