「インピーダンス」とは?初心者向けに解説!
- 2024.11.29
- 用語解説
今回は、Andrew Dandrewが解説する「5歳児でも分かるようにヘッドホンインピーダンスを解説する」をまとめました。
小学校の理科の授業で習った「インピーダンス」や「抵抗」という言葉を勉強した記憶はあるものの、実生活でその知識をどう活かしていいのかわからない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、「インピーダンスとは何か?」をやさしく解説し、音楽を聞くためのアンプとヘッドホンを購入するときにこの知識をどう活用すればいいのかをご紹介します。
※この記事では「音を出すための機械」をわかりやすく「ヘッドホン」と記載していますが、スピーカーなどでも同様です
スポンサードサーチ
「インピーダンスとは?」に対する一般的な解説
ネットで「インピーダンスとは?」と検索すると、だいたい以下のような解説が出てきます。
「交流回路における電流の流れやすさ(流れにくさ)のこと」
理科が得意な人ならこの説明だけでも分かるかもしれませんが、そうでない人も多いでしょう。
そのため、この記事ではインピーダンスを「水が出るホース」にたとえて説明していきます。
インピーダンスを「水が出るホース」で説明します
ここでは、インピーダンスが何を表すのかを「水が出るホース」にたとえて説明していきます。
まず、こちらのお庭の画像をご覧下さい。
左側に壁があり、赤いバルブがついています。
この赤いバルブを回すと、緑色のホースから水が出るようになっています。
ここでは、いったん赤いバルブは開けっぱなしにしておき、常に同じ量の水をホースに送るようにしておきます。
それでは、この状態でホースの大きさだけ変えてみるとどうなるでしょうか?
ホースをとても太くしてみました。
水が出るところがとても大きくなったので、水はとてもたくさん出ているように見えます。
しかし、ホースを太くして一度に出る水の量が多くなった分、水の勢いがあまりありません。
画像の真ん中あたりまでしか水が飛ばなくなってしまいました。
それでは、逆にホースを細くしてみるとどうなるでしょうか?
上の画像では薄くて見えないほど、水は細い線のようになりました。
しかし勢いはとても強く、画像の一番右側までビューンと水が飛んでいます。
赤いバルブから出している水の量は変わらないので、ホースが細い方が勢いよく水が出ているのです。
※ホースの先端をわざと潰して、遠くまで飛ぶ水を出そうとしたことがある人も多いのではないでしょうか?これと同じです。
太いホースと細いホースの動きを動画で見てみると、このようになります↓(2:30~2:38)
ホースを太くしたときに勢いよく水を出したいのであれば、赤いバルブからもっとたくさんの水を出せばいいでしょう。
赤いバルブからもっと勢いよく水が出ないと、チョロチョロと弱々しい水しか出ないままです。
スポンサードサーチ
ホースの例を電気に置き換えてみよう
それでは、ホースの例を電気に置き換えてみるとどうなるでしょうか?
ここでは、音を大きくするために使う「アンプ」と、そのアンプから送られてきた音を実際に再生する「ヘッドホン」の例で考えてみます。
ホース:ヘッドホン(アンプから受け取った電気を使って、音を出す機械)
赤いバルブから出ている水の量:アンプから流れてきた電気の量
ホースが太い→ヘッドホンのインピーダンスが小さい、水の勢いは弱い
(赤いバルブからもっと勢いよくたくさん水を出せれば、ホースから出る水の勢いも強くできる)
ホースが細い→ヘッドホンのインピーダンスが大きい、水の勢いは強い
水を押し出す力・勢い:電圧
(勢いが強い方が、安定した強さがある)
※ホースから出る水のパワーは、ホースの太さと水の勢いによって変わる
特にポイントとなるのは、この4つの数字です。
ホースから流れる水の量:電流
水を押し出す力・勢い:電圧
ホースから出る水のパワー:ヘッドホンから出る音の音量(電力)
ホースを1/2の太さにしたらどうなる?
例えば、太いホースから100Lの水をすごい勢いで出すと、大量の水が一気に出てきます。
もしそんな大量の水が自分にかかってきたら、大人でも立っていられないぐらいの力になるでしょう。
それでは、今度は1/2の太さしかない細いホースを使って、同じく大人でも立っていられないぐらいの力の水を出すにはどうしたらいいでしょうか?
まず、ホースの太さが1/2になったので、1度に出せる水の量が「100L」ではなく「50L」になります。
しかし、このままでは1度に出せる水の量が50Lになっただけなので、同じパワーで水を出すことはできません。
そのため、水の量が半分に減った代わりに、水が出る勢いを2倍速くする(強くする)のがいいでしょう。
一度に出てくる水の量は少ないですが、勢いが2倍になったのですごいパワーになります。
現実世界では、ホースの先端を潰すとホースの太さに合わせて水の量が減り、その分水の勢いが強くなります。
これを電気に置き換えると、このようにたとえることができます。
これをヘッドホンに置き換えると、このようにたとえることができます。
つまり、アンプとヘッドホンを使って音を聞くときはこのような組み合わせが理想です。
(ホースが細いので、より勢いよく水を出す必要がある)
低インピーダンスのヘッドホンを使うときは、より多い電流を低い電圧で流せるアンプを使う
(ホースが太いので、一度に多くの水を流す必要がある)
高インピーダンスのヘッドホンを作る理由は?
インピーダンスが高いヘッドホンを作る理由は、より幅広い音量で音楽を楽しむためです。
特に、とてもパワフルなアンプはたくさんの電力を供給できますが、そのたくさんの電力をそのまま受け取ってしまうとヘッドホンが耐えることができません。
そのため、強力な電力を安全に受け取り、上手に調整して音を再生するために高インピーダンスのヘッドホンが生産されています。
スポンサードサーチ
低インピーダンスのヘッドホンを作る理由は?
インピーダンスが低いヘッドホンを作る理由は、より幅広い環境で音楽を楽しめるようにするためです。
最近ではスマートフォンやパソコン、ゲーム機器など、とても小さなデバイスで音楽を聞くようになりました。
しかしこれらの機械はアンプなどのようにたくさんのパワーを持っておらず、ヘッドホンから音を出すためにたくさんの電力を使ってしまったら、本体バッテリーもすぐ切れてしまいます。
そのため、なるべく少ない電力で十分な音量を出せるようにするために、低インピーダンスのヘッドホンが作られています。
スマートフォンやゲーム機器などはバッテリー(電池を含む)で動いていますが、これらは低い電圧でより多くの電流を流すことに長けているので、低インピーダンスのヘッドホンの方が向いています。
また、低インピーダンスのヘッドホンは安く作ることができるので、手軽に買いやすいというのも大きなメリットの1つです。
インピーダンスの違いは一度にたくさん接続したときに差が出やすい
高インピーダンスのヘッドホンと低インピーダンスのヘッドホンは、特に1つの電源に対してたくさんのヘッドホンを接続したときに大きな違いが生まれます。
例えば、先ほどのお庭にあるホースの例に戻ってみましょう。
今度は、一度にたくさんのホースを使ってできるだけ広い範囲に水をまいてみます。
まずは、細いホースを4本に増やしてみました。
これだけホースがあれば、お庭全体に一気に水をまくことができます。
細いホースを使うとき、赤いバルブから十分勢いのある水が出ていれば、とても遠くまで水を飛ばすことができます。
そもそもどのホースも水の勢いが強くホースの口が小さいので、必要な分だけ水を出すことができ、水もムダになりにくいです。
これを電気に置き換えると、高インピーダンスのヘッドホンなら一度にたくさん使っているとしても、強い電圧さえあればどのヘッドホンからもしっかり音量を出せるということになります。
例えば大きな会場でコンサートをするときは大きなスピーカーをたくさん使わなくてはいけないので、高インピーダンスのスピーカーが向いているでしょう。
また、音楽スタジオでは一度に何人もの人たちが音楽の機材を同時に使うので、そのようなスタジオにある機械はどれも高インピーダンスで作られていることが多いです。
それでは、本数はそのままでホースを太くするとどうなるでしょうか?
ただでさえホースがとても太いのに、それが4つもあるので、一度に出す水の量をとても増やさないといけなくなりました。
これでは、せっかく太いホースが4つもあるのにそれぞれのホースからはチョロチョロとしか水が出ません。
お庭全体に水をまくのはとても難しいでしょう。
これを電気に置き換えると、低インピーダンスのヘッドホンをたくさん使うときは、低インピーダンスのアンプ(たくさん電力を供給できる機械)がないとしっかり音が出なくなってしまうことになります。
スポンサードサーチ
低インピーダンスのヘッドホンを使うときの注意点
低インピーダンスのヘッドホンを使うときに注意してほしいのが、とてもパワフルなアンプを使う場合です。
低インピーダンスのヘッドホン=抵抗がとても小さいということなので、たくさんの電力が流れやすくなります。
必要なだけ電気が流れるならいいのですが、とても強力なアンプを使ってしまうと、流す電気が強すぎてオーバーヒートしてしまうことがあります。
ヘッドホンに電気が流れすぎてオーバーヒートしてしまうと、ヘッドホンそのものが壊れてしまったり、音量を上げても劣化した音しか出なくなったりしてしまいます。
※具体的には、例えばヘッドホンの中にあるコイルが熱を帯びてしまったり、ダイアフラムが変な動きをして変な音しか出なくなってしまいます
「インピーダンスマッチング」がとても大切
以上の理由から、電力を送る側のアンプと、電力を受け取る側のヘッドホン、それぞれのインピーダンスの相性を考えることがとても大切です。
たくさんの電力を使って、安定した電圧・強いパワーで音を出す
→スマホやゲーム機で一人で音楽を聞くときなど
→ライブや音楽スタジオなど
※スマホなどのポータブルな機械に高インピーダンスのヘッドホンを接続することもできますが、ヘッドホンのポテンシャルを最大限発揮できるかどうかは場合によりますので、実際に聞いてみてチェックすることが大切です
つまり、「高インピーダンスだからいい」「低インピーダンスだからいい」ということではなく、一緒に使う機材によってその良し悪しが変わるということです。
理想のアンプとヘッドホンの組み合わせを計算する方法
それでは、この「インピーダンスマッチング」は具体的にどうすればいいのでしょうか?
実はこの目安には「1/8ルール」という方式があります。
例えばヘッドホンとアンプを接続したときは、このような計算になります。
ヘッドホンの入力インピーダンスを8分の1にしたとき、アンプのアウトプットインピーダンスよりも大きければ、基本的には問題ありません。
オーディオインターフェースとヘッドホンのインピーダンスマッチング
例えばDTMでよく使われる「オーディオインターフェース」という機械で、この1/8ルールを考えてみましょう。
オーディオインターフェースはヘッドホンを接続して音を聞くことができますが、製品によってインピーダンスも異なります。
1/8ルールを使うと、例えば「Motu M2」というオーディオインターフェースでは、0.48Ωのインピーダンスがあるヘッドホンが最適だと言えます。
一方「Steinberg UR22 MK II」というオーディオインターフェースは、728Ωのインピーダンスがあるヘッドホンが最適です。
728Ωのインピーダンスがあるヘッドホンはなかなかありませんので、見つけるのは大変でしょう。
このように、同じ「オーディオインターフェース」でも製品によってインピーダンスが異なり、接続するヘッドホンの適切なインピーダンスも異なります。
ダンピング抵抗とは?
少し上級者向けの内容になりますが、ヘッドホンやスピーカーを使うときには「ダンピング抵抗」についても考えるとよいでしょう。
ヘッドホンやスピーカーにおけるダンピング抵抗とは、簡単に言うと「電気信号が止まったときに、ヘッドホンやスピーカーにある膜がどれぐらいしっかり止まるか」を示すものです。
ヘッドホンやスピーカーの中には膜が張られていて、電気信号に応じて動き、この動き方によってどんな音をどれぐらい大きく出すかが決まります。
特に低音域の音は、この膜がとても大きく動きます。
この膜の動きが正確であれば、正確に音を鳴らすことができます。
しかし、「電気信号が止まったのにまだ動いている」「動き方がいびつで変」となってしまうと、出る音が劣化したように聞こえてしまいます。
例えばこちらの映像では、「proper damping」のときは左下のメーターがゼロになると同時に膜の動きも止まります。
しかし「improper damping」のときは、左下のメーターがゼロになっても膜がまだビヨーンと動いています↓(9:52~10:16)
こうすると、音が歪んだり音割れしたように聞こえてしまうので、キレイで正確な音を聞くことができません。
このダンピング抵抗が適切であるためには、先ほどの1/8ルールを守ることが大切です。
インピーダンスにこだわりすぎなくても大丈夫
ここまでインピーダンスについてたくさん解説をしましたが、インピーダンスはあくまでも「パズルの1ピース」にすぎません。
「インピーダンスマッチングが正確にできていないからダメ」「1/8ルールを使って計算しないとダメ」ということではありません。
まずは自分が使いやすい・使ってみたいと思う製品を買ってみて、特に不便がなければインピーダンスのことを考えなくても大丈夫です。
もし「あまりにも音がひどい気がする」「音量が小さすぎる」というときは、インピーダンスについて少し考えてみると対処法がわかるかもしれません。
もちろん、音楽家など「音を正確に聞くことが第一!」という人は、ぜひインピーダンスについて考えてみてください。
インピーダンスとは?まとめ
以上が「インピーダンスとは何か?」の解説でした。
電気を流すときに起こる「抵抗の強さ」
水が流れるホースで言うと「ホースの太さ」
→インピーダンスが高くても、流れる電気の強さ=電圧が強ければ安定した電気を使える
→音質もいいし、音量も出せる
→インピーダンスが低いときは、電流を多くしないと電気が不安定になる
→音質も悪いし、音量も出せない
低インピーダンスのヘッドホンを使うときは、より多い電流を低い電圧で流せるアンプを使う
たくさんの電力を使って、安定した電圧・強いパワーで音を出す
インピーダンスについては、こちらの記事でより詳しく解説しています↓
当サイトでは他にも音楽・オーディオと電気についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
-
前の記事
バランスケーブルとアンバランスケーブルの違いとは?【XLR・TS・TRS・RCAケーブル】 2024.11.29
-
次の記事
コームフィルタリング(櫛型フィルタリング)とは?スピーカーやマイクで発生する問題について 2024.12.03