ソフト・プラグイン・機材

【DTMのコツ】パッシブEQの使い方とミックステクニック

The Secret Of Passive EQs

今回は、Produce Like A ProのMarc Nelsonが解説する「パッシブEQの秘密」をまとめました。

Audioscape社「Pultec EQP-A」をはじめとするパッシブEQは、非常に魅力的で長年の間多くのプロに愛されてきました。

自身もAudioscape社のファンだと公言するMarcが、この「Pultec EQP-A」はなぜ魅力的なのか、そしてパッシブEQの使い方やコツについて詳しく解説していきます。

※今回は中級者〜上級者向けの内容ですが、初心者の方でも「こういうEQがあるんだな」「EQだけでこんなに音が変わるんだな」という気づきが得られますので、ぜひ参考にしてください。

パッシブEQ(Passive EQ)とは?

パッシブEQとは、かんたんに言うと「パッシブなパーツ」を使ってEQを行うものです。

EQを行うパーツ:コイル、コンデンサー、インダクター
特徴:パッシブEQは自然な形で音量をコントロールできる
電源供給:不要
電気信号の増幅:できない
EQをする方法:フィルターをかける

対照のEQとしてアクティブEQがありますが、こちらは逆に「アクティブなパーツ」でEQを行うタイプです。

EQを行うパーツ:IC、トランジスタ、オペアンプなどのアクティブなパーツ
特徴:少し「歪み」や「倍音」が発生し、いわゆる「サチュレーション」が加わった状態になる
電源供給:必要
電気信号の増幅:できる
EQをする方法:電気信号を増幅・減衰させる

アクティブEQは、使うと少し「歪み」や「倍音」が発生するため、いわゆる「サチュレーション」が加わった状態になります。

しかし、パッシブEQよりも安価に製造できるのが特徴です。
※他にも細かい特徴や違いはありますが、ここでは割愛します。

パッシブEQの魅力とは?

「Pultec EQP-A」をはじめとするパッシブEQの魅力は、「音がクリアでイキイキとする」という点です。

音がイキイキと、そして増強されるような感じがするので、このパッシブEQ「Pultec EQP-A」を愛用しています。

パンチが欲しい時やシャープな音が欲しい時などは別の製品「API 5500」などを使いますが、より音を大きく、風船のように膨らませ、かつスムーズでクリーンなサウンドが欲しい時は、このPultec EQP-Aを使うことが多いです。

https://www.youtube.com/watch?v=m9iLMCjbEdY

僕のスタジオにはPultec EQP-Aの実機があるのですが、ここ1年半ぐらいは、設定をそのままにして使っています。

50Hz付近と10kHz付近をブーストする設定にしているのですが、これは視覚化すると「スマイリーフェイス」のようになります。

EQをしたときに、バンド(線)の形がニコちゃんマークの口のような形になる

APIやSSL系EQとの違いは?

APIやSSL EQなどに比べると、Pultec EQP-Aは大きく動かしても劇的な変化はなく、微細な変化があります。

APIやSSL EQなどは、小さく動かしただけではっきりと変化が出るので、そこも両者の大きな違いです。

「引く」より「足す」を重視できるEQを使おう

ハードウェアでもソフトウェアでも、僕が大切にしている考えは「Add(追加)」です。

何かを使ったときに、1個でも何かいいものがなくなる(=引かれる)のであれば、それは使うべきではないと思います。

1個どころか、2個もいいものがなくなるようなものであれば、僕は絶対に使いません。

パッシブEQを使った音とそうでない音を比較して聞いてみよう

それでは、僕が2年前に製作した「Take My Hand」を例に、パッシブEQ(Pultec EQP-A)を使った場合とそうでない場合の音を比較して聞いてみましょう。

まずは、EQをOFFにした場合の音です。

3:50~4:08

The Secret Of Passive EQs

それでは、EQをONにして聞いてみましょう。

4:11~4:25

The Secret Of Passive EQs

違いがお分かりいただけたでしょうか?

やはり、EQをONにしたときの方が音に透明感があり、とてもクリアでオープンな感じがします。

加えて、サウンド全体もビッグに、より大きく聞こえます。

ボーカルやスネア、ドラムバスに使えるEQテクニック

基本的に、5kHz付近を減らすと、中音域が少し持ち上がります。

そのため、ボーカルやスネア、ドラムバスなどには有効の設定です。
※今回の楽曲には合わなかったので、この設定にはしていません

ベースとドラムにEQを使った例

それでは、わかりやすいようベースとドラムだけを聞きながら、EQがどのような効果を与えるのかを見てみてみましょう。

6:23~7:43

The Secret Of Passive EQs

・レバー(黄色)
上に上げるとEQがONに、下げるとOFFになる

・BOOST(赤、黄緑)
指定した音域をどれぐらい増やすか?

・ATTEN(オレンジ、水色)
指定した音域をどれぐらい減らすか?
数字が多いほど(右に回すほど)強くカットされる。

・ATTEN SEL(青)
高音域は、どの音域を中心にAttenuation=減衰させるか?
「5」に設定すると、5kHz付近を中心にシェルビングでカットされます。

・LOW FREQUENCY(ピンク)
低音域のうち、どの音域を中心にブーストするか?

・HIGH FREQUENCY(紫)
高音域のうち、どの音域を中心にブーストするか?

・BANDWIDTH(緑)
値が小さい(左に回す)とQ幅が狭く、大きい(右に回す)とQ幅が広くなる

ギターとストリングスにEQを使った例

次は、ギターとストリングスだけを聞きながらEQの効果を確認してみましょう。

EQをOFFにした時点ではもう少しハイエンド(高音域)が欲しいなと感じたので、そちらを踏まえてEQをかけてみます。

7:51~8:51

The Secret Of Passive EQs

EQをONにしたときの方が、ものすごくクリーンでやさしく、繊細で、キツすぎない高音域になっていることがわかります。

小さな変化が、大きな変化になる

このように、ちょっとしたEQの使い方次第で、サウンドは大きく変わります。

これはEQだけでなく、コンプレッサーなどにも同じことが言えます。

が10~15%ぐらいの変化も、大きな変化になるのです。

ちなみに僕はプラグイン版のPultec EQP-Aも使ったことがありますが、今回使ったハードウェア版ととても同じようなサウンドになりましたので、そちらを使ってもよいでしょう(おすすめのプラグイン版は後述)。

パッシブEQ「Pultec EQ」を使ってみよう!

最も有名なパッシブEQ「Pultec EQ」は、Waves社やUniversal Audio社からプラグイン版が販売されています。

よりよいミックスをするのに非常に効果的なプラグインですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてください↓

Waves社「Puig-Tec EQ」が同梱されているバンドル(単品で購入するよりもバンドル購入の方がお得です)

Waves社「Platinum」を購入する(サウンドハウス) Waves社「Diamond」を購入する(サウンドハウス)

Universal Audio社「Pultec EQP-1A」


以上で解説は終了です。

当サイトでは、今回解説したPultec EQやその他有名なEQの具体的な使い方に関する記事を多数ご紹介しています。

ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は、アメリカのプロデューサーNathan James Larsenが解説する「僕のお気に入りのボーカルチェイン」をまとめました。「どんな曲であっても、ミックスの83%はこのボーカルチェインを使っている」というぐらい汎用性が高い内容ですので、ぜひお試しください。

2

今回は、Doctor Mixが解説する「歴代のシンセサイザーTOP10」をご紹介します。みなさんがよく耳にする「あの音」は、実はこれらのシンセサイザーの音かも…!?「聞いたことある!」「あの音って、このシンセの音だったんだ!」と驚くこと間違いなしです!

3

今回は、これからDTMをはじめたいという方向けに「Amazonで買えるDTM初心者セット」を3つご紹介します。「これからDTMをはじめたいけど、何を買ったらいいかわからない」「とりあえずこれさえ買っておけばOKみたいなセットはない?」このような方のための記事ですので、ぜひ参考にしてください。

4

今回は、音楽で使うスピーカーに付いている「謎の穴」について解説します。いろいろなスピーカーを見てみると、前面下側に細長く穴が空いていたり、側面に丸い穴が空いてあったり、中には背面に穴が空いていることがあります。この謎の穴は、いったいどのような役割があるのでしょうか?

5

K-POPっぽい曲って、どうやったら作れる?K-POPの特徴って何?今回はこのような疑問にお答えします!海外プロデューサーが教える「K-POPの全体的な特徴」について徹底解説!これを前提に作曲していけば、よりK-POPっぽい曲が作れるようになります。

6

今回は、Big Zが解説する「SKRILLEX(スクリレックス)レベルでミックス・マスタリングする方法」をまとめました。SKRILLEXのように「音にパンチ・厚み・パワー」がありながら音圧を上げるには一体どのようにすればいいのでしょうか?DTMをしている全ての方、必見の内容です!

7

今回は、LANDRが解説する「DIベースとは?」をまとめました。音楽に親しんでいる方でも、「DIベース」とは何か、DIベースのレコーディングで使われる「DIボックス」とは何か、自分はDIボックスが必要なのかどうかが分からない方も多いでしょう。この記事では、これらについて詳しく解説していきます。

8

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

9

今回は、Audio Universityが解説する「音響心理学を活かしたミキシングテクニック」をまとめました。この記事ではそのうち、多くの人がミキシングで悩む「マスキング問題」とは何か?について解説しています。

10

今回は、さまざまなジャズのジャンル・種類をまとめました。「ジャズ」と言ってもいろいろなスタイルがあり、それぞれ特徴が異なります。この記事では18種類のジャズスタイルをご紹介しますので、ぜひお気に入りのスタイルを見つけてみてください。

-ソフト・プラグイン・機材