ミキシングのコツ

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

今回は、Mix Like A ProのMarc Daniel Neisonが教える「バックグラウンドボーカルのミックスで最も重要なこと」をまとめました。

今回ご紹介するのは、メインボーカルをしっかり前に出し、メインボーカルを邪魔しないようにバックグラウンドボーカルをその後ろに置くためのテクニックです。

この方法を使うと、メインボーカルだけでなくパーカッションなどの他の楽器を邪魔しない、美しいミックスをすることができるようになります。

長年プロとして活躍するMarc本人が「この方法に気づいたあと、ミックスにかける時間がものすごく減った」と話しているほど重要なテクニックですので、ぜひ最後までご覧ください。

The Most Important Background Vocals Trick

バックグラウンドボーカルに最も重要なのは「〇〇を使った〇〇」

はじめに結論をお伝えすると、バックグラウンドボーカルに最も重要なのは「ディエッサー」です。

しかし、ただのディエッサーではなく「サイドチェインを使ったディエッサー」であることがポイントです。

今回は、僕の友人のAndrew Bergtholdと製作した「Just Kids」という楽曲を例に解説していきます。

Brave Holiday – Just Kids

マルチバンドコンプを使ったディエッサー

この曲ではメインボーカルに加えてビッグなバックグラウンドボーカルもあり、他の楽器もたくさんあり、一度にたくさんの音が鳴っている状態です。

ボーカルがたくさんいるのでSの子音もたくさん鳴っていますし、パーカッシブなサウンドもたくさんあるため、はじめは「うるさい」「メインボーカルに集中できない」という状態でした。

例えば「stop」という歌詞があれば、15人の人間が一斉に「stop」と発音するので、Sの子音が強すぎるのです。

そのため、「バックグラウンドボーカルのBusにマルチバンドコンプを挿し、サイドチェインの対象をリードボーカルに設定し、リードボーカルのSの成分が強くなったときに、バックグラウンドボーカルのSの成分を抑える」という設定します。

それではまず、この処理を行った実際の音を聞いてみましょう。

2:30~3:14

The Most Important Background Vocals Trick

実際に使っているプラグインはこのようになっています。

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

https://www.youtube.com/watch?v=43aIfeUyhKE

※左がバックグラウンドボーカルのBus、右がリードボーカルのBus

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

https://www.youtube.com/watch?v=43aIfeUyhKE

※バックグラウンドボーカルのBusに使っているマルチバンドコンプ(ディエッサー用)

お聞きいただいた通り、たくさんの楽器が一度に鳴っていて、適切に処理しないとメインボーカルがしっかり真ん中&前にいるように聞こえなくなったり、位相のズレが起きてしまうようなアレンジです。

そのため、高音域(5kHz以上)だけにかかるマルチバンドコンプをバックグラウンドボーカルに対して使っています。

この曲の場合、中音域は必要なだけ出ていてあまり抑えたくないので、高音域にだけマルチバンドコンプをかけるだけで十分です。

サイドチェインの対象は「リードボーカルのBus」ではなく「リードボーカルのトラック」

ここでポイントが1つあります。

サイドチェインの対象は「リードボーカルのBus」ではなく「リードボーカルのトラック」に設定することです。

下の画像の通り、バックグラウンドボーカルのマルチバンドコンプのサイドチェイン対象は「Bus3」にしています。

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

https://www.youtube.com/watch?v=43aIfeUyhKE

この「Bus3」は何かというと、リードボーカル(男性)のトラックです。

ここにディエッサー(Fabfilter社 Pro-DS)も使っています。

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

https://www.youtube.com/watch?v=43aIfeUyhKE

リードボーカルのBusではなく、リードボーカル単体のトラックをサイドチェインの対象にしているのは、その方が音がしっかり前に出て、しかも早く反応するからです。

それでは、実際にマルチバンドコンプの動きを見てみましょう。

リードボーカルのSの成分が強くなった時に、マルチバンドコンプがしっかり動いていることがお分かりいただけると思います。

4:46~4:54

The Most Important Background Vocals Trick

リードボーカルとバックグラウンドボーカルだけで聞いてみましょう。

マルチバンドコンプをバイパスにすると、バックグラウンドボーカルが少しうるさく感じます。

5:01~5:50

The Most Important Background Vocals Trick

特に「Promise that you say」という歌詞のとき、このマルチバンドコンプがあるときはリードボーカルがしっかり前に聞こえることがわかります。

6:22~

The Most Important Background Vocals Trick

ディエッサーにサイドチェインを使わないデメリット

バックグラウンドボーカルのBusには別のディエッサー(Waves社 DeEsser)も使っていますが、こちらは出過ぎたところを少し抑える程度に設定しています。

【MIX】バックグラウンドボーカルのミックステクニック【音抜けバツグン】

https://www.youtube.com/watch?v=43aIfeUyhKE

ここでサイドチェインを使わずにしっかりディエッサーをかけてしまうと、リードボーカルのSの成分が少ないときにボーカル全てのSの成分が弱くなってしまうからです。

リードボーカルのSの成分が弱くなったとき(歌っていない時など)、バックグラウンドボーカルに十分なSの成分があればバックグラウンドボーカルが代わりにしっかり映えますので、音抜けがよくなります。

上手にダッキングしよう

今回ご紹介したテクニックはいわゆる「ダッキング」で、リードボーカルがいるときはバッキンググラウンドボーカルは後ろに下がり、リードボーカルがいないときはバッキンググラウンドボーカルが少し前に出るというものです。

このテクニックを使えば、必要なときに必要な音がしっかり聞こえるようになります。


以上で解説は終了です。

当サイトでは他にも「ボーカルMIXテクニック」についての解説記事を掲載していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

https://youtu.be/f0FhmTvdYYA?si=voPGFHl2leoVKF1_ 今回は、数々のモニタースピーカーを販売しているAdam Audio社が解説する「自宅スタジオ~3レベル ...

2

https://www.youtube.com/watch?v=A8rvn7o33Lo 今回は、Sage Audioが教える「カリッとしたボーカルにするためのMIXテクニック」をまとめました。 全部で ...

3

音楽におけるアップビート、ダウンビート、オンビート、オフビート、バックビート… 似たような言葉だけど、何が違うの?覚えられない… 今回はこのようなお悩みにお答えする内容です。 「アップビート」「オフビ ...

4

今回は、「Sonarworks SoundID Referenceの使い方」をまとめました。

DTMをするなら絶対に持っておきたいこの製品について、なぜこの製品がおすすめなのか、どの種類を買うべきなのか、具体的な使い方と測定方法をご紹介します。

5

世界的にヒットしている曲の構成ってどうなってるの? 「ヒット曲の公式」みたいなのがあるといいんだけど… 今回はこのような疑問にお答えします。 https://www.youtube.com/watch ...

6

今回は、人気音楽プロデューサーのVirtual Riotが解説する「Serum 2の全新機能の解説」をまとめました。Xfer Records社「Serum2」で新しく追加されたプリセットの制作にも携わったVirtual Riotが、新機能17項目を徹底解説します。

7

この記事では、世界中の作曲家・音楽プロデューサーが使っているおすすめのブラス(金管楽器)音源をご紹介します。同じ楽器でも音源によって音色が少し異なりますので、複数持っていると使い分けることができるほか、レイヤーしたときもリアルさと壮大さを増すことができます。

8

今回はAudio Universityが解説する「Universal Audio社 Apollo Twinのレビュー」をまとめました。他社では2万円程度の製品がある中で、Apollo Twinは約10万~20万円です。この記事では、Apollo Twinは値段相応の価値があるのかについて解説します。

9

今回はAdam Audio社とIn The Mixが解説する「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。 多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置 ...

10

今回はChris Selimが解説する「Pultec EQの使い方」をまとめました。DTMにおいて「有名なEQ」としてよく名前が挙げられるのが「Pultec EQ」です。この記事では、なぜこのEQは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

-ミキシングのコツ