音楽ジャンル解説

【音楽ジャンル】ブルーグラス(Bluegrass)とは?【歴史・定義編】

今回は英語版wikipediaの「ブルーグラス」をまとめました。

この記事ではPart2として、ブルーグラスの生い立ちや具体的な言葉の定義などを解説します

ブルーグラスの誕生

ブルーグラスは、北アメリカのフォーク音楽「オールドタイムミュージック」やアパラチア地方の伝統音楽の要素から誕生しました。

アパラチアンミュージックについてはこちらの記事で解説しています

アパラチア地方はイングランド・アルスタースコットから来た移民が多く住んでいる場所で、ここには彼らの故郷の伝統音楽がもたらされました。

ジグやリール、フィドルなどのサウンドは、この音楽の発展のキーとなる部分です。

ジグ

"The Kesh" Irish Jig for Piano

リール

[Celtic Dance] Tabache - The Gneevguillia Reel

一方、黒人のミュージシャンたちはこの地域にバンジョーをもたらします。

それから月日が経ち、1945年になると、Earl Scruggsが3フィンガーロールの奏法を編み出し、速いテンポで素早く音を奏で、「ニューグラス(New Grass)」の特徴である速いテンポで生き生きとしたサウンドを保てるようになります。

18世紀にブラジルやアイルランドからの住民がアパラチアにやってくると、彼らもまた故郷の音楽をアパラチアにもたらすことになります。

この伝統音楽は、イングランド・スコティッシュバラッドなどの伴奏を伴わない「語り」や、フィドルを伴うダンスミュージックで構成されています。

多くの昔のブルーグラスの楽曲は、イギリスのブリテン諸島から直接入ってきたものです。

「Pretty Saro」「Pretty Polly」「Cuckoo Bird」「House Carpenter」などのアパラチアンブルーグラスバラッドの楽曲は、イングランドから来ていたり、イギリスの伝統バラッドのメロディーや歌詞を守っているものもあります。

Iris DeMent singing Pretty Saro from Songcatcher
Dock Boggs - Pretty Polly (1927)
Clarence Ashley - "Cuckoo Bird"
House Carpenter

アパラチアでは、「Leather Britches」「Soldier’s Joy」などブルーグラスフィドルの楽曲で人気のものもあり、これらはスコットランドをルーツとしている楽曲です。

Leather Britches
Soldier's Joy

ダンスチューンの「Cumberland Gap」は、スコティッシュバラッドの「Bonnie George Cambell」で使われた伴奏から派生したとされています。

Cumberland Gap
Bonny George Campbell

現在、ブルーグラスはバックダンシング(buckdancing)、フラットフッティング(flatfooting)、クロッギング(clogging)などで知られるルーラルダンススタイルの伴奏でよく使われます。

Buck Dancing at Summertown Bluegrass Festival
Flat-footing
My God Aren't These 1960s Bluegrass Clog Dancers Magnificent To See?

ブルーグラスのサウンドが農村・山脈地方だけでなく都市部にも伝わるにつれ、オーディオ録音技術が出現した後、ダンスのためではなく、この音楽自体を聞きたいと思う人も増えてきました。

1948年になると、ブルーグラスは戦後のカントリー・ウェスタンミュージック業界にも現れ、この時代は「黄金時代」「トラディショナルブルーグラスの源泉」と特徴づけられるようになります。

この初期の頃からブルーグラスはアマチュアのミュージシャンにもプロのミュージシャンにも録音・演奏されていました。

アマチュアのブルーグラスミュージシャンたちや「パーキングロットピッキング(駐車場でアマチュアのブルーグラスミュージシャンが演奏すること)」のようなトレンドは無視できないほど重要ですが、スタイルの方向性を確立したのはツアーミュージシャンたちでした。

ラジオもブルーグラスには大きな影響を与え、一つの確立したサブジャンルへと進化することに貢献しました。

ブルーグラスという言葉の定義

ブルーグラスは、最初はフォークミュージックのカテゴリに含まれており、その後に「ヒルビリー」という名前に変わりました。

ヒルビリーミュージックについてはこちらで解説しています

1948年になると、ブルーグラスはラジオのチャートでの表記のため、「カントリー・ウェスタン」のカテゴリ下に入ります。

ブルーグラスにおいて影響力の強い作家たちは、ブルーグラスを「1930年代から1940年代の間に、何らかのスタイルや形式に由来するものとして詳細に説明を行います。

しかし、「ブルーグラス」という名前は1950年代後半まで音楽を表す単語として正式に現れることはなく、1965年の「Music Index」で初めて使われます。

Music Indexでは「ブルーグラスミュージック」と呼ばれ、この言葉は読者に直接「カントリーミュージック・ヒルビリーミュージックの欄参照」と促しており、これは1986年まで続きます。

ブルーグラスが最初に独立した単語として解説されたのは、1987年でした。

多くのブルーグラスの楽曲のトピックや物語のテーマは、フォークミュージックを彷彿とさせます。

多くの「ブルーグラス」とみなされている楽曲は、ブルーグラススタイルで演奏されるフォークあるいはオールドタイムミュージックとして法的に分類されている古い楽曲です。

ブルーグラスとフォークの間の関係は、学術的にも研究されています。

たとえば民謡学者のNeil Rosenberg博士は、ブルーグラスのファンやミュージシャンたちのほとんどは、伝統的なフォークソングやオールドタイムミュージックに精通しており、これらはショーやフェスティバル、ジャムなどで演奏されていたと言及しています。

「ブルーグラス」という言葉の由来

「ブルーグラス(Bluegrass)」という名前は、アメリカでポア属の植物に名付けられたもので、最も有名なのは「ケンタッキーブルーグラス(西洋芝)」です。

また、ケンタッキー州の中心部の大きな地域は「ブルーグラス・リージョン(ブルーグラス地域)」とも呼ばれています。


画像:ケンタッキーブルーグラス(https://www.britannica.com/plant/Kentucky-bluegrass)

「ブルーグラス」という名前が使われ始めた起源ははっきりとしていませんが、1950年代終わり頃だとされています。

バンドの名前「Blue Grass Boys」から来ており、このバンドはブルーグラスでも有名なバンドで、1939年にBill Monroeをリーダーとして結成されました。

このため、リーダーのBill Monroeは「ブルーグラスの父」とよく呼ばれています。

Bill Monroe & The Blue Grass Boys - Uncle Pen (1965).

ブルーグラススタイルの音楽は1940年代中盤からありました。

1948年には、the Stanley Brothersがthe Blue Grass Boysのスタイルの「Molly and Tenbrooks」をリリースし、これが間違いなくブルーグラウは が独自の音楽形式として現れた瞬間でした。

1946年から1948年までのMonroeのバンドは、ギタリストのLester Flatt、バンジョー奏者のEarl Scruggs、フィドル奏者のChubby Wise、ベーシストのHoward Wattsをフィーチャーしており、「オリジナルブルーグラスバンド」とも呼ばれていました。

彼らは今日にも残る、ブルーグラスの確かなサウンドや楽器の構成を作り出していたのです。

一部の意見では、Blue Grass Boysだけがこのスタイルの音楽をプレイしており、ジャンルではなくあくまでも「彼ら独自のサウンド」と考える人もいます。

1967年には、FlattとScruggsが「Foggy Mountain Breakdown」をリリース。

バンジョーのインストゥルメンタルの楽曲で、世界中でリスナーが広がり、映画「Bonnie and Clyde」でも頻繁に使われました。

Earl Scruggs And Friends - Foggy Mountain Breakdown (2001)

以上でブルーグラスの解説は終了です。

DTMなどで作曲をしている方は、こちらの教則本にある楽譜を見ながらマネしたり、実際に打ち込んでみると非常に勉強になるのでおすすめです。

また当サイトでは、他にもブルーグラスに関わりのある音楽ジャンルについて解説していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は「FLUX:: Pure Analyzer Systemの使い方」をまとめました。このプラグインは、世界中の音楽プロデューサー・DTMerに愛用されているアナライザープラグインです。とてもキレイな見た目をしていますが、いったいどのようなプラグインで、どのように活用すればいいのでしょうか?

2

今回はCableguys社「ShaperBox3」を使うコツをまとめました。実際にBig ZがCableguys社「ShaperBox3」をどのように活用しているのか、おすすめの使い方を5つご紹介します。

3

今回は、Doctor Mixが解説する「歴代のシンセサイザーTOP10」をご紹介します。みなさんがよく耳にする「あの音」は、実はこれらのシンセサイザーの音かも…!?「聞いたことある!」「あの音って、このシンセの音だったんだ!」と驚くこと間違いなしです!

4

今回は音楽プロデューサー・オーディオエンジニアのJustin Collettiが解説する「音をもっと左右に広げる方法」をまとめました。Justinは音楽プロデュース、ミキシングエンジニア、マスタリングエンジニアなど、幅広い分野で活躍しています。そんな彼が、DTMで音を左右に広げる方法を5つ解説します。

5

今回は、DTMでおすすめのオーケストラ系楽器がすべて使える音源をまとめました。1つ購入するだけで弦楽器・金管楽器・木管楽器・打楽器すべてが揃うだけでなく、世界中のプロが愛用する高品質の製品ばかりですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてみてください。

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

今回はFabfilterが解説する「ドラムミックスに使えるサイドチェインのコツ」をまとめました。例えばドラム全体をまとめたグループをミックスするとき「スネアの高音域を足したいけど、シンバルとハイハットの高音域は足したくない」ということがあるでしょう。そんなときPro-MBを使えば、スネアの高音域だけをブーストできます!

8

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

9

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

10

今回は「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。 多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置きにするべきか、横置きにするべきか悩む方も多いでしょう ...

-音楽ジャンル解説
-,