マスタリングのコツ

海外有名プロが教えるマスタリングEQのコツ10選

Are You Listening? | Ep. 6 | EQ in Mastering

今回は、iZotopeのEducation DirectorでありプロのマスタリングエンジニアのJonathan Wynerが教える「マスタリングEQのコツ」をまとめました。

すぐ実践でき、即効果を実感できるテクニックを10個ご紹介します。

「マスタリングのEQって何のためにするの?」
「ミキシングとマスタリングのツールの違いって何?」
「すぐ使えるマスタリングEQテクニックが知りたい!」

こんな疑問や要望をお持ちの方におすすめです!

マスタリングをするときの「大切なマインドセット」

マスタリングにおいては、EQなどのベーシックなツールをマスターすることが最も大切です。

エキサイターやリバーブなど、最終的には多くのツールを使いますが、結局はEQなどベーシックなツールを使った作業に最も時間をかけるからです。

また「ベーシックでないツール」は文字通りいつも使うわけではないので、いつも使うツールを使いこなせる状態にしておくことが最優先です。

ベーシックなマスタリングツールの使い方記事

EQとは「復元」である

そもそもEQは、まだ発展途上だった電話回線の音声を復元するために発明・開発されたものです。
(当時は特に高音域が削られてしまっていました)

そのため、EQとは「音のバランスを復元するために行うもの、正しくするためのもの」として捉えることが大切です。

プロが使うマスタリングにおける使用機材は?

Jonathan Wynerが個人的に使っているのは、スピーカー「Yamaha NS-10」です。
※NS-10は販売終了しています

ミキシングにおいて重要な「楽器同士の音量レベル関係」を確認するのに非常に良いスピーカーです。

正直、フルスペクトラム(低音域から高音域までのすべて)を聞くことに関しては少しだけ物足りなさもあります。

そのため、このスピーカーで音を厳密に判断しバランスを取るようなミキシングするのは非常に難しいですが、高音域・中音域・低音域をそれぞれ測ることにおいては問題ありません。

関連記事
関連記事

マスタリングエンジニアの役割

マスタリングエンジニアの役割は「ミキシングエンジニアが本来意図していたバランスの復元」です。

ミキシングエンジニアが使っているスピーカーや本人の耳のせいで、低域が足りない楽曲や、逆に低域が多すぎる楽曲になっていることがあります。

そのため、マスタリングにおけるEQは「明確さ・明瞭さを復元したり、バランスを取ること」を大切にします。

ミキシングのツールとマスタリングのツールの違い

ミキシングのツールとマスタリングのツールの大きな違いは、ユーザーインターフェース(UI)やインタラクション、レイアウト、そしてこれらとの関わり方です。

実は使うツール自体はそんなに変わりはなく、その活用の仕方が違うだけなのです。

例えばiZotope社「Neutron」と「Ozone」のEQの場合、大部分は共通しており、同じような機能が使えます。

しかし「調整したときの変化にスケールの違い」があります。

例えば、Ozoneで調整したときよりも、Neutronで調整した時の方が変化が小さくなります。

また、プラグインを使うときには「このEQは他のEQよりも音がいいだろうか?」ということに気を取られすぎないことが大切です。

「自分がやろうとしていることに対して、どんなことを助けてくれるプラグイン・機能だろうか?」を考え、プラグインを選び、練習していくことが大切です。

マスタリングでビジュアライザーは役に立つ?

マスタリングで、ビジュアライザーは非常に役に立ちます。
(peak-readingメーター、averagingメーター、LUFSメーター、phaseメーター、トーンバランスメーターなど)

自分が聞いている音について考えていることを確認したり、問題を明確にするのに非常に効果的です。

マスタリングの準備方法

最初に各トラックを聞く時は、しっかりと椅子に座り、トラックを最初から最後まで聞きましょう。

これで全体のアレンジを理解していきます。

また「何が聞こえたか」「このトラックの好きなところ」「直したいと思ったところ」などをメモしましょう。

30~45分ぐらい作業していると、だんだん行き詰まっていき、広い目でトラックを見ることができなくなります。

そのため、前もって一種のアジェンダや基準になるようなメモを作っておくことが大切です。

このおかげで、最初に聞いた時の感覚をいつでも取り戻すことができます。

最初にトラックを聞く時に気をつけるポイントの例

「全体的に明るすぎないか?逆に明るさが足りないか」
「ボーカルは大きすぎないか?」
「キックの低域がカットされすぎていないか?」

EQフィルターのシェイプ選びについて

マスタリングで全体のトーンバランスを整えたい時は、Q幅が非常に広い「Bell」や「Shelf」のシェイプを使いましょう。

「リッチにしたい」「明るくしたい」など全体のトーンを変えたい時は、大きくバランスを変えたいわけではないからです。

また狭いQ幅のフィルターを使ってしまうと、特定の楽器だけ引き立ってしまう可能性があります。

同じ楽器でもスケール中のある音だけ強調されたり、逆にある音だけ聞こえにくくなってしまうこともあるため、マスタリングでは広めのQ幅でEQを行うことが基本です。

EQで「削る」作業をする

先ほどは「マスタリングでは広めのQ幅でEQを行いましょう」とお伝えしましたが、うるさいなと思うところは、狭いQ幅のEQを使って削っていきましょう。

例えばボーカルの子音「S」「CH」「T」「K」などがキツすぎると耳が痛くなることがあります。

このようなときは、ピンポイントでその音だけ整えられるよう、狭いEQで少しだけ削りましょう。

AB比較モードを活用しよう

AB比較モードを使って、どんな風に変わったのかをチェックすると便利です。

いろいろなところで立ち止まって、比較、立ち止まって、比較…を繰り返しましょう。

「もうこれ以上よくできないな」と思ったら、作業をストップしましょう。


以上が「マスタリングEQのコツ10選」でした。

他にもマスタリングのコツはさまざまありますが、書籍で学びたい方にはこちらがおすすめです↓

また当サイトでは、このようなマスタリングテクニックもご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-マスタリングのコツ