楽器解説

バスオーボエとは?【バリトンオーボエ・ヘッケルフォーン・ルポフォーン】

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

今回は、OrchestrationOnlineが解説する「バスオーボエとは?」をまとめました。

高い音が出るイメージのある「オーボエ」ですが、実は低音域が出る「バスオーボエ」と呼ばれる楽器があります。

この記事では、「バスオーボエの種類」「ファゴットとの違い」「オーケストレーションでどのような役割をするのか?どう使われることが多いのか?」「バスオーボエが使えるDTM音源・プラグイン」について解説します。

主なバスオーボエの種類3つ

低音が出るオーボエである「バスオーボエ」は、主に3種類あります。

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

・バリトンオーボエ
・ヘッケルフォーン
・ルポフォーン(ルポフォン)

バリトンオーボエとは?

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

バリトンオーボエは、バリトンの音域が出るオーボエです。

形はイングリッシュホルンに似ていますが、音色はオーボエに近いのが特徴です。

1:34~

Bass oboe
Baritone Oboe in F

ヘッケルフォーンとは?

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

ヘッケルフォーンは、音色も運指も、オーボエとファゴット(バスーン)のちょうど間のような楽器です。

1904年に開発されましたが、これまで約150本程度しか生産されていない希少な楽器です。

バリトンオーボエよりもさらに大きく、音域もさらに2つ下のAまで出すことができます。

2:59~3:26

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

2:40~

Heckelphone

ルポフォーン(ルポフォン)とは?

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

ルポフォーンはバスオーボエの中でも比較的新しいタイプのオーボエで、1905年に開発されました。

ドイツ人のGuntram Wolfによって開発され、ルポ(lupo)はイタリア語で「オオカミ(Wolf)」という意味があります。

前述のバリトンオーボエやヘッケルフォーンよりもさらに大きく、音域もさらに低いFまで出すことができます。

4:09~4:19

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

1:39~1:59

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

※バスーンの最低音はBbですので、バスーンの最低音とルポフォーンの最低音はちょうど完全5度の関係になります

ルポフォーンは低い音をキレイに出しやすい

ルポフォーンは非常に大きく、バスオーボエの中でもかなり低い音を出すことができるので、低い音が頻繁に出てくるような楽曲や、極端に低い音が出てくる楽曲では大活躍します。

例えばシュトラウスの「アルプス交響曲」は、ヘッケルフォーンのパートに非常に低い音程(F)があります。

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

しかしこの音域はヘッケルフォーンでは対応できないため、その音を他の低音楽器でカバーしてもらったり、そもそも演奏しないなどの選択をすることがあります。

しかし、ルポフォーンであればこの音域も出すことができます。

バスオーボエとファゴット(バスーン)の違いとは?

これら3つのバスオーボエは、ファゴット(バスーン)と演奏できる音域が被っています。

ファゴットはオーボエと同じダブルリード楽器で、主に低音域を担当します。

Meet the BASSOON! | WRTI-FM Meet the Instruments

しかし両者の音色は大きく異なり、それぞれが独自の魅力を持っています。

ファゴットとバスオーボエの音色が異なる理由

ファゴットとバスオーボエの音色が異なる理由の1つは、ボアの大きさです。

ボアとは「楽器に吹き込んだ空気が通る管の直径」のことです。

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

このボアの大きさが異なると、同じ音域でも「太くてがっしりしているか」「やさしく軽い感じがするか」「薄くてキーンとする音か」など、音色が異なります。

例えばバスオーボエにおける中音域は「ゴージャスでリッチな音」に聞こえやすいですが、ファゴットでは「薄くて他の楽器になじみやすい音」に聞こえます。

ダブルリード楽器はリードのコンディションに演奏のクオリティが大きく影響するため、なるべくそれぞれが得意な音域で、その楽曲やフレーズにとって必要な音色が得られるように作曲をすることが大切です。

似ている楽器でも音域によって音色が異なる例は、トランペットやクラリネットでも見受けられます。

バスオーボエの効果的な使い方4つ

バスオーボエは、その名の通り低音域に使うことが最も多く、それがベストな使い方だと言えます。

ここでは、バスオーボエの効果的な使い方を4つご紹介します。

バスオーボエの効果的な使い方1.オーボエセクションにおける低音楽器として使う

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

「オーボエファミリー」には、大きく分けて「オーボエ」「イングリッシュホルン」「バスオーボエ」の3つがあります。

それぞれ出せる音域は異なりますが、一部で被っている音域もあります。

しかし「理論上は出せる音域」であっても、やはりその楽器にとって音域が低すぎたり高すぎたりすると、アーティキュレーションが理想通りに出せないなどの問題が発生します。

例えば、高音域が得意なオーボエにとって、低い音を出すのはベストだとは言えません。

バスオーボエのように、太くてずっしりした音色にはならないでしょう。

同様に、バスオーボエも高い音は出せますが、オーボエやイングリッシュホルンと同じようにキレイなアーティキュレーションで高音域を演奏するのは難しいでしょう。

そのため、やはりバスオーボエは低音楽器として、低音域を中心に演奏するのが望ましいと言えます。

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バスオーボエの効果的な使い方2.他のオーボエファミリーの苦手な音域をカバーする

オーボエファミリーである「オーボエ」「イングリッシュホルン」「バスオーボエ」は、それぞれに得意な音域と不得意な音域があります。

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

例えば、イングリッシュホルンにとって「低すぎる」と感じる音域は、バスオーボエにとっては楽に出しやすい音域です。

またバスオーボエにとって「高すぎる」と感じる音域は、オーボエやイングリッシュホルンにとっては楽に出せる音域です。

「オーボエ」という同じタイプの楽器であっても、得意な音域は種類によってさまざまです。

そのため、似ている音色ですべての音域をカバーしたいときは、オーボエファミリーの楽器を組み合わせて使うのが効果的です。
※このいい例が見られるホルストの「惑星」については、後述でご紹介します。

バスオーボエの効果的な使い方3.他の楽器を補強する

バスオーボエは、オーボエファミリーだけでなく別の楽器を補強するときにも使えます。

例えば「ファゴットを補強するためにバスオーボエを重ねる」などです。

もちろん「クラリネットと同じパートをオーボエでも演奏する」など、バスオーボエ以外のオーボエファミリーでも同様の使い方ができます。

バスオーボエの効果的な使い方4.ソロで使う

バスオーボエは低音楽器として使われますが、同じ木管楽器の低音担当であるファゴットやバスクラリネットとはまた違う音色を持っています。

そのため、バスオーボエがオーケストラにおいてソロで登場すると、他の低音楽器が演奏しているときとはまた違う一際目立った存在になります。

2:17~2:35

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

バスオーボエがよく使われるのはどんな楽曲?

バスオーボエは、非常に大きな編成のオーケストラで使われることが多いです。

https://youtu.be/hpih19nv6VM?si=PcpbAUxoJUTrysMy

特にワーグナーが活躍していた19世紀から20世紀前半ごろまで作曲された作品では、オーボエとイングリッシュホルン、ファゴット(バスーン)を支える低音楽器としてバスオーボエが用いられることがあります。

音色が似ている「オーボエファミリー」で低音域から高音域までをすべてカバーすることで、オーボエファミリーが1つのグループとしてまとまりを出すことができます。

前述で解説した「苦手な音域を他のオーボエファミリーでカバーする」のいい例の1つです。

ホルスト「”惑星”より “海王星”」のオーボエセクションの例(4:43~5:08)

Orchestration 103, Part 15: Bass Oboe

バスオーボエもプロのバスオーボエ奏者も希少

オーボエ奏者だからと言って、必ずしもバスオーボエも上手に演奏できるとは限りません。

楽器の大きさや演奏のニュアンスなどがオーボエと異なるため、バスオーボエはプロのバスオーボエ奏者に任せるのがベストでしょう。

しかし、バスオーボエを長年演奏してきた「プロのバスオーボエ奏者」は非常に希少です。

そもそもバスオーボエは楽器自体があまり生産されておらず、入手することも困難です。

ヘッケルフォーンに至っては、これまで約150本しか生産されていません。

そのため多くのオーケストラでは楽器を用意することも奏者を雇うことも難しく、バスオーボエを取り入れることを諦めるケースも多々あります。

現在ではオーケストラにおいて優先順が低くなってしまっているバスオーボエですが、その魅力はこれまでの通り、たくさんあります。

バスオーボエの音色が使えるDTM音源・プラグイン

最後に、バスオーボエを含むオーボエファミリーの音色が使えるDTM音源(プラグイン)をご紹介します。

作曲でオーボエを打ち込みたい方は、ぜひチェックしてみてください。

バスオーボエが使えるDTM音源・プラグイン

ここでは、数少ないバスオーボエが使えるDTM音源・プラグインをご紹介します。

Vienna Symphonic Library社「STUDIO HECKELPHONE」「Studio Special Woodwinds」

通常のオーボエのほか、ヘッケルフォーンやコントラバスクラリネット、オーボエ・ダモーレの音色が使えます。
※オーボエ・ダモーレはメゾソプラノの音域で、オーボエよりも少しやわらかく優しい音を出すことができる楽器です

NEW: **Studio Series** VSL SYNCHRON-ized Special Editions: Woodwinds

ヘッケルフォーン単品音源「STUDIO HECKELPHONE」

オーボエファミリー+フルートファミリー+クラリネットファミリー+ファゴットが使える音源「Studio Special Woodwinds」

同社では他にも、テノールオーボエに相当する「オーボエ・ダ・カッチャ」の音源「Studio Oboe da Caccia」も開発しています(イングリッシュホルンはアルトオーボエに相当します)。

AARON VENTURE社「Infinite Woodwinds」

INFINITE WOODWINDS 2.0 | Igor Stravinsky - The Rite of Spring (Screencast)

バスオーボエのほか、オーボエ、イングリッシュホルン、ファゴット、コントラバスーンなどのダブルリード楽器、クラリネットファミリー、フルートファミリー、サックスファミリーの音色も使えます。

木管楽器がほぼ網羅されている音源です。

おすすめプラグインを購入する

バスオーボエ以外のオーボエファミリー・ダブルリード楽器が使えるプラグイン

ここからは、バスオーボエは収録されていませんが、その他のオーボエファミリーやダブルリード楽器、木管楽器が充実しているプラグインをご紹介します。

Acoustic Samples社「VWins Oboe」

Acoustic Samples VWinds Double Reeds - Overview

オーボエ、イングリッシュホルン、ファゴット、コントラバスーンが使えます。

Chris Hein社「Chris Hein Winds Vol 3 - Oboes」

オーボエ、イングリッシュホルン、オーボエ・ダモーレの音色が使えます。
※オーボエ・ダモーレはメゾソプラノの音域で、オーボエよりも少しやわらかく優しい音を出すことができる楽器です

Audio Modeling社「SWAM DOUBLE REEDS」「SWAM Solo Woodwinds Bundle」

Expressive Physical Modeling Woodwinds (SWAM Woodwinds 3)

オーボエやイングリッシュホルン、ファゴット(バスーン)、コントラバスーンが使えます。

「SWAM DOUBLE REEDS」はオーボエなどのダブルリード楽器、「Woodwinds Bundle」はクラリネットやサックスなどの木管楽器も含めたバンドルです。

Musical Sampling社「Orb Woodwinds Bundle」

オーボエ、イングリッシュホルン、ファゴットの音色が使えます。

CINESAMPLES社「Hollywoodwinds」

Cinesamples Hollywoodwinds - TEXTURES AND FX

オーボエ、ファゴット(バスーン)、クラリネット、フルート、ピッコロなど、多数の木管楽器のアンサンブルが使えます。

Cinesamples社「CineWinds CORE」「CineWinds PRO」

「CineWinds CORE」ではオーボエとファゴット、「CineWinds PRO」ではアルトフルートやコントラバスーンの音色が使えます。

Heavyocity社「VENTO: Modern Woodwinds」

VENTO: Modern Woodwinds - Preset Playthrough | Heavyocity

オーボエのほか、ファゴット、コントラバスーン、クラリネット、コントラバスクラリネット、フルートなどが使えます。

映画音楽で使いやすいかっこいいプリセットも多数用意されています。

関連記事

バスオーボエとは?まとめ

以上がバスオーボエの解説でした。

バスオーボエ3種類

・バリトンオーボエ
・ヘッケルフォーン
・ルポフォーン(特に低い音域でもOK)

ポイント

・オーボエファミリーの低音担当
・ファゴットとはまた一味違う音色
・希少だが、いるだけで存在感UP

当サイトでは他にもオーケストレーションや楽器について解説していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


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