【DTM・MIX】ノイズフロア(Noise Floor)とは?【今更聞けない】

今回はこのような疑問にお答えする内容です。
よりクオリティの良い楽曲を作るためにはぜひ知っておきたいこの単語、ぜひ今日でマスターしてください!
※今回は、Pro Toolsを使って解説していきます
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はじめに:ダイナミックレンジとヘッドルーム
DTMをしていると、「ダイナミクスレンジ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは最小音量と最大音量の範囲を表す言葉です。
また「ヘッドルーム」という言葉も聞いたことがあるでしょうか?
これは「今鳴っている音と、ダイナミクスレンジの最大音量までにあるスペース(余白)を意味します。
例えば、ダイナミクスレンジが0dBから10dBまでで、今鳴っている音が6dBの音量だった場合、ヘッドルームは4dBとなります。
ノイズフロアはいつ発生する?
実は「ノイズフロア」は、前述のダイナミクスレンジが最小値の場合に起こります。
この概念はアナログレコーディングの時代からあり、「ちょうどいい信号レベル」で録音するためには重要な概念なのです。
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アナログ信号からデジタル信号に変換する
現代では、マイクでアナログ信号を拾い、そこからオーディオインターフェースやDAWを通し、デジタル信号に変換します。
アナログ信号とは人間の声や楽器の音など「人間の耳に実際に聞こえる音」のことで、デジタル信号はDAWやコンピュータで理解できるようにするための信号です。
Bit Depth(ビット深度)
このアナログ信号をデジタル信号に変換するときは、「その音はどれぐらいの音量なのか」という値をデータ化するのですが、この時に使われるのが「ビット深度(Bit Depth)」です。
ビット深度は「デジタル信号に置き換えるとき、どの範囲で音量を表現するか」を示すものです。
画像:動画より
例えばPro Toolsだと、セッションの設定にこういった項目が表示されます。
左上の上から2番目に「Bit Depth」という項目があり、数値は16bitになっています。
このビット深度が大きければ大きいほど、より大きなダイナミクスレンジで音を再生できます。
多くの場合は、16bit、24bit、32bitを選ぶことができます。
ビット深度からダイナミクスレンジを計算する
ビット深度からダイナミクスレンジをデシベル(dB)の単位で計算する場合は、ビット深度の値に6をかけた数字になります。
例えば16bitの場合は「16 x 6 = 96dB」、32bitの場合は「32 x 6 = 144dB」となります
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ノイズフロアのボトムエンド
つまり、16bitの場合は「フルスケールが0dBに対し、ノイズフロアのボトムエンドが-96dB」ということになります。
「0dBフルスケール」は、クリッピング(音割れ)せずに再生できる最大音量のことです。
DAWの各トラックのメーターも、0dBを超えるとメーターの色が赤くなるはずです。
ここまでは言葉だけでの説明なのでちょっとわかりにくいと思うので、実際に音を聞いて、DAWの画面で確かめてみましょう。
ノイズフロアを実際に見てみよう
まずはシグナルジェネレーターでシンプルなサイン波を鳴らし、同時にEQでスペクトラムを確認してみます。
音量は-20dBです。
(ずっと鳴らしているとうるさいので一旦ミュートにしていますが、音の信号自体は出ているので、EQにはスペクトラムが出ます)
3:24~3:53
1khz付近で音が鳴っていることがわかります。
ピンポイントに山ができていますね。
画像:動画より
次は、シンプルなノイズをサイン波と同時に鳴らしてみます。
ノイズなので、どの周波数にも同等に・ランダムに音が鳴っていることがわかります。
よーく見ると、先ほどのサイン波のところだけ少し盛り上がっています。
画像:動画より
さて、一旦サイン波だけ鳴らして、シグナルジェネレーターを見てみましょう。
サイン波を鳴らしている今は、レベルが-20dBFSになっています。
ちなみに「dB」の後についている「FS」は、先ほど少しお話しした「フルスケール」の略です。
画像:動画より
次は、このレベルを0dBFSにしてみましょう。
画像:動画より
ノイズを鳴らしていないのに、0dBFSにしただけで、1khz以下でノイズらしきものが出てきています。
サイン波だけを-20dBで鳴らした時はなかった音が、なぜか鳴っています。
これが「ノイズフロア」です。
少しだけであれば良いですが、あまりにこのノイズフロアの音量が大きかったり、本来鳴らしたい音(この場合はサイン波)の音色や音量が変わってしまうようであれば、しっかり調整する必要があります。
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16bitのプロジェクトで-96dB以下にしたら?
もう少し掘り下げて見てみましょう。
まずは先ほどと同じく、1khzのサイン波を鳴らします。
だんだんレベルを下げていき、-90dBまで落としてきます。
EQを見ると、小さい山程度のスペクトラムになっています。
画像:動画より
ここで思い浮かぶ疑問が「このプロジェクトが16bitだった場合、さらに音量を下げたらノイズフロアに近づくのか?」ということ。
ビット深度が16bitの場合はダイナミクスレンジが0から-96dBですから、この「-96dB」を超えたらどうなるのでしょうか?
それでは実際に、-120dBにしてやってみましょう。
画像:動画より
EQを見ると、スペクトラムには何も映っていません。
しかし完全に消えたわけではありません。
先ほどまではシグナルジェネレーターのレベルを下げましたが、トラック自体の音量を上げて確認してみましょう。
Trimプラグイン(Gain)を何個も使ってみてみると、ほんのわずかに音が残っていることがわかります。
画像:動画より
ではさらにTrimプラグインを重ねて使って見てみてみましょう。
この音量でもノイズフロアも発生しているのでしょうか?
画像:動画より
シグナルジェネレータの音量は-120dBで、トラック自体の音量フェーダーは0dB、そしてシグナルジェネレータで音量を下げた分を取り戻すためのTrimプラグインを使った結果がこちら。
ノイズは発生しておらず、純粋なサイン波のスペクトラムが確認できます。
ノイズフロアが発生するはずの音量なのに、なぜノイズが出ない?
これはなぜかというと、セッション(プロジェクトファイル)の中では、16bitではなく「32bit float」で処理されているからです。
では最初に見たDAWの設定の「16bit」は何かというと、これはコンバージョン処理をしている間に使われる固定の設定です。
(コンバージョンは「変換」という意味で、つまりマイクを使ってレコーディングするときなど、アナログ信号からデジタル信号に変換する処理のことです。)
つまり、私たちがDAWを使って音量を調整したり、EQを使ったりしてもこれは関係なく、全て32-bit floatの処理が行われるのです。
32bit floatって?
32bit float(32bit浮動小数点)だと、基本的にはヘッドルームは無限で、ノイズフロアも最小限に抑えられます。
最小限といっても、「存在しない」ぐらいのレベルまで抑えられます。
そのため、DAWでプラグインを使って音量を上げたり下げたりしてもノイズが発生することはありません。
これが、DAWを使って音楽制作をするメリットといえるでしょう。
逆に言えば、アナログ機材、例えばアナログテープなどを使うと、音量を上げるとテープのヒスノイズなども同時に聞こえてくるはずです。
そのため、アナログ機材などを使う場合はノイズフロアにも注意して使う必要があります。
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