ミキシング・マスタリング

【DTM】ダイナミクスを壊さずに音圧を上げるMIXの方法3つ

ミキシング(ミックス)をしているけど、音圧を上げると抑揚がなくなる…

今回はこのようなお悩みにお答えする内容です。

How To Make A Louder Mix Without Ruining The Dynamic Range

数々の音楽制作動画をアップしているTransverse Audioによる「ダイナミクスレンジを壊さずにより大きな音で聞かせるMIX術」をまとめました。

「音圧を上げると抑揚がなくなった」という経験は誰しもあるでしょう。

ダイナミクスと音圧(ラウドネス)は、トレードオフの関係...つまり、どちらかを増やせば、どちらかは失われてしまいます。

今回は、この難しい問題の対処法を3つご紹介します!

MIX術1.音量を上げる→元の音量に下げる

1つ目の方法は、ずっと音量を上げたままではなく、だんだん音量を上げるというテクニックです。

これならリスナーの注意も引きつけつつ、ダイナミクスレンジも保ちながら音圧を上げられます。

0dB近くから上げていくと効果的でしょう。

完成例(0:55~1:13)

How To Make A Louder Mix Without Ruining The Dynamic Range

音量をだんだん下げてもOK

逆に、最初の音量はそのままで、だんだん音量を下げていくのも効果的です。

他のパートが新しく入ってくるときなどは、こちらが有効です。


画像:動画より

MIX術2.リミッターを使ってダイナミクスをチェック

2つ目のコツは、リミッターの使い方についてです。

リミッターをマスター(もしくは各トラック)の1番最初に挿し、そのトラックのダイナミクスレンジを分析してみましょう。

ビジュアライザーのついていないリミッターしか持っていない方は、無料の「Youlean Loudness Meter」がおすすめです。

リミッターで見るべき項目

リミッターを挿したら、どこが一番高いピーク(Peak)なのか、どこが一番低いピーク(Peak)なのかを分析してみてください。

曲全体で、最大値と最小値の距離が縮まっていないか、もっと距離を増やすことができないか考えてみましょう。

なぜこの作業が大事なのか?

ダイナミクスが壊れてしまうのは、リミッターをかけることによって音量の最小値と最大値の差が縮まってしまうからです。

つまりダイナミクスレンジを保ちたいのであれば、音量の最大値と最小値の距離が縮まりすぎないように調整すればよいのです。

ただリミッターをかけるだけではなく、リミッターを使うことでどのようにダイナミクスレンジが変わったのか、工夫できることはないか考えてみましょう

MIX術3.聞こえやすい音域に移動する

最後3つ目は、EQのテクニックです。

人間の耳は、中音域に敏感です。

つまり、中音域に重要なパート(楽器)を持ってくれば、音量が上がったように聞こえやすくなります。

たとえば「キックの低域を少しだけ中音域寄りにしてみる」などの工夫ができます。

キックとベースの競合

キックとベースは、同じ低音楽器です。

そのため、音域が重なりお互いの音を打ち消してしまうことが多々あります。

「どちらかこの曲の低音パートとして大事なのか」を考えて、役割を分担してみましょう。

低域における役割分担の例


画像:動画より

たとえば上記画像の場合、上のパートは200Hzを中心とした音作りをしています。

そのため、下のパートは200Hz付近を上パートにゆずり、代わりに50Hz付近を持ち上げています。

下パートが50khz付近を上げているので、上のEQでは50Hz付近を削っています。

このように、上手に住み分けすることが大切です。

いらない低域を削る


画像:動画より

リード楽器やウワモノ系など、低域を重視しない楽器は低域をバッサリカットしてしまうのがおすすめです。

カットする周波数帯域としては、だいたい35~45khz以下になります。

いらない音をそのままにしていると、そのいらない音が積み重なり、無駄に音量が上がってしまう原因になります。

おまけ

ちなみに、マスタートラックは-4 ~ -6dBぐらいにしておくとよいでしょう。

マスタリングのために、少しだけ余白を残しておくためです。

余白があれば、ダイナミクスレンジのためのスペースを確保しておけます。


以上で解説は終了です。

当サイトでは他にもTranverse Audioのミックス・マスタリングテクニックについてまとめていますので、ミックスをスキルアップしたい方はぜひご覧ください↓

Tranverse Audioのミキシング&マスタリングチュートリアル


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-ミキシング・マスタリング