ミキシングのコツ

【MIX】ドラムのブリード(他楽器の音の混入)の対処法【レコーディング】

楽器の生演奏をレコーディングすると、近くで鳴っていた別の音も拾って録音されてしまうことがあります。

例えばドラムの場合、「キック用のマイクにスネアの音が入ってしまった」ということがあるでしょう。

これを「ブリード(Bleed)」と言います。

特にドラムはさまざまな楽器が密集しており、音量も大きいため、マイクが他の楽器の音を拾ってしまいやすいです。

そこで今回は、Home Recording Made Easy.comが解説する「ドラムブリードを除去する方法」をまとめました。

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

ブリード除去におすすめのプラグイン

今回メインで使うのは、Wilkinson Audio社の「DE-BLEEDER」です。

かんたんに言うとゲート(Gate)と近い機能を持っていますが、ただのゲートではなく、ブリード除去に適したゲートと言えます。

その他おすすめプラグイン「RX11」

Kill Drum Spill With iZotope RX De Bleed

iZotope社の「RX Standard」と「RX Advanced」には、ブリードを除去する「De-bleed」の機能が搭載されています。

こちらもブリード除去におすすめです。

今回は「DE-BLEEDER」を使ったブリード除去方法を解説しますが、内容を理解すれば、他のプラグインでも応用できます。

通常のゲートプラグインはどう?

通常のゲートの場合、ある音量以下の音はすべてバッサリ削除されてしまうため、不自然に音が切れたように聞こえたり、人工的で安っぽい音に聞こえてしまうことがあります。

今まで多くのゲートプラグインを試してきましたが、ドラムのゲートとしていいなと思うプラグインは少ないです。

その中でも、特に一番良かったのがSlate Digital社の「GATE: DRUMS」と「GATE: CLASSIC」でした。

この2つのうち、今回ご紹介する「DE-BLEEDER」の方が、ドラム用のゲート(ブリード除去)としては良いと思います。

各パラメーターの機能について

はじめに、このプラグインの各パラメーターの機能について解説します。

※先にブリードの除去方法を確認したい方は、次の「キックのブリードを除去する」に飛んでください

このDE-BLEEDERには、4つのシンプルなツマミがあります。

FUNDAMENTAL

「FUNDAMENTAL」では、ドラムの音の根幹となる部分の音程を設定するパラメーターです。

例えばキックにこのプラグインを使っている場合で、キックの根幹となる周波数が53hzだった場合は、このパラメーターを53hzに設定します。

右下にある「BANDWIDTH」のツマミでは、FUNDAMENTALで設定した周波数を軸として、どれぐらい狭く・広く周波数帯域を検知するかを設定します。

RANGE

RANGEのパラメーターでは、FUNDAMENTALで設定した周波数帯域の限界値(リミット)を決めます。

ここで決めた値によって、「ここからここまでは必要な音、それ以外の音はブリードの音(除去するべき音)」を定めることになります。

REDUCTION

REDUCTIONのパラメーターでは、どれだけリダクション量を取るか(どれだけ音を減らすか)を決めます。

右にあるカーブの絵柄のスイッチによって「Knee」の設定ができ、ソフトに(緩く)かけるか、ハードに(強く)かけるかを決められます。

RELEASE

RELEASEのパラメーターでは、コンプレッサーなどのRELEASEと同様に、このブリード除去をどれぐらいの長さで行うかを決めます。

設定した数値を確認する

プラグインの画面右上にある「i」のマークをクリックすると、自分が設定したパラメーターの値を数字で確認することができます。

キックのブリードを除去する

それでははじめに、キックのブリードを除去してみます。

キックのトラックを聞いてみると、奥で小さくスネアやハイハットの音が鳴っていることがわかります。

「キック専用のマイクが、スネアとハイハットの音も拾ってしまっている」という状態です。

ドラムマイクに入ってしまったブリードの例 5:29~5:39

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

なぜブリードは除去しないといけないのか?

もしブリードを除去せず、この状態でコンプレッサーやEQをかけてしまうと、スネアやハイハットの音にもコンプレッサーやEQがかかり、場合によってはこれらの音も目立ってしまうことになります。

不要な音はしっかり削除し、必要な音(キックの音)だけにエフェクトがかかるようにするため、ブリードの除去はしっかり行う必要があります。

プラグインを使ってみよう

それでは、DE-BLEEDERを使ってみましょう。

FUNDAMENTALでキックの中心となる音域を設定し、RANGEやREDUCTION、RELEASEのツマミを動かしていきます。

(この時にAUDITIONボタンをONにすると、FUNDAMENTALで設定した周波数の音域が聞けるようになりますので、中心となる音域を探しやすくなります)

キックがしっかり鳴り、かつブリード(スネアやハイハット)の音がきれいになくなるように調整していきます。

6:14~8:39

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

例えば今回の場合、REDUCTIONの値が大きくても、RANGEの値が小さければブリードはしっかり除去されていません。

そのため、まずREDUCTIONをある程度の値まで上げてから、RANGEをゼロから少しずつ上げて、適切に除去されるところまで上げていきます。

逆に、RANGEの値をある程度上げてから、REDUCTIONをゼロから少しずつ上げて、適切に除去されるところまで上げていっても良いでしょう。

THRESHOLDやRELEASEのツマミも同様に、ゼロから少しずつ上げて、ベストな位置を探してみます。

RELEASEはどれだけ早くプラグインの効果をOFFにするかを決めるパラメーターのため、RELEASEがゼロだと通常のゲートに近い、極端な形で音がカットされます。

場合によってはかなり不自然に聞こえたり、必要な音が消えてしまう or 不必要な音が残ってしまいますので、注意しましょう。

このプラグインではそれぞれのツマミの組み合わせによってサウンドが変わりますので、ぜひそれぞれのツマミでベストな値を探してみてください。

ブリード除去前/除去後の音を比較してみよう

それでは、ブリード除去前と除去後の音を比較してみましょう。

スネアやハイハットの音はしっかり除去しながらも、ドラムのテール(余韻や部屋鳴り)はしっかり残しています。

8:43~9:48

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

スネアのブリードを除去する

次は、スネア専用のマイクに入ったブリードを除去してみます。

スネアの他に、タムやキック、ハイハットの音が入ってしまっていることがわかります。

10:38~11:00

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

それでは先ほどと同様に、FUNDAMENTALのツマミから順に設定していきましょう。

今回はスネアのため、FUNDAMENTALは150hzにしています。

11:02~12:28

How To Remove Drum Bleed | DeBleeder Plugin By Wilkinson Audio

キックに比べてスネアはテール(リリース)が長いため、RELEASEの値の設定は非常に重要になります。

まとめ

今回は、Wilkinson Audio社の「DE-BLEEDER」を使ってブリードを除去する方法を解説しました。

数千円で買える便利なプラグインのため、特に生ドラムをミックスする方にはおすすめの製品です。

またこのプラグインを持っていなくても、今回の解説でブリード除去に関するポイントはご理解いただけたと思いますので、他のプラグインでもぜひ応用してみてください。

今回ご紹介したプラグイン

おすすめプラグインを購入する


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-ミキシングのコツ
-,