今回は、バークリー音楽大学卒業生のStuart Lehman-Brownが解説する「あなたは音楽学校に行くべきか?」をまとめました。
自身が世界で最も有名な音楽大学を卒業した経験をもとに、音楽大学に行くべきかどうかを徹底的に解説します。
かなり現実的な話になっていますので、音大に行くかどうか迷っている方の参考になります。
はじめに:解説者・Stuartの音大体験談

実は、僕(Stuart)の音大生活はバークリー音大から始まったわけではありませんでした。
バークリー音大に行く前に、コミュニティカレッジやサンフランシスコ州立大学の音楽学部に行っていました。
コミュニティカレッジ:地域に根付いている公立の2年制大学で、学費が安いのが魅力
サンフランシスコ州立大学ではピアノのイヤートレーニングやクラシック音楽、ジャズなども学んだのですが、とても厳しくて怖かったです。
そして、そんなに楽しくありませんでした。
そのため、22歳〜23歳ごろにバークリー音大に転入しました。
学費が高い音大で奨学金をもらう方法

大学生にしては少し年齢を重ねた後に転入したので、バークリー音大に入学した当時は、それなりにしっかりしたスキルを持っていたと思います。
そのため、入学したときは奨学金をもらうこともできました。
今はギター講師をしていますが、実はバークリー音大はコントラバス専攻で入学しました。
ギター専攻の生徒はたくさんいましたが、コントラバス専攻の生徒はあまりいなかったので、それもあって奨学金を得られたのだと思います。
もし一番やりたい楽器はあるものの、その楽器の競争率が高い場合は、他の楽器を専攻して奨学金を狙うという方法もアリです。
例えばギターが一番得意だけどオーボエもできる・興味があるのであれば、オーボエ専攻で入学した方が奨学金をもらえる確率も、もらえる額も高くなります。
ギターを演奏できる機会は自分でいくらでも作れるので、音大で専攻できなくても心配はありません。
音大に行ってよかったと思う瞬間とは?
僕はバークリー音大に2年半通いましたが、この時間が人生で最も有意義だったと思います。
自分の人生を決定づける瞬間だったと思います。
さらに、バークリー音大は規模が大きく実績のある音大だったので、州立大学よりも有意義で学ぶことも多かったと感じています。
音楽大学の学費が高かったらどうする?
僕は幸いにも、両親や祖父母が学費や生活費を援助してくれたので、お金に困ることはありませんでした。
しかし、もしそのようなサポートがなく、大学卒業時には1500万円以上の借金が残っていたとしたら…「音大に行ってよかった」という感想は少し変わっていたかもしれません。
※バークリー音大の1年間の学費は約800万円のため、卒業時に多額の借金を抱える生徒が多いです
もし家族が経済的な援助をしてくれて、奨学金も同じようにもらえたとしたら、また同じように音大に行きたいと思えます。
でももしそれができないのなら…ちょっと考えてしまいます。
音大に行くメリット5つ

ここでは、音大に行くメリットを5つご紹介します。
音大に行くメリット1.音楽に没頭できる
音大には音楽を学びたい生徒しかおらず、授業もすべて音楽に関わっているので、通っている間はずっと音楽に浸ることができます。
周りには優秀な生徒がたくさんいて、音楽を作る・演奏する機会が至るところにあり、音楽に囲まれる毎日を送ります。
音大に行くメリット2.施設・資料が充実している
音大では、音楽のための施設や資料が充実しています。
楽器を演奏できる音楽スタジオをいつでも借りることができたり、楽譜などの資料も無料で借りることができます。
州立大学の音楽学部など、音楽大学ではない大学にはない環境が整っているのも、音楽大学のメリットです。
音大に行くメリット3.学べる音楽ジャンルに制限がない
音大では、学べる音楽ジャンルが非常に幅広いです。
州立大学の音楽学部ではクラシックかジャズの2種類しか学べないこともあります。
一方でバークリー音大のような音楽大学では、ダンスミュージックやポップスなども学ぶことができます。
音大に行くメリット4.めちゃくちゃ楽しい
音楽大学では、朝から晩まで作曲、イヤートレーニング、ソルフェージュ、ジャムセッション、レコーディングセッションなど、一日中あらゆる音楽に触れることができます。
朝8時から夜10時までジャムセッションをしたり、夜22:30から1:30にレコーディングセッションをしたこともあります。
さまざまなドラマ、驚き、緊張、興奮、充実感が詰まった毎日になります。
このように、まるで音楽漬けの夏休みを送っているような生活できるのも、音大の魅力の1つです。
音大に行くメリット5.競争率が高い
これはデメリットにもなり得るのですが、音大に行くと競争の激しい環境に置かれます。
このような環境にいると、自分に足りないものが見つかって「自分はもっと頑張らなきゃ!」というモチベーションにつながります。
僕は他の生徒よりも少し年齢を重ねてからバークリー音大に入ったので、入学当初は「他の学生よりもできていることが多いだろう」と思っていました。
ところが、入学すると自分に足りないものが見つかって、自己肯定感は下がっていきました。
しかし、たくさん練習や勉強を重ねたので、大きく成長することができ、自信をつけることができました。
一方で、世界一のミュージシャンになることはできないだろうということにも気づきました。
自分にできることとできないことをしっかり認識できたのです。
音大に行くデメリット5つ

ここでは、音大に行くメリットを5つご紹介します。
音大に行くメリット1.学費が高すぎる
多くの音楽大学は、学費が非常に高いです。
バークリー音大の学費は年間800万円程度なので、大学の学費としてはかなり高いでしょう。
(日本の音楽大学は年間200万円程度が相場です)
音大に行くメリット2.何も学べず終わる可能性がある
音大に行くだけで上手くなることはありません。
音大に行っている間、自分でしっかり学ぶモチベーションを保ち、自ら学ぶ姿勢を持ち続ける必要があります。
そうでないと、高い学費を払うだけで、何も学ばずにそのまま卒業してしまう可能性もあります。
音大に行くメリット3.音楽経験がゼロだと大変
楽譜も読めない、楽器を演奏したこともないというレベルの人は、特に入学して最初はかなり圧倒されてしまうと思います。
もちろん、どんな学生に対してもきちんと音楽の基礎を教えてくれる授業はありますが、基礎がわからないとかなり苦労するかもしれません。
もし音楽の基礎がよくわからない状態で入学する人は、この苦労を覚悟しておく必要があります。
重要な質問「あなたは本当に音楽を学びたいですか?」

ここで、重要な質問です。
あなたは本当に音楽を学びたいですか?
ここでは、なぜこの質問が重要なのかを説明するため、僕が音大に行って感じたことをお話しします。
時にはルールや縛りもある
音楽は自由でクリエイティブでオリジナリティを求められることがあり、そのようになりたいと自分でも思うでしょう。
しかし、何かやりたいことがあるのにそれが達成できないときは、「この公式を使いなさい」「こういうやり方でやりなさい」など、とても機械的な方法でやらなければいけなかったり、学ばなければいけないこともあります。
目標を達成するためには、時にこのような自分がやりたくないことやつまらないこと、型にはまったルールに従わなくてはいけないこともあります。
音大に行ってもプロになれる保証はない
残念ながら、音大に行ってもプロになれる保証はありません。
音大に行ったからと言って仕事がもらえるわけではないことに注意が必要です。
音大に行かなくても学べることはある
例えば音楽理論や音楽の基礎であれば、音大以外でも学ぶことができます。
イヤートレーニングであれば、確かに音大で学ぶと楽しいかもしれませんが、音大でしか学べないことではありません。
あなたが学びたいことが「音楽大学に行かないと学べないこと」であるかどうかも、重要なポイントです。
音大は奨学金がないと大変かもしれない
音大は学費が高いので、奨学金がないと厳しい人も多いでしょう。
返済が必要な奨学金なのか、学費が完全に免除であるかどうかも重要です。
音大で学費免除になる方法についてはこちらの記事でも触れています↓
レベルテストの前に基礎を勉強しておく
入学時にレベルテストなどを受けると思いますが、このレベルテストでいい成績を残せば、単位がもらえることもあります(学校による)。
もし自信がないのであれば、教材を買ったりYouTubeで勉強しておくとよいでしょう。
そこで学んだことはその後の音楽人生でも大きく役立ちますので、損はしません。
他の大学から編入することも考えてみよう
大学には単位移行制度があり、編入前の大学と編入後の大学で同程度のレベル・内容だと、単位をそのまま引き継いで編入することができます。
例えば普通の大学で音楽の基礎に関する授業を受け、その単位を取っている場合、音楽大学への編入時にその単位を引き継ぐことができます。
同じ授業をもう一度受けなくても済むほか、卒業に必要な単位数も減らすことができるので、無駄に長くお金を払い、長く在籍する必要もなくなります。
音楽の基礎をわかっている状態で編入するため、アドバンテージを持つこともできます。
もし現時点で普通大学に在籍している場合、もしくは普通大学に入学しようと考えている人の中で、音楽大学に編入したいと思っている人は、ぜひ積極的に音楽関係の授業を取ってみてください。
自分で死ぬ気で頑張れないなら音大はやめとけ

これが一番強く伝えたいことなのですが、自分の力で死ぬほど頑張れない人は、音大に行かない方がいいと思います。
自分で死ぬ気で頑張れる人でないと、音大に行く恩恵は受けられないでしょう。
もしそれでも頑張りたいと思う人は、まず音大に行ったらオフィスアワーやワークショップなどのイベントに積極的に参加しましょう。
オフィスアワー:教授の研究室などを訪問し、直接質問できる時間
卒業に必要な授業だけ受けるのではなく、授業以外のイベントにも積極的に参加しましょう。
音大生であっても、プロのミュージシャンのように活動するのです。
先ほど「音大に行くメリット」でもお話ししたように、音大にはさまざまなリソースがあります。
それらのリソースを全部活用する勢いで、死ぬ気で活動しましょう。
確かな人間関係を築いていこう
音大ではさまざまな人がいるので、ネットワークを作りやすいです。
しかし、ここで言いたいのは「ただ人脈を広げる・連絡先を交換する」ということではなく「本当に意味のある信頼できる人間関係を築いていく」ということです。
音大に行くべきではない人の特徴5つ

これまで音大のメリットからデメリットまでさまざまなお話しをしましたが、ここでは音大に行くべきではない人の特徴を5つお話しします。
音大に行くべきではない人の特徴1.自分で頑張れない人
そこまで音楽に熱量がない人は、音楽大学に行くべきではありません。
音大ではあなたに「頑張れ」と強制することはありません。
自分で頑張れなければ、成長できないのです。
そのため、自分で頑張れない人は音大に行くべきではないと思います。
音大に行くべきではない人の特徴2.音楽すべてに情熱がない人
楽器を演奏するのが好きで音大に行く人、作曲が好きで音大に行く人、レコーディングが好きで音大に行く人…音大に行く理由はさまざまあると思います。
しかし、自分が一番やりたいこと以外にも興味や熱量がない人は、音大には行かない方がいいでしょう。
例えばイヤートレーニングや音楽の歴史、音楽ビジネスなどには興味がない・勉強したくない・めんどくさいと思う人は、音大には向いていません。
音大ではこれらを授業で学ぶからです。
音楽に関するさまざまなことに興味がない人、情熱を注げない人は、音大には行かず、自分個人で楽しんでいる方が合っているでしょう。
音大に行くべきではない人の特徴3.音大に行けばプロになれると思っている人
音大に行けばプロになれると思っている人は、音大に行くべきではないでしょう。
「音大に行けば仕事が手に入る」という保証はどこにもありません。
音大に行くべきではない人の特徴4.音楽のことを理解していると思っている人
すでに音楽のことを完全に理解していると思っている人や、これ以上音楽について学ぶことはないと思っている人は、音大には行かない方がいいでしょう。
これはマインドの問題で、「もっと多くのことを学びたい」「知らないことをもっと知りたい」というオープンな心を持っていなければ、音大の授業はただの苦痛になってしまうからです。
音大に行くべきではない人の特徴5.お金に余裕がない人
音大は学費が非常に高いので、お金に余裕がない人は音大に行くべきではないでしょう。
もちろん、学費をカバーする方法はさまざまあります。
・返済免除の奨学金を得る(特待生になる)
・学費の安い大学で音楽系の単位を取った後、音大に編入する
(単位移行制度を利用する。基礎は学費が安い他の大学で学び、音大に編入して音大でしか学べないことを学び、最短で卒業する。)
しかしこれらを実行できない場合や、これらを行なっても学費をカバーしきれないこともあります。
仮に返済が必要な奨学金を借りて結果的に数百万〜1000万円以上の返済が必要になった場合、あなたの卒業後の人生は借金返済に追われる生活になります。
たった数年間の大学生活のために、その後の何十年の人生を借金返済に充てなければなりません。
そう考えると、果たして高い学費を払ってまで大学に行く意味があるのか?と考えてしまいます。
そのため、学費を払う余裕がない人は音大に行くべきではないと思います。
あなたは音大に行くべきか?

僕は音楽大学に行ってとてもよかったと思っていますし、この経験は何にも変え難いほど尊いものです。
今でも自分が理想とする音楽生活が送れていることをラッキーだと思っていますし、嬉しく思っています。
そして、これを見ている人はおそらく僕に「音大に行った方がいい」と言ってもらいたい人だと思います。
音大は学費が高いことなんて百も承知だけど、それでも音大に行きたいと思っている人だと思います。
僕はいくらでもあなたに「音大に行くべきだよ」と言えます。
しかし、2つ注意点があります。

まず1つ目は、自分で努力できないのであれば、音大に行かない方がいいということです。
音大に行って音楽が嫌いになりそうになっても、クラスで一番音楽が下手であっても、誰も自分の音楽を理解してくれなくても、自分の力で頑張らなくてはいけません。
音大に行くと決めるのも、在学中に自分の力で頑張るかどうかも、全部あなた次第なのです。
そして2つ目は、奨学金を借りること・学費免除の制度を利用することです。
基本的にどの音大も学費が高いので、よほどのお金持ちでない限りは、奨学金や学費免除の制度を利用する必要があるでしょう。
奨学金を”借りる”場合は、卒業後に返済が必要になります。
返済金額が多額になるので、卒業後は返済に追われる人生になるかもしれません。
そのため、お金についてはシビアに考えるようにしてください。
以上で解説は終了です。
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