ゲーム・映像音楽

どんなシーンにも合う映画音楽の「テーマ」の作り方 Part2

このシリーズでは、Galen DeGrafが解説する「どんなシーンにも合うテーマ音楽の作り方」をまとめています。

今回はPart2として、楽曲を転調する方法3つを解説します。

映画「ヒックとドラゴン」で実際に使われた例をもとに、どんなシーンにも合う1つのメロディー(テーマ)を作る方法をご紹介します。

How to Make a Musical Theme fit any Context

ドビュッシー「Fêtes」の例

まずはじめに、ドビュッシーの「Fêtes」をお聞きいただきます。

3:15~3:23

How to Make a Musical Theme fit any Context
https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

この部分の楽譜を見てみると、フラットが3つ使われているスケールをなぞるように演奏されていることがわかります。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

一般的に、スケールの1番の音(最初の音)は「トニック(Tonic)」や「ルート」と呼ばれます。

バイオリンなどの他の楽器を見ても、この楽曲はF(ファ)の音が中心となっているので、Fがトニック(ルート)ということになります。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

フラットは3つ使われていますが、Fを中心としているので、この曲は「Fドリアンスケール」が使われていることがわかります。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

Fメジャースケール:F,G,A,Bb,C,D,E
Fドリアンスケール:F,G,Ab,Bb,C,D,Eb
(ドリアンスケールでは3rdと7thにフラットがつく)

ドリアンスケールと実際の楽譜を照らし合わせると、以下の画像のようになります。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

楽曲を転調する方法3つ

この楽曲ではFドリアンスケールが使われていることがわかりましたが、ここから別のスケールに変更する(転調する)にはどうしたらよいのでしょうか?

ここでは3つの方法をご紹介します。

スケールを変更する方法1:同じタイプのスケールに変更する

スケールを変更する1つ目の方法は、「同じタイプのスケールに変更する」です。

例えばFドリアンスケールを使っている曲なら、GドリアンスケールやEドリアンスケールに変更できます。

ドリアンスケールは「通常のスケールのうち、3rdと7thにフラットをつける」という点が共通していますので、ルート音が変わっても「少し雰囲気が変わったな」ぐらいに収めることができます。

そのため、親和性を保ったままスケールの変更ができます。

スケールを変更する方法2:音使いが近いスケールに変更する

スケールを変更する方法2つ目は、「音使いが近いスケールに変更する」です。

例えば、ドリアンスケールとミクソリディアンスケールは音使いが似ています。

https://m.basicmusictheory.com/img/c-dorian-mode-on-treble-clef.png
https://m.basicmusictheory.com/img/c-mixolydian-mode-on-treble-clef.png

ドリアンスケールは「3rdと7th」にフラットがつきますが、ミクソリディアンスケールでは「7th」だけにフラットがつきます。

使っているスケール音が1つしか違わないので、少しだけ雰囲気を変えたいときなどに使えます。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

例えばドビュッシーも、メロディーとリズムはほぼ変えずにスケールだけ変更している楽曲があります。

リズムも拍子も変えてバリエーションを作っている楽曲もあり、中には下記画像のように最後のフレーズだけ少しメロディーを変えていることもあります。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

テーマのバリエーションを増やすのに、1つしか方法がないということはありません。

スケールを変える、リズムを変える…さまざまな方法がありますので、自由に組み合わせてもよいのです。

スケールを変更する方法3:スケールの場所を変える

スケールを変更する方法3つ目は、「スケールの場所を変える」です。

すべてのスケールにおいて、同じ番号の音を追加もしくは削除する方法です。

例えば、元々のメロディーに「アコースティックスケール」と呼ばれるスケールを適用してみましょう。
アコースティックスケール:4thにシャープ、7thにフラットをつける

https://ianring.com/musictheory/scales/1749

元々のメロディーで同じ番号(ディグリーネーム)の音を、アコースティックスケールの同じ番号の音に差し替えます。

例えば元々のメロディーがCメジャースケールで「ド・ファ・ソ・ミ・シ」というメロディーだった場合は、番号では「1,4,5,3,7」と表せますので、アコースティックスケールでは「1,4#,5,3,7♭」=「ド・ファ#・ソ・ミ・シ♭」というメロディーに置き換えられます。

スケールを差し替えるだけで、このようなサウンドに変身します。

6:29~6:37

How to Make a Musical Theme fit any Context
https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

元々のメロディーがこちらで、スタートはA(ラ)です。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

これをアコースティックスケールに置き換えたのがこちらです。

https://youtu.be/6joUB_0BOiE?si=m7a2vrdcKJ_2rrME

1.アコースティックスケールを確認する
アコースティックスケールは4thにシャープ、7thにフラットをつけます。

2.元々のメロディーで使っているスケールのルート音と合わせる
元々のメロディーがDbだった場合は、Dbアコースティックスケールになるので使える音は「Ab Bb Cb Db Eb F G」となります。

3.元々のメロディーの音程と近いところまで高さを合わせる
例えば元々のメロディーで「A,B,C,D,E」というメロディーだった場合は、Dbアコースティックスケールだと「Ab,Bb,Cb,Db,Eb」が一番近い音程になりますので、スタートの音をAb(5th)にしてメロディーの高さを合わせます。


次回「Part3」はこちら🔻


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