【DTM】最高にかっこいいダンスミュージックのバスドラム(キック)を作るコツ Part2
- 2023.02.11
- 2024.09.25
- アレンジ
今回は、Will Darlingが解説する「パーフェクトなキックを作る秘密のコツ」をまとめました。
この記事・Part2では、「かっこいいキックを作る実際の手順」の部分をご紹介しています。
実際にプロとして活動している解説者本人(EDM Tips)がどのようにキックの音作りをしているのか、1から丁寧に解説した様子をご紹介します。
EDMだけでなく、ダブステップやヒップホップなどにも使えるテクニックですので、ぜひマスターしましょう!
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キック(バスドラム)の音作りの手順
それでは、実際に僕(EDM Tips)がどのようにキックの音選びをしているのかをご紹介します。
キックの音を役割別にレイヤーするやり方も良いのですが、僕の場合は「いろいろな音をレイヤーするよりも、プラス10分かけて曲に合う最高のキックを選ぶ」というやり方をしています。
ここでは、実際にどのようにキックを作っていくか、1から解説していきます。
手順1:キックのパターンをMIDIで打ち込む
まず、キックのパターンをMIDIで打ち込みます。
オーディオファイルではなくMIDIで打ち込むメリットは2つあり、一つは「MIDIなら後から音を入れ替えるのが簡単であること」、もう一つは「キックのピッチを変えやすいこと」です。
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手順2:キックの長さを調整する
その曲・パターンにおけるキックの適切な長さを把握し、調整することはとても重要です。
もしオーディオファイルを使っていれば、キックの長さは目で見てわかるので、長過ぎればすぐにトリムして調節することができます。
しかし今回のようにサンプラーを使ってMIDIで打ち込んでいる場合は、サンプラーに取り込んだ音のサステインやリリースなどをしっかり確認し、必要であれば短くするなどの処理が必要です。
サステインをMAXにすれば、MIDIで打ち込んだ長さだけ音が続きますので、おすすめです。
例えばMIDIを8分音符で打ち込めば、8分音符以上の長さで音が鳴らなくなります。
ノイズが出ないようにリリースを調整
キックのリリースが短すぎると、サンプルが途中で切れて「プチッ」というノイズが出てしまうことがあります。
そのため、今回はリリースは100ミリ秒に設定し、ノイズが出ないようにします。
より細かく長さを調節したい場合
より細かく長さを調節したい場合は、MIDIを4分音符で打ち込み、そのあとにXfer Records社「LFO Tool」やCabelguys社「Shaper Box」などのプラグインを使って、キックの長さを調節します。
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今回はShaper Boxを使います。
Shaper Boxを使った長さ調整
まずはShaper Boxで「Volume」を選び、長さを「1/4」に設定します。
こうすろと、1拍(4分音符)ごとにShaper Boxが機能します。
そして、画面上のグラフでは8分音符以上の長さにならないように設定します。
さらに短い16分音符の長さで伸ばしたい場合は、これよりさらに半分のところでグラフを描きます。
手順3:モノラルで確認する
ステレオで聞いていると、ステレオで聞くからこそ耳がだまされてしまうことがあるので、モノラルで確認することも大切です。
例えばステレオの状態で聴くと、ベースが左右に動いているように聞こえます。
しかしモノラルで聞くと、ベースの左右の動きにだまされることなく、純粋にキックとベースの周波数帯域の関係がどうなっているのかを確認することができます。
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手順4:キックの音量を設定する
キックの音量を大きくすると、大きく聞こえるがために「良いキックだ」と勘違いしやすいです。
言い換えると、本当はあまり良くないキックの音であったとしても、音量が大きいから「いい音だ」と勘違いしてしまうことがあります。
そのため、キックの音量を気持ち小さめに設定することで、このキックは本当にこの曲にとってベストな音なのかどうかを判断しやすくなります。
音を選ぶ段階では少し音量を下げて純粋に音色を聞くことに集中し、最終的には音量を適切なレベルまで上げれば問題ありません。
サイドチェインはまだかけない
キックとキックを両方とも聞かせるために、サイドチェインをかける場合が多いと思います。
しかし、ここではまだかけません!
この段階ではまだサイドチェインをかけない方がいい理由は、後述します。
手順5:キックのオーディションをする
次は、使うサンプルを変えてオーディションをしてみます。
先ほどの時点で、ベースやこの曲のテンポ・キックのパターンに合うベストなキックの長さを調整しましたので、この条件の中で良い音が鳴るキックを選んでいきます。
目を閉じて、キックのサンプルを変えて聞いてみましょう。
いいなと思うキックがあったら、そのキックのファイル名をメモしたり、キックのフォルダーにコピペしておきましょう。
6~7個ぐらい溜まってきたら、その中からさらに厳選してナンバーワンを決めます。
前述の通り、複数のサンプルをレイヤーしようとするよりも、このオーディションにプラス10分かけた方が良い音を見つけられる可能性が高いです。
Spliceを活用しよう
このキックのオーディションについては、「Splice Bridge」のプレビュー機能が有効です。
このSplice Bridgeは、皆さんご存知のサイト「Splice」が提供するプラグインで、「Sounds+」「Creator」「Creator+」のプランを契約している方なら無料で使うことができます。
このプラグインはSpliceアプリとDAWが同期しており、自分がDAWで流している音を聞きながら、Spliceアプリで選んでいる音をお好みの長さ・範囲でリピートしながらオーディションをすることができます。
Spliceアプリ上でのサンプルの再生に少しディレイが出ることがあるので、Splice Bridgeを立ち上げているトラックのディレイを少し早めに設定するのがおすすめです(今回は-10~12ミリ秒早く設定)。
参考曲を活用しよう
このように音を選んでいるときは、参考曲を用意しておくとよいでしょう。
今自分が作っている曲と似たようなテイストの参考曲を聞くことで、キックの音はどんなものがいいか、ある程度的をって探すことができます。
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手順6:キックをチューニングする
Deadmou5や他のプロデューサーたちが「キックのチューニングは必要ない」と言及しているのを見てきましたが、僕の経験上では「チューニングすることでベースとのコンビネーションが良くなることもあるし、悪くなることもある」という見解です。
そのため、まずは一旦試してみることが大切だと思います。
それでは、先ほどSpliceで選んだキックを使って、キックのチューニングをしてみましょう。
キックのピッチを変えれば変えるほど、「ピッチがどれぐらい変わったか」ということが明確にわかるようになります。
自分の曲のキーがわかる場合はそれに合わせても良いですし、僕のように自分の耳でピッチを確認しても良いですし、チューナーを使っても良いでしょう。
ピッチが分かりにくい場合は、はじめにものすごく高い音にチューニングし、曲に合うピッチになることを確認してから、もとのキックの低さまでオクターブ移動しましょう。
例えば今回は「F」の音程になるとベースとも合いますので、まずキックのピッチをFになるまで上げ、そこから数オクターブ下げれば「低いF」にすることができます。
それでは、キックをチューニングする前とチューニングした後のどちらの音がよいか、聞いてみましょう。
今回の場合は、チューニングした後の方がベースとの相性が良いですね。
しかし、いつもこうなるとは限りません。
参考として、チューニングしたことで逆に悪くなったパターンをお見せします。
こちらのシチュエーションでは909系のキックを使っていますが、チューニングしたことで魅力的なトランジェントやボディが崩れ、ベースとぶつかっているような音になってしまっています。
チューニングをしていない方が、より前に音が出てヌケが良い音になっています。
手順7:キックの長さを再調整する
手順2でキックの長さを調整しましたが、サンプルを変えましたので、改めて長さの確認をします。
基本的に、キックの場合はより音が短ければ短いほど低域のための空間ができますので、よりベースが映えるようになり、全体的に太いサウンドにすることができます。
もちろん、ただキックを短くするだけではキックも魅力的になりませんので、ここはしっかり聞いて調整する必要があります。
まずはじめにキックをものすごく短くし、そこからだんだん長くして、ベストな長さを見つけていきましょう。
ものすごく短くすると、もはやトランジェント部分しかないような音になりますので、ボディやテールなどの中域〜低域がないような状態になります。
そこからだんだん音を伸ばしていくと、ちょうどよい太さ・長さのポイントが見つかります。
Shaper Boxのグラフの形は自由に変えられますので、最後の音の終わりのカーブの形によっても音のニュアンスが変わります。
はじめに設定したちょうど8分音符分の時のグラフと比べると、同じぐらいの太さ・強さを感じるにもかかわらず、音は少し短くできていることがわかります。
↓8分音符分にした時のグラフ
このように、キックの長さを調整するときは「最大限パワーを保てる長さで、最大限短く」を心がけると良いでしょう。
キックにおいての重要度は「トランジェント&ボディ>テール」になりますので、特にトランジェントとキックがベストな形で鳴るようにできると良いですね。
手順8:加工する
多くのサンプルは既に加工されており、サチュレーションやコンプレッションなどがかかっている状態です。
そのため、さらに加工を加えてしまい「加工しすぎ」になってしまうこともよくあります。
しかし、これまでの手順をしっかり踏んでいれば、そこまで加工しなくてもすでに「良い音」になっているはずです。
僕の場合は、最初に少しEQで出過ぎている中低音域付近を削ります。
この時も、「EQで削ってもしっかりキックが鳴っている状態」を保つことが大切です。
加工する時はA/Bテストを忘れずに
このように自分で少し手を加えるときは、必ず加工する前と後でA/Bテストを行いましょう。
ついついやりすぎてしまったり加工しない方が良い場合もありますので、とても重要です。
お気に入りのキックフォルダーを作ろう
僕はここ何年もの間、お気に入りのキックフォルダーを用意し、そこにある音をよく使っています。
そこに入っている音を使えば、それはきっとみなさんらしいキックの音になっていますし、作曲するときの手間も省けます。
キックに限らず、お気に入りのサウンドはぜひまとめてリスト化し、すぐ使えるようにしておくと良いですね。
以上で解説は終了です!
当サイトでは他にもキックの音作りに関する解説をまとめていますので、アレンジやミックスのバリエーションを増やせるよう、ぜひこちらも合わせてご覧ください↓
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