【DTMのコツ】パッシブEQの使い方とミックステクニック
- 2024.09.24
- ソフト・プラグイン・機材
今回は、Produce Like A ProのMarc Nelsonが解説する「パッシブEQの秘密」をまとめました。
Audioscape社「Pultec EQP-A」をはじめとするパッシブEQは、非常に魅力的で長年の間多くのプロに愛されてきました。
自身もAudioscape社のファンだと公言するMarcが、この「Pultec EQP-A」はなぜ魅力的なのか、そしてパッシブEQの使い方やコツについて詳しく解説していきます。
※今回は中級者〜上級者向けの内容ですが、初心者の方でも「こういうEQがあるんだな」「EQだけでこんなに音が変わるんだな」という気づきが得られますので、ぜひ最後までご覧ください。
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パッシブEQ(Passive EQ)とは?
パッシブEQとは、かんたんに言うと「パッシブなパーツ」を使ってEQを行うものです。
特徴:パッシブEQは自然な形で音量をコントロールできる
電源供給:不要
電気信号の増幅:できない
EQをする方法:フィルターをかける
対照のEQとして「アクティブEQ」がありますが、こちらは逆に「アクティブなパーツ」でEQを行うタイプです。
特徴:少し「歪み」や「倍音」が発生し、いわゆる「サチュレーション」が加わった状態になる
電源供給:必要
電気信号の増幅:できる
EQをする方法:電気信号を増幅・減衰させる
アクティブEQは、使うと少し「歪み」や「倍音」が発生するため、いわゆる「サチュレーション」が加わった状態になります。
しかし、パッシブEQよりも安価に製造できるのが特徴です。
※他にも細かい特徴や違いはありますが、ここでは割愛します。
パッシブEQの魅力とは?
「Pultec EQP-A」をはじめとするパッシブEQの魅力は、「音がクリアでイキイキとする」という点です。
音がイキイキと、そして増強されるような感じがするので、このパッシブEQ「Pultec EQP-A」を愛用しています。
パンチが欲しい時やシャープな音が欲しい時などは別の製品「API 5500」などを使いますが、より音を大きく、風船のように膨らませ、かつスムーズでクリーンなサウンドが欲しい時は、このPultec EQP-Aを使うことが多いです。
僕のスタジオにはPultec EQP-Aの実機があるのですが、ここ1年半ぐらいは、設定をそのままにして使っています。
50Hz付近と10kHz付近をブーストする設定にしているのですが、これは視覚化すると「スマイリーフェイス」のようになります。
※EQをしたときに、バンド(線)の形がニコちゃんマークの口のような形になる
APIやSSL系EQとの違いは?
APIやSSL EQなどに比べると、Pultec EQP-Aは大きく動かしても劇的な変化はなく、微細な変化があります。
APIやSSL EQなどは、小さく動かしただけではっきりと変化が出るので、そこも両者の大きな違いです。
「引く」より「足す」を重視できるEQを使おう
ハードウェアでもソフトウェアでも、僕が大切にしている考えは「Add(追加)」です。
何かを使ったときに、1個でも何かいいものがなくなる(=引かれる)のであれば、それは使うべきではないと思います。
1個どころか、2個もいいものがなくなるようなものであれば、僕は絶対に使いません。
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パッシブEQを使った音とそうでない音を比較して聞いてみよう
それでは、僕が2年前に製作した「Take My Hand」を例に、パッシブEQ(Pultec EQP-A)を使った場合とそうでない場合の音を比較して聞いてみましょう。
まずは、EQをOFFにした場合の音です。
それでは、EQをONにして聞いてみましょう。
違いがお分かりいただけたでしょうか?
やはり、EQをONにしたときの方が音に透明感があり、とてもクリアでオープンな感じがします。
加えて、サウンド全体もビッグに、より大きく聞こえます。
ボーカルやスネア、ドラムバスに使えるEQテクニック
基本的に、5kHz付近を減らすと、中音域が少し持ち上がります。
そのため、ボーカルやスネア、ドラムバスなどには有効の設定です。
※今回の楽曲には合わなかったので、この設定にはしていません
ベースとドラムにEQを使った例
それでは、わかりやすいようベースとドラムだけを聞きながら、EQがどのような効果を与えるのかを見てみてみましょう。
上に上げるとEQがONに、下げるとOFFになる
・BOOST(赤、黄緑)
指定した音域をどれぐらい増やすか?
・ATTEN(オレンジ、水色)
指定した音域をどれぐらい減らすか?
数字が多いほど(右に回すほど)強くカットされる。
・ATTEN SEL(青)
高音域は、どの音域を中心にAttenuation=減衰させるか?
「5」に設定すると、5kHz付近を中心にシェルビングでカットされます。
・LOW FREQUENCY(ピンク)
低音域のうち、どの音域を中心にブーストするか?
・HIGH FREQUENCY(紫)
高音域のうち、どの音域を中心にブーストするか?
・BANDWIDTH(緑)
値が小さい(左に回す)とQ幅が狭く、大きい(右に回す)とQ幅が広くなる
ギターとストリングスにEQを使った例
次は、ギターとストリングスだけを聞きながらEQの効果を確認してみましょう。
EQをOFFにした時点ではもう少しハイエンド(高音域)が欲しいなと感じたので、そちらを踏まえてEQをかけてみます。
EQをONにしたときの方が、ものすごくクリーンでやさしく、繊細で、キツすぎない高音域になっていることがわかります。
小さな変化が、大きな変化になる
このように、ちょっとしたEQの使い方次第で、サウンドは大きく変わります。
これはEQだけでなく、コンプレッサーなどにも同じことが言えます。
が10~15%ぐらいの変化も、大きな変化になるのです。
ちなみに僕はプラグイン版のPultec EQP-Aも使ったことがありますが、今回使ったハードウェア版ととても同じようなサウンドになりましたので、そちらを使ってもよいでしょう(おすすめのプラグイン版は後述)。
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パッシブEQ「Pultec EQ」を使ってみよう!
最も有名なパッシブEQ「Pultec EQ」は、Waves社やUniversal Audio社からプラグイン版が販売されています。
よりよいミックスをするのに非常に効果的なプラグインですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてください↓
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以上で解説は終了です!
当サイトでは、今回解説したPultec EQやその他有名なEQの具体的な使い方に関する記事を多数ご紹介しています。
ぜひこちらも合わせてご覧ください↓
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