ディズニー映画音楽の作り方 -7つの魔法のコツ-
- 2024.10.10
- 2024.12.02
- ゲーム・映像音楽

今回は、Sound Fieldが解説する「ディズニーの楽曲を作る秘密の公式」をまとめました。
長年の間、老若男女に愛されてきたディズニー映画ですが、音楽も非常に人気が高く、「ディズニーっぽい曲を作りたい!」というクリエイターも多いでしょう。
この記事では、ディズニー音楽で使われているテクニックや、「ディズニーっぽい曲」を作るためのコツを詳しく解説していきます!
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ディズニー音楽を作るための「7つの魔法のコツ」

ディズニー音楽を作る「7つの魔法のコツ」はこちらです。
・簡潔な歌詞
・セクション2回目以降が半分の長さ
・テンポと拍子の変更
・エンディングでテンポアップ
・たくさんのコード
・キー変更
それでは、一つずつ詳しく解説していきます。
ディズニー音楽を作るコツ1:「ストーリー」に適している

ディズニー音楽を作る上で、まずはじめに考えるべきなのは「ストーリー」です。
もちろん、視聴者を楽しませるための工夫も必要ですが、音楽は演出のための「機能」としての役割も話さなくてはいけません。

例えば、「A地点からB地点まで移動する」という映像なら、音楽も「A地点からB地点まで移動するような音楽」である必要があります。
これができないと、映像も音楽も台無しになってしまうでしょう。

例:リトルマーメイド(1989)より「Part Of Your World」
Jeffery Katzenbergは、当時ディズニーのモーションピクチャー部の責任者で、「リトルマーメイド(1989)」の制作にも携わりました。
ストーリーが減速しすぎているように感じた彼は、映像にエネルギーを与えるためにセバスチャン(赤いカニのキャラクター)を使ったコメディ要素をちりばめるアイデアを提案します。
こうすることで、音楽も以前同様の「ありきたりなディズニー音楽」とは一味違った音楽になりました。
ミュージカルのようにシーンに適した音楽
この曲のもう一つのすごいところは、映像と音楽がマッチし、「このシーンでは、この曲が欲しい!」と思わせている点です。

ストーリーが進めば、新しい何かが欲しい。
ストーリーと音楽がマッチし、視聴者が「欲しい」と思うところで欲しい音楽が出てくるのが、ディズニー音楽の素晴らしいところです。
例:モアナと伝説の海(2016)より「Where You Are」
ブロードウェイミュージカルのように、ディズニー音楽でも「決まった楽曲のタイプ」があります。

例えばイントロ用の楽曲では、何人かのキャラクターを紹介するような楽曲に仕上がっていることが多いです。
「モアナと伝説の海」の「Where You Are」は、まさにその良い例と言えるでしょう。
ディズニー映画で欠かせない「ヴィラン(悪役)」の楽曲
そしてディズニー映画で欠かせないのが、悪役である「ヴィラン」のキャラクターたちです。

ヴィランには、「いいヴィランの楽曲」が作られています。
例えば「リトルマーメイド」の「Poor Unfortunate Souls」は、この作品のヴィラン「アースラ」の楽曲です。
ディズニー音楽でよく使われる「ワークソング」
ディズニー音楽でよく使われるのが、仕事(Work)に関する楽曲です。
例えば、白雪姫が仕事をしながら歌を口ずさんでいたり…
「メリー・ポピンズ(1964)」の「A Spoonful Of Sugar」も、このワークソングにあたります。
「Enchanted(2007年)」では、過去の作品のワークソングをパロディーにした楽曲「Happy Working Song」が作られています。
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ディズニー音楽を作るコツ2:簡潔な歌詞

通常のポップスに比べて、ディズニー映画の音楽では歌詞をじっくり考えるような時間がありません。
そのため、限られた時間の中でストーリーを伝えるために、簡潔でわかりやすい歌詞を入れる必要があります。
ここで、最近のヒット曲であるPost MaloneとSwae Leeの楽曲「SUNFLOWER」を聞いてみましょう。
この曲では、ライミングしている(韻を踏んでいる)部分があり、楽曲の1/4は繰り返し部分です。

しかし、ディズニー音楽ではこのようなセクションをまるごと繰り返すような歌詞の繰り返しはありません。
ポップスの基本「繰り返し」はディズニー音楽にあまりない?
繰り返しを使うことは、ポップスでは昔から使われている手法です。
例えば1960年のChubby Checkerの楽曲「The Twist」などでも、繰り返し要素は使われています。
楽曲中で使われている全145語のうち、楽曲中で1度しか使われなかった単語(繰り返しがない単語)は48語しかありません。
歌詞の約1/4は、繰り返されているのです。

しかし、ディズニー音楽ではこのようなわかりやすい歌詞の繰り返しは使われません。
それなのに、歌詞も理解しやすく、耳に残る楽曲ばかりです。
これは一体どうしてなのでしょうか?
ディズニー音楽は「リフレイン」か「タイトルフック」

ディズニー音楽では、楽曲をフルコーラスにせずに「リフレイン」か「タイトルフック」を用いて作曲されていることが多いです。
「リフレイン」は「セクションの繰り返し」のことです。
ディスニー音楽の場合、メロディーは一緒でも歌詞が全く同じセクションが曲中に複数回登場することは少ないです。
(先ほどご紹介した「SUNFLOWER」では、歌詞もメロディーも全く同じセクションが繰り返されています)
「タイトルフック」は、主に「歌詞に楽曲タイトルが含まれている、覚えやすいフレーズ」を指します。
例えば「It’s a Small World」では、「It’s a small world after all」がタイトルフックになります。
この「リフレイン」や「タイトルフック」をベースにしていることで、ディズニー音楽の多くは「サビがなく、フルコーラスにしない」という楽曲構成になっています。
サビがないので、必然的にAメロ(Verse)部分が増えます。
これにより、より多くの歌詞を入れることができるようになるので、
・歌詞により多くの情報を詰められる
・情報量が多い=ストーリーをより伝えやすくなる
というメリットがあります。
ディズニー音楽を作るコツ3:セクションの2回目以降を半分の長さにする

ディズニー音楽を作るコツの3つ目は、「セクションの2回目以降を半分の長さにする」です。
例えば、1番のAメロ(Verse)が16小節で、2番のAメロを8小節に縮める、などです。
ディズニー音楽では、「眠れる森の美女(1959)」の「Once Upon A Time」や「アラジン(1992)」の「A Whole New World」、ミュージカル音楽では「ハイスクールミュージカル(2006)」の「Breaking Free」などがこのパターンです。
「ポカホンタス(1995)」の「Colors of the Wind」のように、たったの5小節という短いCメロ(Bridge)を作るというのもアリです。

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ディズニー音楽を作るコツ4:テンポと拍子の変更

ディズニー音楽を作る4つ目のコツは、「テンポと拍子の変更」です。
現代的なポップスでは、基本的にテンポも拍子も一定です。
しかし、ディズニー音楽ではテンポ変更がよくあり、拍子も変わることもあります。
例えば「くまのプーさん(1966年)」のテーマ曲では、3/3拍子から4/4拍子に変わると共に、テンポも同時に変わっています。
「美女と野獣(1991)」の「Be Our Guest」では、曲中で5つの違うテンポが使われています。
ディズニー音楽を作るコツ5:エンディングでテンポアップ

ディズニー音楽を作る5つ目のコツは、「エンディングでテンポアップ」です。
先ほどの「テンポと拍子」の変更に関係しますが、楽曲の最後にテンポを上げるというのも、ディズニー音楽の特徴です。
例えば、「メリー・ポピンズ(1964)」の「Supercalifragilisticexpialidocious」では、曲の最後にかなりテンポが速くなって終わっています。
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ディズニー音楽を作るコツ6:たくさんのコードを使う

ディズニー音楽を作る6つ目のコツは、「たくさんのコードを使う」です。
通常のポップスの2倍多くのコードを使っていることがあります。
長年愛されてきた70曲近くのディズニー音楽を分析すると、8タイプ以上のトライアドが使われていることがわかっています。
まずはじめに、「ダイアトニックコード」の復習をしましょう。
ダイアトニックコードは、そのスケールで使われる音(7つ)を使って構成されたコードのことで、基本的に1スケールにつき7つあります。
しかし、ディズニー音楽ではダイアトニックコード以外のコードを使うことが多いです。
例えば「ピノキオ」の「When You Wish Upon A Star」の例を見てみましょう。
ここで、原曲通りのコード進行で弾いたときと、ダイアトニックコードだけを使って弾いたときで比べてみます。
この例ではDメジャーキーですので、2個目のコード「Abメジャーコード」はダイアトニックコードに含まれていません。
このように、ディズニー音楽ではダイアトニックコードにはないコードも多用する傾向があります。
ディズニー音楽を作るコツ7:キー変更

ディズニー音楽を作る7つ目のコツは、「キー変更」です。
ディズニー音楽では、たくさんのコードを使うだけでなくキー変更も多用されます。
平均で1曲につき1回キー変更が行われており、通常のポップスに比べると10倍近い数字になります。

なぜこれだけキー変更が使われるかというと、ディズニー映画では映像でも大きな変化が多いからだと言えます。
ただのかぼちゃが「かぼちゃの馬車」に変身したり、おもちゃのあやつり人形が「かわいい男の子」に変身したり、イケメンの王子様が「カエル」に変身したり…
このような劇的な変身・変化を演出するために、キー変更は有効な手段の一つになるでしょう。
「Let It Go」の映画版とポップス版の違いは何?
「アナと雪の女王」のテーマソング「Let It Go」では、イディナ・メンゼルが歌う映画版と、Demi Lovatoが歌うポップス版の2パターンがあります(実際の音源はのちほど掲載します)。
この2つを聞き比べるとその違いは明白で、「ディズニーらしさ」と「ポップスらしさ」を知ることができます。

キー変更・コードの種類・セクションの長さの違いは?
まずは、これまでご紹介してきた「ディズニー音楽を作るコツ」の要素がどのように使われているのか、2バージョンを比較してみましょう。

映画版「Let It Go」では、これまでご紹介した「キー変更」「多様なコードの使用」「2回目以降のセクションを半分の長さにする」の手法がすべて使われています。
Cメロ前の間奏で氷のお城が大地から競り上がってくるシーンでは、テンポも上がっています。

一方のポップス版では、これら全てが使われていません。
繰り返しのフレーズ・歌詞の違いは?
次に、繰り返しのフレーズがどれだけ使われているか、歌詞で使われている単語に違いがあるか、2バージョンを比較してみましょう。

ポップス版では、繰り返しのフレーズが26個あります。
対して、映画版は12個です。
映画版の方が、繰り返しが少ないことがわかります。

また、「1度しか出てこない単語の数」では、ポップス版が106個であるのに対し、映画版では136個です。
つまり、映画版の方が「複数回使われている単語の数が少ない」ということになります。
同じ曲でも「映画音楽としての楽曲なのか」「ポップスとしての楽曲なのか」をしっかり作り分けていることがわかる、とても良い例です。
自分オリジナルの「ディズニー音楽っぽい曲」を作ってみよう!
それでは最後に、今回ご紹介したコツを踏まえて、完全オリジナルの「ディズニー音楽っぽい曲」を作ってみます!
テーマは「One More Subscriber(あと一人でも多くのチャンネル登録者を)」です↓
ディズニーらしく聞こえたでしょうか?
みなさんも今回ご紹介したテクニックを活かして、ぜひ楽曲を作ってみてください!
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