
今回は、ドラムセットのレコーディングの仕方をまとめました。
ドラムはたくさんマイクを使うし知識がないと大変そう…と思うかもしれませんが、コツを掴めばレコーディング初心者の方でもクオリティ高くレコーディングすることができます。
ここでは必要な機材やマイクのセッティング方法についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム

はじめに、ドラムセットのレコーディングに必要なアイテムをご紹介します。
必須アイテム
- 目的に合った部屋(スタジオ)
- マイク
- マイクケーブル
- マイクスタンド
- オーディオインターフェース
- DAW(録音できるソフトウェア)
この6つがあれば、キレイな音でドラムレコーディングができます。
ドラムはマイクをたくさんイメージがあると思いますが、実は1~4本でも十分キレイな音でレコーディングができますので、予算に余裕がない方もご安心ください。
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム1.目的に合った部屋(スタジオ)

まずは、そのレコーディングに適した部屋・スタジオを用意することが大切です。
ドラムのチューニングは簡単に変えられますが、レコーディングする部屋は簡単に変えられませんので、慎重に選ぶことをおすすめします。
ドラムセットのレコーディングに適した部屋を選ぶためのポイントは、大きく分けて2つあります。
ノイズが少ないこと
エアコンや近所で車が通りかかる音など、雑音が少ない部屋が理想的です。
反響音が適切であること
リバーブ音はミキシングで後から自由に足すことができますので、もし「絶対にそのスタジオの響きが欲しい」という希望がないのであれば、なるべく吸音して音が響かないスタジオを選ぶことをおすすめします。
また、同じチューニングでもレコーディングする場所が変わると違った聞こえ方になることがあります。
その場所で演奏したときにベストなトーンで聞こえるよう、チューニングを確認することも大切です。
チューニングの仕方はこちら🔻
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム2.マイク

ドラムにはたくさんの楽器が使われているため、マイクはできるだけ多く使えるようにしておくと、よりキレイにレコーディングしやすくなります。
また1楽器・1パーツにつき1つのマイク+オーバーヘッドマイク2本を用意すると、パーツごとにトラックを分けて録ることができるため、より細かくミキシングしやすくなります。
(プロの現場では20個以上のマイクを使うこともあります)
たくさんマイクを使う例
- バスドラム(イン・中)
- バスドラム(アウト・外)
- スネア(トップ・表)
- スネア(ボトム・裏)
- タム(1つにつきマイク1つ)
- ハイハット
- シンバル(1つにつきマイク1つ)
- オーバーヘッド(左右1つずつ)
これぐらいマイクを設置できると1つ1つの楽器にフォーカスしてレコーディングしやすいのですが、必ずしもたくさんマイクを使わなければいけないということはありません。
後ほど「マイクを1本だけ使う方法」「2本だけ使う方法」などさまざまなレコーディング方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ドラムレコーディングにおすすめのマイクはこちらご紹介しています🔻
オーバーヘッドマイクとは?

オーバーヘッドマイクは、ドラムセットから少し離れて演奏者の頭やシンバルより上の高い位置に置くマイクのことです。
(オーバーヘッド=頭の上)
ドラムセットから少し離れた位置に置くため、ドラム全体の響きを録ることができます。
そのため、オーバーヘッドマイクで録れた音の音量が大きいと、レコーディングをした部屋のサイズがわかりやすくなります。
オーバーヘッドマイクを左右に1つずつセットすると、部屋の大きさや部屋鳴りがわかりやすくなり、全体的に広がりのある楽曲に聞かせやすくなります。
ドラム用マイクの選び方
ドラム用マイクを選ぶ時は「ダイナミックマイクorコンデンサーマイク」「指向性」「ダイアフラムの大きさ」など、選ぶポイントがいくつかあります。
ドラム用マイクの選び方についてはこちらの記事でご紹介しています🔻
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム3.マイクケーブル
マイクを使ってレコーディングするとき、基本的にはマイクケーブルが必要になります。
(ハンディーレコーダー等を使う場合は必要ありません)
ほとんどのマイクがXLR接続に対応しているため、XLRケーブルを使うことが多いです。

XLRケーブルの先端は「オス」と「メス」のどちらかになっており、オス同士・メス同士で接続することはできません。
そのため、XLRケーブルを使うときはマイクのケーブル差し込み口とオーディオインターフェースのケーブル差し込み口が、オスとメスのどちらなのかをよく確認してからを選びましょう。
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム4.マイクスタンド

ドラムはバスドラムのように低い位置に置く楽器もあれば、シンバルのように高い位置に置く楽器もあります。
また、レコーディングをする場所によって楽器との距離を柔軟に変えることが重要になるので、伸び縮みしやすいマイクスタンドを選ぶことをおすすめします。
ドラムレコーディングにおすすめのマイクスタンドは下記の記事でご紹介しています🔻
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム5.オーディオインターフェース

マイクはオーディオインターフェースと呼ばれる機材と接続してレコーディングを行います。
オーディオインターフェースの「INPUT」と書かれている差し込み口にマイクケーブルを接続して使います。
つまり、マイクの数だけINPUTの数が必要になりますので、一度にたくさんマイクを使う場合は注意が必要です。
例えば比較的安価なオーディオインターフェースはINPUTが1~2個しかないため、一度に使えるマイクは1~2本に限定されてしまいます。
ドラムレコーディングにおすすめのオーディオインターフェースは下記の記事でご紹介しています🔻
オーディオインターフェースについて知りたい方向けの記事はこちら🔻
ドラムセットのレコーディングに必要なアイテム6.DAW(録音できるソフトウェア)

レコーディングでは、基本的にDAWを使います。
「Pro Tools」や「Cubase」など様々な種類がありますが、基本的にはどれを使ってもOKです。
(最もレコーディングしやすいと言われているのはPro Toolsですが、音質や機能についてはどれもそれほど大きく変わりません)
そのため、はじめは「自分が操作しやすいと思ったDAW」「オーディオインターフェースを買ったときに付属してきたDAW」「一番手頃な価格のDAW」など、どんな基準で選んでもOKです。
DAW選びに困った方はこちら🔻
なるべくたくさん機材を使わず安価にレコーディングしたい時は?
なるべくたくさん機材を使わず安価にレコーディングするには、ハンディーレコーダーを使う方法があります。

ハンディーレコーダーは本体に挿し込んだSDカードにデータを保存しますので、オーディオインターフェースや多数のマイクは必要ありません(マイクスタンドはあった方が便利です)。
次にご紹介する「マイクを1本だけ使ってドラムレコーディングする方法」を参考に、ハンディーレコーダーの位置を決めてレコーディングするだけでOKです。
ハンディーレコーダーを1つだけ使っても、適切にミキシングをすればこのようなサウンドにすることも可能です。
ドラムレコーディングにおすすめのハンディーレコーダー
ドラムセットのレコーディングの仕方
それではここからは、具体的にマイクのセッティング方法・レコーディング方法をご紹介します。
マイク・マイクケーブル・オーディオインターフェースの接続方法
多くのマイクとオーディオインターフェースはXLR接続に対応していますので、ここではXLR接続の方法をご紹介します。

例えば上記画像では、マイク(左)がオス、ケーブル(右)がメスになっています。

オスとメスが揃えばそのまま接続ができます。
これで、マイクとマイクケーブルの接続は完了です。


次はマイクケーブルとオーディオインターフェースを接続します。
オーディオインターフェースには「INPUT」と書かれている部分の近くに差し込み口があります。
(上記1枚目の画像では一番左、2枚目の画像では「MIC/LINE」と書かれた2つの差し込み口)
多くの場合はメスの差し込み口(穴が3つ空いている)になっていますので、ケーブルのオス側をオーディオインターフェースに差し込みます。

そして、オーディオインターフェースとパソコンをケーブルで接続します。
(多くの場合はオーディオインターフェースに専用のケーブルが付属しています)

ちなみに上記画像の場合は、右側をオーディオインターフェースと接続し、左側をパソコンと接続します。

後は、お使いのDAWを起動して録音開始をします。
DAWによって操作方法は異なりますので、「DAW名 レコーディング」などで調べてみてください。
たくさんケーブルを使うときのコツ
ドラムにはたくさん楽器がありますので、たくさんケーブルを使うとどのケーブルがどの楽器のマイクに使われているのか混乱してしまうことがあります。
そのため、テープに楽器の名前を書いてケーブルに貼っておくと安心です。
(Sはスネア、Kはキック=バスドラム、T1は一番高いタム、T2は2番目に高いタムなど)


パソコンで流している曲やクリックを聴きながらレコーディングしたい場合は?
パソコンで流している曲やクリックを聴きながらレコーディングしたい場合は、ヘッドホン・イヤホンをオーディオインターフェースに接続するとよいでしょう。
オーディオインターフェースによっては3.5mmステレオミニジャック(細いジャック)に対応していないことがありますので、ヘッドホン・イヤホンがミニジャックの場合は変換プラグが必要になります。

上記画像のように、ヘッドホン・イヤホンのジャック(画像下)を変換プラグ(画像上)に差し込みます。

そして、オーディオインターフェースの「Phones」「Headphone」などと書かれたヘッドホン用の差し込み口に接続します。
こうすれば、パソコンで曲やクリックを流しながら録音することができます。
マイクを1本だけ使ってドラムレコーディングする方法
ドラムレコーディングだからと言って、絶対にマイクを複数本使わなければいけないというルールはありません。
以下のように、ドラムのフロントヘッドのすぐ上付近にマイクを1本だけ設置することで、ドラムセット全体をまとめてレコーディングすることもできます。



この位置より上にセッティングするとシンバルと近くなってしまい、シンバルがうるさくなってしまう可能性があります。
使うマイクの本数が少ない場合は、どの楽器の音をどれぐらいの音量で録りたいのかを考えることが大切です。
また、ドラムセットの正面にマイクを置く方法もあります。

マイクの位置を下げるとバスドラムやスネア、フロアタムとの距離が近くなるので、より低音が録れやすくなります。
逆にマイクの位置を高くするとシンバルとの距離が近くなりますので、全体的に明るい印象になります。

また、ドラムセットの後ろ(演奏者の後ろ)にセッティングすることもできます。
後ろに置くマイクは、特にバスドラムやフロアタムの音が録れやすいです。

マイクを2本使ってドラムレコーディングする方法

マイクを2本使う場合は、バスドラム(スネアサイドヘッド側)に1本、オーバーヘッドを1本使うとよいでしょう。
オーバーヘッドで全体を満遍なく録りながら、重要なバスドラムもピンポイントでしっかり録ることができるため、これだけでもタイトな音にすることができます。
下記の例では、オーバーヘッドを前に2本置いています。
ステレオレコーディングができるので、より部屋鳴り・部屋の大きさがわかるような、広がりのあるサウンドで録ることができます。
マイクを3本使ってドラムレコーディングする方法
マイクを3本使う場合は、「ABテクニック」と「グリン・ジョンズテクニック」の2パターンがよく使われます。
マイク3本を使う例1.ABテクニック
ABテクニックは、バスドラム(スネアサイドヘッド側)に1本、オーバーヘッドを2本使う方法です。
オーバーヘッドとして左右に1本ずつ合計2本使うことで、ステレオ感・広がりを出しやすくなります。
(ミキシングのときに左オーバーヘッドマイクのPanを左に、右オーバーヘッドマイクのPanを右に振ります)
マイクを2本使ってステレオレコーディングをするときは、オーバーヘッドマイクはスネアからの位置が同じになるようにするのが一般的です。
左右で距離が違っていると、ミキシングのときに位相の打ち消し問題が発生してしまう可能性が高いためです。
(1つのデータを単体で聞いたときは問題がないのに、2つのデータを合わせて聞いたときに音がグシャっと聞こえたり、聞こえにくい音が発生してしまいます)




例えばフロアタムに近い方のマイクは少し下げ、クラッシュ・ライドシンバルに近い方のマイクは少し高めにすると、それぞれの楽器の音を拾いやすくなります。
上記の「ABテクニックの例」では、ミックス後(Processed)のときに音が少し左右に広がった感じがしたり、それぞれの楽器の位置がわかりやすくなったと思います。
これはオーバーヘッドマイクが2本あり、それぞれPanを左右に振ることでステレオ感が出るためです。
また、フロアタム側のマイクを少し下げるとバスドラム以外にもフロアタムの音が拾いやすくなるので、低音が充実して聞こえやすくなります。
マイク3本を使う例2.グリン・ジョンズテクニック

グリン・ジョンズテクニックは、先ほどのABテクニックよりもフロアタム側のマイクをより後ろに低くセッティングする方法です。
(グリン・ジョンズは、ビートルズやローリングストーンズ、レッドツェッペリンなど、数多くのロックバンドのエンジニア&プロデューサーを務めた方です)
こうするとフロアタムの音がよりはっきり聞こえるようになり、重みとパンチのあるサウンドになります。
部屋鳴りとパンチが両方とも程よくしっかり録れる点が大きなメリットです。
マイクを3本使っているとき、うち1本はバスドラムに使っていますので、もう1本をフロアタムがよく録れる位置に置いておくと、バスドラムとフロアタムの低音楽器によるコンビネーションがよく録れます。
一方で、位置が低くスネアからは少し離れたところに置きますので、スネアの音が少し弱まってしまう点に注意が必要です。
しかし次にご紹介するマイクを4本使う方法を使えば、この問題は解決できます。
マイクを4本使ってドラムレコーディングする方法
マイクを4本使ってドラムレコーディングする場合は、バスドラムに1本、オーバーヘッドに2本、スネアに1本使うのが一般的です。
先ほどの「マイク3本を使う方法」にスネア用のマイクを追加したバージョンで、よりパンチがあり太い音が録れやすいほか、繊細な音も録れやすくなります。



スネアにマイクをセッティングするときは、スネアヘッドの中心に向かってマイクを傾け、マイクの先端がリムの2~5センチほど上の位置になるようにするとよいでしょう。

上記画像のように、指が2~3本入るぐらいの高さが目安です。
スネアからほんの数センチ離れるだけでも音が変わりますので、ぜひベストなポジションを見つけてみてください。
また、オーバーヘッドで録れているスネアの音と位相の打ち消し問題が発生することがありますので、ミキシングの際は注意しましょう。
マイクを5本以上使ってドラムレコーディングする方法
マイクを5本以上使ってドラムレコーディングする場合は、バスドラム1本・スネア1本・オーバーヘッド2本に加え、自分がよりクリアにレコーディングしたい楽器にマイクを付け足すとよいでしょう。
例えば部屋の広さや奥行きを録りたい場合は、部屋の奥に「ルームマイク」としてコンデンサーマイクを置いてもよいでしょう。


マイクのセッティングが適切にできていると、どんなに楽器の個数が増えてもキレイにレコーディングできるようになります。
スネアにボトムマイクを付けるときのポイント
スネアの裏から録るマイクは「ボトムマイク」と呼ばれ、スナッピーのザラザラ感や中〜低音域が録れやすいという特徴があります。
スネアのフロントヘッド(トップ)のレコーディングには「リムから指が3本ぐらい離れるぐらいの高さが目安」とお話ししましたが、これはボトムヘッド用マイクでも同じです。

まずはボトムヘッド(スネアサイドヘッド)から数センチほど離した位置からスタートし、ここから微調整していくとよいでしょう。
スネアのトップマイクを2本使うときのポイント
スネアは「パンッ」とパンチのある音を出すこともあれば、ロールなど細かい音を出すこともある、とても演奏のバリエーションが多い楽器です。
また、高音域を強調してアタック感を出したい一方で、音に重みや太さも失いたくないというときもあるでしょう。
このような時におすすめなのが、トップマイクを2つ使う方法です。
1本はより繊細に音を拾うことができ高音域も拾いやすいコンデンサーマイク、もう1本は太さやパンチを拾いやすいダイナミックマイクにするのがおすすめです。
2本を使い分けることで、ミックスのときに理想のバランスに仕上げやすくなります。
位相の打ち消し問題を防ぐため、デュアルマイククリップやテープで両者をつなげておくと安心です。

スネアやタムにマイクを置く時のポイント

スネアやタムなど、フープがついている楽器にはマイククリップを使うこともできます。
手軽に取り付けたい方や、マイクスタンドが足りない方、マイクスタンドをあまり使いたくない方におすすめです。


タムにボトムマイクを使うメリット

タムをレコーディングするとき、トップマイク(打面に近いマイク)だけでなく、ボトムマイク(裏面に向けたマイク)を付けるとより太く迫力のある音になります。
アタック感を足したいときはトップマイクの音量を上げ、太さや重さを重視したいときはボトムマイクの音量を上げれば理想の音に近づけやすいです。
シンバルの近くにマイクを置く時の注意点
ドラムセットの中で、一番楽器本体が大きく長く動きやすいのがシンバルです。
シンバルとほぼ同じ高さにマイクを置くと、シンバルの揺れに合わせて音がグワングワンと変に録れてしまうことがあります(渦巻き効果)。

そのため、シンバルの近くに置くマイクはなるべくシンバルよりも高い位置にセッティングすることをおすすめします。
ジャンルやスタイル、マイクの本数によってマイクの設置位置を工夫しよう
ジャンルや楽曲のスタイル、マイクの本数によって、ドラムのどの楽器の音を、どのようなトーンでレコーディングしたい方が異なるでしょう。
例えばメタルならバスドラムを「ダダダダ」と連打することがありますので、なるべくアタック音を強調してレコーディングできた方がいいかもしれません。
そのため、バスドラムに穴(ポートホール)を開け、マイクをバスドラムの中に入れるとよいでしょう(クローズドマイク)。

マイクスタンドがあれば、スタンドを使ってマイクをバスドラムの中に入れることもできます。

ポートホールの意味や開け方についてはこちらの記事で解説しています🔻
またジャズではあまり大きな音を出さないので、バスドラムにもコンデンサーマイクを使うと繊細なプレイをしっかり録りやすくなります。
ドラムミックスをするときの注意点
ここでは、レコーディングが終わった後ミックスをするときの注意点を3つご紹介します。
これらを頭に入れておくとミックスを意識したレコーディングができるだけでなく、レコーディングの段階で気を付けることができれば解消できる問題もありますので、ぜひ参考にしてください。
ドラムのミックスでは位相の打ち消し問題に注意しよう
実際にレコーディングしたドラムの音をミックスするときは、位相の打ち消し問題に注意が必要です。
位相の打ち消しとは、全く同じ音or限りなく近い音が同時に鳴っているとき、位相が微妙にズレると音が消えてしまう問題のことです。

上記画像では、左側は下2つの波形(音)が全く同じように鳴っているため、最終的に聞こえる音はより大きな波形になっています(一番左上の波形)
一方、右側は位相の打ち消しが発生している例です。
下2つの波形がそっくりそのまま反転しているため、最終的に聞こえる音がゼロ(無音)になっています(一番右上の波形)。
ドラムレコーディングでは、例えばスネアのトップ用マイク(上)とボトム用マイク(下)を使っているとき、ボトム用マイクの位相を反転させるだけでこれだけの差が出ることもあります。
上記の例では、位相を反転させた後の音がとても薄くなりました。
これは位相の打ち消しが起こり、スネア本来が持つ太い音が打ち消されてしまったためです。
別の例を見てみましょう。
はじめに流れるスネアには位相の打ち消しが発生しており、後から流れるスネアは位相の打ち消しが発生していない状態です。
こちらも、位相問題が発生しているときは音がとても薄く、問題が解消されると太く重みのあるサウンドになっていることがわかります。
もし音量がとても小さく薄く聞こえたりする場合は、片方の位相を反転させてチェックしてみましょう。
ドラムブリードにも要注意
ドラムレコーディングは複数のマイクを使うことがありますが、どんなにマイクを楽器の近くに置いても、他の楽器の音を拾ってしまうことがあります(ドラムブリード)。
例えばスネア用のマイクにハイハットの音も入ってしまったり、タムのマイクにバスドラムの音が入ってしまうことがあります。
ドラムは音量も大きく各楽器の距離が近いため、これを完璧に避けるのはなかなか難しいです。
また、各楽器は微妙に距離が開いているため、ミックスをするときに位相の打ち消し問題が発生してしまうことがあります。
1つずつ単体で聞くと問題がなくても、他の楽器の音と一緒に聞くと位相の打ち消しが発生し、音が聞こえにくくなったり、グシャっとした音に聞こえることがあります。
特にオーバーヘッドマイクは基本的にすべての楽器の音を拾っていますので、「オーバーヘッドマイクで録れたスネアの音と、スネア用マイクで録ったスネアの音を合わせたら音が変になった」ということもあります。
そのため、ミックスをするときは位相を反転させて対処するなど、工夫が必要です。
オーバーヘッドのPanを振るときの注意点
オーバーヘッドをステレオ(マイク2本)でレコーディングしたときは、基本的にミックスでPanを左右に振ります。
このとき、Panを振った後の音の位置が、他のマイクの音とズレすぎないように注意しましょう。
例えばオーバーヘッドマイクを左右に振ると、オーバーヘッドで拾ったタムの音も左右に振られます。
このとき、タム専用マイクで録ったタムの音だけ真ん中から鳴っていて、オーバーヘッドで拾ったタムの音だけ左右に振られていると、不自然に聞こえることがあります。
オーバーヘッドのPanを振るときは、他のマイクで録った音(特にクローズマイク)と位置に違和感がないか確認しましょう。
「ミックスでなんとかすればいい」はNG
レコーディングの試行錯誤や機材を揃えるのが面倒で「とりあえずミックスでなんとかしてもらえればいいや」という方も多いのですが、できるだけミックスが必要ないぐらいのレコーディングクオリティを目指しましょう。
質の悪いレコーディングデータは、どんなにいいエンジニアが頑張っても最高の音にすることはできません。
そのため、最も理想的なレコーディングは「ミックスがいらないほどキレイにレコーディングすること」と言われています。
詳しくはこちらの記事でも解説しています🔻
ドラムレコーディングにおすすめのマイクとオーディオインターフェース
ドラムレコーディングにおすすめのマイクとオーディオインターフェースはこちらでご紹介しています🔻
高いオーディオインターフェースを買うべきか迷っている人向けの記事はこちら🔻
以上でドラムレコーディングのやり方の解説は終了です。
当サイトでは他にもドラムに関するさまざまな知識やテクニックをまとめていますので、ぜひこちらも参考にしてください🔻