ミキシングのコツ

【DTM】生ドラムのサンプルレイヤー方法&位相ズレの修正方法【パンク・ロックバンド】

今回は、Buster Odeholmが解説するアメリカのパンクロックバンド「Allt」の楽曲「Rupture」 で使われたキック(バスドラム)のサンプルレイヤー方法解説動画をまとめました。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

キックの音をミックスするとき、よりよい音にするためにドラムのサンプルをレイヤーすることもあるでしょう。

こちらの記事では、そのようにサンプルをレイヤーするときに注意するべきポイントやレイヤーのコツについて解説していきます。

原曲はこちら↓

Allt - Rupture (Official Music Video)

※記事内の画像は全て動画より引用

サンプルのキックと生ドラムのキック

それでは最初に、こちらの2つのキックの音をお聞きください。

1つ目の音はサンプルで、2つ目の音は実際にレコーディングした生ドラムの音です。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

1つ目はよく処理されていて音に一貫性があり、2つ目はよりダイナミクスレンジがあります。

全く異なる音ですが、2つともそれぞれ魅力があるので、合体させると「一貫性とダイナミクスレンジのある音」にできそうです。

それでは、これら2つの音をどのように処理してレイヤーするのかを解説していきます。

ドラムレイヤーのコツ1.EQでローカット

まずはキックのBus(キックの両方)をEQ(Por-Q3)で不要なローカットします。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

ドラムレイヤーのコツ2.位相のチェック

位相のチェックのため、Sound Radix社「Auto Align」を使います。

先ほど使ったPro-Q3には位相反転ボタンがありますので、そちらも併用します。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

位相をチェックする時のコツ

位相をチェックするときは、このように「レイヤーをそれぞれソロにする→合わせて聞く→ソロにする」を繰り返して聞くとよいでしょう。

位相のズレがあると特定の周波数帯域が消えてしまうので、「それぞれの音から何か消えてしまった周波数帯域がないかどうか」を確かめるために、このようにチェックするのがおすすめです。

位相がズレている箇所を見つけたら?

ドラムのパターンを聞いてみると、一部で違和感のある場所を見つけました。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

この黒く選択した部分だけ変に聞こえるので、Vocal Alignを使って確認してみましょう。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

特にサンプルではなく生ドラムの音の場合、一音一音ベロシティが違うので、含まれる周波数の成分の割合や場所も少しずつ変わります。

そのため、このように一部の音だけ位相のズレが発生することもあります。

このような場合は、まずサンプルをSTEVEN SLATE TRIGGERに取り込み、位相ズレの原因となりやすいローエンドをカットします。

↓DETAILを0にし、336hz以下をカット

その他、音量や位相(フェーズ)もこのプラグイン内で調整し、生ドラムの音と一緒に聞いて良い状態になるようにします。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

そして少し手間はかかりますが、オートメーションでこのように速く演奏するところは位相を調整した時の音が鳴るようにしています。

この位相ズレの修正の効果がどれだけあるのか、聞いてみましょう。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

ただサンプルを鳴らした時は、パンチがあったりなかったりと不安定なサウンドでしたが、位相ズレを修正したものを使った後は、コンスタントにしっかり鳴っていることがわかります。

ドラムレイヤーのコツ3.コンプレッション(UAD DistressorとWaves C4)

位相の問題が解決したので、次はコンプをかけます。

WavesC4はマルチバンドコンプで、特に速く連打するように演奏されたときのローエンドを処理するようにしています。

C4はWaves GoldやWaves Platinumなどに同梱されています↓

WAVES / Gold Bundle

WAVES / Gold Bundle

WAVES / Platinum Bundle

WAVES / Platinum Bundle

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

ドラムレイヤーのコツ4.サチュレーション(音を明るくする)

次はFabfilter社「Saturn」を使って明るさを足しますが、これはプラグインをどのような順番で入れるのかによってサウンドが変わります。

例えば位相問題の処理用に使ったトリガーの後に使うと、トリガーを使った時(オートメーションでONにしたとき)の音もすべて明るくなります。

今の時点ですでに音は明るいので、今回はトリガーの前にEQを使い、生ドラムの音に対して明るくなるようにします。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

Roomにもサチュレーションをかける

Roomの音にも同様にサチュレーションをかけます。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

そして、EQで不要な帯域の処理も行います。

Roomは空気感が出ていて欲しいので高音域も少し足しますが、以下のようなEQだと削っている部分の方が多いので、全体音量は小さくなります。

そのため、バイパスにした時よりも音量が減っている場合は、Gainで音量を同じぐらいの状態に戻します。

それでは、バイパス時と比較して聞いてみましょう。

KICK DRUM MADNESS w/ Allt & Buster Odeholm

サンプルと生ドラムの音量の割合はどれぐらいにすればいい?

音をレイヤーするとき、どの音をどれぐらいの割合にするかは「いい音だと思うかどうか」で判断するので、使うサウンドによって異なります。

しかし、例えば今回はトランジェントがよく目立つカチっとしたサンプルの音がありますが、特にキックを連打しているときなどはこのようなカチっとした音は耳障りに聞こえることがありますので、注意が必要です。


以上で解説は終了です。

当サイトでは他にもバンド向けのミックスのコツを紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


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