エド・シーランって世界的に有名だけど、彼みたいなメロディーはどうやったら作れる?
コツはある?
今回はこのような疑問にお答えする内容です。
作曲家のFriedemann Findeisen氏が解説する「エド・シーランの曲の作り方」をまとめました。
エド・シーランといえば、”Shepe of You”が世界中で大ヒット。
YouTubeの再生回数は、驚異の「60億回」超えです(2024年現在)。
エド・シーランの作曲方法のポイントは意外とシンプルで、ざっくり分けるとたったの5つ。
しかしこの奥に、「アーティストとして成功するための大切なポイント」が隠されているのです。
今回はこちらもじっくり解説していきます。
Ed Sheeranのメロディーの特徴5つ
ざっくりまとめると、Ed Sheeranのメロディーには、これら5つの特徴があります。
- リズミカルなメロディー
- 対照的な2つの要素
- ルート音の多用
- メジャー3rdの多用
- 1オクターブ上のハモリ
音楽的・技術的にはこの2つがポイントなのですが、これに加えて実はもっと大切なこと「アーティストのイメージ」があります。
ここから先は、これら3つのポイントの具体的な解説と、「アーティストのイメージ」についての解説をしていきます。
エド・シーランの特徴1:リズミカルなメロディー
エド・シーランのメロディーは非常にリズミカルでグルーヴがあります。
この理由は、彼はラップから大きな影響を受けているからです。
特にエミネムが好きだと公言しています。
ほとんどのシンガーソングライターはレガート系のなめらかで流れるようなメロディーを好んでいますので、エド・シーランのメロディースタイルは、フォーク音楽には珍しいといえます。
エド・シーランの特徴2:対照的な2つの要素
エド・シーランは「1本のギター+ペースの速いメロディー」という、「対照的なスタイル」を兼ね備えています。
このコントラストが、彼を魅力的に見せる理由の1つでしょう。
また、これには彼の「若い」「フレッシュ」「エネルギッシュ」というパーソナリティにも合っています。
アーティストの「特徴」はどうやって生まれる?
次は技術的なお話です。
まずみなさんに気づいていただきたいのが、「多くのアーテイストが使っている技術は、意図的に使われているわけではない」ということです。
なんらかの理由や方法から、自分のパーソナリティに合ったものを自然に選んでいるのです。
アーティストは、ある特定のポイントでいつも同じ音を使ったり、別の場所でお気に入りの音を使ったりしています。
素晴らしいアーティストは、そういった一瞬で「あの人だ」と認知されるような作曲スタイル、あるいは声などの「特徴」でお金を得ています。
これを、音楽では「あなたのスタイル」と呼び、マーケティングの世界では「イメージ」と呼びます。
アーティストの「イメージ」を考えることが重要
アーティストの「イメージ」とは、「そのアーティストを思い浮かべたとき、どんなことを考えるか?」ということを指します。
たとえばエド・シーランについて考えたとき、「プライベートではお酒の場にいる」という感じがします。
ではリアーナはどうでしょう?「ビーチにいる」とか、そんな感じがします。
日本人アーティストなら「米津玄師はあまり外に出ず、暗い部屋でもくもくと曲を作っていそう」とか、「EXILEはイカつい服を常に着ていそう」とか、なんとなくそのようなイメージがあります。
どうでしょうか?共感できた部分があるのではないでしょうか?
これは、アーティストが表向きに見せるイメージがはっきりとしているからです。
たとえば音楽の方向性、ステージで着る衣装、MV、インタビューでの話し方、ファンとの交流の仕方などです。
マーケティング(アーティストをどう売り込むか)では、このようなことを徹底しているのです。
有名アーティストのメロディー比較
次はいよいよ、メロディーを分析してみます。
わかりやすいように、この3人のアーティストのメロディーを比較してみます。
テイラー・スウィフト
The Weeknd
エド・シーラン
テイラー・スウィフト
スタイリッシュ・モダン・あたたかいメロディーが特徴
ルート音をよく使う
The Weeknd
クール・ミステリアス・ダークなメロディーが特徴
4thや5thの音をよく使う
エド・シーラン
魅力的・分別がある・チャーミング・ロマンティック・あたたかい・ノスタルジック・おもしろいイメージ
エド・シーランのメロディーの作り方
それではエド・シーランのイメージを、実際に使われているメロディー作曲法と紐づけてみましょう。
魅力的・分別がある・あたたかい:ルート音
チャーミング・ロマンティック・おもしろい:メジャー3rd
つまり、エド・シーランはルート音とメジャー3rdの音をよく使っているということです。
例を見てみましょう。
The Weekndの回でもお話しましたが、白人のアーティストやシンガーソングライターは、メジャースケールをフルで使う傾向にあります。
ペンタトニックスケール(5音階)よりもあたたかく、かわいらしいイメージになるからです。
エド・シーランも、メジャースケールで曲を書いていることが多いです。
「信頼感」のあるサウンドにするためには?
音楽における「信頼性」の大敵は、「安っぽい」「陳腐」「バカっぽい」の3つです。
これらを招く作曲でやりがちなことは、「メインメロディーの下で3度上or下でハモること」です。
世界中のアーティストも使うテクニックで、確かにきれいに聞こえます。
しかし、これは大きな犠牲を伴います。
とりわけ真っ直ぐ・誠実な音楽には聞こえないのです。
エド・シーランのハモリ(コーラス)の特徴
では、エド・シーランはハモリ(コーラス)をどうしているのでしょうか?
実は、彼はインパクトを与えるために、メインメロディーのオクターブ上のハモりを入れているのです。
代表曲「Shape of You」の場合、たとえば0:45からオクターブ上のハモリが入っているのがわかります。
これによりメロディーが突き進み、曲の頂点を作り出すことができるのです。
ここで、あることにお気付きの方がいるかもしれません。
「ジャスティン・ビーバーの”Love Yourself”でも、同じようなバッキングボーカルがあったぞ?」
それでは、この楽曲の0:47~を聞いてみましょう。
確かに、メインボーカルのオクターブ上のハモリが追加されています。
ここで、この曲に関して、ここであるヒミツをお教えしましょう....
ジャスティン・ビーバーは、この曲を書いていません。
では、誰がこの曲を書いたのでしょうか?
実はこの曲...エド・シーランが書いているのです!
これを聞くと、1オクターブ上のハモリが使われているのも納得できるでしょう。
「イメージの確認」は重要な作業

もしあなたがパフォーマー系のアーティスト(ステージに立つ人など)なら、常に「自分のイメージ」を確認する必要があります。
「イメージ」がないなら、そこに「アーティスト」はいません。「シンガー」しかいないのです。
そのため、まずはアーティストと話しましょう。
彼らがどんなことを気にしているのか、音楽的にも個人的について話すのです。
彼らの頭の中ではどんな思いや考えがよぎっているのか、どんなものを見ているのか、音に対してどんな振る舞いをするのか…
これについて理解しましょう。
作曲のコツは「どんなサウンドにしたいのか?」
何かプロジェクトに参加したとして、そのときたくさん曲を書かなければならないこともあると思います。
それは、あなたがクリエイティブな自由を持っているということです。
しかし、「自分はどんなサウンドを作りたいのか?」を考え、それに集中することが大切です。
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にも有名アーティストの楽曲分析をまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。
Friedemann Findeisenの楽曲分析シリーズ