なぜ人は録音した自分の声を「違う」と感じ、好きになれないのか?

なぜ人は録音した自分の声を「違う」と感じ、好きになれないのか?
自分の声をレコーディングして後で聞くと、なんか違う声のように聞こえるし、なんだか気持ち悪い…これって何で?
録音した自分の声は、なんだか音程が高く聞こえるな…何でだろう?

 

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

 

Why you don’t like the sound of your own voice

 

数々のサンプル・プラグインを販売するSpliceが教える「人はなぜ自分の声を好きになれないのか?」をかんたんにまとめてみました。

 

自分の声を録音して後で聞き返したら、声が全然違って聞こえるし、なんか嫌な気分になった…という経験はありませんか?

今回は、なぜそうなるのか、音響心理学の視点から解説していきます。

 

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自分の声を好きだと思える人は、超ラッキー

 

自分の声を好きだと思える人は、ものすごくいい声をしているか、自分の声にすごく自信があるかのどちらかでしょう。

そうでない人は、録音した自分の声を聞き返すのが苦痛でたまらないはずです…

では、どうしてこのように感じてしまうのでしょうか?

 

なぜ自分の声が違って聞こえるのか?

 

音は、音波がモノにぶつかり、反響して人間の耳に届きます。

そして、これが音を聞く環境が重要である理由です。

 

無響室(音が全く聞こえないように調整された部屋)でもない限り、音が聞こえる=その音自体を聞いているというわけではありません

前述の通り、音は周りのモノにぶつかって跳ね返り、反響して人間の耳に届くからです。

 

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人が話す時は、何が起きている?

 

みなさんが声を出して何かを話している時も同じです。

みなさんの話を聞いている人は、みなさんの口から出た音を聞くのにプラスして、あなたがいる場所にあるモノに反響した音も聞くことになります。

 

しかしあなたの話を聞いている人は、あなたの体の中で鳴っている(反響している)音を聞くことはできません。

 

体の中で起こっていること

 

人間が話す時、体の中ではこんなことが起きています…

 

音が肺から頭蓋腔(とうがいこう、頭の中にある、脳を入れるための大きな場所)と副鼻腔(ふくびこう、鼻の周りにある空洞)を通って伝わります。


画像:頭蓋腔、英語で「Cranial Cavity」(https://wtcs.pressbooks.pub/nursingskills/chapter/7-2-head-and-neck-basic-concepts/)

画像:副鼻腔(https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/sinusitis/zu.jpg)

そして最終的には、体の内側から耳に届く音が聞こえてきます。

しかし、この体内で発生している音は、話している本人以外には聞くことができません。

 

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骨伝導

 

通常は空気を伝ってきた音が聞こえるのですが、もう一つ、音が伝わる場所があります。

 

そう、「骨」です!

 

言葉を話す時、骨に伝わった音もあなたは「聞こえて」きます。

「骨伝導」ですね。

ただしこちらもさきほどと同様、話している本人以外には聞こえません。

 

骨伝導の音の特徴

 

骨伝導の音は、空気を伝ってきた音よりも音程が低く聞こえる傾向にあり、また低音が少なく聞こえます。

これが、録音した自分の声は低く聞こえ、豊かで充実感のあるような音には聞こえない理由です。

 

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自分自身の声を好きになれない理由

 

自分には音程が低く低音が少なく聞こえていますが、他の人にはそう聞こえていません。

でも、だからといって自分の声を聞くのが嫌だなと思う完璧な理由にはなりません…

 

実はここには、心理学的な理由があるのです。

 

ボイス・コンフロンテーション(声の対立)

 

これは、心理学用語で「ボイス・コンフロンテーション(voice-confrontation)」といいます。

これは、自分が実際に聞こえる音と、「こう聞こえるだろうな」と予測している音に違いがあるときに起こる現象です。

この声のギャップが、不快感を覚える原因になっているのです。

 

1966年の心理学研究では、「話した時に聞こえる自分の声と録音した声の物理的な差だけに起因するものではない」と発表しています。

つまりこれらの音の違いは、自分の声を聞くと嫌になってしまう「唯一の理由」ではないのです。

 

そう聞こえてほしいと思っているようには、相手には聞こえていませんし、実際にそう聞こえているわけでもありません(やや難しい言い回しになってしまいますが…)。

 

性同一性障害においても…

 

また、これは性同一性障害の人にとっても難しい問題になります。

自分の声が、自分にとって「間違った性別の声」であるように聞こえてしまうからです。

 

喉頭学教授のMartin Birchallは、次のように語っています。

 

人間は、自分に合っている(フィットする)性別の話し方で話したいと考えます。

しかし”間違った体”や”間違った声”、つまりそういったジェンダーアイデンティティにフィットしない体や声でいると、自分が何者であるのかわからなくなり、その人にとって大きな問題になってしまうのです。

 

まとめ

 

自分自身の声を好きでいられないと言う人はたくさんいます。

しかし今日ご紹介したように、こういった現象は科学的に説明できるものです。

これらを理解することは自分の声について見直すきっかけにもなりますので、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。