音楽ジャンル解説

【音楽ジャンル】ロックンロール(Rock and roll)とは?【歴史編】

今回は、音楽ジャンル「ロックンロール」についてまとめました。

この記事ではPart2として、ロックンロールの歴史について解説します。

Part1 概要編

ロックンロールが誕生したのはどこ?

ロックンロールの誕生については諸説ありますが、基本的には、アフリカ音楽の伝統とヨーロッパの楽器を融合させるなど、さまざまな影響を受けてアメリカ南部で誕生したと考えられています。

アフリカから奴隷とその子孫がアメリカの中心市街地に移り住むと、たくさんの黒人と白人の市民が今までよりも非常に近い距離で住むようになりました。

そしてその結果、お互いの音楽を聞くようになり、お互いのファッションも真似るようになります。

ラジオでは、どちらの音楽も両方のラジオで聞けるようになり、これがレコードやアフリカ系アメリカ人の音楽スタイル(ジャズやスイングなど)の発展と普及に大いに貢献していくことになります。

ロックンロールのルーツは?

ロックンロールにおいて一番近いルーツは、リズムアンドブルース(レースミュージック=race musicと呼ばれています)と、1940年代〜1950年代におけるカントリーミュージックです。
(「レースミュージック」はアフリカ系アメリカ人によるブルースやジャズを総称した言い方)

特にジャズ、ブルース、ゴスペル、カントリー、フォークから影響を受けています。

1930年代になると、都心を拠点するダンスバンドやブルースに影響を受けたカントリースイングなどが、はじめて白人の聴衆向けにアメリカ系アフリカ人によって演奏されるようになります。

そしてこの時期、はっきりとロックンロールの要素があるジャズの曲が誕生します。

ピアノストのPete JohnsonとBig Joe Turnerによる1939年のシングル「Roll ‘Em Pete」です。

Big Joe Turner Roll 'Em Pete

ちなみにロックンロールの先駆けと言われる「ロカビリー」については、こちらの記事で解説しています↓

大編成から小編成へ変わっていくバンド

1940年代になると、より鳴りの強いホーンセクション(サックスやトランペットなど)が多く見られるようになります。

これらはジャズ系の音楽において、曲の歌詞やブギウギのビートを演奏する役割があったパートです。

ジャズのホーンセクション

Glenn Miller - In The Mood | Colorized (1941) 4K
Duke Ellington, "Take the A Train"

第二次世界大戦後すぐ、燃料が不足し、聴衆と参加できる人員に制限が出てしまったため、大編成のジャズバンドはコスパがいいとは言えなくなってきました。

そのため、「ギター・ベース・ドラム」といった小編成のバンドに置き換わっていきます。

ジャンプブルースとロックンロール

同じ時期、特に西海岸や中西部ではジャンプブルースが発展していきます。

ジャンプブルースには、ギターのリフ、目立つビート、歌詞をシャウトする歌い方など、のちのロックンロールによく見られる要素があります。

ジャンプブルース

Shake, Rattle and Roll
Good Rockin' Tonight

ちなみにロックンロールのパイオニアとも言われるChuck Berryは、ジャンプブルースのピアノ使われる、2音のリードラインをそのままエレキギターに使っています。

これも、のちのロックンロールでも多く見られる手法です。

同様に、カントリーブギやシカゴエレクトリックブルースにおいても、ロックンロールの特徴である手法が多く見られます。

カントリーブギ

Gallopin' Guitar

シカゴエレクトリックブルース

Gene Ammons My Foolish Heart

エレクトリックブルースにインスパイアされ、Chuck Berryはアグレッシブなギターサウンドをロックンロールにも用いるようになり、エレキギターはメインの楽器として扱われるようになりました。

そして、ベーシックなブルースのバンド編成において、リードギター・コード系楽器・ベース・ドラムという編成が容認されるようになります。

各業界の発展にも貢献したロックンロール

各業界の発展にも貢献したロックンロール

ロックンロールはテクノロジーの進化とともに発展を遂げ、同じ時期にはエレキギターやアンプ、マイク、アナログレコード(45RPM)が誕生しています。

これによりレコード業界にも大きく影響を与えることになり、今ではEd SheeranやRita Ora、Skrillexなどの著名アーティストが所属するレーベル「Atlantic Records」も1947年に誕生します。

また、白人の比較的裕福なティーンエイジャーたちがラジオで音楽を聞くようになり、これが「ロックンロール」という明確なジャンルを定義することにつながりました。

最初の「ロックンロール」の曲は?

ロックンロールはこのように発展を遂げたため「このシングルが最初のロックンロールの曲だ」という風には定義できません。

しかし、「最初のロックンロールではないか?」と考えられています。

Strange Things Happening Every Day - Sister Rosetta Tharpe

Sister Rosetta Tharpe-Strange Things Happening Every Day

That's All Right - Arthur Crudup

Arthur Crudup - That's All Right (original version)

The Fat Man - Fats Domino

Fats Domino The Fat Man

Rock Awhile - Goree Carter

Goree Carter - Rock Awhile (1949)

Rock the Joint - Jimmy Preston

Rock The Joint - Jimmy Preston & His Prestonians 1949

Rocket 88 - Jackie Brenston

Rocket 88 (Original Version) - Ike Turner/Jackie Brenston

最初に大きく影響を与えたロックンロールの楽曲

最初にアメリカ全土に大きく影響を与えたのは、1954年にレコーディングされたBill Haleyによる「Rock Around the Clock」です。

Bill Haley & His Comets - Rock Around The Clock (1955) HD

当時は商業的に成功しなかったものの、のちに成功を収めるようになり、今ではロックンロールにおいて重要な曲の1つとして認識されています。

ロックンロール初期の著名アーティスト

ロックンロール初期の著名アーティストとしては、Chuck BerryとBo Diddleyが挙げられます。

Chuck Berry

CHUCK BERRY : Johnny B. Goode (1958) HD

Chuck Berryの「Maybellene」では、小さなバルブアンプを使ってあたたかみのある倍音を出すディストーションをソロギターに使ったのが印象的です。
(ブルースエレキギタリストによってディストーションを使うこと自体は、その前にJoe Hill LouisやGuitar Slimなどによってすでに行われていました)

Chuck Berry - Maybellene

Bo Diddley

Bo Diddleyは「Bo Diddleyビート」という、ユニークなエレキギタースタイルを確立します。

これはアフリカ系音楽とアフロキューバンから影響を受けたもので、のちのアーティストたちにも影響を与えていきます。

BO DIDDLEY 1965

Bo Diddley Beatの弾き方講座

How to Play the "Bo Diddley Beat" Guitar Strum Pattern

ロカビリー(Rockabilly)の誕生

ロックンロールの先駆けと言われているジャンルの一つに、ロカビリーがあります。

ロカビリーについてはこちらの記事で解説していますので、合わせてご覧いただくと、より理解が深まります。

ロカビリーは「1950年代中盤に演奏されたロックンロールスタイルの音楽」と言われており、最も著名なアーティストにElvis Presleyがいます。

1954年には、Elvis & His Cometsが「Rock Around The Clock」をリリースします。

この曲は1年後に映画「Blackboard Jungle」で使われたことでティーンエイジャーたちの間で話題になり、大ヒット。

のちに世界的にも有名になり、ロックンロールブームが巻き起こります。

この曲は日本人でも知っている人が多いでしょう。

Bill Haley & His Comets - Rock Around The Clock (1955) HD

この曲は、彼らだけでなく、ロックンロールという音楽自体にとってもブレイクスルーとなります。

「カバー」の誕生

のちに、白人によるロックンロール初期のヒット曲は、黒人によるリズムアンドブルースやブルースによってカバー・リライトされるようになります。

1940年後半から1950年代初期にかけては、R&Bはより強いビートとワイルドなスタイルになっていき、アーティストたちはより速いテンポで演奏するようになります。

これにより、ジュークジョイント(飲んだり食べたり、ジュークボックスを使って音楽に合わせて踊れる場所)での人気も高まりました。

Rock Around the Clock (Remastered)

また、ロックンロールを広めた人物の一人であるAlan Freedを始めとするアーティストたちが活躍する前までは、白人が発信するラジオ局で黒人音楽を流すのはタブーとされていました。

しかし、多くのアーティストやプロデューサーたちは、ロックンロールのポテンシャルをすぐ認識していきます。

Elvis Presleyの初期の曲は、黒人のリズムアンドブルースやブルースの楽曲をカバーしたものがたくさんあります。

Elvisのカバー曲「That's All Right」

Elvis Presley - That's All Right (Official Audio)

Elvisのカバー曲「Baby, Let's Play House」

Elvis Presley - Baby, Let's Play House (Official Audio)

そしてカバーは音楽業界においてスタンダードになっていき、現代でも行われています。

カバーでの成功

カバーで最初に成功したと言われる曲の一つが、Roy Brownによって1947年にリリースした"Good Rocking Tonight" を、Wynonie Harrisがカバーしたものです。

もともとはジャンプブルースの曲でしたが、より派手なサウンドになっています。

Roy Brown - Good Rockin' Tonight 1947
Wynonie Harris - Good Rockin' Tonight (1947)

白人による黒人音楽のカバー

数あるカバーの中で最も目を引いたのは、黒人音楽のR&Bを白人がポップでカバーしたものです。

白人によるカバーは、白人のリスナーにとっては親しみやすかったのかもしれません。

偏見もあったかもしれませんが、白人の市場を狙ったレーベルの方がはるかに優れた流通・ネットワークを持っており、収益性もありました。

ここで素晴らしかったのが、Pat Booneがカバーした数々の曲がヒットしたとき、オリジナル版も同じようにラジオで流れるようになった、ということです。

また「カバー」といっても必ずしも単純にマネしているのではなく、そのアーティストらしさを加えながらカバーされていました。

【オリジナル】Bill Haley and his Comets

Shake, Rattle and Roll - Bill Haley and his Comets

【カバー】Big Joe Turner

Shake, Rattle and Roll

以上でロックンロールに関する解説は終了です。

当サイトでは他にもロックンロールに関わる事柄の歴史について解説していますので、ぜひこちらもご覧ください↓

前編はこちら

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