【音楽理論】リディアンモードを使ったゲーム音楽を解説! Part3【映像音楽】
今回は、8-bit Music Theoryが解説する「リディアンモードの使い方」をまとめてみました。
この記事では「Part3」として、リディアンモードを使ったゲーム音楽(上級編)を解説していきます。
解説するゲーム音楽:ソニック・ザ・ヘッジホッグ、ポケットモンスター金銀、ゼルダの伝説-時のオカリナ-
Part2:リディアンモードが使いづらい理由、リディアンモードを使ったゲーム音楽(中級編)
解説するゲーム音楽:ヨッシーストーリー、ゼルダの伝説-時のオカリナ-、ペーパーマリオRPG
Part3:リディアンモードを使ったゲーム音楽(上級編)(当記事)
解説するゲーム音楽:ピクミン2、ピクミン3、スーパーマリオギャラクシー、ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス
ソニックシリーズやポケットモンスターシリーズ、ゼルダの伝説シリーズをはじめ、ゲーム音楽にはリディアンモードを使った楽曲が数多くあります。
「モードを使った作曲にチャレンジしたい!」という方には必見の内容です!
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リディアンモードのゲーム音楽:ピクミン3「希望の森」
次にご紹介するのは、Wii U用ゲーム「ピクミン3」の「希望の森」のテーマ曲です。
Fリディアンモードを使ったこの曲の中間部では、キラキラとしたストリングス系パッドの上で、楽しげなクラリネットとバスーンのメロディーが演奏されます。
ノンファンクショナル(非機能和声)のF6/9(#11)から始まり、かなり複雑なコードが続きます。
難しそうな楽譜に見えますが、どのコードもリディアンモードの特徴音を使っているため、リディアンらしさが含まれています。
それでは、楽譜を見ながら聞いてみましょう。
ゆるやかな6/8拍子のリズムに合わせ、軽快な楽器編成で演奏されるこの曲。
ハーモニー的にはとても難しく解決感を感じることはありませんが、メロディーがリディアンらしさを取り入れながら演奏しているため、とても可愛らしい曲に仕上がっています。
コードは「I – bVII – bII」で、通常はとてもダークな印象になるコード進行です。
しかし、上手にリディアンらしさを取り入れて徐々にコードのカラーを変えていくようにすることで、大きなコードの移動を感じることなく、ゲームの世界観に合ったゆったりとしたサウンドを演出しています。
リディアンモードのゲーム音楽:スーパーマリオギャラクシー「スペースジャンクギャラクシー」
次にご紹介するのは、Wii用ゲーム「スーパーマリオギャラクシー」の「スペースジャンクギャラクシー」のテーマ曲です。
この曲はAbリディアンモードで、トニックコードの上にリディアンモードを取り入れたメロディーを使い、異世界のような雰囲気を演出している素晴らしい例です。
ピアノはAbmaj7(#11)でコードを演奏し、その後はAbコードでとてもシンプルなコード進行を作っています。
しかし、途中でリディアンモードの特徴音である#4に着地するメロディーがあり、ここで異世界感(宇宙空間)のような雰囲気を演出しています。
それでは、楽譜を見ながら聞いてみましょう。
Dの音はAbリディアンモードにおける特徴音で、ルート音であるAbとトライトーン(不協和音)の関係にあります。
しかし、あえてこの2つを同時に使うことで、「ギャラクシー」という名前の通り、異世界・宇宙空間的な雰囲気を作ることができます。
途中でリディアンらしいコードを一瞬だけ入れる
この曲では、途中でAbメジャーコードが続き、途中でAb/Gbコードに変わる場面があります。
このとき、メロディーではGbリディアンスケールにおける#4であるCの音が使われています。
Abがルートであったフレーズが続いた後、新しいルート音としてGbが登場し、さらにその新しいルート音のリディアンスケールの特徴音(C)まで登場します。
これにより、ただコードが変わっただけでなく「異世界感」「リディアン感」の両方をプラスしたサウンドを作っています。
それでは、これを踏まえて楽曲を聞いてみましょう。
最後は「マリオらしく」終わるコード進行
この曲の最後は、昔のマリオシリーズでもよく使われている「bVI – bVII – I」というコード進行が使われています。
しかしこれだけでなく、メロディーではbVIコードの上にメジャー7thの音が、bVIIコードの上にリディアンモードの特徴音である#4の音が使われています。
これにより、さらに特徴的なカラーをつけることができます。
それでは、楽曲を通して聞いてみましょう。
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リディアンモードのゲーム音楽:ピクミン2「まどいの水源」
次にご紹介するのは、ゲームキューブ用ゲーム「ピクミン2」より「まどいの水源」のテーマ曲です。
キーはBbメジャーで、基本的にはダイアトニックコードを使ったコード進行が使われています。
2回だけ他のキーからの借用コードである「b7のコード(Abmaj)が使われているところがありますが、基本的にはBbメジャーキーに聞こえるようになっています。
しかし、途中でBbメジャーコードが使われたとき、メロディーがBbリディアンスケールの特徴音である#4(E)を使う場面が出てきます。
伴奏だけでなく、メロディーもBbメジャーコードのアルペジオやCメジャーコードのアルペジオを使っています。
(Cメジャーコードに含まれるEの音がBbリディアンモードの特徴音)
また、bVIIのコード(Abメジャーコードになったときも、メロディーではアルペジオを演奏しています。
先ほどはBbメジャーコードとCメジャーコードのアルペジオでしたが、ここではBbメジャーコードとCマイナーコードのアルペジオになっています。
ベースがAbでメロディーがBbメジャーコード(Bb,D,F)やCマイナーコード(C,Eb,G)になりますので、ここ(上記画像の楽譜の下段)では全体がAbmaj7(#11)のサウンドに聞こえます。
※下からAb,C,Eb,G,Bb,D,F
それでは、これを踏まえて楽曲を聞いてみましょう。
リディアンモードらしいカラフルな雰囲気のメロディーと、コードを奏でるギターのアルペジオの伴奏がとても美しいですよね。
ピクミンシリーズの音楽を担当している若井淑(わかいはじめ)さんは、モードのサウンドを操る天才と言えるでしょう。
※ちなみにピクミンの声は、若井さんの声を1.5オクターブ上にして作られています
ピクミン2のモード系サウンドの特徴は2つ
ピクミン2の音楽を担当した若井淑さんの音楽を分析するのはなかなか難しいですが、この独特の「モードを使った美しい響き」のポイントとなるのは、「コードの動きと停滞の組み合わせ」と「コードとメロディーの組み合わせ」にあると言えます。
特徴①「コードの動きと停滞の組み合わせ」
「まどいの水源」のテーマ曲では、Bbメジャーキーで、基本的にはこのキーのダイアトニックコードが使われています。
そして楽譜を見てみると、1小節ごとに急速にコードが変わっている箇所(楽譜下段)があります。
これ以外の箇所では、同じコードが4小節続いており、先ほどの1小節ごとにコードが変わる部分に比べると楽曲に動きがあるように聞こえます。
この「コードが急速に動く場面」と「停滞する場面」を交互に取り入れることで、とてもユニークな楽曲になっているのです。
これを踏まえて、楽曲をもう一度聞いてみましょう。
特徴②「コードとメロディーの組み合わせ」
ピクミン2の楽曲では、コードとメロディーで使われているリディアンサウンドが絶妙な形で組み合わされています。
上の画像にある「Bbmaj7(#11)」と「Abmaj7(#11)」は、それぞれリディアンサウンドがコードの構成音に入っています。
Abmaj7(#11):Ab,C,Eb,G,D(DがAbリディアンモードの特徴音)
コードのトップノートを見ると、「Eb→D」という半音移動になっており、トップノート(メロディー)もとてもスムーズな動きをしています。
そして改めて楽曲の楽譜を見ると、Bbmaj7(#11)の次にAbmaj7(#11)が演奏されていることがわかります。
ここはディグリーネームで書くと「I – bVII」というコード進行ですが、とてもスムーズですよね。
これは「まどいの水源」のテーマ曲だけでなく、先ほどご紹介したスーパーマリオギャラクシー「スペースジャンクギャラクシー」やピクミン3「希望の森」の曲でも使われている進行です。
リディアンモードのゲーム音楽:ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス「苦しい戦い」
次にご紹介するのは、ゲームボーイアドバンス用ゲーム「ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス」の楽曲「苦しい戦い」です。
この楽曲はBbメジャーキーで、Bbメジャーコードが続きます。
しかし、メロディーにはリディアンスケールの特徴音#4が多用されています。
6/8拍子であること、跳ねるようなリズム(アンティシペーションなど)、そしてリディアンスケールを使ったメロディーによって、「希望を持って前進する感じ」が演出されています。
それでは、これを踏まえて楽曲を聞いてみましょう。
この曲にもI-bVIIのコード進行が使われている
先ほどのピクミンの楽曲でもご紹介した「I – bVII」のコード進行は、この楽曲にも使われています。
しばらくBb(I)のコードが続いた後、「bVII – bVI – V(Ab6 – Gb6 – G)」というコードになっています。
これまでご紹介した楽曲と少し違うのは、この楽曲ではIからbVIIに行った後、さらに下がって「bVII → V」と変化している部分です。
上記の画像にある楽譜では、最後のコードはVになっています。
そのため、解決感を出すための「V – I」のコード進行を作りやすくなっています。
これまで「リディアンモードでは解決感を出すのが難しい」というお話をしてきましたが、この問題をスマートに解決している良い例と言えるでしょう。
コードに合わせてリディアンスケールも変更
この楽曲のメロディーは、そのコードのルート音のリディアンスケールの特徴音(#4)を使っています。
コードがAbのとき:Abリディアンスケールの特徴音(D)を使用
コードがGbのとき:Gbリディアンスケールの特徴音(C)を使用
そのため、違和感なくリディアンスケールを使いながら、バトル曲らしい前に進む感じを演出しています。
それでは、これを踏まえて楽曲を聞いてみましょう。
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リディアンモードを使ったゲーム音楽の総まとめ
このシリーズでは、リディアンモードを使ったゲーム音楽を多数ご紹介しました。
とても盛りだくさんの内容でしたが、通常のコード進行にリディアンモードの特徴音を入れるとカラフルになるということをご理解いただけたかと思います。
また、ゲームの内容やシーンをご覧いただいて分かる通り、リディアンモードには実に様々な使い方があり、多種多様な雰囲気を作ることができます。
・宇宙空間や異世界感(スーパーマリオギャラクシー)
・やさしく美しいハーモニー(ゼルダの伝説)
・勇ましく果敢に戦いに挑む勇者たち(ファイナルファンタジーシリーズ)
当サイトでは他のモードについてもゲーム音楽をベースに解説していますので、ぜひ併せてご覧ください↓
【音楽理論】イオニアンモード(アイオニアンモード)を使ったゲーム音楽を解説!【映像音楽】
【音楽理論】リディアンモードを使ったゲーム音楽を解説! Part1【映像音楽】
【音楽理論】フリジアンモードを使ったゲーム音楽を解説!前編【映像音楽】
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