作曲全般

ヒップホップから学べるDTM・作曲テクニック4選

You Should Steal These Hip Hop Techniques

今回は、Big Zが解説する「ヒップホップテクニックからこれらを盗もう」をまとめました。

Big Zはポップスやダンスミュージックの音楽プロデューサーとして有名ですが、10年以上前からヒップホップの楽曲も制作しています。

そんなマルチに活躍する彼が、ヒップホップから学べる「全ジャンルに使えるDTMテクニック」を4つ解説します。

ヒップホップDTMテクニック1.ごちゃごちゃさせない

ヒップホップから学べるDTMテクニック1つ目は「ごちゃごちゃさせない」です。

ダンスミュージックではトラックが100を超えることはあまりありません。

トラック数が多いほど楽曲がいきいきと全体が満たされるのではないかと思いがちですが、実は逆で曲の核となる部分が見えづらくなります。

例えばヒップホップだと「ドラム・ベース・ブラスやピアノなどのメロディックな楽器」など、本当に少数の楽器しか使われないことが多いです。

1:04~1:24

You Should Steal These Hip Hop Techniques

トラック数を少なくするメリット2つ

トラック数を少なくするメリットは「リスナーに重要な要素だけに集中してもらいやすくなる」「ビートを強烈にすることができる」の2つです。

「リスナーに重要な要素だけに集中してもらいやすくなる」

例えば先ほどお聞きいただいたヒップホップのビートには、アルペジオやパッドなどの音を入れることもできるでしょう。

しかし、それらを入れてしまうと最も重要なブラス(金管楽器)の音が埋もれてしまいます。

本当に覚えてほしい要素だけを取り入れ、それ以外の要素は取り入れずにシンプルにすることが大切です。

1:45~1:47

You Should Steal These Hip Hop Techniques

「ビートを強烈にすることができる」

たくさん音を入れてレイヤーすると、全体がとても満たされて充実したサウンドに聞こえます。

しかしミックスやマスタリングになると、全体が潰れてぐちゃぐちゃに聞こえやすくなります。

全体が音で埋まっているので、呼吸をする余白がないように感じてしまうのです。

そのため「スキマを埋めること」ではなく「1つ1つの音を強調させること」にフォーカスすることが大切です。

取り入れる要素の数を減らすと、1つ1つの音がパンチのある音に聞こえるようになります。

2:02~2:07

You Should Steal These Hip Hop Techniques

ヒップホップDTMテクニック2.短くパンチのあるドラムを使う

ヒップホップから学べるDTMテクニック2つ目は「短くパンチのあるドラムを使う」です。

長さが短くアタック感が強いドラムを使うと、メロディーやベースなど他の楽器のための余白ができるため、ドラム以外のパートも抜けがよくなります。

たとえばこちらのビートをお聞きいただくと、ドラムはアタックがしっかりあって長さが短く、ドラム以外の楽器もよく聞こえることがわかります。

2:25~2:58

You Should Steal These Hip Hop Techniques

特にヒップホップでは808系のベースが「ブゥーン」と鳴ることが多いので、バスドラムが長いとベースがよく聞こえなくなります。

ヒップホップDTMテクニック3.ベースにサチュレーションを使う

ヒップホップから学べるDTMテクニック3つ目は「ベースにサチュレーションを使う」です。

ヒップホップの楽曲を聴くと、808系のベースが「ブゥーン」と鳴っていることが多いです。

とても低い音のはずなのに、なぜこれだけはっきり前に出て聞こえるかと言うと、これはベースにサチュレーションを使っているからです。

ベースにサチュレーションを使うべき理由

例えば、こちらの808系のベースをお聞きください。

3:22~3:35

You Should Steal These Hip Hop Techniques

おそらく、スマホやパソコンの内蔵スピーカーだとこのベースの音はほとんど聞こえないと思います。

ここで「マルチバンドサチュレーション」を使うと、どんな再生環境でもベースを聞き取りやすくなります。

マルチバンドサチュレーションとは「任意の音域ごとにサチュレーションをかけられるプラグイン」です。

たとえばFabfilter社「Saturn 2」では「◯Hzから○Hzまでは、この種類のサチュレーションをこれぐらい強くかける」という設定をすることができます。

関連記事

ベースにサチュレーションを使うときのコツ

どんな再生環境でもベースの存在感を出すためには、小さなスピーカーでも聞こえる音域にサチュレーションをかけたり、音量を上げるとよいでしょう。

https://youtu.be/7aw3m-ox908?si=lpqZVxCJZKFWJBqj

例えば100Hz以下の低音域は、小さなスピーカーや安価なヘッドホンではほとんど聞こえません。

そのため、100H以下はサチュレーションをかけないでおきます。

100〜250Hzの音域はベースにおいてメインとなる音域でもあり、小さなスピーカーやヘッドホンでも聴くことができる音域です。

そのため、100~250Hzの音域だけ音量を上げたり、サチュレーションをかけて倍音を増やします。

また250Hz以上の音域にもサチュレーションをかけると、ベース全体が聞き取りやすくなります。

808系のベース Before/After 3:37~

You Should Steal These Hip Hop Techniques

808系のベースにサチュレーションを使うときの注意点

808系のベースにサチュレーションを使うときは、まず使っているサンプル(音源)の音をよく聴くことが大切です。

サンプルや音源の中には、何もしなくてもすでに中低音域以上の音がたくさん含まれていることがあります。

https://youtu.be/7aw3m-ox908?si=lpqZVxCJZKFWJBqj

上記画像で言うと、赤色の部分がよく鳴っているのであればサチュレーションをかける必要はあまりないでしょう。

https://youtu.be/7aw3m-ox908?si=lpqZVxCJZKFWJBqj

上記画像の赤色の部分は、一般リスナーが使っているような小さなスピーカーや安価なヘッドホンではほとんど聞こえない音域です。

もちろんこの低音域を完全に無視していいというわけではありませんが、「誰がどんな再生環境でも楽しめるようにする方法」を考えるのであれば、1つ前の画像のように中低音域を重視するとよいでしょう。

4:30~5:06

You Should Steal These Hip Hop Techniques

ヒップホップDTMテクニック4.無音とコントラストを活用する

ヒップホップから学べるDTMテクニック4つ目は「無音とコントラストを活用する」です。

無音部分を作ったり「ある/ない」のコントラストをつけると、とてもスッキリとしたかっこいいビートになります。

まずは、こちらの808ベースをお聞きください。

5:15~5:26

You Should Steal These Hip Hop Techniques

ベースが常にフルパワーで鳴っていて、常に同じような音で、とても退屈に聞こえます。

それでは、次は同じようなベースラインを使ったこちらのビートをお聞きください。

5:33~5:46

You Should Steal These Hip Hop Techniques

実は、先ほどのベースと違うのは音の長さだけです。

音を短くすることによって、1音1音が強烈に聞こえます。

さらにイントロの静かなサウンドとの対比もあり、イントロが終わった後に強いインパクトを残しています。

ラウドネス(音圧)を上げたいならコントラストをつける

このコントラストの現象は、朝に目覚ましのアラームが鳴るときと同じです。

静かにゆったり寝ていたのに、急にアラームが鳴るとびっくりして起きてしまうでしょう。

耳が静寂に慣れているときに大きい音が鳴ると、ずっと大きい音が鳴っているときよりもより強い音に聞こえます。
※逆に、工事の音は最初はうるさいと感じても数分後には慣れてしまうでしょう

ラウドネス(音圧)も同じで、「音量が数字的に大きいか小さいか」ではなく「音量が大きいと感じるかどうか」で決まります。

つまり、ラウドネスが大きいと感じさせたいのであれば、このコントラストを曲のあらゆる場面で取り入れることが大切です。

・Bメロはとても静かにするが、サビはとても大きくする
・音をずっと伸ばすのではなく、短くして音と音の間に余白を作る

https://youtu.be/7aw3m-ox908?si=lpqZVxCJZKFWJBqj

例えば上記画像では、ベースで音と音の間に大きめの余白を作っています。

とても短い間ではありますが、ずっと伸ばしているときよりも1音1音が目立つようになり、音圧があるように感じられます。

6:18~6:24

You Should Steal These Hip Hop Techniques

以上が「ヒップホップから学べるDTM・作曲テクニック4選」でした。

当サイトでは他にも打ち込みや作曲テクニックをご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-作曲全般