今回は、Better Mixesが解説する「ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法」をご紹介します。
この方法は、世界的に有名なエンジニアのAndrew Scheps氏が実践している有名なテクニックです。
高価な機材は必要なく、DAW付属のプラグインしか持っていない方でもお試しいただけます!
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くするには、EQとコンプレッサーを2回に分けて使います。
手順
- 新しくSendトラックを作る(「Bright Vocal」などわかりやすい名前がおすすめ)
- EQで低〜中音域を減らし、高音域をブースト
- コンプレッサーを強めにかける(アタック・リリースともに速め)
- EQで低〜中音域をブーストし、高音域を減らす
- Sendトラックの音量を調整する
この手順を行うと、全体の印象を崩さないままボーカルを前に出すことができます。
それではここからは、具体的な手順を解説していきます。
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ1
まずはEQで低〜中音域をカットし、高音域をブーストします。
カットするときはシェルビング(Shelf)、ブーストするときは広めのベル(Bell)にするのがおすすめです。
(Scheps氏が愛用しているPultec EQはもともとQ幅が広いため、広めのQ幅にするのがおすすめです)
このまま聞くと音がとても薄く聞こえたり、少し耳が痛いような感じがするかもしれませんが、今はこのままでも大丈夫です。
強めにコンプレッサーをかけることで、明るく且つ音が目の前に張り付いているような印象になります。
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ2
次はEQの後にコンプレッサーを追加します。
アタック・リリースともに速めで、かなり強めにコンプレッションをするのがおすすめです(ゲインリダクションが多くなるようにする)。
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ3
次は、コンプレッサーの後にEQを追加します。
ここでは最初にカットした低~中音域を元に戻し、出過ぎている高音域を減らすように調整します。
なぜ最初に減らした音域を後でブーストし直すのか?

ここまでの説明を聞いて、「なぜ最初にEQで減らした音域を後でブーストし直すのか?」「なぜ最初にEQで増やした音域を後で減らしてしまうのか?」と疑問に思ったかもしれません。
これは、コンプレッサーに聞かせる音(分析させる音)をコントロールするためです。
コンプレッサーは、鳴っている音を分析して「今は音が大きく出ているから音を抑えよう」「今は音量がそんなに出ていないからコンプレッションをしなくても大丈夫だ」などと判断します。
ハイパスフィルターが付いているコンプレッサーであれば「低音域の音量は考慮せず、中〜高音域の音量だけを聞いてコンプレッションするかどうか決める」という動作をすることもあります。
例えばキック(バスドラム)は低音域がたくさん含まれているので、ハイパスフィルターを使わないとキックが鳴っているときだけコンプレッサーが強くかかってしまうことがあります。
このように特定の音域によってコンプレッサーの動作が大きく左右されないように、ハイパスフィルターが搭載されていることがあります。
(コンプレッサーが検知する音に対してハイパスフィルターがかかっているだけなので、実際に再生される音にハイパスフィルターをかけて音がスカスカに聞こえるわけではありません)
Scheps氏が愛用しているコンプレッサー「LA-2A」には、このハイパスフィルターがありません。
そのため、ハイパスフィルターを使ったときと同じ動きをさせるために、先にEQで低音域を削り高音域をブーストしています。
(低音域をカットするだけでなく高音域をブーストすることで、さらにコンプレッサーがかかりやすくなります)

ボーカルにおいて、声が前にしっかり出ているように聞かせるためには、中高音域以上が常に安定して聞こえることが大切です。
そのため、コンプレッサーで中高音域以上だけを整えた後、ボーカルの根幹(太さや厚み)となる中低音域以下を元に戻すことで、安定したボーカルに聞かせることができるようになります。
この説明を聞いた上でBefore/Afterを聴き比べると、このテクニックを使った後は中高音域以上がとてもはっきり前に出ていて、より音抜けが良くなっていることがお分かりいただけると思います。
耳が痛いときはディエッサーを使うとベター
このテクニックを使うと、音抜けは良くなりますが耳がキンキン痛くなることがあります。
そのときは、2つ目のEQの後にディエッサープラグインなどを追加するのがおすすめです。
ボーカルMIXで声が前に出る&音抜けを良くする方法 ステップ4
最後に、今回のテクニックを使ったSendトラックの音量を調整します。
明るくしっかり前に出ているSendトラックの音と混ぜ合わせることで、より自然に、自分好みのサウンドに仕上げることができます。
曲全体で聞くと、さらに効果を実感できます。
元のボーカルトラックと混ぜることで、程よく音抜けがよくなっていることがわかります。
オートメーションも効果的

このテクニックを使うとボーカルの音抜けがよくなりますが、AメロやBメロなど、静かな場面では音が明るすぎたり、キツすぎると感じるかもしれません。
そのため、この「Bright Vocal」のSendトラックにオートメーションを使い、例えばサビだけBright Vocalの音量を上げるなどすると効果的です。
ボーカル以外にも使えるテクニックです

このテクニックは、ボーカル以外にも使えるテクニックです。
例えばドラムの音抜けが悪いときに使うと、シンバル類やキック・スネアのアタックがはっきり聞こえるようになります。
EQの間に挟むのはコンプレッサーでなくてもOK

このテクニックでは2つのEQの間にコンプレッサーを挟みますが、コンプレッサー以外のプラグインを使っても構いません。
例えばサチュレーションやディストーションプラグインを間に挟んでみてもOKです。
EQにはPultec EQ、コンプレッサーにはLA-2Aがおすすめ
.jpg)
この方法を考案したScheps氏は、EQにはPultec EQ、コンプレッサーにはLA-2Aを使用しています。
これらはいずれも世界中で使用されている有名なEQ・コンプレッサーで、ボーカル以外の楽器にも使える万能な製品です。
とても有名な製品のため、現在ではさまざまなプラグイン版がリリースされています。
ハードウェア(実機)は高価で手が届かないという方でも手軽に使えますので、ぜひチェックしてみてください🔻
プラグイン版のPultec EQを購入する
Pultec EQは非常に有名なため、現在ではさまざまなメーカーからプラグイン版がリリースされています。
その中でも特に人気なのがUniversal Audio社とWaves社のプラグインです。
いずれもプロが利用するクオリティの高い製品ですので、プロのサウンドを手に入れたい方はぜひチェックしてみてください。
Universal Audio社「Pultec Passive EQ Collection」
Plutec EQP-1A・HLF-3C・MEQ-5の3製品を精密に再現したプラグインです。
Waves社「PuigTec EQs」
レジェンドプロデューサー&エンジニアのJoseph Puigが所持しているEQP-1AとMEQ-5を再現したプラグインです。
プラグイン版の「LA-2A」を購入する
LA-2Aもさまざまなメーカーでプラグイン版が開発されていますので、ぜひご予算やお好みに応じてチェックしてみてください。
UAD社「Teletronix LA-2A Leveler Collection」
同社LA-2A系コンプレッサープラグインのうち「LA-2」「Gray」「Silver」をエミュレートした製品が同梱されているお得なバンドルです。
Waves社「CLA-2A Compressor / Limiter」
ミキシングエンジニアの巨匠・Chris Lord-Algeが監修したLA-2A系のコンプレッサーです。
LA-2A系以外にも「1176」などの有名なコンプレッサーをエミュレートしたプラグインがたくさん同梱されている「CLA Classic Compressors」が非常にお得でおすすめです。
Pultec EQとLA-2Aの使い方解説はこちら🔻

-150x150.jpg)