フランジャーとコーラスの違いとは?【DTM・エフェクト】
- 2025.01.26
- 2025.01.27
- 用語解説

今回は、Audio Universityが解説する「フランジャーとコーラスの違い」をまとめました。
ギターやボーカル、シンセサイザーなどに使われるエフェクト「フランジャー」と「コーラス」ですが、実際に使ってみると非常に似ているように感じるでしょう。
この記事では、この2つのエフェクトの違いについて詳しく解説していきます。
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フランジャーとコーラスの違いとは?
はじめに、フランジャーとコーラスの違いをまとめてご紹介します。
全く同じ2つの音を作り、片方のタイミングをほんの少しだけズラす
全く同じ2つの音を作り、片方のタイミングとピッチを少しズラす
つまりこの2つは「元の音を複製し、片方のタイミングをズラす」という点では共通していますが、「タイミングのズレ具合」と「ピッチもズラすかどうか」が違います。
それでは、ここからは2つのエフェクトの原理・しくみについて解説します。
はじめに:波形と位相についてのおさらい
フランジャーとコーラスの違いを知るため、まず波形と位相についておさらいしましょう。
下記画像のように全く同じ波形が2つ合体すると、音量はそのまま大きくなります。

2つの波形がほんの少しだけズレた状態で再生すると「コームフィルタリング」という現象が発生します。

コームフィルタリングが発生すると、一部の周波数帯域で位相の打ち消しが発生してしまうため、少し音が変化します。
上記の動画を見てみると、フランジャーやコーラスエフェクトをかけたときと同じような音に聞こえます。
つまり、フランジャーとコーラスに共通しているのは「位相をズラして音を変化させている」という点です。
そしてフランジャーとコーラスの大きな違いは、この「位相のズラしかた」にあります。

ちなみにコームフィルタリングは、上記画像のように一部の音だけ音量が下がります。
このグラフが髪をとかす櫛(くし)のように見えることから、コームフィルタリングという名前がついています。
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アコースティックギターの音をズラして聞いてみよう
それではここで、アコースティックギターの音をズラして音を聞いてみましょう。
Soundtoys社のディレイプラグイン「EchoBoy」を使い、音をどれぐらいズラすとどのように聞こえるのか実験してみます。
フランジャー系のプリセットを使った場合
このプラグインには「Pseudo-Flange」というプリセットがあるので、まずはこちらを聞いてみましょう。
こちらはディレイプラグインなのですが、ディレイで鳴らす音をズラしただけでフランジャーをかけたときのような音になりました。
「ヒュゥゥゥ」というホイッスルのような独特の音が特徴です。
それでは、このプリセットはどんな設定になっているでしょうか?

注目するべきパラメーターは、こちらの3つです。
メインの音が鳴ってから何ミリ秒後にディレイ音を鳴らすか?
Wobble:メインの音の音量によってEcho Timeを少しだけズラす
Feedback:ディレイ音をどれだけ多く鳴らし続けるか
多いほどエコーの数が多くなる
このフランジャー系のプリセットでは、Echo Timeが最小で、Feedbackの量は少ないのが特徴です。
コーラス系のプリセットを使った場合
次は、「CE – 1 Chorus」というコーラス系のプリセットを選んでみましょう。
先ほどよりも「ヒュゥゥゥゥ」という風のような音はかなり減りました。
それでは、このプリセットはどんな設定になっているでしょうか?

Echo Timeは少し長く、Feedbackはゼロです。
Delay Timeを変化させるWobbleはフランジャー系プリセットのときと変わりません。
これを踏まえると、コーラスとフランジャーの違いを生み出しているのは「Echo Time」と「Feedback」であることがわかります。
つまり、音をズラす間隔と、ズラした音を鳴らす回数です。
そして実は、Echo Time(ディレイタイム)によってピッチも変化します。
ディレイタイムを変化させるとピッチも変化する
先ほど「注目するべきパラメーター」として「Echo Time」「Wobble」「Feedback」の3つを挙げました。
このうち、Wobbleはいま鳴らしている音の音量に合わせてわずかにEcho Time(ディレイタイム)を自動的に変化させるパラメーターです。
しかし、そもそもEcho Timeが変わるとどんな効果があるのでしょうか?
実際に聞いてみましょう。
Echo Timeを小さくするほど(間隔を狭めるほど)ピッチが高くなり、大きくするほど(間隔を広げるほど)ピッチが下がりました。
わずかではありますが、Echo Timeを小さくしたり大きくしたり変化させることで、ズラした2つの音をピッチでもズラし、音に変化を加えています。
タイミングもピッチもズレが大きい方が、より左右に広がりのあるサウンドになります。
フランジャーよりもコーラスの方がピッチの変化が大きいですが、フランジャーにもほんのわずかにピッチの変化があります。
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フランジャーの起源は「2つのテープ」
そもそもフランジャーは、テープの時代から使われているエフェクトです。
全く同じ曲が流れる2つのテープを同時に再生し、片方のテープの「フランジ」を指で抑えることで、両者に微妙なズレを生み出していました。
これをプラグインで手軽に行えるようにしたのが、DTMやギター演奏などで使われるフランジャープラグインです。
ディレイタイムを変えてもピッチが変化しないプラグインもある
例えばSoundtoys社の「EchoBoy」のEcho Timeにはいくつかモードがあり、そのうち「Noteモード」にすると、ディレイタイムを変更してもピッチに影響が出なくなります。
Timeモードにすると、Echo Timeによってピッチが変化するようになります。
このように、テープを使っていた時代のようにフランジャーやコーラスエフェクトを再現できるだけでなく、その効果を無効にもできるプラグインもあります。
ディレイプラグインとして使うこともできれば、フランジャー・コーラスエフェクトプラグインとしても使うことができ、とても便利です。
ギターのコーラスエフェクトの使い方
ギターでもコーラスエフェクトを使うことがあります。
主なパラメーターはこちらです。
ディレイプラグインにおける「MIX」や「Dry/Wet」と同じ
EQ:トーン(音色)のコントロール
RATE:数字を大きくするとうねりのスピードが速くなる
DEPTH:数字を大きくするとピッチが変化する音域の幅が広くなる
以上で解説は終了です。
フランジャーとコーラスだけでなく、フェーザーとも比較した解説はこちらの記事でまとめています↓
DTMや楽器演奏でよく使われる「リバーブ」の種類の解説はこちら↓
DTMや楽器演奏でよく使われる「ディレイ」の種類の解説はこちら↓
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