ソフト・プラグイン・機材

DTMのコンプレッサー「VCA」「FET」「Opto」「Delta-Mu」の違いは? Part1

今回は、世界的に有名なプラグイン・ソフトウェアを開発しているiZotope社が解説するアナログコンプレッサーの4つタイプの違いをまとめました。

この記事ではPart1として、今回は「VCA」と「Optical」部分の解説まとめを掲載します。

Part2

元記事は「アナログコンプレッサー4種類についての解説」となっていますが、ソフトウェアでもアナログコンプレッサーをモデルにしたものがありますので、ここをおさえておくと音楽制作に役立ちます。

たとえばLogic Proの純正プラグイン「Compressor」は、まさに今回ご紹介する種類のコンプレッサーをモデルにしたものです。

DTMのコンプレッサー「VCA」「FET」「Opto」「Delta-Mu」の違いは? Part1

今回は、より科学的・工学的なところまで深掘りした内容です。

工学に苦手意識がある人も、読んでみるとなんとなく絵でイメージできるようになるので、一度ざっくり読んでみることをおすすめします。

コンプレッサーの種類や特徴を理解すれば、コンプレッサーをより速く効果的に使えるようになり、もっといい選択をすることができるようになります。

この機会にマスターして、よりよいコンプレッションができるようになりましょう!

※以下、「コンプレッサー」は「コンプ」と略します

VCAコンプとは?

VCAコンプは、間違いなく最も物理的に使われたコンプです。

Attack・Release・Threshold、Ratio、Kneeなどがコントロールできます。

「VCA」とは「ボルテージ・コントロール・アンプリファー(電圧制御アンプ)」という意味で、音楽関係のアプリケーションに見られる一種のメカニズムのことです。

VCAでは、コントロール信号がレベルが下がったかどうかを書き取ります。

アナログコンソールにおけるVCAフェーダーの場合、コントロール信号(つまりあなたが操作するVCAフェーダー)は、同じ量だけ音量を下げるよう伝えてくれるのです。

しかしVCAコンプレッサーでは、信号はICチップを介し、検出器(ディテクター、コンプレッション効果をコントロールする場所)とOUTPUT(最終的にあなたの耳に聞こえる部分)に分割されます。

例外はありますが、原則として、他のコンプレッサーよりもきめ細かく操作することができるのです。

VCAコンプがよく使われている場面

RUPERT NEVE DESIGNS社「R6」

RUPERT NEVE DESIGNS社「R6」

VCAコンプはSSLチャンネルストリップやAPIコンプ、Rupert Neve Designs社のハードなどで見られます。

多くのエンジニアがその予測可能性や再現性からこれらを愛用し、Master Busや、楽器(ギター・ドラム・ボーカルなど)のグループなどでこれらを使っています。

内部構造の違い

多くのコンプが電圧制御アンプを構造のどこかで使用しています。

しかしVCAコンプでは、電圧制御アンプがサーキット(回路)の中に収容されています。

このIC(集積回路)は、不要な歪みを最小限に抑えることにも役立つのです。

Opticalコンプ(Optoコンプ)とは?

Opticalコンプのしくみは、水とパイプに例えられます。

まず、ホースの中を水が流れていく様子を思い浮かべてください。

ここで、もしホースの上に小さな穴の空いたキャップを置いたとしたら…水はキャップにある小さな穴から漏れ出ていきます。

しかし、キャップから漏れ出なかった水はそれでもキャップを押し出そうとするので、水にある程度の勢いがあるときは、キャップを手で抑えないといけなくなるでしょう。

また、水の勢いが強ければ強いほど、ホースの中に水が蓄積されればされるほど、水がキャップを押し上げようとする力はどんどん増えていきます。

そして、キャップの穴が少なければ少ないほどキャップから漏れ出る水は少なくなりますが、その分キャップを押し上げようとする水の力が大きくなります。

この「水」と「キャップ」の関係は、抵抗と同じです。

:音
キャップ:Threshold(ここまで水が到達したら音量を抑える)
キャップから出ようとする水の力:抵抗

キャップを使ってホースから水が漏れ出ないようにしようとすればするほど(音量を小さくしようとすればするほど)、水はホースから漏れ出にくくなりますが、キャップを押し上げようとする力は大きくなります(抵抗が大きくなります)。

つまり、「抵抗」は「音量を下げると、抵抗を上げたことになる」と表現できます。

Opticalコンプにおけるレジスタのはたらき

さて、これとOpticalコンプは何が関係あるのでしょうか?

Opticalコンプでは、レジスタ(抵抗器)は光学式です。

オーディオ信号はLEDなどの発光素子に行き渡り、光感応レジスタ上で光ります。

この光感応レジスタが、どれぐらい速くオーディオ信号を減らすかをコンプレッサーの回路に伝えているのです。

Opticalコンプの懸念点

ここで懸念点となるのが、この発光素子とレジスタの相互作用の速さ。

たしかに速いのですが、「瞬時ではない」というところが懸念点です。

さらに、異なるタイプの発光素子は異なるスピードで光り、レジスタはどんな材料でできたものかによって反応が異なってきます。

この理由から、Opticalコンプの音響的なはたらきは、その内部構造で使われている材料・要素によって非常に左右されることがわかります。

OpticalのAttackとReleaseのかかり方

Opticalサーキット(回路)はアタックとリリースが必ずしも線形(直線状)ではなく、アタックが入る前に少しディレイ(遅延)が発生し、リリースが落ちる時にもディレイが発生するのです。

たとえば、Opticalコンプを強くかけると、イニシャルRelease Timeは早くなります。

しかし通常のコンプのかかっていない音に戻るまでは、直線状にはならず、カーブするのです。

たとえば、もしゲインリダクションが10dBあったとしたら、最初の5dB分は、次の5dB分よりもReleaseがより速くなるということです。

Opticalコンプの使いどころ

一般的に、ボーカルやリード、その他"まるくおさめる"感じにしたい要素(強くつぶしたり、シャープに強化したりしたくないもの)に使えます。

もちろん、さまざまな発光素子やレジスタが使われる可能性があるため、例外は発生します。

僕の個人的な意見としては、Opticalコンプは音と光が交わる、とても詩的なものだと感じています。


↓このつづき、Part2「FETコンプ・Delta-Muコンプ・それぞれの特性とまとめ」はこちら↓


人気記事

1

今回は、アメリカのプロデューサーNathan James Larsenが解説する「僕のお気に入りのボーカルチェイン」をまとめました。「どんな曲であっても、ミックスの83%はこのボーカルチェインを使っている」というぐらい汎用性が高い内容ですので、ぜひお試しください。

2

今回は、Doctor Mixが解説する「歴代のシンセサイザーTOP10」をご紹介します。みなさんがよく耳にする「あの音」は、実はこれらのシンセサイザーの音かも…!?「聞いたことある!」「あの音って、このシンセの音だったんだ!」と驚くこと間違いなしです!

3

今回は、これからDTMをはじめたいという方向けに「Amazonで買えるDTM初心者セット」を3つご紹介します。「これからDTMをはじめたいけど、何を買ったらいいかわからない」「とりあえずこれさえ買っておけばOKみたいなセットはない?」このような方のための記事ですので、ぜひ参考にしてください。

4

今回は、音楽で使うスピーカーに付いている「謎の穴」について解説します。いろいろなスピーカーを見てみると、前面下側に細長く穴が空いていたり、側面に丸い穴が空いてあったり、中には背面に穴が空いていることがあります。この謎の穴は、いったいどのような役割があるのでしょうか?

5

K-POPっぽい曲って、どうやったら作れる?K-POPの特徴って何?今回はこのような疑問にお答えします!海外プロデューサーが教える「K-POPの全体的な特徴」について徹底解説!これを前提に作曲していけば、よりK-POPっぽい曲が作れるようになります。

6

今回は、Big Zが解説する「SKRILLEX(スクリレックス)レベルでミックス・マスタリングする方法」をまとめました。SKRILLEXのように「音にパンチ・厚み・パワー」がありながら音圧を上げるには一体どのようにすればいいのでしょうか?DTMをしている全ての方、必見の内容です!

7

今回は、LANDRが解説する「DIベースとは?」をまとめました。音楽に親しんでいる方でも、「DIベース」とは何か、DIベースのレコーディングで使われる「DIボックス」とは何か、自分はDIボックスが必要なのかどうかが分からない方も多いでしょう。この記事では、これらについて詳しく解説していきます。

8

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

9

今回は、Audio Universityが解説する「音響心理学を活かしたミキシングテクニック」をまとめました。この記事ではそのうち、多くの人がミキシングで悩む「マスキング問題」とは何か?について解説しています。

10

今回は、さまざまなジャズのジャンル・種類をまとめました。「ジャズ」と言ってもいろいろなスタイルがあり、それぞれ特徴が異なります。この記事では18種類のジャズスタイルをご紹介しますので、ぜひお気に入りのスタイルを見つけてみてください。

-ソフト・プラグイン・機材
-,