【DTM用語】Expander(エキスパンダー)とは?アップワードとダウンワードの違いも解説!
- 2024.06.30
- 2024.11.24
- 用語解説
今回は、iZotopeが解説する「Expander(エキスパンダー)とは?」をまとめました。
※日本語では「エキスパンダー」「エクスパンダー」などの表記ゆれがありますが、本記事では「エキスパンダー」と記述します。
DAW付属のプラグインとして備わっていたり、購入したプラグインに「Expander」の機能が付いていることもあり、Expanderという名前を聞いたことのある人も多いでしょう。
しかし、実際のところ「Expander」とは、一体何をする機能なのでしょうか?
この記事では、今さら聞けない「Expander」の基本的な機能と、「アップワードエキスパンダーとダウンワードエキスパンダー」の違いについても解説していきます。
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エキスパンダー(Expander)とは?
エキスパンダー(Expander)とは、小さい音と大きい音の音量差を広げる機能です。
英語で「Expand」は「広げる」という意味があります。
例えばリミッターなら「ダイナミクスレンジをリミットする=制限する」、コンプレッサーなら「出過ぎた音をコンプレスする=抑える・潰す」など、名前の通りの意味があります。
エキスパンダーも同様に「エキスパンドする=広げる」という意味があり、もともと大きい音はますます大きく聞こえ、逆に小さい音はますます小さい音に聞こえるようになるため、「小さい音と大きい音の音量差を広げる」という機能になります。
エキスパンダーはコンプレッサーの「真逆」の機能がある
これまでの説明を聞いてすでにお気づきかもしれませんが、エキスパンダーはコンプレッサー(Compressor)の真逆の機能を持っています。
コンプレッサーは、音量が出過ぎた音を抑えたり(潰したり)、小さい音を持ち上げることで大きい音との音量差を縮める機能があります。
つまり、コンプレッサーは「大きい音と小さい音の音量差を縮める」のに対し、エキスパンダーは「大きい音と小さい音の音量差を広げる」ため、両者は真逆の機能を持っていると言えます。
ダイナミクスレンジを調整する上では、コンプレッサーもエキスパンダーも非常に重要で、どちらを使うかをしっかり見極める必要があります。
そのため、例えばFabfilter社の大人気プラグイン「Pro-MB」はマルチバンドコンプレッサーですが、コンプレッサーとエキスパンダーを切り替えて使うことができるようになっています。
アップワードエキスパンダー(Upward Expander)とは?
ほとんどのエキスパンダーは、アップワードエキスパンダー(Upward Expander)と呼ばれています。
これは、「スレッショルド(Threshold)を超えた音だけを大きくする」というタイプのエキスパンダーです。
スレッショルドはコンプレッサーでよく見る言葉ですが、コンプレッサーでは「スレッショルドを超えた音を抑える・潰す」というのが一般的なのに対し、アップワードエキスパンダーではこの逆で「スレッショルドを超えた音をさらに大きくし、小さい音との音量差を広げる」という機能があります。
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ダウンワードエキスパンダー(Downward Expander)とは?
ダウンワードエキスパンダー(Downward Expander)は、スレッショルド(Threshold)以下の小さい音を小さくするという機能があります。
つまりGate(ゲート)と同じ機能があり、「ノイズや、音量が小さく大して重要ではない音は音量を小さくしてしまいたい」というときに使えます。
エキスパンダー(Expander)の使い方
ここからは、iZotope社「Neutron」を使って実際にエキスパンダー(Expander)の使い方を解説していきます。
エキスパンダーのプラグインにあるパラメーターは、コンプレッサーとかなり似ています。
Ratio:どれぐらい強くエキスパンダーの効果を出すか
Attack:どれぐらい速くエキスパンダーの効果を出すか
Hold:Thresholdを下回った後、どれぐらい長くExpansionの効果を持続させるか
(長さはReleaseのスタート時間に影響する)
Release:Thresholdを下回った後、エキスパンダーがONの状態からOFFの状態に遷移するまでの時間
(プラグインによっては、他にも「Knee」「Lookahead」などのパラメーターがあります)
エキスパンダーの「Ratio」とは?
これまで解説した通り、コンプレッサーとエキスパンダーは真逆の機能を持っているため、「Ratio」のパラメーターもまた違う意味になります。
どちらもRatioのパラメーターは「3:1」「2:1」のような数字になりますが、意味は真逆になります。
エキスパンダーで「2:1:」にした場合:Thresholdを超えた音を2倍にする
つまり、コンプレッサーは割り算で、エキスパンダーは掛け算になります。
例えば上の図のように、Thresholdに対して1dB大きく音が出ていたとします。
このとき、コンプレッサーでRatioを3:1に設定すると音量を1/3にするので、音は0.3dBに減ります。
しかし、エキスパンダーは逆に3倍になるため、3dBに増えます。
※アップワードエキスパンダーの場合
同様に、例えば下の画像のようにThresholdを2dB超えていたら…
エキスパンダーは3倍に増やしますので、6dBまで大きくなります。
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エキスパンダーはいつ使うべきなのか?コンプレッサーとの上手な使い分け方3選
これまでの説明で、「コンプレッサーはダイナミクスレンジを縮める」「エキスパンダーはダイナミクスレンジを広げる」とお話しました。
それでは、エキスパンダーはいつ使うべきで、コンプレッサーとのように使い分ければよいのでしょうか?
使い分け1:ボーカルにはどちらを使うべきか?
ボーカルに対してコンプレッサーかエキスパンダーのどちらを使うべきか、迷ったときは…
コンプレッサーを使って、ダイナミクスレンジを適度に縮めるのがおすすめ
エキスパンダーを使って、ダイナミクスレンジを適度に大きくするのがおすすめ
使い分け2:ドラムブリードをエキスパンダーを使って対処する
複数のマイクを使ってドラムのレコーディングを行うとき、よく起こるのが「ドラムブリード」の問題です。
これは、ドラムはそれぞれの楽器が至近距離で置かれているため、例えばスネア用のマイクにハイハットの音が入ってしまっていることがあります。
このようなときには、エキスパンダーが役立ちます。
例えばスネアのマイクに小さくハイハットの音が入ってしまっているときは、エキスパンダーを使って、小さいハイハットの音だけを小さくすることができます。
(Gateと同様な使い方で、ダウンワードエキスパンダーを使う)
実際の例がコチラ↓
他にもドラムブリードを除去する方法がありますが、こちらについては下記の記事で詳しく解説しています↓
使い分け3:マスタリングでエキスパンダーを上手に使う方法
マスタリングでエキスパンダーを使うのもよいでしょう。
ただし、マスタリングですので基本的には「やさしめに」使うのがポイントです。
マスタリングの段階に入っているときには、各トラックやバス(Bus)に対してすでに十分にコンプレッサーがかかっており、音量差が整えられている状態です。
そのため、マスタリングの最終段階では、この整えられた音量をさらに整えるために(もう少しだけパンチを出すために)、エキスパンダーをほんの少し使って、パンチだけを加えるのがおすすめです。
マスタリングでエキスパンダーを使う例↓
エキスパンダー(Expander)とは?まとめ
以上でエキスパンダー(Expander)に関する解説は終了です。
・パンチを加えることも、余計な音の音量を下げることもできる
・マスタリングにも使える
ちなみに、今回の解説で登場したプラグインはこちらです↓
当サイトではコンプレッサーの上手な使い方についてもまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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