マスタリングのコツ

【DTM】マスタリング入門 Part4【マスタリングコンプレッションの基本】

マスタリングって何?どんなことをするの?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

DTMerにおなじみ、サンプルやプラグインを販売するSpliceが解説する「マスタリング101」をまとめました。

今回はPart4として「マスタリングコンプレッションの基本」を解説していきます。

「マスタリングでは、コンプレッサーはどうやって使えばいいの?」と疑問に思っている方はぜひ最後までご覧ください!

コンプレッションとは?

マスタリングコンプレッションの基本

コンプレッションとは、「ダイナミクスレンジを抑えること」「最も大きな音と小さな音の差をなくすこと」です。

コンプレッションを行うには、コンプレッサーを使うことが一般的です。

コンプレッションを行うと、ダイナミクス(音量が大きい部分と小さい部分の差、抑揚)や「音楽的な動き」は少なくなるデメリットがあります。

反対に、ダイナミクスレンジを小さくしたり、ピーク(突発的に大きな音になる部分)を平らにならすと、曲をより大きな音に聞かせることができます(音圧が上がります)。

コンプレッションをして音圧を上げるべきか、それともコンプレッションをあまりせずにダイナミクスレンジを大きくするべきなのかは、コンプレッサーを使うときによくある悩みです。

マスタリングではリミッターとコンプレッサーを使い分ける

マスタリングコンプレッションの基本

コンプレッションをすると、音にパンチを加えたり、細かい音・小さい音をよりはっきり聞かせたり、満たされたような充実感のあるサウンドにさせることができます。

しかしマスタリングでは、コンプレッションは基本的にラウドネス(音圧)を上げる目的で使われます。

マスタリングエンジニアは曲を大きく聞かせるためにリミッターを使いますが、リミッターだけ使っていると、ポンピングや歪みなどの不必要な効果が生まれてしまいます。

ポンピング:コンプレッションがかかった音から、コンプレッションがかかっていない音に急激に変化してしまい、うねるようなサウンドになってしまう現象

そのため、コンプレッサーとリミッターを使い分ければ、より自然なサウンドを作ることができます。

マスタリングにコンプレッションは必要?

適切にミックスがされている場合は、多くの場合はすでに音量がフラットになっているので、コンプレッサーは必要ありません。

そのため、ミックスを受け取ったらまず自分の耳をよく使って判断しましょう。

もしすでにかなりコンプレッションがかかっているように聞こえるなら、コンプレッションをしない方がよいでしょう。

このとき、効果的なメータープラグインを使うことで、ダイナミクスレンジを明確にすることができます。

前回もおすすめしましたが、PSP社「TripleMeter」はVUメーターの中でも非常に使えるプラグインです。

iZotope社「Ozone」にあるメーターも、LUFSやTrue Peakを把握するのにおすすめです。

どれぐらいコンプレッションすればいいの?

マスタリングコンプレッションの基本

実は、マスタリングエンジニアがコンプレッションを行うことはほとんどありません。

もし使ったとしても、低めのRatioと高いスレッショルドで使います(コンプレッションがかかったとしても、ほんの少しかかる程度)。

こちらが、マスタリングにおけるコンプレッションの目安です。

・Ratioを「1.24:1」か「1.5:1」から始める。
「2:1」以上のRatioにすると強すぎるのでマスタリングにはおすすめできない。

・スレッショルドを非常に高く設定し、ゲインリダクションを2dB以下になるようにする。

・よく耳を使うこと。
コンプレッサーをかけてみて、好ましくない音になってしまったら、ためらわずに使うのをやめる。

・常に「自分はよりよいサウンド・音楽を作れているだろうか?」と自分に問いかけてみる。

マルチバンドコンプレッサーとは?

マスタリングコンプレッションの基本

マルチバンドコンプレッサー(マルチバンドコンプ)とは、特定の周波数帯域に分けられたバンドを使って、特定の周波数帯域にのみコンプレッションをかけられるコンプレッサーです。

マルチバンドコンプレッサーの中では、Fabfilter社「Pro-MB」が有名です。

ここからは、マルチバンドコンプのメリット・デメリットを紹介していきます。

マルチバンドコンプレッサーのメリット

・周波数帯域ごとにコンプレッションをかけやすい
違う周波数帯域に違うコンプレッションの設定を適用することができます。
例えば「100Hz以下」「200~400Hz」「2000Hz以上」のようにエリアを分けることができます。

・異なる設定をバンドごとに適用することができる。
マルチバンドコンプでは、バンドごとにそれぞれ違うアタック・リリース・スレッショルドなどの設定を適用することができます。

マルチバンドコンプレッサーのデメリット

・音を忠実に再現できない
マルチバンドコンプを使うと、クロスオーバーフィルターを使うことにより、バンドごとにオーディオ信号を分けます。
しかし、その分だけ元々の音を忠実に再現できなくなり、ノイズが出たり歪みが生じます。

・加工しすぎによる危険度の高さ

マスタリングで最も大事なルールは「やりすぎない」です。
マルチバンドコンプで音を加工しすぎると、音は非常に歪みやすく、位相問題も発生しやすくなります。
もし何か目的があって使いたい場合は、使用するマルチバンドコンプは1つだけに絞り、それを使って何をしたいのかを明確にしておきましょう。

マスタリングコンプレッションの基本まとめ

マスタリングにおいて、コンプレッサーは使いすぎないことが大切です。

ゲインリダクションは2dBまでに抑えるなど、ほどほどに使いましょう。


次回Part5「マスタリングにおけるリミッターと音圧」はコチラ↓


人気記事

1

この記事では、ヒット曲を作曲するための方法を解説した記事をまとめています。作曲・編曲・ミキシング・マスタリングなど、音楽制作の工程ごとに分けてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

2

今回は、Doctor Mixが解説する「歴代のシンセサイザーTOP10」をご紹介します。みなさんがよく耳にする「あの音」は、実はこれらのシンセサイザーの音かも…!?「聞いたことある!」「あの音って、このシンセの音だったんだ!」と驚くこと間違いなしです!

3

CメジャーキーとAマイナーキーって、どう違うの? 聞き分け方はある? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 https://www.youtube.com/watch?v=lPDVo-7Ua28 ...

4

今回はバークリー音大卒業生のBasiaによる「バークリーQ&A バークリーに行く前に知っておくべきこと」をまとめました。Basiaはバークリー音大の作曲専攻を卒業しており、現在はシンガーソングライターとして活動しています。そんな彼女が、バークリー音大に憧れている人や受験を真剣に考えている人のために15の質問に答えます。

5

今回は、オーディオエンジニアのSean Divineが教える「複数楽曲のLUFS(ラウドネス)を統一する方法」をまとめました。曲のアルバムには複数の楽曲が入っており、「1曲目から最後の曲まで通して聴く」というリスナーもいます。そんなリスナーのために、LUFS(ラウドネス)を統一する方法をご紹介します。

ミクソリディアンモードを使ったゲーム音楽 6

今回は、8-bit Music Theoryが解説する「ミクソリディアンモードを使ったゲーム音楽」をまとめました。ゼルダ、FF、ポケモン、マリオなど、ゲーム音楽にはミクソリディアンモードを使った楽曲が数多くあります。「モードを使った作曲にチャレンジしたい!」という方には必見の内容です!

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 7

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

8

今回は、人気音楽プロデューサーのVirtual Riotが解説する「Serum 2の全新機能の解説」をまとめました。Xfer Records社「Serum2」で新しく追加されたプリセットの制作にも携わったVirtual Riotが、新機能17項目を徹底解説します。

9

今回は「カリッとしたボーカルにするためのMIXテクニック」をまとめました。全部で9個あり、組み合わせて使うことで非常に魅力的な音にすることもできます。初心者の方から上級者の方までお試しいただける内容ですので、ぜひご覧ください。

クロマティック・ミディアント(Chromatic Mediant)とは 10

今回は、イギリスの作曲家・Guy Michaelmoreが教える「クロマティック・ミディアント(Chromatic Mediant)とは?」をまとめました。映画音楽界で活躍する本人が、映画音楽でよく使われるクロマティック・ミディアントについて解説します!

-マスタリングのコツ