音楽ジャンル解説

インド音楽の特徴と曲の作り方【ティハイ編】

インド音楽の「ティハイ」って何?
インドの音楽みたいな曲って、どうやったら作れる?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

インド音楽における「ティハイ」について解説していきます。

このシリーズを読めば「インドっぽい!」と思わせられる音楽を作る方法が学べますので、ぜひ最後までご覧ください。
※インドは地域によって言葉のスペルが異なることがあります。
たとえば「ラーガ」は「Raag」「Raga」「Raaga」など、複数の書き方があります。

ティハイ(Tihai)とは?

ティハイとは、インド音楽の楽曲の終わり部分に使われる、楽曲が盛り上がる時に使われる奏法です。

ティハイでは「フレーズの繰り返し」を使っており、あるフレーズを3回繰り返した後、ダウンビート部分で終わるという特徴があります。

例えば「ホップ・ステップ・ジャンプ!」という三段跳びの有名なフレーズがありますが、ティハイ的に表現すると「ステップ・ステップ・ステップ・ジャンプ!」といったところでしょうか。

ちょうど「ジャンプ!」の部分がダウンビートに入り、「ステップ」の部分では、ビートを無視して即興します。

ティハイの面白さは、上記の「ステップ」の部分では巧みに即興してテンションを上げつつ、「ジャンプ!」の部分でダウンビートに戻り、「ステップ」の部分で貯めてきた熱量や緊張感を一気に解放する点です。

関連記事

ティハイの例①

実際に、シンプルなティハイの例を見てみましょう。

今回は、シンプルに4ビートのサイクルでメトロノームを鳴らしていきます。

この場合は、このメトロノームの高い音が鳴っている部分がダウンビートになります。

3:27~3:43

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

それではここで、ベースの部分を作ってみましょう。

まずは「Would you like a cup of tea?(お茶はいかが?)」という歌詞フレーズを乗せていきます。

日本語で言うと「ウジュー・ライカ・カポーブ・ティー」という風に、メトロノームのリズムに合わせることができます。

3:53~4:03

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

次は、この土台部分を使って「ティハイ」のフレーズを作っていきます。

先ほどのフレーズを少しいじって「have a cup of tea」というフレーズにし、これを3回繰り返し→最後はダウンビートで終わるようにしてみましょう。

つまり、3回目のときは「tea」の部分がダウンビートに置かれるようにします。

4:15~5:05

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

ティハイの例②

それでは、別のティハイの例も見てみましょう。

先ほどの「have a cup of tea」というフレーズのうち、「have」を抜いて演奏してみます。

5:20~5:35

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

では、次はこのフレーズをタブラで叩いてみましょう。

最初は「have」を入れた時のフレーズ、その次は「have」を抜いた時のフレーズです。

5:35~6:00

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

なぜこんなに複雑なことができるのか?

今回ご紹介したのは、とてもシンプルでかんたんなティハイの例です。

プロはもっと複雑なフレーズを演奏しますが、「3回繰り返し」「最後はダウンビートで終わる」というルールは共通です。

ティハイを行うソリスト「ティハイスト」が複雑なフレーズを演奏しながらしっかりダウンビートに着地できるのは、他のパートがシンプルなフレーズを刻んでいるからです。

ティハイの例③

次は、より複雑な例を見てみましょう。

7:22~7:56

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

2人の奏者がお互いにソロを行うと…

2人のソリストが演奏する場合は、お互いに全く違うソロを演奏しますが、最後のダウンビートのところで同時に着地します。

これも、ティハイのおもしろさの一つです。

ドラムのフィル=ティハイ!?

もしあなたがドラマーや打楽器奏者なら、これまでの演奏ですでにたくさんの「ティハイ」を演奏してきたことでしょう。

例えばドラムの「フィル」などは、ティハイに当てはまります。

こんなフレーズを叩いたことがある人もいるのではないでしょうか?

ドラムのフィルとしては、よく使われるフレーズです。

8:35~8:50

WHAT IS A TIHAI? Demystifying Indian Music #6

口伝で代々伝わるティハイ

ティハイは基本的に口伝で代々伝わるもので、西洋音楽などのように楽譜などが必ずあるわけではありません。

口伝で伝えられ、頭で覚え、そしてティハイのルールを守るために数学的にフレーズを計算しながら、パフォーマーは演奏の準備をしていきます。

このようなところもまた、インド音楽の素晴らしさの一つです。


以上で「インド音楽におけるティハイ」の解説は終了です。

次はインド音楽で多用される「装飾音」について詳しく解説します。

参考1:https://cnx.org/contents/adieWNR8@7/Listening-to-Indian-Classical-Music
参考2:https://www.youtube.com/watch?v=gSIyxncgzzg


人気記事

1

今回は、DTMプラグインの中で最も有名な製品の1つであるSpectrasonics社「Omnisphere 3」の新機能と使い方をまとめました。2025年10月に発表された今作ですが、前作の「Omnisphere 2」と何が変わったのか、新機能とその使い方を解説していきます。

2

この記事では、世界中の作曲家・音楽プロデューサーが使っているおすすめのブラス(金管楽器)音源をご紹介します。同じ楽器でも音源によって音色が少し異なりますので、複数持っていると使い分けることができるほか、レイヤーしたときもリアルさと壮大さを増すことができます。

3

今回は「DTMer&ボカロPには外付けHDDよりNASをおすすめする3つの理由」をまとめました。NASはDTMerや動画編集者など「大容量のデータを管理する人」「外付けHDDをどんどん買い足さなければならない人」にはとてもおすすめですが、なぜ外付けHDDよりNASをおすすめするのか、その理由を3つご紹介します。

4

今回は、音楽プロデューサーのNathan James Larsenが教える「プロのようにポップ・ファンクのブラスを作る方法」をまとめました。プロがどのようにしてブラスを打ち込んでいるのか、コツを8つご紹介します。

5

今回はボーカル定番マイク「SM7B vs SM58」をまとめました。ボーカルやギターのレコーディングによく使われるのが、SHURE社のSM7BとSM58です。どちらも超定番のマイクですが、一体何が違うのでしょうか?この記事ではそれぞれの特徴をじっくりご紹介しながら、どちらのマイクを選ぶべきか、その基準を解説します。

6

今回は、初心者からプロまで使えるおすすめのDTMスピーカー21選をまとめました。 この記事では、以下2つの条件を満たしているスピーカーだけをご紹介します。 ・2025年1月現在、日本の通販で誰でも新品 ...

7

今回は、音楽プロデューサーのIZZYが解説する「プロのようなボーカルミックスをする秘密の公式」をまとめました。作曲においてプロとアマチュアを分けるポイントの1つが、ボーカルミックスのクオリティです。この記事では、どのようにすればプロのようなボーカルMIXができるのかを解説していきます。

8

今回は、音楽好きの方や音楽家・DTMerにおすすめのふるさと納税返礼品をまとめてご紹介します。楽器本体、楽器関連機器、パソコン関連機器、音楽関係のチケット、音楽関係の雑貨など、音楽に関係する返礼品は非常にたくさんあります。気になる返礼品があれば、ぜひチェックしてみてください!

9

今回は、「Sonarworks SoundID Referenceの使い方」をまとめました。

DTMをするなら絶対に持っておきたいこの製品について、なぜこの製品がおすすめなのか、どの種類を買うべきなのか、具体的な使い方と測定方法をご紹介します。

-音楽ジャンル解説
-,